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足元の「そのまんま」を
どうおもしろがるか

※この仕事は募集終了いたしました。ご応募どうもありがとうございました。

地域の人にとって当たり前のものが、外から来た人には新鮮に映ることがあります。

どこまでも続く山や海。大切に育てられた野菜。地元の人しか知らないような美しい景色。

岐阜・東白川村にある株式会社ふるさと企画は、そんな“当たり前”に光を当てて、新しい価値を生み出している会社です。

たとえば、地域の農家さんのトマトを使った無添加・無塩のジュース、豊かな森林資源を生かした薪などの特産品の開発。ほかにも、村の里山文化に触れるさまざまな体験プログラムを企画・運営しています。

今回は、ふるさと企画の一員として働く地域おこし協力隊を募集します。

幅広い仕事のなかでも、主に特産品の営業・PRに取り組む人を求めています。着任後、本人の適正を見ながら、新商品の開発や体験プログラムの企画にもチャレンジできる環境のようです。



名古屋から電車とバスを乗り継いでおよそ2時間半、東白川村の入り口でバスを降りる。

凝り固まった体を伸ばしながら周囲を見渡すと、ずっと遠くまで山々が連なっていて、その合間をぬうように清流・白川が流れている。水は川底の小石がくっきり見えるほど透き通っていてとてもきれい。

この日は川沿いの宿に1泊。布団に入ると、虫の鳴き声や川のせせらぎが聞こえてきた。



翌朝向かったのは、山の上にあるレストラン。

このレストランは株式会社ふるさと企画が運営していて、小さなおみやげ処も併設している。

棚に並ぶのは、りんごや山ぶどうを使った手づくりのジャムに、梅やトマトのジュース、小さな木工品もある。あとでお土産に何か買おうかな、と眺めていると、後ろから声をかけられた。

ふるさと企画の代表、村雲さん。朝から仕事で村内を回っていたそうで、汗をぬぐいながら中に案内してくれた。

「今はもう一人の社員が産休中で。商品の企画や村外へのルート営業も僕一人でほとんどやっていて、けっこう忙しいですね」

そう話しながら、「これがふるさと企画の管理する施設と、商品です」とパンフレットや商品を机に並べる村雲さん。

パンフレットには、文化ホール、野球場、コテージや合宿施設などがずらりと並んでいる。先ほどのジャムやジュースもふるさと企画の商品だそう。

体験プログラムや特産品などいろいろな仕事を手がけている、と事前に聞いていたけれど、まさかこんなに幅広いなんて。驚きです。

「ほかにも社員研修やスポーツ少年団の受け入れとか、美濃焼の体験とか、いろいろやっていますよ。そういえば、うちのトマトジュースはもう飲まれましたか?」

あっ、お店に並んでいたものですか? まだいただいていないです。

「じゃあぜひ飲んでいってください。うちのヒット商品なんですよ」

コップに注いでもらったジュースは、きれいな朱色。少しとろみがあって、口に含むと生のトマトそのままの味がする。

うん、とてもおいしいです。

「そうでしょう。これは『とまとのまんま』って商品で、桃太郎というサラダ用トマトだけでつくっているんです」

村の周辺で生産されているトマトは、大手ハンバーガーチェーンの商品で使われていたそう。ただ、熟し過ぎたトマトや形がいびつなトマトは商品にならなかった。

そこで規格外になってしまったトマトを買い取り、ジュースとして商品化したのが“とまとのまんま”。

「着色料や保存料をまったく入れていない、無添加ジュースです。健康志向の方を中心に安定して売れていて、今は近隣市町村の道の駅やマルシェ、あとは岐阜の高島屋さんや名鉄百貨店さんにも卸しています」

「以前、テレビ番組『料理の鉄人』のシェフとお会いしたことがあって。そのときにこのジュースを飲んでもらったら『すごくおいしい、自信を持って売りなさい!』と言ってもらったんです。うちのトマトジュースは、どこに出しても負けないと自負しています」

村にある素材を使って、特産品をつくる。これがふるさと企画の一つ目の柱だ。

この会社ができたのは30年前。村民と村役場、森林組合、商工会などさまざまな団体が出資して、村ぐるみで立ち上げた第三セクターだ。

「僕たちはこの会社を、村おこしの会社だと説明していて」

村おこしの会社、ですか?

「はい。『東白川村っていいですよ』って言うだけじゃ、外の人には全然通じないんですよ。『あっ、合掌造りの? いいですよね』って。いえいえ、そっちは白川村で、うちとは遠く離れているんですよって(笑)」

ああ、実は私も、村を訪れるまで白川村と勘違いしていました…。

「そうですよね。東白川村がどこにあって、どんな人たちが住んでいて、どんなものがあるのかって、全然イメージできないと思うんです。だったらうちがその第一歩をつくることで、こんな村なんやってわかってもらえるといいなと思っています」

