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ゆっくり、ゆっくり
この島で過ごしてみたら?

琉球列島の中でもっとも美しい「球美の島」。

長くそう呼ばれてきたのが、沖縄県・久米島(くめじま)です。

美しいサンゴ礁の砂州・ハテの浜や、泡盛の生産地として、あるいは熱帯魚とともに泳げるダイビングの名所として、その名を聞いたことがある人もいるかもしれません。

今回は、この島で働く地域おこし協力隊を募集します。

職種はさまざまで、塾のスタッフや寮のハウスマスター、中学校支援員などのほか、広く町の情報を集めて移住希望者をアテンドする島ぐらしコンシェルジュも求めています。

球美の島では、どんな人が暮らしているのか。まずはそんなところから知ってほしいと思います。



那覇空港から飛行機で30分。

窓の向こうに、久米島が見えてきた。

空港の出口を出ようとしたところで、湿った暖かい空気に包まれる。車を走らせると、あたりにはサトウキビ畑が広がっていて、沖縄に来たんだなあという実感が湧いてきた。

まず訪れたのは、『じんぶん館』という建物。

1階には町営の塾が入っていて、教室は高校生とスタッフの話し声でとてもにぎやかだ。

「大人と子どもの距離が近い地域だと思います。大人は子どもを名前で呼ぶし、高校生も地域の行事に恥ずかしがらずに参加する。地域のみんなで育てるっていう雰囲気がまだまだ残っている島ですね」

そう話すのは塾長の新井さん。2年半前に、東京からやってきた。

「大学を出て都庁で5年間働きました。楽しい仕事だったんですけど、このまま定年まで働いていいのかな?って。安定した道から飛び出てみるのも面白そうだと思ったんです」

そこで選んだのが、地域おこし協力隊という働き方。なかでも教育を通じたまちづくりを目指す久米島に興味を持ったそう。

新井さんが働いているこの塾は、島唯一の高校「県立久米島高校」に通う生徒のために、今から4年前につくられた。

中学校で習った内容の復習から、日々の授業の予習、テストや検定対策、大学受験まで。進度も目標もさまざまな高校生一人ひとりに学習指導をしている。

「僕は生徒と対等な立場だと思っています。以前、進学希望だった生徒が、夢が変わったからやっぱり受験やめます、と言ったことがあって。どうした?って話を聞いていくと、勉強から逃げたいようすを感じて」

「そのときに『大学に行けば選択肢も増えるし収入も変わるんだよ』って話をすれば、頭では納得すると思うんですよ。でも僕が高校生だったらすごく嫌だと思うんですよね。口先だけで、魂で語っていないだろって」

どうして大学に行こうと思ったのか。今の自分はどんなことを考えているのか。ホワイトボードいっぱいに書き出して、徹底的に話し合うときもある。

「常に本気で向き合うぶん、僕も生徒もしんどいです。でも生徒が、この島には本気でぶつかってくれる大人がいたってことを思い出せるだけでもいいかなって。その背中を見せるだけでも意味があると思っています」

塾ができて5年目。塾内の体制も整い実績も生まれてきた今、新たな目標があるという。

「今までは、来てくれる生徒に勉強を教える“地域の塾”でした。これからは、地域と共にある塾になりたいんです」

地域と共にある塾。

「塾の外の人と一緒に何かやろうって雰囲気をつくりたくて。久米島は沖縄特有のつながりの濃さがあります。イチャリバチョーデー、一度会ったらみな兄弟って言葉があって。こちらが歩みよれば、必ず応えてくれると思っているんです」

そんなことを話していると、近所の農家さんがふらりと現れて「これ、食べて」とパイナップルを置いていった。

「まさにこの近さですよね(笑) なんくるないさあって、生徒とも大人ともゆるやかに関わっていける人だったら、すごく楽しい地域なんじゃないかなと思います」



豊かな自然のなかで育まれてきた人とのつながり。次に話を聞いた上山さんも、そんな地域だからできる働き方を実践しようとしている。

この建物には塾のほか、島外から久米島高校に通う生徒の寮も入っていて、今は29人が暮らしている。上山さんはそんな寮を運営するハウスマスターとして、4月に神奈川県から移住してきた。

「ずっと海が好きで、いつか南のほうに住みたかったんです。今のところは、ただただ楽しいですね。海に行こう! 景色見に行こう!って何度も生徒に言っています」

島を満喫しているようすの上山さん。お仕事はどうですか?

「想像以上にハードですね。でも、それ以上に楽しい。高校生ってこんなにも全力だったんだなって思います。大人にとっては取るに足りないことでも、彼らにはすごく大事なことで、目の前の世界がすべてだから必死なんだなって」

必死、ですか。

「最初にそう思ったのは下駄箱事件ですね。春に『下駄箱を横に一つずつずれてくれる?』ってお願いをしたことがあったんです。そしたら『ずっとここを使っていて愛着もある、絶対に譲りたくない』って必死に訴える子がいて」

「大人だと『うん、分かった』で終わるのにそうじゃないんだ、って。もちろん全員がそうではないけど、29人それぞれに考えや思いがあります。一人ひとりに向き合う毎日なので大変ではあるけど、楽しいことのほうが多いですね」

ハウスマスターは現在3人で、朝から晩までを生徒と共に過ごしている。雨の日は車で学校まで迎えに行き、宿直の朝は生徒を起こす。学校との三者面談にも出向くなど、まるで保護者のような役割だ。

