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「人って、少しでも変化を実感できると、モチベーションが上がって自分でどんどん走っていける。私たちがやっているのは、ちょっとした工夫でその最初のきっかけをつくっていくことだと思います」そう話すのは、Saya-Biz(サヤビズ)のセンター長、小林さん。
狭山市ビジネスサポートセンター「Saya-Biz」は、埼玉県西部の狭山市にある、中小企業や起業家向けの経営相談所です。
モデルとなっているのは、11年前に静岡県富士市ではじまったf-Biz。地域の経営相談所として、中小企業や個人事業主に対して無料でアドバイスを行う仕組みです。
お金をかけずに知恵を絞ることで、経営を改善していく。この方法はBizモデルと呼ばれ、全国20ヶ所以上に広まってきました。

ITアドバイザーは週に1〜2日勤務し、SNSやホームページの運用、効果的な販促の方法など、IT活用や情報発信全般にまつわるアドバイスを行います。サイト運営やマーケティングの知識が役に立ちそうです。
デザインアドバイザーが担うのは、商品のロゴやパッケージに関するアドバイス。相談をきっかけに、実際にデザインの仕事を請け負う可能性もあります。
どちらも、得意分野を活かしながら地域の事業者をサポートしていく仕事。さまざまな事例に向き合うなかで、自身の経験値も上がっていく環境だと思います。
Saya-Bizの最寄りは、西武新宿線の狭山市駅。西武新宿駅や高田馬場駅から特急が出ていて、都心から45分ほどで到着する。
改札を出ると、駅前のロータリーを見渡す高架の歩道に出る。住宅街の向こうには山の稜線がくっきりと見えて、自然を身近に感じられる。

静かなフロアの一角におじゃまして、まずはセンター長の小林さんに話を聞いた。朝から夕方まで入っていた相談を終えたところだそう。

たとえば、特産品の狭山茶は有名でも、それ以外に何があるのかはあまり知られておらず、わざわざ狭山に訪れるきっかけをつくれていない。
また、市内には二つの工業団地があって、県内でも工業がさかんな土地。と言っても、ピーク時に比べると衰退しているという。
「市内のさまざまな産業を、もう少しいい方向に変えていくために何かできるんじゃないかと、自治体主導で誘致されたのがBizでした」
Saya-Bizのオープンは、2019年の4月。一年も経たないうちに、累計の相談件数はすでに1000件以上、相談に訪れた企業や個人事業主の数は、サービスや飲食、小売、製造業を中心に200を超えた。
小林さんはオープンと同時にセンター長として赴任。以前は、大企業向けに組織マネジメントの視点からアドバイスをするコンサルタント業と、スタートアップ向けの創業支援の仕事を並行していたそう。
どうしてSaya-Bizで働こうと思ったんですか?
「理由は二つあって。ひとつは、コンサルティングの仕事を長く続けるうちに、中小企業や個人事業主にとっては、組織の問題解決以前に売り上げアップのための戦略や施策を考えることのほうが重要だと気づいたことでした」
いいアイデアや想いがあっても、正しい戦略を立てられなければ事業は続いていかない。とはいえ大企業でない限り、外部のコンサルタントに依頼するには費用面でハードルが高い。
そんな気づきから、中小企業や個人事業主専門で、しかも無料というBizのコンサルタントに興味を持つようになっていった。
もうひとつの理由は、Bizモデルの考え方に共感したこと。
「Bizモデルは、相談者の『強みを伸ばす』ことをとても大切にしているんです」
「どれだけ経営が苦しい会社やお店でも、潰れずに続いてきたのは、魅力を感じるお客さまがいる証拠。であれば、その魅力をしっかりと捉えて、強みとして伸ばしていこうという考えです」
過去にコンサルティングしてきた企業でも、社員の強みを活かせるように役割やコミュニケーション方法を工夫することで、組織が前向きに変わることを実感していた小林さん。
Saya-Bizのセンター長になった今でも、相談者の強みを活かしたアドバイスができるよう、日々心がけているという。

「そのお店の強みは明確で、店主の腕や目利きがいい。著名店で厨房のトップを務めていた経験もあり、特にお寿司が絶品でした」
ほかの経営相談所では、食材の原価を下げるよう勧められていたという店主。ただ、味は妥協したくないというこだわりがあった。
小林さんはあえて原価のことには触れず、魅力を発信していく方針でアドバイスを行った。
「まずは、ブログを立ち上げることになりました。ただ、その方はパソコンを持っていないし、スマホもあまり使いこなせない。自力での更新がむずかしかったんです」
そこでひとまず、Saya-Bizのパソコンを使って情報発信をサポートしていくことに。料理の写真を撮り溜めてもらい、週に一度の面談の際、一緒にブログを更新していった。
「もともと味はいいし、何もしていなかったところが情報発信をするんだから、数ヶ月で目に見えてお客さんが増えました。今は、その様子を見ていたご家族がブログやSNSの更新を手伝うようになって、すべて自分たちで運用しています」