ふるさと企画では特産品の販売や宿泊施設の運営のほか、村をフィールドにした体験プログラムも提供している。これが、会社の2本目の柱。

初夏のお茶摘み、山菜採り体験、夏はアユ釣り、秋は栗きんとんづくり… 季節によってさまざまな表情を見せる村を楽しんでほしい、と考えているのだそう。

「これだけ長く続けていると、家族連れで来ていたお子さんが、今度は自分のお子さんを連れてくることもあって。ああ、覚えていてくれたんだってすごく嬉しくなりますね」

今回募集するのは、ふるさと企画で働く地域おこし協力隊。

村雲さんは、「新しい目線で、この村の魅力を発信してほしい」と話す。

以前こんなことがあって、と里山ウォーキングのガイドをしていたときの出来事を教えてくれた。

「田植え前の田んぼに水が張ってあったんですけど、そこにおたまじゃくしの卵、おたまじゃくし、足の生えたおたまじゃくし、尻尾の生えたカエルがいたんですよ。カエルの変態が全部見れたんですね」

「そしたら東京から来たみなさんが、30分くらいそこから動かずに、すごいすごい!って。僕なんかカエルになる途中のおたまじゃくしなんていっぱい見ているし、大したことないのに、って思っていたんです」

たしかに都会で暮らしているとあまり見られない光景。参加者さんたちの気持ち、わかるなあ。

「そういうのって、ずっと住んでいる僕だったら気づかないんですよね。僕たちがない頭をひねって考えるより、まっさらな感覚の人が『これいいね』って自然に思えるものを企画したり、発信したりしたほうがいいんじゃないかって」

「とくに今は、インターネットで世界中とつながれる時代です。新しく来てくださる方には、この村の魅力をSNSやホームページを通してどんどん発信してもらえたら嬉しいですね」



具体的にはどんな仕事をすることになるのか。話を聞いたのは、東白川村役場の高橋さん。村営のECサイトやイベントの運営を通じて、ふるさと企画にも関わっている方だ。

「今回募集する方には、主に特産品の営業・PRを担っていただけたらと思っています。商品を通して、どんな村なのか、どんな人がどんな思いでつくっているものなのかをしっかり届けるイメージですね」

たとえば主力商品のトマトジュース。周りの市町村も同じような価格帯と似通ったデザインで出品していて、あまり差別化ができていないそう。

「たとえば農家さんにインタビューをしてホームページやSNSで伝えたり、顔が見えるようなポップをつくったり。つくり手の方々を巻き込みながら、見せ方をプロデュースできるといいかもしれません」

ただ、見せ方を変えるだけでは伝わりきらないこともあると思う。何か、+αの工夫が必要になりそう。

高橋さんは、過去のあるエピソードについて聞かせてくれた。

「2年前の6月に、道の駅でお茶の販売を担当したことがあって。例年は熱いお茶を出していたんですけど、30度近くなる日もある季節だから、冷たい水出し煎茶を出したらどうだろうと思って。実際に僕が店頭に立って、お茶を淹れながら接客してみたんです」

毎回お茶の種類を変えたり、水出しのお茶の淹れ方を伝えたり。お客さんの反応を見ながら、臨機応変に伝え方を工夫してみた。

「そうしたらお客さんも興味を持ってくれて、お茶と一緒に並べていたボトルまで購入してくれる方が多くいらっしゃって。結果的に、前年の同時期と比べて売上も100万円ほど上がったんです」

アイデアと見せ方次第で、お客さんの反応も、売上も目に見えて変わっていく。

こんなふうに、ひと工夫によって売上をあげていくのが、今回募集する人の主な仕事。新しく商品を企画・開発するというより、今ある素材や既存の商品にいろいろな角度から光を当てて、どうしたらその魅力がより伝わるか?と考えていくような役割になる。

今のところ、ふるさと企画の営業を担っているのは社長の村雲さんひとり。各自で動く時間がほとんどだろうし、手取り足取り教えてもらうことはなかなか難しい。フットワークの軽さと自主性が大切になってくるはずだ。

ただ、営業やPRの経験は必須ではないし、新しく来る人がこれまで培ってきた強みやスキルを活かすことも十分できると思う。



そしてもうひとつの事業の柱である体験プログラム。こちらは主ではないけれど、既存のプログラムの運営に携わったり、仕事が回るようになってくれば、新たな企画の発案や運営にも関わったりできるかもしれない。

そこでご紹介したいのが中野さん。

地域おこし協力隊の任期を終えたのち、自分の木工ブランドを立ち上げて、今はふるさと企画のアルバイトと二足のわらじを履いている。

アルバイトの業務としては、トマトの輸送やジュースの配達がメイン。それと並行して、新しい体験プログラムの企画を進めているそう。

「社長の発案で、村の林道を使ったトレイルランニングを企画しています。最近は準備のために、協力隊や村の人たちと一緒に道の整備や草刈りをしていて」

「そこで新しい交流が生まれたり、地主さんが『うちの山を使ってくれて嬉しい』って言ってくれたり。こんなふうに、企画を通して人や気持ちの動きが生まれるのがすごくいいなって思っています」

“当たり前”だったものに、スポットライトが当たる。

それは外から来る人が村に興味を持つきっかけにもなるし、村に住む人たちにとっての喜びや誇りにもつながるのだと思います。

社長の村雲さんが話していたように、ふるさと企画は「村おこしの会社」です。ただ、はじめから「この村をなんとかしなくちゃ」と覚悟を決めなくてもいいのかもしれません。

まっさらな視点で、この村にあるものをどうおもしろがるか。とことんおもしろがることが、結果的に村のためにもなる、そんな仕事だと感じました。

(2019/9/9 取材 遠藤 真利奈)

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