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“古木”を生かし
人を生かす

※この仕事は募集終了いたしました。ご応募どうもありがとうございました。

アンティークや古着、古本や古民家。

たくさんのものがあふれ、手に入りやすい時代になっても、残り続けるものの良さがあります。

ちょっと古いけど味があるよね、とか、捨てるのはもったいないから少し直して活用しよう、とか。そうやって継がれてきたものには、なんらかの価値がある。そして、その価値を時代ごとに再発見していくのも、大切なことです。

株式会社山翠舎(さんすいしゃ)は、長野県に本社を置く建築会社。店舗やオフィス、住宅の設計から施工、さらには古民家の移築・再生事業も手がけています。

事業の柱になっているのが、古民家を解体した際に出る“古木”の活用です。一本一本丁寧に保管し、職人の技で加工。内装に使ったり、古木自体を建材として販売したりもしているそう。

今回募集するのは、工事現場の管理をする現場監督。建築の現場で経験を積んできた人を求めています

(新型コロナウイルスの感染拡大を受け、オンラインにて取材を行いました。なお、現地の写真は提供いただいたものを使用しています)



いつもはZoomで行うことが多い取材。今回はシスコというオンラインツールを使うことに。

山翠舎では、2年ほど前からさまざまな業務のオンライン化を進めており、現場や工場とのやりとりにもこのシスコを活用してきたそう。

「世の中の先を行っていたと思うんですが、ちょっと追いつかれちゃいましたね」

そう話しはじめてくれたのが、一番奥に座る代表の山上さん。渋谷にある東京支社から、スタッフふたりと一緒につないでくれた。

空間の設計から施工まで、一貫して手がけている山翠舎。本社は長野県にあり、今年で創業90周年を迎える。

「もともとは、建具を製作する木工所からはじまりました。父の代までは内装の下請けを主に行っていて、住宅や店舗をつくっていたんです」

山上さん自身は、大学卒業後に東京でIT企業に就職。3年ほど働いたのちに、2004年に山翠舎に入社したそう。

「まったく別の業種ではありましたけど、外の視点から山翠舎を見たら、職人さんや協力会社さんに恵まれているっていうのがよくわかって。自分の経験を生かせばもっと面白いことができるんじゃないかと思って、チャレンジすることを決めました」

「でも入社するまでに、父に3回断られたんですよ。現場仕事だし、たくさんの職人さんを抱えているので、それだけ意思が固くないとやっていけない仕事なんだなと。気持ちを引き締めてがんばろうと、あらためて思いましたね」

入社後、会社の方向性を少しずつ変化させていった山上さん。それまでの下請け体制を脱却し、元請けの内装会社として再スタートを切ることに。

2006年からは、古民家を解体した際に出てくる古材のなかでも、一本ずつ丁寧に品質チェックし、太さ・長さ・樹種、そしてどんな古民家で使われていたのか、経歴や由来まで記録されたものを“古木”と定義し、新しい建築に再利用するという新事業もはじめた。

“古木”という言葉に商標をとっているほど、こだわりを持って手がけている事業。どうして古木だったんでしょう?

「私自身が昔から木に囲まれていたのもあって、戦前の建物で使われてる柱とか梁とか、そういう味のある木材って心地いいなと感じていて。でもどれだけいい雰囲気の古民家でも、住む人がいなくなったら取り壊されてしまうし、古木も廃棄されてしまう。それって、すごくもったいないなと思ったんです」

「木は経年で硬くなるので、強度的に問題なく使える古材はたくさんあります。ただ、当時は内装に古材に取り入れる発想は、あまり一般的ではありませんでした。それで新たに設計部門を立ち上げて、設計デザインの提案から施工まで、一貫して手がけることにしたんです」

古木のストックは、すべて長野にある倉庫に保管されている。2006年から集めはじめた古木は、すでに5000本近くあるそう。

古木は硬いため、加工は経験のある職人でないとむずかしい。加えて、まっすぐではない木材を図面に組み込むのも、設計者の技量が必要。古民家の解体を長く手がけてきた山翠舎だからこそできることだという。

「とくに飲食店さんからは、古木の雰囲気が気に入っているという声をよくいただいていて。これまでに500店ほどの内装に関わらせてもらっています」

「今後はオフィスや住宅にも古木の魅力を広げていきたいと思っていて。日本はこれから空き家が増加すると言われているので、そういった資源を再活用するという意味でも、ますます求められる仕事だと思うんです」

柱や梁として使うだけでなく、加工してテーブルや椅子にすることも。古木の持つ味わいを生かしつつ、どのように新しい命を与えられるかが肝心だという。

「最終的には、古木を扱う人の循環をつくりたいと思っていて」

古木を扱う人の循環?

「古木を扱える職人さんたちの技術って、非常にレベルが高いんです。硬いし、歪みもある」

「その技術も、使う環境がなければ残っていかない。おなじ規格でおなじようにつくる今の建築業界では、このままだと生きていけないんですよ。でもそんな時代だからこそ、職人さんがちゃんと食べていけて、弟子がその技術を継いでいくような。技術ある人が再生産される循環をつくっていきたいんです」

ゆくゆくは、古木専門の職人養成学校のようなものをつくることも考えているそう。

「職人さんの技で、たくさんの人に感動してもらいたい。いろいろと新しいことにチャレンジしていますが、その気持ちはずっと変わらないところですね」



山翠舎で働く人たちは、山上さんの思いに共感して入社した人が多い。

次に話を聞いた岸さんもそのひとり。入社4年目になる方で、現場監督の仕事をしている。

「大学時代に福島で古民家についての研究をしていたんです。この古民家の木材はどの地域からやってきて、どうしてこんな形をしているのか、ということを調べていたんですが、知れば知るほど古民家のことがすごく好きになって」