「寮生は私たちのことをすごく見極めています。この人には真面目な相談ができる、私が相手ならふざけてもいいっていうふうに。全員に好かれるなんて絶対にあり得ないからこそ、ハウスマスターのキャラクターが分かれているのはいいなと思います」

寮生は、貴重な高校3年間を島で過ごす。その間、少しでも楽しい思い出をつくれるように。

これからは寮と地域との関わりをもっと増やしていきたいと話す。

「こんなに綺麗な自然があるんだから、海に行ったり、花火をしたり、外に連れ出してあげたい。でも責任を持って生徒を預かっている以上、その気持ちだけじゃだめだとも思っていて。学校や役場と足並みをそろえながら、少しずつ実現していきたいなと思っています」



美しい自然があり、地域に必要とされる仕事がある。そんな久米島に惹かれてやってくる人たちは増えており、なんと今では20名近い協力隊が活動しているという。

島内の球美(くみ)中学校で、中学校支援員として働く長井さんもその一人。

中学校に常駐して授業のサポートに入ったり、ほかの支援員と一緒に放課後自習の場やイベントを開いたりしている。

「学力を上げることも大切だけど、まずは小さなことでも『できた!』という感覚を持ってもらいたいと思っていて」

方程式を最後まで書けなくても、途中式までできたことを褒める。他愛ないおしゃべりで長所を見つけたら「いいね」と伝える。その積み重ねで自信をつけてもらえたら、と長井さん。

「放課後自習の場も、ファストフード店に集まって勉強する感覚で来てほしいんです。何か用がなくても、ふらっと行きたくなっちゃうような場所にしたいなって」

先生とはまた少しちがう、お姉さんのような存在なんだろうな。

「島は時間の流れがすごくゆっくりです。教育を変えるんだって姿勢で来ると『どうして授業中にノートも取らないんだ、勉強しないんだ』っていうことばかりが目について、焦りを感じてしまうと思います」

「だから、柔らかなマインドで来ていただけたら。みんな嘘をつくのが苦手な素直で可愛い子たちだし、漁港に行けばオリオンビールと刺身を持ったおじちゃんたちが待っている。のんびりした島ですよ」



島の暮らしはどういうものだろう。移住定住促進を担当する協力隊「島ぐらしコンシェルジュ」の上江洲(うえず)さんに話を聞いてみる。

「コンビニもスーパーもドラッグストアもあるので不自由はしないですよ。習い事もありますし、小児科と内科は常設。あれ? 意外と暮らせるぞって感じる方が多いと思います」

久米島の美しい自然やのんびりとした時間に惹かれ、移住する人は多い。上江洲さんが移住相談を受けてきたこの2年半でも、70人弱が移住を決めている。

島で暮らすうえで、大切なことはなんでしょう。

「人としてきちんとすることでしょうか。島では、良くも悪くもいろんな話がすぐに広まります。たとえば都会では荒い運転をしても、買い物のときに不愛想にしても相手は知らない人。その後も問題なく過ごせると思います」

「でも、島ではみんながどこかで繋がる。いい加減な態度は取れないし、人間性が試される気がして。私も島に来て自分を見直すことがたくさんありました(笑)最初は少し窮屈に感じたけど、自分自身と向き合って成長できる場所なんですよね」

協力隊の任期は残り半年。いろんな人と出会い、生活するなかで、今は島に残りたいと考えていると教えてくれた。



一通り取材を終えてほっと一息ついていると、「お疲れさま」と声をかけられた。

「飛行機の時間まで、島を案内しようね」

そう誘ってくれたのは、役場の平良(たいら)朝春さん。最初に訪れたじんぶん館の館長を務めていて、周りからは朝春さんと呼ばれている。

朝春さんもスタッフを下の名前で呼んで、温かく見守っている。きっとみんなのお父さんのような存在なんだろうな。

車に乗り込み、島内をめぐる。

城(グスク)の跡や、シーサーの工房。子宝に恵まれるというパワースポットに、泡盛の工場、美しい海。

長命草という薬草を食べたり、シークワーサーの葉の香りをかいでみたり、真っ白な砂浜で貝殻を拾ったり。

「今日はちょっと曇りだから…本当はもっと、バーっと青くてね。綺麗なんだよ。次に来るときは晴れているといいねえ」

商店の軒先でアイスクリームをご馳走になりながら、こんな話をしてくれた。

「沖縄本島も離島なんだけど、久米島はそこからまた一個離れた小さな離島なわけで。那覇市がどんどん都会化していくなかで、小さな離島はまた違う存在になっていて」

「言葉や文化は一緒なんだけど、島ののんびりした人間性が色濃く残っているというのかな。地域の関わりもまだいっぱいあるさ。電車もないから、自分の時間で暮らせる」

その島に今、外から新しい住人がどんどん集まってきている。

朝春さんは、どう思ってますか?

「そうだねえ。みんな、都会から来てくれて、それぞれの場所で知恵を絞りながら一所懸命頑張っていて。すごいなあと思う。新しいエネルギーを持って来てくれるから、一緒にいてとても楽しいね」

「彼らもまた、ゆっくり流れる時間と、この自然のなかで仕事をして。島を気に入ってくれていたらいいなあっていつも思っているかな」

美しい南の島。

観光ではなく、そこで暮らし働いていくには、戸惑いや悩みも生まれるかもしれない。

それでもこの島のゆったりとした空気が、すべてを暖かく包んでくれるような気がしました。

(2019/07/03 取材 遠藤 真利奈)

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