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ぼくらの日本を探す旅
東京下町ネオ人情篇

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日本らしさってなんだろう。

それは京都のような伝統的な街並みかもしれないし、渋谷や原宿から生まれるカルチャーシーンかもしれない。

どちらにしても、日本を訪れる人たちは、その場所ごとに出会った人との体験を「日本」だと思って持ち帰っていく。

もしかしたら、今日偶然すれ違った旅行者にとっては、私が「日本」のイメージになっているかもしれない。

今回紹介するのは、そんなふうに自分ごととしてインバウンドに関わる仕事。

株式会社ベステイトが、新しく東京・鶯谷につくるホテル「LANDABOUT東京」のオープニングスタッフとなる社員とアルバイトを募集します。

代表をはじめ、スタッフのほとんどが20代。上下関係やマニュアルよりも、人と向き合って、話し合いながら物事を進めていく姿勢を大切にしている会社だと思います。


話を聞くために向かったのは、博多駅近くのホステル・モンタン博多。築30年のマンションを改装して、住居やオフィスと一体化した宿泊施設として運営しているらしい。

明るいエントランスから中に入り、フロントに声をかける。

中庭もあるんだなあ、と眺めていたら、代表の石橋さんがそれに気づいて「そこで話しましょうか?」と提案してくれた。

石橋さんは現在28歳。会社を立ち上げたのは25歳のときだったという。

「大学3年生の時に一年間休学してカナダに行って、ホステルという仕事に興味がわいたんです。帰国して日本のホステルで4年間働いて、モンタン博多のオープンにあたって会社を立ち上げました」

1軒目がこのモンタン博多、2軒目が東京・鶯谷。これからも宿泊事業を拡大していくのですか?

「そうですね。実はすでに3軒目の話も進んでいます。ただ、僕らの会社のミッションは充実した宿泊サービスを提供することではなくて、日本の魅力を発信して内側から元気にできる仕組みをつくること。ホテル事業はその第一段階なんです」

日本を内側から元気にする…。かなり大きなテーマですね。

「僕もカナダに行くまで深く考えてこなかったんですけど、海外では思った以上に日本のことが知られていなくて。サムライとスシ、みたいな。それはすごく悲しかった」

今回新しくホテルをつくる鶯谷。浅草のように、よく知られた「日本の観光地」とは違う場所のような気がしますが、どんなまちなんでしょう。

「あの辺は東京大空襲の被害が少なかったエリアなので、“古きよき”日本の街並みが残っていて。昔ながらの小さな商店とか老舗の染物屋さんがあったりするんですよ。ベタなワードかもしれないけど、下町人情みたいなものが残っている気がします」

「実は僕、この会社を立ち上げる前に鶯谷のホステルで働いていたんですよ。夕方になると近所のおばちゃんが『あんた!今日も夜勤?』って、家でつくったカレーにラップをかけて持ってきてくれたこともあった。ちょっとガサツで距離が近いんですけど、それもなんか心地よくて」

いかに、そのまちの日常に溶け込めるか。土地に根ざせるか。

そんな視点から内装デザインと飲食店舗運営に携わるのは、HAGI STUDIO。築60年の谷中のアパートをリニューアルした複合文化施設「HAGISO」を手がけたチームでもある。

今回のホテルは300人規模の新築物件。新しさのなかにも下町らしい良さを感じられるように、ハードもソフトも組み立てていく。

観光施設がたくさんある場所ではないから、きっと地域の楽しみ方にも工夫が必要だろうなあ。まちと旅人の間に立つスタッフの役割は結構大きそう。

新しく入る人に期待したいことってありますか。

「目の前のお客さんが、今から日本で何をしたいかっていうことだけじゃなくて、ここに来るまでのプロセスを想像しながら接してほしいんです。誰とどんなふうに計画を練って、服を選んで、荷造りをして、どんな気持ちで飛行機に乗ったのか、とか」

そう考えると、「インバウンド」と一括りにしていた人たちもグッと身近に感じられますね。遠くからわざわざ訪ねてくれる友達みたいな。

石橋さんは普段から周りの人たち、たとえばスタッフに対してもそういう関心を持って接しているんですか。

「ああ、そうですね。僕らスタッフ同士ですごく話します。生い立ちから挫折の経験から…。採用面接も2時間くらいかけるんで、ちょっと暑苦しいと思います(笑)。新しく入る人も、人と話すのが好きっていう人がいいですね」


新しく入る人が現場で一緒に仕事をすることになるのが、支配人の濵田さん。石橋さんとは前職時代からの同僚で、同い年でもある。

新しいホテルの準備はどんな感じですか?

