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「日本の自然環境を守りたいという思いがあります。そのために僕らは、日本の木や自然素材をつかって家づくりをする。そして自分で薪を割って暖をとり、畑で採れた野菜を食べる、そんな手間をかけた暮らしの楽しさとうれしさを提案する会社でありたいです」そう話すのは、アトリエデフの大井さん。
長野県に本社を構えるアトリエデフは、自然素材を使った安心・安全な家づくりをしながら、自然と人に無理のない暮らしを提案しています。

今回募集するのは、暮らしアドバイザー。持続可能な暮らしをイベントなど通して提案し、家づくりのお手伝いをする役割です。
自然の営みを感じながら、暮らすように働く。そんな人たちに出会いました。
新宿駅から特急あずさに乗って2時間半。富士見駅から車を15分ほど走らせると、アトリエデフの八ヶ岳営業所が見えてくる。
林の中には部署ごとにわかれた木造の建物や畑がゆるやかに集まっていて、まるで小さな村のよう。


「本当にバリバリと働いていました。やってなんぼの世界でね。上乗せした金額を見せてあたかも値引きしたように話したり、本当はできないことをできると言ってみたり。俺は一番になる!って人間だったんです」
「でも、ステータスで争う自分がだんだんいやになってしまって。格好じゃなくて中身で勝負しようと、ゴルフも車もすべて捨てたんです」
そしてもう一つ、今につながる大きなきっかけがあった。
「サラリーマン時代に僕が建てた家が原因で、子どもたちがアトピーやアレルギーになってしまって。もうそういう家づくりはしたくなかった。誰にも迷惑をかけない、自然素材の安心安全な家をつくろうと思ったんです」
掲げたのは、どれも正しい価格で、嘘のない説明ができる家づくり。
たとえばアトリエデフで扱う木材はすべて無垢の国産材。ほかにも山の土に藁や砂を混ぜて練り上げた土壁、木の繊維を使った断熱材、蜜蝋のワックスなど、自然素材のものを選んでいる。

「一度人の手が入ってしまった山は、定期的に間伐をしないとよい土壌をつくれなくなります。日本の山から自然環境を少しでも良くしていくために、僕らは国産の木や土をつかった建物をつくりたい」
「でもあるとき、家づくりだけでは環境は変わらないと思うようになって」
変わらない、ですか。
「僕らがどんなに『日本の山を守りましょう』と訴えても、日本の山をめぐる状況は変わっていないなって思ったんです。そもそも一人ひとりの考え方や暮らし方が変わらないと、環境は変わらないんじゃないかって」
「それならこれからは暮らしの提案をしていこうと。買って消費するんじゃなくて、自分でつくりまかなう、丁寧な暮らしの提案をはじめました」
家ありきではなく、暮らしありきの工務店に舵を切ったアトリエデフ。
伝えたいのは、自然の恵みのもと、自分で手間をかけてつくり出す暮らし。
かまど炊飯や味噌づくり、野菜の種まきなど、自然にも人にもやさしい暮らしのイベントを月に3度ほど開催していて、お施主さんも、家づくりを考え中の人も集まる場となっている。

だからアトリエデフでは、畑作業や薪割り、かまどでご飯を炊くことも自分たちで行う。こうした暮らしから日々感じる、人間らしい生き方こそがこの会社の伝えたいことでもある。

聞いていると、まるで一つの哲学のようです。
「でも僕らは都市生活を否定するわけでも、皆がこう暮らさなきゃいけないと思っているわけでもありません。僕らが何も言わなくても、ここへ来て一緒に時間を過ごす中で、こんな暮らしがいいと思った人が変わっていくかもしれない」
「畑でつくった野菜を家族で食べたり、自分で味噌をつくったり。その先で環境も変わってくと思うし、楽しく、丁寧に暮らすことが本当の生きるっていうことなんじゃないかなって思います」
すぐ目の前の畑で作業していたのは、吉本さん。暮らしアドバイザーとしてアトリエデフの家づくりやこの土地の暮らしを伝えている。

「日本の山を守りたいという思いで選んだ会社だったけど、だんだん自分が誰を幸せにしているのか分からなくなってしまって。自然のそばで暮らしながら、自分の実感を伝えるような仕事をしたいと思ったときに、アトリエデフを見つけました」
実際に働いてみて、どうでしたか。
「うーん、最初はちょっと苦労したかな。ハードルが高かったです。毎日、畑で採れた野菜を使ってスタッフのお昼ご飯をつくるんですけど、家族以外の人たちに自分のつくったおかずを食べてもらう経験もない。肉も魚も使わず限られた調味料だけで料理するので、味付けも不安だし、これでいいのかな?って」

