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ほっとする気持ちよさは
引き立てあうこだわりから

「料理はもちろん、それに使う食材や調味料、うつわ。職人さんの和菓子や、自家焙煎しているコーヒー…」

「いろんなものに、少しずつでもこだわることで、毎日が気持ちよくなる。『ぶどうのたね』は、そんなことを実感してもらえる場所なんだと思うんです」

ぶどうのたねは、もともと呉服店を営んでいた田中あかねさんご夫婦が、福岡県うきは市の一角につくった8つのお店からなる場所のこと。

カフェにギャラリー、生活雑貨店、和菓子店、コーヒーの専門店などなど、周辺の自然を感じながらお店めぐりができるような、こだわりの詰まった小さな商店街のようなところです。

今回は「ぶどうのたね」のひとつ、「Cafe’坂の下の店」のキッチンスタッフ、ホールスタッフを募集します。

自分たちの目の届く範囲で、最初から最後までこだわりをかたちにしていく。このまちの、この場所だから実現できることがあるような気がします。



羽田空港から飛行機に乗り、福岡空港へ。

うきは市は福岡県の南部、福岡空港から車で1時間ほどのところにある。

このあたりでは、豊かな川が流れる扇状地という地形を活かして、柿やぶどう、いちごなど、1年を通してさまざまな果物や野菜を栽培している。中心部には重要伝統的建造物群に指定されている宿場町があり、歴史も深い。

広い平野と果樹園を横目に車を走らせると、「ぶどうのたね」と書かれた看板が見えてきた。

全部で8つあるお店は、山の上の神社へと続く坂道沿いに点々と並んでいる。坂道の両側には果樹園や畑があり、お店をめぐりながら山里の空気を感じることができる。

その坂の一番手前にあるのが、「Café’坂の下の店」。

3年前にオープンしたというこのお店。

広々とした店内には、陽の光がたっぷり入ってきて気持ちいい。ランチタイムが終わって少し落ち着いた時間帯に、お店の一角で話を聞かせてもらう。

まずは、ご主人と一緒にこの「ぶどうのたね」を立ち上げた田中あかねさん。

「わたしたちはもともと、福岡市内で呉服屋さんを営んでいたんです。30年ほど前に子どもができて、自然豊かなところで子どもを育てたいねという話になって、主人の地元だったうきはに移り住みました」

とはいえ、知り合いも少ない新たな土地でのスタート。どうやって仕事をしていくかという不安はもちろんあった。

「でもなんていうか…この土地の気持ちのよさというか、空気のよさがすごく魅力的だったんですよね」

空気のよさ、ですか。

「そうそう。土地が好きになったというか。こんなに気持ちのいいところないよねって。うきはでも呉服屋をやりたかったんですけど、いきなり始めてもお客さまが来ないかもしれない。まずはいろんな人に知ってもらおうと、うつわや洋服を販売するギャラリーを開いたんです」

気に入った作家のうつわなどを集め、年に4回ほどのペースで展示会を開催。その評判が口コミで広がり、お客さんも回を重ねるごとに増えていった。

「想像以上にお客さまが来てくれるようになって。来てくれた人も『この場所が気持ちいい』って言ってくれるんですよね。私が感じた感覚は、ほかの人も感じていることなんだって、そのとき思って。なんだか安心したんです」

その後、せっかくなら来てくれた人がゆっくりお茶できる場所をつくろうと、ひとつめのカフェ「Café’たねの隣り」をつくったのが、20年ほど前のこと。

そこから、素材にこだわった手づくりの和菓子を販売する「和菓子葡萄家」や、着尺からお客さん一人ひとりに合わせて選ぶ「きもの田中屋」、自家焙煎珈琲店「Zelkova Coffee」など。少しずつ新しいお店を増やしていった。

そして3年前にできたのが、今回スタッフを募集する「Café’坂の下の店」。

「ひとつめのカフェ『たねの隣り』が、季節によっては平日でもすごく並んでいただいて。お待たせして結局入れない、っていうこともあったんです。こんな田舎に来てもらってそれは申し訳ない。もう一軒カフェをつくろうということで、生まれたのが『坂の下の店』でした」

ぶどうのたねを訪れるお客さんは、遠方から来る人が多い。福岡県内だけでなく、佐賀や大分など県外から訪れる人も多いという。

「こんな立地なので、通りすがりで来る人は少なくて。ぶどうのたねのために、わざわざ遠くから来てくださる人が多いんです。福岡市内からでも高速を使ったら往復で3千円弱かかってしまうし、そのうえでランチやカフェを利用していただく」

「お金と時間を使って来ていただいているぶん、クオリティの高いものを提供して、もう一度行きたいって思ってもらえるようなおもてなしをする。それは、わたしたちがずっと心がけていることですね」

たとえば、毎日の掃除。ぶどうのたねでは毎朝、それぞれのお店のスタッフ全員で外を掃除しているそう。

「坂道に1枚の葉っぱも残さないくらい、掃除は徹底してるんです。田舎だからこそしっかり手をかけてきれいにして、お客さまに気持ちよく過ごしてもらいたくて」

日々の些細な気づきや感じたことも、スタッフ同士で共有している。

「最近、掃除のときにフジバカマの花が咲いてるのを見つけたんですよ。アサギマダラっていう蝶も飛んでいて。季節の変化や自然の美しさを日々共有していると、働いている私たちも気持ちよくなれると思うんです」