高級な食材は売り切れるだけの量を仕入れて数量限定メニューとしたり、原価に見合わない値段設定のコースを頼まれたときは、適正価格を伝えて交渉したり。より付加価値のある形で自慢の料理を提供できる体制が整ってきたことで、今期は過去最高の売り上げを記録したそう。
「Bizの特徴は、成果が出るまで徹底的に伴走することです。ブログの更新まで一緒にやる相談所って、ほかにはあまりない。でも本当に大切なのは、自走できる段階までサポートすることだと思っています」
自走できるまで?
「万が一Saya-Bizがなくなってしまっても、そこで動きが止まることのないよう、相談者さんが自力で継続できる状態をつくっていきたい」
「そのためには1から10までサポートするというよりも、何か一つ、小さくともたしかな成功を実感してもらって、続けるモチベーションを保っていくことが大切です」
小林さんたち相談員は、初回のヒアリングで強みを引き出し、ターゲット設定や基本となる方針を相談者と一緒に考えていく。
そしてより専門的なアドバイスが必要な案件については、各アドバイザーへと引き継ぎ、さらに一歩踏み込んだ提案を行っていくというのが大まかな流れだ。

SNSやブログのアカウント開設や、更新し続けるにはどうしたらいいか?という方法の検討、ホームページをより見やすいものにするためのアドバイス、専門的なシステムやセキュリティの話、ときにはチラシやポスターなどの紙媒体での見せ方まで。
「どうすればターゲットに伝わるか」ということを、とことん一緒に考えていく仕事。
実際にITアドバイザーとして働く丸山さんにも話を聞いた。今は、自身で会社を経営しながら、業務委託で複数のコンサルタントの仕事をしている。木更津と熱海のBizでもITアドバイザーとして働いているそう。
これから入る人にとって、丸山さんの経験はとても参考になると思う。

専門的な知識が必要な場合は一度持ち帰って調べたり、知り合いのエンジニアの知識を借りたり。そうして得た情報を、相談者へわかりやすく伝えていくことも大切。
どんな相談にも、その道のプロフェッショナルとして真摯に答えていく姿勢は欠かせない。
「最近だと、教員向けのセミナーやコーチング事業と、小中高生の保護者向けに子育て情報を発信している事業者さんから相談を受けて。異なる二つのターゲットにちゃんと届くサイトにするにはどうしたらいいか、という課題を抱えていました」
それぞれの事業で対象が異なるので、まずはサイトのトップページで「教員の方へ」「保護者の方へ」というように入り口を分けることや、FacebookなどのSNSではそれぞれアカウントを分けて発信することなどをアドバイス。
徐々に効果が現れ、イベントやセミナーの参加者は少しずつ増えているという。
「基本は『1サイトに1テーマ』ということが大切で。ターゲットをヒアリングして、その人たちに届けるためにどんな情報発信をしたらいいか、アドバイスします。相談者さんによってITスキルもさまざまなので、苦手な方にはより簡単な方法を提案するとか、相手に合わせたご提案をしています」
Web以外にも、チラシやポスターなどの紙媒体のアドバイスも行っている丸山さん。
「チラシもWebも、基本的なことは同じで。伝えたい一つのテーマをはっきり見せるとか、5W1Hをわかりやすく発信するとか。デザイン面というよりも、見せ方のアドバイスをしています」

基本的なポイントを教えて次からは自力でやってきてもらったり、自分で一生懸命つくったチラシであれば、ガラっと変えることはせずに、それをできるだけ活かした修正を行ったり。
相手の状況をしっかりと把握して、的確なアドバイスをしていくために、まずは自分が知識を持つ必要がある。
「他社の成功事例は常に収集していますね。テレビやインターネットで面白いサービスを見かけたら、そこがどんな情報発信をしているのか調べてみるとか。ITやビジネスのトレンドやマーケティングのことも、日々勉強を怠らないようにしています」
「あと、SNSはやっぱり自分で使ってみること。そうじゃないと、人に対してアドバイスなんてできないんですよね。自分の会社でもほとんどのSNSはアカウントを開設していますし、Webメディアも運用しています」
今回の募集は、知識やコミュニケーション力など必要な要件が備わっていれば、アドバイザーとしての実務経験は問わない。趣味でサイトやSNSを運営していて、これから仕事にしていきたいという人でも構わないそう。
勤務時間は柔軟に対応できるから、副業を探している人やフリーランスの人、経験を活かして働きたい子育て中の人にも積極的に応募してほしいし、興味を持ったらまずは相談してほしいとのこと。

知識はもちろん必要だけれど、相手をよく見て、しっかりと向き合っていくことが何より大切です。
誰かをサポートすることに喜びを感じる人に、ぜひここで活躍してほしいと思います。
(2020/1/25取材 増田早紀)