求人 NEW

一人ひとりの
グッドデザインと
次の時代を選ぶヒント

※この仕事は募集終了いたしました。ご応募どうもありがとうございました。

自分の身の回りにあるもの、そのすべてにデザインした人がいます。

“もの”だけではありません。駅のホームの動線や、今日食べる野菜が届いたルート、並木が木陰をつくる川辺。あたりまえのように感じている暮らしの心地よさは、無数のアイデアが集まってできたものです。

さらに言えば、私たちが「いいね」と共感したり、「おや?」と違和感を感じたりすることからも、新しいアイデアが生まれていく。モノやコトが形になり、人の手に渡ったあとも、実はデザインのプロセスは続いているのかもしれません。

今回紹介するのは、デザインを誰もがもっと身近に感じられるように働きかけていく仕事。

日本デザイン振興会で、グッドデザイン賞の運営や、デザインの普及活動に関わる人を募集します。デザインの知識より、純粋にデザインと向き合い、それを地域や若い世代に届けたいという意欲のある人を探しています。



六本木駅から出てすぐの、ミッドタウン・タワー。エレベーターで5階に上がって、細い通路を抜けると大きな展示スペースが現れる。

ここはデザインハブと呼ばれる空間。ちょうど、グラフィックデザインの作品が展示されていた。日本デザイン振興会の事務所はその奥にあるので、作品を眺めながら歩いていく。

ハッとするような色と言葉。

いろんなポスターを続けざまに見ていると、急にたくさんの刺激が頭に入ってくる感じがする。一つひとつが短い瞬間にメッセージを伝えるためのツールだから、無理もない。

「はあ〜すごいなあ」とやや圧倒されながら、もう一度頭を整理して取材で聞きたいことをまとめ直す。

そもそもデザインってなんだっけ?その歴史から見ると、今ってどういう状況なんだろう…。

そう切り出すと、迎えてくれた事業部長の矢島さんに「そんな難しいこと書くの?」と笑われた。

六本木のきれいなオフィスに、圧倒するような作品。たしかに、ちょっと緊張していたかもしれない。

矢島さんの笑顔に、気を取り直して話を聞き始める。

「デザインって日々アップデートされている、ある意味ナマモノなんですよね。僕たちは『こういうデザインが生まれたけど、どう思う?』ってみんなに投げかけて、考える機会をつくっていくのが仕事なんです」

法人の担う事業のうち、最も大きなウェイトを占めるのがグッドデザイン賞の運営。

表彰の証であるGマークは、目にしたことがある人も多いはず。

もともとは国産の工業製品のオリジナリティを評価し、つくり手の知的財産に対する意識を浸透させるために1957年に発足した制度。

発足から数十年はプロダクトデザインが主な対象になっていた。

「日本ではデザインというものを、プロダクトや建築といったジャンルに分けて捉える期間が長かった。そういう分断があることである種の閉塞感が生まれるようになったんです」

「一方で、これまでデザインの周辺にいたような人たちが、ブランディングやコミュニティづくりなどにデザイン的な発想を用いるようになった。そういう双方向の動きが重なって、多様性のあるデザインという見方が定着してきたんです」

現在のグッドデザイン賞では、日用品などのプロダクトだけでなく、形のない取り組みも審査対象になる。

それによって専門職としてのデザイナーだけでなく、いろんな立場の人が応募するようになった。

たとえば、昨年大賞を受賞したのは「おてらおやつクラブ」という取り組み。

発起人は僧侶でもある松島靖朗さん。全国のお寺にお供えされるお菓子などを、仏さまからの「お下がり」として経済的な貧困を抱える家庭に届けようというものだ。

「大賞は最終的に一般の方の投票で決まるんです。そこで『おてらおやつクラブ』が選ばれるっていうのは、この賞にとってエポックメイキングな出来事だと思いました」

なぜ今、この取り組みが人の心を動かしたのか。

貧困という問題や、お寺のあり方、地域のコミュニティ形成。ここに『いいね』が集まった時代背景を考えると、次の行動のヒントが見えてくる気がする。

「よく誤解されるんですけど、グッドデザインは『正解』ではないんです。『僕はそう思いません』とか『なんでだろう』とか、いろんな意見が生まれることで、グッドっていう意味がどんどん変化していく。それぞれが主体的に考える自由があっていいと思うんです」

「グッドデザイン賞もいろんな変遷があって、芯が通っていないとも言われます。ただ、デザインそのものが時代のなかで深呼吸しながら変わっていくものだから、間違っていたらまた修正すればいい。好奇心旺盛に、取り組んでいけたらいいと思います」



その時代ごとの世相を映し出すデザインのかたち。

「歴代の受賞作品を見ていても、ああ、このときはこういう時代だったんだなって頷けるんですよね」

そう話してくれたのは、事業部で課長を務める津村さん。運営の仕事について聞かせてもらう。

事業部では、1年間を通してグッドデザイン賞の運営に携わりながら、メディアや企業などと連携してプロモーション活動を行っている。

今回入る人が取り組むことになる大きなテーマは、地域振興と人材育成。なぜ、このふたつになったんですか。

「日本のいろんな地域で、人口減少のような問題意識を起点にデザインに取り組んでいる人がいて。私たちもそれを応援したいし、そういう人たちから学ぶべきものがあると思っています」

