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垣根なんてなくてもいい
高校生も大人も集う
学びのステーション

※この仕事は募集終了いたしました。ご応募どうもありがとうございました。

教室で机に向き合って、教科書をひらいて…。

学ぶということは、きっとそれだけじゃない。

家族以外の大人と話したり、自分の好きなことをとことん追求したり。そんな、一人ひとりに合った学びの形があっていいんじゃないかと思います。

北海道・白糠町(しらぬかちょう)。釧路市のお隣、山と海に囲まれた自然豊かな小さな町に、町営塾『久遠塾』はあります。

町で唯一の道立高校である白糠高校に通う生徒たちのために設立されたこの塾。学校の先生や地域の大人たちとの関わりのなかで、高校生自らが自分の未来について考えていくような学びの場をつくっています。

今回は、この塾で働くスタッフを募集します。



羽田空港を飛び立った飛行機は、1時間半かけて釧路空港に到着する。

飛行機を降りると、ひんやりとした空気に包まれた。気温は1度。前日まで雪の予報だったけれど、外は気持ちよく晴れている。

出口へ向かうと、こちらに手を振る人影が。

久遠塾の塾長、上内智英さんだ。

車に乗り込み、いざ白糠へ。

上内さんにお会いするのはおよそ一年ぶり。前回の取材は、塾が始まって半年というタイミングでした。

「ああ、もうそんなに経つんですね。この一年で、塾もいろいろ変わりました」

生徒数がゆるやかに減り続ける白糠高校を、子どもたちにとって魅力ある学校にしたい。

そんな想いから一年半前に生まれた久遠塾。

塾は、白糠高校の生徒であれば誰でも通うことができる。進学を希望する生徒も、就職を考える生徒も、塾をふらっと訪ねていたっけ。

「そうそう、塾生がまだ数人のころでした。あれから中学生にお試しで塾を利用してもらったり、2年生が1年生を連れて来てくれたりしたおかげかな。今では全校生徒の三分の一が利用してくれています」

おお!大きくなりましたね。

「実は、学校の先生がすごく協力してくれて。学校の授業もお手伝いできるようになったし、今まで使っていた公民館のスペースに加えて、高校の空き教室も塾として使えるようになったんです」

「もうすごく賑やかですよ。今日も学校のほうで生徒が待っているはずです。昨日『撮影があるなら、みんなも連れてくるわ!』と言っていたので(笑)。よければ顔を見ていきませんか?」

はい、ぜひお願いします!



車は30分ほどで白糠高校に到着する。

放課後を知らせるチャイムが鳴ると、廊下はわっと賑やかに。

塾の教室で待っていると、ガラガラと扉をあけながら「こんにちは〜」「あっ、カメラだ!」と生徒たちが入ってきた。テスト前ということもあり、席はあっという間に埋まっていく。

基本的に自学自習のスタイルをとっている久遠塾。みんな、教科書やプリントを広げて、思い思いに勉強を始める。

「先生、ここわかんない!」「うわっ、やばい。もっと早く勉強すればよかった」

教室のあちこちで声があがる。

上内さんはその一人ひとりを回って、「どの問題?ああ、これはね…」「すごい、前よりできるようになってるじゃない」と話している。

そういえば私も、こうやって放課後にみんなで集まって勉強していたなあ。

自分の高校時代を眺めているようで、ちょっと懐かしい。

生徒が帰って静かになった教室で、あらためて上内さんと話す。

「この一年半、毎日こうやって子どもたちの学習サポートをしながら、手探りでいろんな取り組みをしてきました」

好きなことをしている大人の姿を見せたいと、スタッフの得意な科目を生かして地理や美文字の講座をひらいたり。

『白糠の子供たちに、町の仕事をもっと知ってもらいたい』という商工会青年部の声を聞いて、町で働く大人をゲストに呼ぶ講座も共同で企画した。

生徒のなかに引きだしが増えるかもしれない。そんな思いで、思い浮かぶアイデアはできるだけ形にしてきた久遠塾。

「そのうちに、あれ、ただの塾じゃなくなってきてないか?って思うようになって」

ただの塾じゃない。それはどういうことだろう?

上内さんが教えてくれたのが、“白糠の仕事人”という企画。

今年度一人目の“仕事人”として、町内のチーズ工房「酪恵舎(らくけいしゃ)」の代表、井ノ口さんをゲストに迎えたそう。

「実は今回、生徒が自分で『あんなおいしいチーズをつくる井ノ口さんの話を聞きたい』って呼んできてくれたんです」

「白糠の仕事人って、去年は僕らと商工会青年部で進めて、生徒はお客さんって立場だったんです」

「それが、生徒自身でアポイントを取って、井ノ口さんも、いいね!と快く引き受けてくださって。当日の進行、まとめのレポートまで、その生徒がやったんですよ」

チーズづくりのこと、人生のこと。生徒のレポートを見せてもらうと「怖い人だと思ったけど、すごく面白かった!」と興奮気味な文字が並んでいた。

「僕たちが勉強を教えるだけじゃない。学校と地域、高校生と大人。いろんなものをつなぐ学びのステーションになれるのかも…ってイメージが湧いてきて」

高校生は、地域の大人の背中を見て。大人は、高校生との会話を通じて。

年齢や立場を超えて、お互いに学び合う場ができつつある。

「生徒や地域と一緒に、もっとこんなことをやってみたい!とか。立ち止まって振り返る暇もなく突っ走っている感覚があるんですよね」



続いて話を聞いた塾スタッフの片岡明日香さんも、互いに学び合う姿勢で生徒に向き合ってきた方だと思う。

中学校の国語の先生として働いていた明日香さん。当時から抱いていた想いがあったそう。

「漢字や文法には正解があるし、それ以外の部分でも押さえてほしいポイントもあります。でも“教える”っていうのはちょっと上からというか、偉そうな気がしていて」

「私はそれよりも、生徒と一緒になって、ああでもないこうでもないって考えることが好きで。『あ、その考え方もおもしろいね!』って話せるのがすごく楽しいなと思っていました」

