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デザイナーの仕事って、翻訳や通訳のようだなと思うことがあります。ロゴやカタログ、Webページにプロダクト…。伝えたい想いが多くの人に届くように、形をつくっていく。
そんなデザインの持つ力を活かして、より多くの人に自分たちの想いを伝えていこうとしているのが、株式会社P3のみなさんです。
東京・八王子でヨガやピラティスのスタジオを運営するP3。病気やケガを予防できる健やかな身体づくりのため、レッスンの企画運営やインストラクターの養成、書籍の販売や商品開発などに取り組んでいます。

社外のデザイナーと協力して、自身はディレクションやブランディングを担うというような関わり方も可能とのこと。
企画から制作、運用まで、幅広いデザインにチャレンジできる仕事だと思います。
新宿からJR中央線の特快に乗り、約40分の八王子駅。商業施設やオフィスビルが並ぶ駅前の賑やかな大通りを、真っ直ぐ5分ほど歩いていく。
訪れたのは、P3の運営するピラティススタジオ「UPRIGHT」の入るビル。
エレベーターで5階に上がり、代表の中村尚人さんを訪れた。レッスンの合間に話を聞かせてもらう。

リハビリを通じて患者さんと向き合うことにやりがいを感じながらも、長く続けるうちに違和感が湧いてきたという。
「そもそも日頃から身体を整えておけば、病院に来るほど悪化せずに済むんじゃないか?って。そんなことを思うようになったんです」
「実は海外では、その考え方を取り入れた“フィジオ”と呼ばれる理学療法士が当たり前に開業していて。身体に違和感を感じたら、まず理学療法士のところに行く。病院は、それでも治せない外科的治療が必要なときに行くところなんですよ」
歯の場合は、虫歯になる前に歯磨きをして、定期的にメンテナンスをするのが当たり前。身体もそれと同じく、日常的にケアしていれば、重大なケガや病気を予防することができるはず。
そんな想いから、中村さんはヨガやピラティスの道に進むことを選んだ。
「同じことをやるにしても、“予防運動療法”って言われたらハードルが高いけど、ヨガやピラティスだったら気軽にやってみようと思えますよね? そうやって来てくれた人に正しい姿勢や歩き方を伝えて、病気やケガの予防につなげることが一般的になればいいなと思うんです」
一から勉強して、それぞれ国内最高峰の資格を取得し、この道の第一人者として知られるようになった中村さん。2013年に、P3を立ち上げた。
会社の中核を担うのは、自身が考案した『ファンクショナルローラーピラティス』のインストラクター養成事業。
ローラーを使用し、あえて体幹が不安定な状況をつくることで、ピラティスの特徴である姿勢改善の効果を得やすくしている。身体に違和感のある人のリハビリから、アスリートの身体づくりまで、幅広く対応しているそう。

ほかにも、左右の脚の長さを整えるインソールを企業と共同開発したり、背骨が左右に弯曲してしまう病気「側弯症(そくわんしょう)」の運動療法を考案し、トレーニングセンターを開設したり。さまざまな分野に取り組みを広げている。
「全部ニッチなんですよ。すでにほかの人がやっていることは、やる必要はないと思っていて。あくまでも、自分のスペシャリティが活かせるフィジオの観点から、自分にしかできないことを探して、それぞれの分野でトップを目指してやってきました」
そう言い切る中村さんからは、長年プロフェッショナルとして走ってきた誇りや自負を感じる。

自社で開発したグッズの宣伝もホームページやスタジオ以外ではほとんどしていないし、立ち上げたもののアクセス数を伸ばせていないサイトもあるそうだ。
「だから、今回募集する人がブランディングやプロモーションも含めて、一つひとつデザインしてくれたらすごく助かるなって。この会社にあるいろんなコンテンツを整理して、どう対外的に伝えていくか、デザイン面から仕切っていってほしいんです」
任せたいのは、それぞれのコンテンツとターゲットとの間のコミュニケーションを円滑にするようなデザイン。
P3が展開するWebページやカタログ、パッケージなどの多様な媒体において、「どんな人にどんなふうに届けたいのか」という部分から、じっくり考えていく必要があると思う。