今は、月に2〜3度のイベントの広報に加えて、会社パンフレットや季刊フリーペーパー「てくてく」の制作を手がけている。

なかにはこうした広告物をすべて大切に保管しているお客さんもいるのだそう。
ファンが多いぶん、なかなか気の抜けない仕事。吉本さんが健やかに働けているのは、アトリエデフの暮らしや考え方と自分の関心が重なっているからかもしれない。
最後にお話を聞いたのは、マーケティングの山口さん。

具体的には、イベントの開催や、ほかの企業とコラボレーションしたプロジェクトの企画・進行などをしている。イベントを通して暮らしを伝えていく、アドバイザーの仕事とも重なり合う部分があると思う。
「一般的なマーケティングのイメージとは少し違うかもしれません。データ分析や市場リサーチよりも、色んな人と触れ合うことで得られる気づきや発見を大切にして、アイデアを形にしているんです」
たとえば、いま取り組んでいる『みらいの森』という構想。
「いま都会では、土に触れたことのない子がすごく多いと知って。このプロジェクトは、そんな都会の子どもたちに向けたものです」
まずは東京近郊で「どんぐりポット」と名付けた木の鉢に、八ヶ岳などのどんぐりを植えるイベントを開催。実際に山の土や木に触れて、日本の山の未来について考えてもらう。
どんぐりポットはそれぞれ家に持ち帰って育ててもらい、3年後にどんぐりの故郷である『みらいの森』へ植林しに来てもらうという息の長いプロジェクトだ。

「これからはもっと裾野を広げて、畑や森をフィールドに子どもから大学生まで参加できるような学びの場をつくりたいと思っていて。今は、大学の先生たちと少しずつ企画を進めているところです」
そしてもう一つ、同じ思いを持つ企業と共働するのもマーケティングの仕事。
たとえば広告代理店と一緒に、間伐材を使ったトレイをつくったこともある。
「森や間伐材、林業がどういう役割を担っているかを伝えるものづくりをしたくて。ただ間伐材の情報を伝えるだけじゃなくて、実際に間伐材でつくったものを使ってもらえれば、知ってもらう機会になるし、環境にもいいですよね」
さらに昨年は、サーキュラーエコノミージャパンといって、循環型の経済を目指す企業が集まるプロジェクトの立ち上げにも参加。フォーラムでは、アトリエデフの取り組みを発表した。
このように、場づくりや商品開発などを通して、日本の森林や、環境にも人にも負担のない暮らしに目を向ける人を少しずつ増やすのが、マーケティングの仕事。

新しく入る人も、これらのプロジェクトに携わっていく。
そのためには、まず畑仕事や森の下草刈りなど、アトリエデフが提案する暮らしを体感するところから始めてみてほしい。
「デスクワークも、地道な雑草取りも、ここでは等しく仕事です。まずは私たち自身がこの暮らしを体感して、大切にできないと、日本の山を守り育てたいって思いも伝えられないと思っていて」

畑や森で体を動かすなかで、『日本の山を守り育てる』とはどういう意味かを考えたり、新しいアイデアに思いを巡らせたりしているそう。
「もしかしたら、こんなことも仕事なの?って拍子抜けするかもしれません。ここは、暮らしと仕事がすごく近いんです」

ひと呼吸置いて、「最後にひとつ」と山口さん。
「私は最初、この会社がキラキラして見えたんです。でもそれってここに来れば素敵な仕事ができるわけじゃなくて、ここの人たちが本当にやりたいことをやっているからだって気づいて」
「言われたことをやる、というのではなくて。自分もやりたいなって思ったらまずここに来て自分の目で確かめてみてほしいです。これからの季節はすごく気持ちがいいので、いつでもウェルカムですよ」
取材がひと段落したころには、ちょうどお昼ごはんの時間。私もご一緒させてもらうことに。
今日は吉本さんたちがつくったおかずに、大井さんが炊いたかまどご飯。大井さんの発声で一斉に箸を取り、畑の様子やお客さんの話で盛り上がる。

まずは、そんな暮らしに、楽しく真剣に取り組む皆さんを訪ねてみてほしいです。
(2018/08/24 取材 2020/08/19 更新・再募集 遠藤真利奈)