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日本仕事百貨で働いていてよかったなと思うこと。
もちろん、いろいろありますが、ひとつは美味しいご飯が食べられることです。
東京・清澄白河の「リトルトーキョー」は5階建てのビルで、4階がぼくたちのオフィス。2、3階はイベントスペースで、1階に「ごはんや今日」というお店があります。このお店のランチを半額で食べられるのが、会社の福利厚生のひとつになっていて、カウンターがスタッフで埋まることもしばしば。
ランチは週替わり定食1種類のみ。これが楽しみで毎週会社に来ている、そんなスタッフもいるみたい。
今回は、このごはんや今日で一緒に働く人を募集します。具体的には、調理経験があって、ゆくゆくはランチ営業の主軸を担ってくれるような人に来てもらえたらうれしい。
2020年、新生・ごはんや今日としてどんなチームでスタートを切れるか、ワクワクしながらこの記事を書いています。
平日の夕方、リトルトーキョー1階のごはんや今日へ。
まずはここを切り盛りしている女将の高橋さんに話を聞く。傍らには、石焼き芋。お店の前を通りかかって思わず買ったそう。
「兄さん、食べながら話しましょう」
寅さんと落語を愛する高橋さん。江戸っ子っぽいけれど、生まれは福島県。高校生までソフトボールをやっていて、体育会気質なところもある(本人談)。
お店の雰囲気にも、その人柄が表れているなあと感じる。
「今回はがっつり料理ができる人を募集したくて。ある程度要点を伝えたら仕込みを任せられたり、献立を自分で考えたり。お昼をメインでガンガン回してくれるような人に来てもらいたいんですよ」
ごはんや今日の営業日は、金〜日曜の昼と水〜日曜の夜。
8月まで夜の専属スタッフとして働いていた土井くんが卒業してからは、高橋さんが昼夜ともに中心となってお店を回していて、正直かなり忙しそうだ。
新しい体制をつくっていくにあたって、今回募集する人は大事なポジションを担うことになる。
ランチは「今日食べたいものをつくる」がテーマの週替わり定食。
食材の生産者さんと一緒に特集企画を立てることもあって、10月は「新米月間」。田植えや稲刈りにも参加するなど、仲良くさせてもらっている「お米農家やまざきさん」の新米のおともがずらりと並ぶ。
この週は、家庭的なおいしさと上品な味わいが楽しめる明太子2種、明太子入り卵焼きやポテサラなど、明太子づくしの定食だった。
「よくお店に来てくれる女の子で、明太子がめちゃ好きな田口めんたいこちゃんって子がいてね。今度の週末は昼間っから夜まで、明太子をツマミに呑める『めんたい酒場』を一緒にやるんですよ」
こんなふうに、高橋さんは人との縁をつなぐのがうまい。そのほかにも、梅しごとや味噌をつくるワークショップを開いたり、日本仕事百貨のスタッフが出張先で買ってきた食材を定食に取り入れたり。
高橋さんを起点として、いろんな企画が生まれている。
「新しい人が来たら、わたしは裏方に回ってワークショップとか物販をもっとちゃんとやっていきたくて。そのためにも、わたしがいなくてもちゃんと運営できる仕組みを考えないといけない」
レシピを共有したり、オペレーションを改善したり。どのメンバーでも回せるように、これまでも工夫を重ねてきたものの、そう簡単にはいかないらしい。
「レシピ通りにつくっても、味が違うんですよ」
それは、なぜ?
「たとえば水気。ほうれん草を茹でて和えものつくるにも、絞りが甘くて味がぼやけちゃったり、夏と冬で野菜の水分量が違ったり。そこは正直、感覚でしかわからないところで」
「だから、味のすり合わせを今やっていて。細かい微調整までメモするとか、実際に食べてフィードバックするとか。ゆくゆくはね、そこまで全部考えて回してくれる人が来てくれたら最高だなって思ってる」
もともと和食の修行を積んできたわけではないという高橋さん。
大学卒業後、まず入ったのは小さな飲食店。100種類以上のカクテルを揃え、お客さんからの要望も高い。「オペレーション命」の現場だったそう。
そのあとに勤めたのは雑貨屋さん。いいものを見る目はここで身につけた。
「飲食と雑貨の経験が、今の価値観のもとをつくっていると思う。でも、和食はここに来て1から勉強しました」
入社当時、ごはんや今日の構想は白紙の状態。週替わりの定食なのか、そもそも和食なのかすら、詳しいことは決まっていなかった。
「最初は朝4時に起きて、始発ちょい前に家を出て。勉強して、仕込みして、つくって…を繰り返して」
「そんな自分のレベルで、お金をいただいて料理を出すことは申し訳ないと思ってたんですよ。前の仕事の経験から、中途半端にやってもお客さんがつかないことはわかってたしね」
はじめは仕入れ先のあてもなかったから、築地市場まで買い出しに行って、食器もできるだけ価格を抑えつつストーリーのあるものを選んで。
周辺のお店も食べ歩き、価格帯や定食のテイストなど、1からつくっていった。
「基本、仕事のスタンスとして楽しくやるのが大事。人から言われてやる仕事は楽しくないと思ってて」
高橋さんにとって“楽しい”ってどういうことだろう。
そう尋ねると、ある一組のカップルとのエピソードを教えてくれた。
「なんで来てくれたんですか?って聞いたら、『次の日が彼女の誕生日で、今日は彼女のやりたいことを全部やる日なんです』って。そんな日にわざわざこの店を選んでくれたんだ、と思って」