「でも、僕に言われたことをやるだけじゃなくて、一緒に練るところから関わってくれたらうれしい。デザインの力で予防に貢献できるような新しいアイデアがあったら、どんどん提案してほしいと思います」
話を聞いていると、一緒に働く人に求めるレベルも高そうに感じる。実際のところ、どうなのでしょう?
「いや、そうでもないんじゃないかな。基本的に任せると決めたら何も言いません。だって、自分の仕事に責任を持っている人だったら、あれこれ僕が言わなくても、どういう意図なのか自分から質問してくれるでしょう? そうやってつくったものは、結果としていいものになると思うんです」

医学的な知識は、最初から持っていなくていい。ただ、たとえば「側弯症のページをデザインして」と言われたときには、どんな病気なのかしっかり調べるところからはじめてほしい。
デザインの知識やスキルと同じくらい、日々扱う身体や健康といったトピックについて関心を持てることが大切だと思う。
中村さんは、どんな人と一緒に働きたいですか?
「ポジティブな人。だって僕らがやっているのは、ポジティブなビジネスですから」
ポジティブなビジネス?
「病院は、病気とかケガとか、ネガティブなことが起こるから成り立つビジネスなんです。それが嫌で離れた部分もあって。もちろん不慮の事態に対応するための病院は絶対に必要だけれど、防げたはずの病気もたくさんあると思うから」
「僕らはここで、ネガティブなことを予防して、もっと笑顔で当たり前に楽しく過ごせる社会をつくっている。そういうポジティブな方向に世の中を導くってことをやっているんです」

中村さんの話を聞き終えて、歩いて5分ほどの場所にあるP3の事務所に向かう。
ヨガスタジオが併設された事務所で、現在デザイナーとして働いているパートタイムスタッフの佐藤さんにも話を聞いた。
佐藤さんは次のステップに進むためにもうすぐ退職予定だけれど、後任の人の参考になればと話を聞かせてくれた。写真は恥ずかしいとのことで、少し遠くから撮らせてもらう。

「パンフレットやリーフレット、ポスター、Tシャツ、HPのデザインと構成…、デザインに関することならなんでも担当します。『こういうものをつくりたい』という企画はだいたい社長から生まれるので、別の理学療法士がテキストを書いて。わたしはそういった素材を受け取って、デザインする役割です」
もともとは広告代理店でデザインの仕事をしていた佐藤さん。中村さんのヨガのクラスに通っていたことをきっかけに、3年ほど前からここで働いている。
自身が習っていたこともあり、ターゲットとなる人たちのことをわかった上で仕事に取り組んでこられたという。
「医療者が書く文章は少し難解なこともあるので、もっと噛み砕いたほうがいいなと思ったときには伝えて。ライターがいないぶん、言葉も自分の管轄になるのが、今までにはない面白さであり大変さですね」

ほかのヨガスタジオに比べて、医療的根拠を持った真面目なコンテンツを打ち出しているのがP3の特徴だと思う、と佐藤さん。
今は、ヨガとピラティスのWebページをリニューアルしている最中で、写真撮影から外部の制作会社とのやりとりまで、全体のディレクションを担っている。
新しく入る人は、コンテンツごとの違いを理解し、デザインに落とし込んでいくことに最初は苦労するかもしれない。と同時に、いろんな媒体やテイストに取り組めることはやりがいにもなると思う。

「そうですね…。わたしはパートタイムで週に数日の勤務ですけど、社長の要望にすべて応えるなら、フルタイムスタッフが2人いてもいいくらいの業務量かもしれません(笑)。『あれどうなった?』って聞かれたときに、まだ手をつけられていないことも正直ありますし」
優先順位をしっかり決めて、一つひとつ取り組んでいくようにしているそう。
「小さい会社だけど全然まったりはしていなくて、ものごとが進むスピードはすごく速いなと思います。でもヨガが好きなので。興味のある分野の新しい情報がどんどん入ってきて、仕事をやるほど知識が深まっていくのは面白いですよ」
P3の持つ、心身ともに健やかな社会をつくっていきたいという想い。デザインの力で、それをもっと多くの人に届けていく仕事です。
デザインの責任者として任される仕事の範囲はとても広いし、忙しかったり、大変だったりすることもあるはず。
でも自分のアイデアを活かして、身体や健康についての前向きで正しい情報を伝えていきたい人にとっては、大きなやりがいを感じられる環境だと思いました。
(2020/2/19取材 増田早紀)