もう一つ感じていたのは、生徒が自分の言葉で考えを表現する機会の少なさ。

久遠塾でも、「この答えでいいですか?」「こう書いたらダメですか?」と確認する生徒が多いと感じたそう。

「じゃあ、正解や不正解がないことに対してなら、自分の考えを表現しやすいかなと思って。全10回に分けて、自分の言葉で表現するゼミを今やっています」

まずは「犬派?猫派?」「自分の命日と自分の死に方、知りたくないのはどちら?」などの2択問題や、自分の好きなものを100個出すチャレンジなど、考えやすいものから。

徐々に複雑なテーマも取り入れていった。

10月のテーマは、森鴎外の『高瀬舟』のビデオを見て、「病気に苦しむ弟の自殺を手助けしたと話す兄を、あなたならどう処罰する?」というもの。

「島流しや追放が妥当だっていう子もいて。高校の先生も入ってくれたんですけど、『お兄ちゃんが嘘をついていたら?真実はわからないし、極悪人だったら大変だよね。死罪でもいいのかもしれない』って話にもなったり」

なるほど、たしかに…。これは大人でも考え込んでしまうかも。

「生徒も大人も関係なく、一緒になって自分の考えを出しあって。学校の先生たちも『みんなこんなことを考えていたんだ。知らなかった』って言ってくれました。何より、私たち大人が想像する以上に、生徒たちはちゃんと自分の考えを持っているんだって、すごく感じて」

「大人なのに、と思われるかもしれないけれど、私は生徒一人ひとりと同じ高さの目線で歩きたいんです。隣でコツコツ種を蒔いて、生徒のなかに芽吹くものがあれば、一緒に試行錯誤しながら育てていけたらなって」

一人ひとりに誠実な明日香さんだからこそ、生徒も本音をのぞかせてくれるんだろうな。

「進学を目指す子も増えてきました。学習サポートと、私たちが生徒たちと一緒にやりたいこと。限られた時間で、どうしたらみんなにとって意味のある時間になるだろうって、最近は考えていて」

「塾をきっかけに、『私、これやりたい!』って思える何かを見つけてくれたらいいなって思うんです。いろんな種類の種を蒔けるように、私自身がネタ切れにならないようにしないと(笑)。やっぱり私は、みんなにとって愉快で身近な大人でありたいなと、あらためて思っています」



そんな久遠塾に、半年前、新たな仲間が加わった。

野木多久哉(たくや)さん。すっかり塾に馴染んでいるようで、この日もあちこちで生徒に呼ばれていた。

教育大学を卒業後、青年海外協力隊としてラオスの小学校で働いていたというユニークな経歴を持つ野木さん。

その後民間企業で働きながら、いつか教育の道に進みたい、と考えていたタイミングで久遠塾を知り、応募を決めたそう。

「もっとみんな勉強ぎらいなのかなって想像していたんですが、全然そんなことなくて。勉強の仕方が分からないだけで、『こういうふうに勉強してみたらどうかな』って提案したら、やってみます!って受け止めてくれる生徒が多いです」

「みんな、すごく成長できる可能性を持っていると思うんです。勉強しなさい!じゃなくて、一人ひとりの話を聞いて、思い描いた道に進むためのサポートをしてあげたいと思っています」

新しく入るスタッフも、まずは生徒とコミュニケーションをとることから。学習支援に携わりつつ、いずれはいろんな企画も考えていけると思う。

野木さんは、どんな人に来てほしいですか?

「そうですね… 塾のスタッフで話しているのは、お母ちゃんみたいな人でもいいねって。元気な生徒が多いので『あんたたち何してるの!』って言えるような(笑)」

ああ、たしかに。塾の穏やかな雰囲気に、ちょっとしたスパイスになるかも。

「英検を受ける生徒も増えてきたので、できれば英語ができると嬉しいです。教えた経験はなくても大丈夫。素直な生徒たちなので、気負わずに来てください」



塾が生まれて一年半。

それぞれ試行錯誤しながら前に進んでいくスタッフの皆さんを頼もしく見つめるのが、教育長の川島眞澄さん。

民間の学習塾と提携して、小学校のなかに放課後学習の場をつくったり、全国でもいち早く中国語の授業を取り入れたりと、教育に力を入れている白糠町。

ただ、道立の高校と“町”が連携するのは簡単なことではない。上内さんたちスタッフと先生は、少しずつ信頼関係を築いていった。

「いまや久遠塾に町の大人や先生たちが関わってくれるようになって。白糠にはかっこいい大人たちがいるんだ、ってことを高校生に伝える場になっているんですよね。それってすごく大切なことだと思うんです」

久遠塾の存在は、町のなかでも少しずつ認知されてきている。先日塾でひらいたイベントには、町の大人たちが50人も集まってくれたそう。

これから町ぐるみで、もっといろんなことができると思う。

「もし応募に迷ったら、まず遊びにおいでと言いたいです。そのときに塾に寄って、教育長室にも寄ってください。一緒にどんなことができるか、ぜひ話しましょう」

教える対象としての“生徒”ではなく、一人の仲間のような。スタッフの皆さんのまなざしが印象に残っています。

生徒と一緒に、町とともに、この塾でどんな学びができるだろう。

そうワクワクできる人なら、きっと気持ちよく働けると思います。

(2019/11/15 取材 遠藤真利奈)

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