そこでピピッ!とひらめいた高橋さん。食後、メロンソーダに花火を添えて、サプライズで誕生日をお祝いしたそう。
最後はチェキで記念撮影。ふたりともとても喜んでくれたという。
「最近気付いたのは、わたしはお客さんの“うれしいスイッチ”を押したいんだなって」
うれしいスイッチ。
「目の前の人は、その日しかお店に来ないかもしれないじゃない?もしそうだとしても、ここに来て『いい一日だったな』って思ってもらえたらいいなって」
いつもサプライズができるとは限らない。でも、食材や生産者さんの話を添えて料理を提供したり、ちょうどいいタイミングでお茶を出したり。ちょっとしたことの積み重ねで、心地いい時間はつくられていく。
「楽しいことを続けてると、楽しい人たちが集まってくるし、楽しい話も舞い込んでくる。でも甘えにはなりたくない。やるときは本気でやるし、楽しいと思えるまでに努力は絶対に必要だと思ってます」
これから入る人も、そのスタンスを共有できる人でないと、一緒に働いていて辛くなってくると思う。
「これもわたしの変なこだわりなんだけど、ご飯とかもただ盛るのは嫌で。おいしく盛ろうと思って盛ると、見た目ではわからなくても、刺さるものがある気がする。忙しいと、どうしても雑になりがちだけどね」
昼の営業の主軸を担えるようになったら、少しずつ夜の営業のシフトも経験してほしい、と高橋さん。
それにも理由があるそう。
「昼と夜、どちらもわかっているとファインプレーが生まれやすいのよ」
ファインプレー?
「たとえば、手が空いたら夜のために仕込んでおこうとか、昼のためにここまで掃除しようとか。息がぴったり合ってくると、楽しいし気持ちいい。これってサービス業においてすごく大切な精神だと思う」
そんな話を頷きながら隣で聞いていたのが、アルバイトスタッフの千葉さん。
「昼と夜のスタッフは、直接顔を合わせる時間が短いからこそ、ちょっとした気遣いが大事なんですよね」
1年前に入社した当初は、夜のシフトに入っていた千葉さん。今は昼メインで、ときどき夜もサポートするような働き方をしている。
「正直に言うと、最初は日本仕事百貨がキラキラして見えて、憧れみたいな。夜のスタッフ募集を見つけて、お酒も飲めないのに甘い考えで応募して」
食べることは好きだけど、飲食の経験はまったくなかった。
「面接のときに『漫画のワンピースみたいな、日本仕事百貨の一味になりたいです!』って言ったんです。そしたら高橋さん、全然笑ってくれなくて(笑)。しゃんとしなきゃ、って」
(笑)。そのとき、高橋さんは何を思ったんですか。
「ちょっと昔のわたしに似てるなと思って。ふざけて場を和ませようとする感じ。でも話していて、めっちゃ素直でいい子だなっていうのはわかったから、そのヘラヘラした感じは絶対にやめたほうがいいなと思って」
たしかに、この1年で千葉さんの雰囲気は結構変わったように感じる。日々、カウンターをはさんでいろんなお客さんと向き合う経験も、関係していると思う。
「基本はまず高橋さんの真似から入って。少しずつ、自分でも考える癖はついてきたかなと思います」
6月からはランチの仕込みに入っている千葉さん。今回募集する人も、最初の3ヶ月はアルバイトとして現場に入ってもらうので、千葉さんの働き方が参考になるかもしれない。
一日の大まかな流れはどんな感じなのだろう。
「ここに来たらまず、その日やることをリストアップして、水木は10時から17時までひたすら仕込みですね。魚の日は大変です。あと、今は練習も兼ねて、わたしがお昼のまかないをつくっています」
「金土日の営業日は、9時半に来て掃除したり、セッティングしたり。12時にオープンして、15時に閉めたら、小鉢とか夜のおつまみの仕込みを手伝って、時間があるときは掃除をして17〜18時に帰る、という感じです」
今や、食材の発注やSNSでの広報をすることもある。
そういえば、今年の2月には“いぶりがっこ月間”も企画していたよね。
「そうですね。おいしくて、ストーリーがあって、手軽に出せるおつまみがあるといいよねって。そんな話をした数日後に、居酒屋でいぶりがっこクリームチーズを食べて、これだ!と思って。秋田県が名物だって調べて、役場にご連絡して」
すごい、そんな経緯があって。
「そしたら電話に出られたのがすごくやさしい方で、案内しますよって話になり。秋田まで実際に行って、仕入れさせていただいたんです」
その後、いぶりがっこクリームチーズは定番メニューに仲間入り。リトルトーキョーに農家さんを招いてイベントを開くなど、いい形で関わりが続いている。
イベントや日本仕事百貨での求人に関連して、リトルトーキョーにはいろんな人が訪れる。その人たちとの出会いも楽しみややりがいになるだろうし、新しい人や食材との出会いも、自分から動いてつくることができる。
そういう意味でも、この環境は面白いと思う。
3年前にはまったくの白紙からはじまったごはんや今日。
「ここに来ればおいしいご飯が食べられます!」と、胸を張っておすすめできるお店に成長してきていると思います。
設備も、運営体制も。まだ整えていくべきことはたくさんありますが、これから一緒にこの店をつくっていってくれる人との出会いを、楽しみにしています。
(2019/10/17 取材 中川晃輔)