「今は内装の工事中ですね。一ヶ月に一回は東京に出張に行って、様子を見ながら進めていて。そのときに、ホテルの周辺のお店でご飯を食べて、これからよろしくお願いしますって挨拶をして回ったりしています」

「あそこらへんは昔から残ってるようなディープな古いお店とかもあるけど、若い人もお店を出していたりして楽しいまちなんですよ」

周りのお店の人と仲良くなって、連携が図れるといいかもしれないですね。

お互いのお客さんに紹介したり、されたり。

「そうそう。まだ検討段階なんですけど、Tokyobikeさんと一緒に、自転車のレンタルサービスもやりたいねっていう話をしているんです。なるべくまちなかを回ってもらって、まちや日本のことをより深く知ってもらえたらいいなと思いますね」

そのきっかけを積極的に生み出せるように、フロントではチェックインなどの業務のほかに「コミュニティマネージャー」という役割を考えているのだそう。

モンタン博多では、1階のラウンジが交流の場になりやすかったけど、新しい施設ではそのフィールドを建物の外に広げていく。

チェックインしに来たお客さんを、その場でまち歩きに誘い、一緒にぶらぶら散策する。さらに、その様子を写真に撮ってSNSで発信していく。

買い物をしたり、一緒にご飯を食べたり。地元を案内してくれる友達のような存在になれたら、旅行の印象も深まりそう。

「ホテルを運営していくうえで、スタッフのよさって一番妥協したくないんです。インバウンドの対応も多いけど、日本人のお客さんにも同じように関心を持って接するとか、フレンドリーなだけじゃなくて節度を持って接することができるかとか」

「年齢や国籍、性別を問わず、お客さんに喜んでもらうには、どうしたらいいのか。全員で考えて対話しながら宿をつくっていきたい。『一緒につくっていこうぜ』っていう気持ちで入ってもらえたらいいですね」

石橋さんは会社の代表で、濵田さんは支配人。

関係性としては「上司」になるけれど、かなりフラットな組織なんだなという感じがする。その分、上司に頼りきりになるのではなく、みんなで主体的に考えていく必要はありそう。

「そうですね。以前は石橋をはじめ創業メンバーから指示を出して動いてもらう機会が多かったんですけど、最近は料金設定のこととかでもスタッフから意見を出し合えるようになってきたかなと思います」

「うちは本当に話す時間が長い会社なんですよ。業務のことだけじゃなくて、自分の過去も将来も全部。僕はあんまりそういうのを他人に見せないタイプだったんですけど、さらけ出してみると結構気が楽でした」

ホテルで過ごす時間の価値は、人とのコミュニケーションによって変わる。だからこそ、スタッフ一人ひとりが本音で話し合える環境を大切にしているんだと思う。


「大きい会社だったら、オンオフ切り替えて仕事用の人格をつくることができるかもしれないけど、今の当社のような小さい組織では、その人の素の部分が絶対にバレますからね」

そう話してくれたのは、今年の5月にベステイトに入社した束原(つかはら)さん。新しいホテルの立ち上げにも携わりつつ、今後は取締役として会社の経営企画や財務・人事も担当していく。

「代表の石橋とは、もともと高校のサッカー部の同期だったんですよ。ただ、そんなに親しくつるんでいたわけではなくて。僕は安定志向だったし、あいつはどっちかというとアウトローでちょっとタイプも違ったし」

大学を卒業して、束原さんは大手不動産デベロッパーに就職。

転機になったのは、その4年目。社内起業制度に応募したことだった。

「渾身の提案だったんですけど、結果的には会社を説得し切ることができず却下されてしまいました。ただ、それをきっかけに、世の中にないモデルのビジネスをつくることに挑戦したいなと思うようになったんです」

そこで、高校時代の同級生だった石橋さんにコンタクトを取り、前職での財務経理などの経験を生かしてベステイトの経営に関わっていくことに。

「石橋は結構ロマンチストなんですけど、僕はおそらくかなりリアリストで。自分の役割だと思って会社を俯瞰して見ていると、そのことを石橋に指摘されることもあります。『お前はまだ外部のコンサルみたいだな、もっと会社のなかに入ってこいよ!』って」

創業メンバーとは違う視点を持った束原さんが加わることで、採用の方針も変わってきているという。

インバウンドへの接客をただ楽しみたいというよりも、もっと会社の成長を一緒に考えられる人。そのために、メンバー同士で深く議論ができる人。

「僕は正直、新しく社員として入る人は、ずっと鶯谷のホテルにいる必要はないと思っていて。そこをステップにして、自分の目標を達成するくらいの気持ちを持った人でいいと思うんです」

ベステイトは今、創業3年目。1軒目のモンタンも順調だし、2軒目もプロジェクトがはじまったところ。

かなりスピード感を持って事業は進んでいるのに、そんなに先を急ぐのはどうしてなのでしょう。

「たしかに今の宿泊事業としての業績は悪くないけど、石橋もぼくたちも最終的な目標はそこじゃない。日本のよさを発信していくためには、メディアやほかの分野に広げていく必要もある。そう考えると、今の成長スピードでいいのか、つねに不安もあって…」

なるほど…。

「いや、こういうところで僕たちはシリアスに考えすぎて、暗くなりがちなんですよ(笑)。だから、やっぱり新しく入るのは明るい人だとうれしいです。ものごとのいい面もちゃんと見れるようなムードメーカーとか。僕らのお尻を叩いてくれる気の強いお姉さんとか」

あ、それはよさそう(笑)。

つねに真剣に、熱い思いを持った彼らが、鶯谷というディープなフィールドに飛び込んだとき、何が起こるだろう。

ときには愛のある近所のおばちゃんにペースを乱されたり、カルチャーショックを感じたりしながら地域や人との関わりが生まれていく。

ステレオタイプじゃない、日本のリアルな魅力を伝えるために。

彼らと本気で考え、仕事に向き合っていける人を探しています。

(2019/9/5 取材 高橋佑香子)
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