「現代の家とはちがった雰囲気があるし、使われている柱とかも丈夫で貴重な木材が多い。集落の方が亡くなって、家が解体されるのを見るたびに、漠然とさみしい、もったいないって感じていたんですよね」

卒業後はゼネコンに就職し、現場監督の仕事に携わっていたそう。仕事は楽しかったけれど、規格が決まった材料で似たような建物をつくり続ける日々に、違和感があった。

「3年くらい働いたあとに、営業の仕事に転職したんです。そのときの電話リストのなかに、山翠舎があったんですよ。気になってホームページを見たら、古民家の移築や古木の活用のことが書いてあって『あ、これ自分のやりたいことばかりだ』って」

「それで面接してもらえませんかって連絡して、社長ともお会いして。採用してもらえると聞いたときに、すぐに決めちゃいましたね。我ながら勢いがあったなと思います」

現場監督の仕事は、お客さんのヒアリング後の現場調査から。建築予定地に足を運び、どんな空間にしたいかの要望を確認した上で、社内のデザイナーに引き継ぎ図面を作成してもらう。

着工後はいくつかの現場を巡回して、片付けや材料の準備をしたり、図面では判断できない細かな納まりについて指示したり。

自社の大工だけでなく、電気や水道、さまざまな関係業者との調整が必要になる。

「お施主さんも、人によってほとんど任せてくださる方もいれば、何度も現場に足を運ぶ方もいらっしゃいます。不安を感じている方には、いつもよりこまめに現場の状況を伝えるとか、細かな心配りが大切ですね」

お客さんも、古木や古民家の雰囲気が好きで依頼する人が多い。お互いに共感しながら話せることが多いそう。

たとえば、と話してくれたのが、人形町にあるフレンチのお店 「EN FACE(アン ファス)」 を手がけたときのこと。

「カウンターには、肌のきれいな古木を使いました。小さいお店なんですけど、カウンターの長さが7メートルくらいあるんですよ。扱ってきたもののなかでも過去最大の大きさだと思います」

「ただ長いカウンターじゃなくて、エンドの部分はテーブルにして、お客さんが対面で座れるようになっているんです。お施主さんも喜んでくれて、引き渡したあとに『このお店で、絶対ミシュラン取るんで待っていてください!』って。それを聞いたときすごくうれしかったですね」

施主さんにとって、お店をつくるというのは人生の一大事。その先の人生の長い時間を、そこで過ごすことになる。

「お店が完成すると、お客さまが腹を決めた顔をされるんですよ。よしやるぞって。それを見ると、妥協せずにがんばってよかったなという気持ちになります。それぞれのお客さまの、これからの人生を背負っているような仕事だと思いますね」



岸さんの向かいでそれを聞いていたのが、おなじく現場監督の斉藤さん。新卒で入社し、今年で2年目になる。

「学生のときに建築専攻だったのもあって、最初は設計希望だったんです。就活のときにこの会社で募集していたのが現場監督だけだったんですが、古民家移築や古木活用の事業が、自分の興味関心にすごく合っていたので、まずは話を聞いてみようと思って」

東京支社を見学し、工事現場にも足を運んだ。その後、長野にある工場と古木の倉庫も実際に見に行くことができた。

「倉庫の管理をしている田村さんっていう人がいるんですよ。その人が古木を持ってきて、目の前で磨いてくれたんです」

「たとえば煙やススで黒く染まった木も、磨くと艶のあるダークブラウン色の木肌が出てくるんですよ。磨くとこんなふうに色が変わって、それが経年変化でまた変わっていく。それが味わいになるんだよって。まだ入社もしてない人に、こんな丁寧に教えてくれるんだって、感動しちゃって」

設計の勉強をしていたとはいえ、現場のことはほとんど知らなかったそう。今も先輩の補佐につきながら、日々現場を肌で感じて勉強している。

「めっちゃメモしてます(笑)。先輩はどうやって納めてるんだろうって、観察したことをメモして、出来上がったあとにこうなったんだって確認する。その繰り返しですね」

「どの現場も職人さんとコミュニケーションを交わして、現場をきれいに片付けて…体力勝負なところはあります。兄貴肌な人が多いので、一生懸命やっていたら見てくれているんですよね。困ったときは助けてもらいながら、がんばりたいと思ってます」

ゆくゆくは、現場での体験も活かしながら、設計もできるようになりたいと話す斉藤さん。

すると、それを聞いていた代表の山上さんが、最後にこんなことを話してくれた。

「現場監督っていうのは、山翠舎が大切にしていることを一番体現している職種なんです。どうして古木を使うのか、長野の工場に発注する意味ってなんなのか。いわば山翠舎のコアとなる事業を担っている存在だと思っていて」

「まずはそれを経験して、別の職種なり、新しい事業なりにチャレンジしてほしい。わたしたちは元請けの会社としてはまだまだスタートアップの気持ちでいるので、仲間と一緒に成長していきたいと思っています」

単純な施工会社と思って入ると、イメージがちがうかもしれません。根っこの部分で、古民家や古木の雰囲気が好き。そしてそれを残し、生かしていくためになにかしたい。

まずは木に触れるところから、はじめてみてください。

(2020/5/8 オンライン取材 稲本琢仙)
(※記事中に登場する「古木」は、株式会社山翠舎の登録商標です)

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