「こんなふうに扱ってくれたら、きっとうれしいだろうな」
ものに感情があるのかわからないけれど、そんなふうに感じる、人とものの素敵な関わりをたまに見かける。
九州のいいものが集まるお店QSHU HUB(キューシューハブ)。ここに並ぶものたちも、きっと幸せなんじゃないかな。

お店があるのは、阿蘇くまもと空港のなか。搭乗ゲートのすぐそばにあって、飛行機に乗る人しか立ち入れません。
店内には、熊本県内各地を訪ね、つくり手と直接やりとりを重ねた130を超える商品が並びます。
このお店の可能性をさらに広げるため、副店長とアルバイトスタッフを募集します。
訪れる人に商品の背景を伝えたり、接客して感じたことやお客さんの声をつくり手にフィードバックしたり。ただものを売るのではなく、つくる人と使う人を橋渡しするような仕事です。
今後は関わるエリアを九州全域に広げて、事業者同士をつないだり、つくり手をめぐるツアーを実施したり。九州の真ん中に位置するハブとしての機能も、より充実させていきたいそう。
接客経験を活かしつつ、もっと新しいことにも挑戦したいという人にはぴったりの環境だと思います。
九州自動車道の益城熊本空港ICから車で15分。熊本市街地からだと45分ほどで空港へ。
熊本地震からの復興のシンボルとして、2023年3月にリニューアルした阿蘇くまもと空港。
QSHU HUBは、そのオープン当初から3階搭乗ゲート内に入居している。
どのような経緯でこの場所ができたのか、まずはQSHU HUBを運営する株式会社さとゆめの桐山さんに話を聞く。

さとゆめは「ふるさとの夢をかたちに」というミッションを掲げる地方創生の会社。
道の駅のプロデュースや古民家ホテルの運営、自治体のプロモーション支援、地域で自分の仕事をはじめたい人材の発掘・育成など。
計画づくりやアドバイスで終わらず、ときには地域の人たちと事業会社を共同設立するなどして、「夢」が「かたち」になるまでとことん伴走してきた。
「熊本では、上天草市の特産品として和風出汁の開発や、宇土市産食材のブランドPRなどに関わってきて。そんななかで、空港内に地域活性拠点をつくってほしいとお話をいただいたのがきっかけでした」
オープン一年目は、店頭に商品を並べつつ、オンラインでのみ購入できるギャラリーショップのような形に。ただ、なかなか売り上げがついてこなかった。
昨年の7月から、その場で購入できる現在の形態に切り替えたことで、売り上げもぐんと伸びたという。

コンセプトは「ローカルテインメント」。ローカルとエンターテインメントを掛け合わせた造語だ。
「もちろん物販はしてるんですけど、ただのお店ではほかと差別化できない。じゃあさとゆめらしさってなんだろう?と考えたときに、我々はいつも『人起点』と言っているんです」
人起点。
「農家さんや漁師さん、ものづくりの職人さん。そういったつくり手一人ひとりにスポットを当てて、よりローカルな商品とか体験の価値を発信していきたいなと」

「ものを買って終わりじゃなくて、その背景にある生産者や地域のストーリーを伝えて。いずれその生産者に会いに行きたい、その地域に行ってみたいと思ってもらうことが、地域の活性化につながる。そこを目指したいんですよね」
つくり手のもとを実際に訪ねて取材し、これまでに3冊のコンセプトブックを制作。飛行機に乗りながらや、自宅に帰ってからも、商品の背景にあるストーリーをじっくり味わえる読みものとなっている。

食品や生活雑貨など、扱うアイテム数は130を超える。
どんな基準でセレクトしていったのだろう?
「共通するのは、地域への想いですかね。どこの地域も人口減少だとか、危機感を抱いているなかで、自分がつくっているものをきっかけに地域を知ってほしい、よくしたいとおっしゃるつくり手さんばかりで」
「我々も、少しでも地域に貢献したいという想いでやっているので、つくり手さんの熱意はどこへ向かっているのか、夢は何か、じっくり聞きます。そのうえで応援したいと思えるかどうか。そこが一番大きいんじゃないかな」
40を超える事業者とのやりとりを重ねて、このお店を桐山さんと一緒につくってきたのが、店長の古田さん。

商品を手に取りながら、印象深い事業者さんとのやりとりについて話してくれた。
「たとえばこの曲げわっぱをつくっている淋(そそぎ)さん。若いときは宮大工になりたかったそうです」
あるとき、当時お付き合いしていた女性に「うちのおじいちゃんがおもしろいものつくってるから、見に来ない?」と誘われて行くと、そこにあったのが曲げわっぱだった。
これだ!と直感した淋さんは、弟子入りを志願。ただ、当初は弟子をとることについて悩んでいたそう。
「どうしたかっていうと、見様見真似でつくって持っていくんですよ、何度も。そのひたむきな姿勢に、『君になら任せてよかて思いよる』という言葉をもらって。今はその女性、のちの奥さんとふたりで技術を受け継ぎ、一生懸命ものづくりをされています」