「ただ、そういうモチベーションのある人は地域ごとに点在しているのが現状で、なかなかプロジェクトが進みにくい。もうちょっとそれぞれを結びつける役割が必要なんじゃないかと思っているんです」

地域で生まれたデザインをより広域に伝えたり、これからデザインに取り組もうとする地域と専門家とを結びつけて応援したり。

仕事として地域おこしのイベント運営などに関わった経験があれば、それを生かす機会も多いと思う。

「地域振興と両立するのは難しいと思うんですが、人材育成の面でも力を発揮してくれる人が必要で」

津村さんたちが危惧しているのは、プロダクトの分野でデザイナーを志す学生が減ってきているということ。

グッドデザイン賞自体も、若年層には十分認知されていない面があるという。

「就活を控えた大学生だけでなく、もっと小さいときからデザインに親しんでもらう機会をつくりたい。自分たちが主体となって子供向けのワークショップのようなことができたらいいんじゃないか、と思っているんです」

デザインを学ぶ学生や専門家向けというより、まだデザインと出会う前の人に種まきをしていくような取り組み。

事務所に隣接するデザインハブや、セミナールームなど、活用できる場所はたくさんある。

たとえば、夏休みの子供向けプログラムとか、すぐに動き出せそうな環境ではありますよね。

「そうですね…。ただ、夏はちょうどグッドデザイン賞の二次審査があって、みんなヘロヘロで。新しいことを始めるには人手が足りないんですよ」

グッドデザイン賞の運営は、募集告知から受付、審査、受賞展なども含めて1年がかり。

事業部の職員は全員、グッドデザイン賞のなかの「プロダクト」や「建築」などいずれかのユニットの担当として動いていく。応募受付や審査員との連携など、通年でこの賞の運営にかかわりながら、それとは別に広報などそれぞれの役割を分担している。

新しく入る人も、いずれかのユニットを担当しながら、地域振興や人材育成を進めていくことになる。

ちなみに、津村さんが個別に担当しているのは海外事業だそう。

「それぞれに大きなミッションみたいなものはあるんですけど、グッドデザイン賞以外の業務は最初からきっちり決まっているわけではなくて。私が入るときも『日本のデザインを世界に広める仕事』っていう、ちょっとふわっとした感じだったんですよ」

たしかに今回の「地域振興」や「人材育成」も、今の時点で明確な業務が決まっているわけではないですね。

津村さんは、どうやって仕事を具体化してきたんですか。

「日本のグッドデザイン賞っていうのは戦後の産業振興モデルでもあるので、タイやシンガポールのような国から『自分たちもそういうアワードをつくるためにノウハウを知りたい』みたいな相談が結構あって。それに応えていたらどんどん仕事が増えてきたっていう感じです」

海外だけでなく、国内の自治体や各機関など、日常的にいろんな人からの問い合わせや見学依頼があるという。

審査員として関わるデザイナーや専門家などとのつながりも多い機関だから、必ずしもゼロベースで考えなくても、きっかけになりそうな人やコトとの出会いは多いと思う。

「仕事の内容も各々の裁量に任されていると思います。ここは人数が少ないせいか、『来週ちょっと海外出張行ってきます』っていうのが通ったりして。正直、もっとお堅いところかと思っていたんですけど(笑)」

「一方でお役所っぽいカルチャーが残っている部分もあります。『ここにも書類がいるのか』みたいな。それもグッドデザイン賞の信用にかかわる大切な部分なので、基本的な事務作業ができるという前提は必要かもしれないですね」



事務作業に抵抗がなければ、裁量の大きさを生かして自分の得意を生かせる環境。とはいえ、慣れるまでは少し積極的に作業を覚える姿勢が必要かもしれない。

入職して2年目、広報を担当している塚田さんにも話を聞いた。

「ここは全体でひとつの部署なので、メンター的な上司がいることはほとんどなくて。自分で聞きに行かないと、最初は何をしていいかわからないかもしれません。プロジェクトごとにリーダーを立てて動かしていくような形で、いきなり自分がリーダーになることもありますし(笑)」

前職も、別の法人で広報を担当していたという塚田さん。

仕事の内容やマルチタスクについては、あまり違和感なく受け入れられたという。一方で、はじめて仕事として触れるデザインの分野には新鮮な発見が多かったそう。

「審査とかでいろんなお話を聞くようになって、日常の風景の見え方が変わったんですよ。何気ない柵とかでも、人が手を置くとどういう動きになるかがちゃんと考えられていることがわかる。デザインとして意識すると、視野が広がる。人生が広がるっていうと大袈裟なんですけど、そんな感じはありますね」

ある日突然、見え方が変わるような感覚。それは知識として学んでいくよりも、「へー、おもしろい」という発見から育っていくものだと思う。

多くの人がその視点を持つことができたら、社会はもっと心地よく変わっていくはず。デザインの普及は、その考えの出発点となるヒントを届ける仕事なのだと思います。

(2019/7/19 取材 高橋佑香子)

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