ちょっとした工夫や心遣いが、気持ちのいい空間をつくる。

そんな田中さんの考え方は、カフェのフードメニューや働き方など、随所に表れているように感じる。



次に話を聞いたのは、あかねさんの次男でキッチンスタッフとして働く田中康啓(やすひろ)さん。カフェのオープニングから中心になってメニューを考えてきた。

本職は寿司職人だという康啓さんは、来年から、うきは市内で自分の寿司屋を開くことが決まっている。

「坂の下の店で働く前は、7年間寿司職人になるための修行をしてたんです。ちょうど修行が一区切りしたときに、お店が新しく建つっちゅうことで帰ってきて、手伝い始めました」

同じ食べ物を扱う仕事とはいえ、お寿司とはかなり異なる食のジャンル。戸惑いはなかったんでしょうか。

「最初はかなり苦労しましたよ(笑)。ランチを長い間やってきた『たねの隣り』があるので、そこのスタッフにも協力してもらいながらメニューを考えたり、調理方法を学んだりしていって、だんだん慣れていった感じですね」

ふたつのカフェでは、それぞれのスタッフがメニューを考えて提供している。共通しているコンセプトは、「食べてほっとする、気持ちがいいもの」。

季節ごとの旬の味覚を楽しんでもらえるように、材料にはうきは産の野菜や果物をたくさん使用している。

ランチの中心メニューは、「坂の下のごはん」という月替わりのコース料理。メイン料理に副菜、季節のサラダ、ごはん、お味噌汁、そして食後のコーヒーとデザートという組み合わせ。

「今の季節は流川れんこんっていう、この地域でしか収穫できないれんこんをメイン料理に使ってます。でんぷん質が強いので、お餅みたいなモチモチ感があるんですよ」

「そのモチモチを生かすために、擦ったものを蒸しあげてまんじゅうとして出してます。れんこんの先っぽのほうは少しシャキシャキ感があるので、きんぴらにして。どう料理するのがいいのかも食材によって変わるので、ベテランのスタッフに聞きながらやっています」

地元の野菜や果物のことを知ったうえで、組み合わせていく。

柿やみかんなどの果物は、デザートだけでなく、料理のソースとしても使われる。

自分たちのすぐそばで採れる旬のもの。日々変化する食材を見て、これに使ってみようかな、と想像できるような人だと楽しいと思う。

「コーヒー1杯にしても、プロに焙煎してもらったものを使うんです。アイスも和菓子葡萄家で手づくりしたものを使っているし、デザートで使うコンポートもそう」

なぜそこまで、自分たちの手でつくることにこだわるんですか。

「たとえば、フルーツのパフェに使うアイスでも、既製品だと甘すぎて、フルーツの甘みや酸味がアイスに負けてしまうことがあるんです」

「アイスに限らず、ゼリーやグラノーラとかも。普通のお店じゃこだわるのが難しい部分まで、組み合わせのバランスを調整して提供することができる。それって、いろんなお店が集まる『ぶどうのたね』だからできることだと思うんです。カフェ1店舗だけで営業していたら、そこまでこだわることは難しいかもしれない」

「かっこつけたこと言ってるけど、僕も最初は知識ゼロやったからね」と言いながら笑う康啓さん。

来年から始める寿司屋も、ぶどうのたねから車で10分ほどの場所にできるので、メニューや厨房のことについてはこれからも相談することができると思う。

どれくらいの料理経験があったらいいでしょう。

「厨房で働いていた経験が少しでもある人だったら大丈夫。食材や料理のことは、長く働いているスタッフのなかにも詳しい人がいるので、相談しながらできると思います」

「休日なんかは特に、並んで待ってもらうくらいたくさんの人が来てくれる。本当にいそがしくて、1日があっという間に終わってしまう。この田舎の景色に似合わないくらい、根性が必要かもしれないです。そこは覚悟して来てほしいですね」

ランチはコース料理なので、テーブルまで行く回数も多い。お客さんが多いときは、ホールスタッフもいそがしくなる。

のんびりとしたイメージだけで来ると、感覚のギャップがあるかもしれない。

すると、隣で聞いていたあかねさん。

「一番は、この土地の空気や景色を好きになってくれるような人がいいと思うんです。一方で私たちはサービス業をしているので、ゆるやかさばっかり求められると、たくさんのお客さんが来られたときにバランスが取れないこともあって」

「お仕事はお仕事としてきちっとしていただいて、うきはの気持ちよさも満喫する。お客さまに気持ちよく過ごしてもらって、スタッフにも気持ちよく働いてもらう。まだまだ、いい場所にしていけると思います」

12月からは席数を減らし、よりお客さん一人ひとりに満足してもらえる料理の提供と接客ができるよう、サービスのかたちも少しずつ変えているところ。

なぜか気持ちのいい場所。

豊かな自然や、昔ながらの宿場町など。うきはにはいろんなものが揃っているけれど、形あるものだけではない良さが、そこにはあるような気がしました。

それは決して偶然生まれるものではなくて、そこで働く人たちの細やかな気配りや、小さなこだわりの積み重ねでできているのだと思います。

自分たちのいいと思うことを貫ける場所。ぶどうのたねはそんなところだと思いました。

(2019/11/1 取材 稲本琢仙)

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