この曲げわっぱをぜひ扱いたいと、工房を訪ねた古田さん。
ところが、「細々と自分たちのペースでやってるから、これ以上はつくれない」と、最初は難色を示されたそう。
ただ、古田さんは諦めない。
「積み上がった曲げわっぱを倒したらいけないと思って、リュックを前にきゅっと持って想いを伝えたんです、めちゃくちゃしゃべりました。すると奥さんが『椅子出してなかったわね、座って』と言って、冷蔵庫からジュースまで出してくださって」
「あなたとだったらお話ができる。どうします?って、二人で話をはじめられて。それからあまりしゃべらなかったご主人がゆっくりと頭を下げて、『わたしのつくった曲げわっぱをどうぞむぞがってやってください』、方言でかわいがってください、と託されたんです」
熱のこもった語りに、ぐぐっと惹き込まれて聞き入ってしまう。
表に見えないだけで、一つひとつの商品には、それぞれのストーリーがあるんだな。
そう思うと、ほかの商品についても話を聞きたくなってくる。

とても流暢に話されるなあと思ったら、それもそのはず。もともと古田さんは、熊本県内でラジオやCM、司会や舞台役者などの仕事をしていたそう。
コロナ禍で仕事がなくなり、当面の仕事を探すなかで、QSHU HUBの求人を発見。情勢が落ち着くまでの“つなぎ”のはずが、そのままどっぷりとハマってしまった。
「入社してからずっとおもしろいです」
「マイク一つで仕事してきて、お店の運営もはじめてだし、パソコンも使えなかった。でも、相手と同じ目線で言葉を伝えて、それが届いたときに新しいものが生まれる、そういう意味では一緒なんですよ。前職の経験も活きてるなって、最近はよく思います」
商品を買い取って売るだけでなく、一緒につくっていく感覚が好き、と古田さん。店頭のポップはもちろんのこと、商品を入れる箱を「つくったらもっと売れますよ!」と提案したこともある。
お客さんからのうれしい反応があれば、すぐに電話でつくり手に伝える。信頼関係がさらに深まって、収穫の手伝いや、商品開発の試食に声がかかったり、一緒にごはんを食べたり。
仕事だから、ではなく、自然体で人が好きな人なんだろうなと感じる。

これまでは新商品の仕入れや事業者とのやりとり、店頭での接客やアルバイトスタッフのマネジメントまで、古田さんが一手に担っていた。
今後は関わるエリアを九州全域に広げ、情報発信にも力を入れていきたい。
古田さんがより外向けの動きに専念するにあたって、今回はお店の運営を任せられる副店長を募集したいと考えている。
「わたしのやり方を真似してほしいわけじゃないんです。やりたいことがあったら、一緒に考えていけるようなお店にしたい。指示を待って、言われたことだけやりたい人にはむずかしいかもしれません」
空港には観光客だけでなく、大手百貨店のバイヤーさんから芸能人まで、いろんな人が訪れる。熊本出身の大学教授が立ち寄ってくれて、年に1回大学で講演するご縁ができたことも。
また、拠点があることで九州の自治体案件の話も入ってきやすくなった。さとゆめの 営業チームとも連携しながら、地域の課題解決に向けた動きも加速させていきたい。

お店を維持していく“守り”の仕事に加えて、新しく挑戦する“攻め”の仕事も楽しめる人が向いていると思う。
最後に、取引先の事業者である有限会社浩之勗(ひろのすけ)代表の丸山さんにも話を聞いた。
熊本市内で、20年前から熊本城が一望できるバーを営んできた方。QSHU HUBでは、県産の食材を使ったペーストなどの瓶詰め商品を扱っている。

商品開発のきっかけは、熊本地震で行き場を失った野菜を農家さんから買い取り、バジルペーストやニンニク味噌などに加工して無料でお客さんに振る舞ったこと。
その味が評判になり、一つひとつ商品化。今では14種類のラインナップがある。
「我々にできるのはつくるところまでで、そこから先は販売先に託すしかありません。もう、嫁に出すような気持ちですよ。自分たちの想いやストーリー、商品の価値を、手にとってくださった方にいかに伝えていただけるかが非常に重要なんです」
初対面から、古田さんのパワーと熱量に圧倒されたという丸山さん。
この人なら自分の商品を託せるし、きっとうまくいくと思った。

浩之勗のペーストは、丸山さんが全幅の信頼を寄せる外部の加工会社に原料加工を委託している。
その会社の社長とも、たびたびQSHU HUBや古田さんの話になる。
「地味な作業ですよ。夜中まで栗をひたすら剥いたり、ほじったり。そういう裏の部分は、古田店長が伝えていただく。お客さまの反応などの表の部分は、古田店長からぼくのフィルターを通して、生産者や製造者に伝えていく。そうすると、モチベーションがグッと上がるんですよね」
「結局そういうものだと思うんです、ものづくりって。自分たちだけがいい思いをしても、何の意味もない。対等な関係性が一番だし、そうじゃないと長続きしない。QSHU HUBは、つくり手と売り手と消費者がつながる拠点なんだと思います」

今後のQSHU HUBに期待していることって、ありますか?
「事業者同士の横のつながりですね。ここに集まるものは、つくっている方々もそれ相応のスキルや愛情にあふれているはずで。そこがつながっていくと、とってもおもしろいことができるんじゃないでしょうか」
店頭でのコラボや、空港外でのマルシェのようなイベント、いずれはつくり手をめぐるツアーなど。事業者のつながりを活かせば、いろんなことができそう。
お店もまさに「人起点」。どんな人が副店長になるかによって、この場所の色も大きく変わりそうな気がします。
桐山さんたちさとゆめの営業チームや、心強いパートナーとなる店長の古田さん、そして丸山さんたちつくり手のみなさんとのネットワーク。
さまざまなつながりを活かしながら、九州のハブを一緒につくっていってください。
(2025/11/05 取材 中川晃輔)


