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変わらない価値のあるもの
本質に向き合い
あかりを灯す

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人が本当に心地いいと感じる灯りとは、どんなものだろう。

朝日とともに目覚めて活動し、夜の暗さに心を落ち着ける。

アンビエンテックの照明は、人が生き物として本質的に求める灯りに近いものかもしれません。

株式会社エーオーアイ・ジャパンは、もともと水中ライトの開発からスタートした会社で、今はそのコードレス照明の技術を生かして、持ち運びできる灯りのプロダクトをつくっています。

時代に流されないデザイン、長く使えて環境に負荷のない素材、壊れても修理できる仕組み。

この会社のものづくりは、いつもそんな「本質」に向かう問いに導かれてきました。

コストや効率にとらわれず、「本当にいい」と思える方法を選択ができるのは、小さなチームならでは。正直に、誠実に、ものづくりに向き合えると思います。

今回は、ここで働くエンジニアと、カスタマーサポート担当、海外営業事務や国内外調達事務を行う担当者を募集します。


JR横浜駅からアンビエンテックのオフィスまでは、歩いて5分ほど。この日は小雨が降っていたものの、遊歩道やビルのなかを通れば雨に濡れずにたどり着ける。

アンビエンテックのオフィス兼ショールームは、タワーマンションの2階部分にある。

中に入ると、部屋の右と左でまったく雰囲気の異なる製品が並んでいた。

片方はガラスや金属を使った美しいフォルムのライト、もう一方はいかにもプロ向けの機材といった雰囲気。そのそばには、水中生物を色鮮やかにとらえた写真が飾ってある。

どちらも照明機器ではあるけど、方向性はかなり違う。一体どんな会社なのか、まずは代表の久野さんから話を聞かせてもらう。

「もともとは20年ほど前にエーオーアイ・ジャパンっていう会社を立ち上げて、最初はカメラメーカーのOEMをしていたんですが、デジカメの衰退とともに仕事も減ってきて。そこで水中ライトの開発をはじめたんです」

水中ライト、というと?

「主に水中映像の撮影で使うものです。海のなかは、深くなるにつれて赤系の色味が失われていきます。だから懐中電灯のようにただ照らすだけでなく、太陽光のように自然で鮮やかな色味を再現できるように設計されたライトが必要なんです」

ここで開発されたRGBlueというシリーズは、徹底した防水性能や電池を消費しても光量が落ちないなどの長所から、プロアマ問わず多くの水中写真家に支持されてきた。

今年は、超高精細撮影にも使用できる大光量水中ライト「BLACKBODY」をNHKと共同開発し、最高峰の水中映像分野にも進出した。

そのコードレス照明の技術を応用してスタートしたのが、アンビエンテックのプロダクト。

シーリングライトのように天井から部屋全体を照らすのではなく、持ち運びが可能なコードレス照明は、空間を光で自由に演出することができる。

たしかに水中ライトと技術的なつながりはあるけど、雰囲気や用途はまったく違う。アンビエンテックのほうは、道具としてのスペックやタフさよりも感性に訴える光というか。

どちらかというと、インテリアや空間デザインのような領域ですよね。

「もともと興味はあったんです。子どものころから、スイッチひとつで夜でも昼みたいに明るくなる日本の住空間に疑問を感じていて。だから自分が好きな音楽、特にアンビエントやチルアウトが好きなんですけど、そういう曲を聴くときは必ず部屋を暗くして空間をつくったりしていました」

仕事で海外へ出張するようになると、久野さんは、日本の照明文化との違いをあらためて感じるようになった。

特にヨーロッパでは、人をもてなすときにキャンドルで演出したり、部屋ごとに照明を組み合わせて心地いい空間をつくったり。

「夜がちゃんと暗いんですよね。暗いけど、心地いい。人間の本質としても、ずっと昼間のような光の下にいるよりは、日が暮れて少しずつ暗くなって眠りにつくっていうサイクルのほうが、あっているはずなんです」

心地よい空間をつくるための照明。

ヨーロッパには優れたプロダクトが多くあるものの、電力基準や建築の違いなどから、そのまま日本に取り入れるのは難しい。

日本のブランドとして何か提案ができないだろうか。

そう考えていた久野さんを後押ししたのは、当時普及してきたLED。消費電力が少ないので、コードレスすなわち充電式でも本格的な照明をつくれるようになった。

さらにUSB充電を取り入れれば、日本から海外への持ち出しや、海外のユーザーへ輸出もしやすい。

使う場所を選ばないだけでなく、テーブルの上などに置いてもすっきりと美しい。

「ちょっと手に持ってみてください」と久野さんに勧められ、製品を持ち上げてみると、どれも少し重い。

「これ、無垢の金属を削り出しているんです。こっちも、クリスタルガラスを削って磨いて。型に嵌める成形方法ではないから、気泡が入っていないでしょう」

「安くて軽いものをつくろうと思ったら、プラスチックでもできるんですけど、それだと、長く使っていくうちに劣化してしまう。経年変化も味になることを考えて、素材や加工の仕方を選んでいるんです」

もともとデジタルカメラの業界に携わっていた久野さんは、次々に新商品が出て旧モデルが淘汰されていくスピードに違和感を感じていた。

自分たちでものづくりをするなら、長く愛用してもらえるロングライフデザインがいい。

そんな思いから、販売後の修理まで自社で行っている。

「最近の家電製品って、ちょっと落としても壊れないくらい頑丈にできていて。ただ、そうやって最初からクレームを意識しすぎると、デザインの制約が大きくなってしまう」

アンビエンテックでは、業界の常識に反して、少し実験的なアプローチもはじめている。

たとえば「Sage」という、葉っぱのようなフォルムのテーブルライト。

ものすごく繊細。その分、軽やかな印象がありますね。

「まあ、落としたら壊れるかもしれないけど、そのときはちゃんと直しますんで(笑)。万人受けはしないかもしれないけど、繊細なものやさらなるデザイン性へのチャレンジも、灯りを楽しむ要素としては必要なのではないのかと思います」

2019年発売した「TURN」「Sage」には、光の色味にも特別な工夫がある。

光源に2種類のLEDを使用し、光の強さによって色味がロウソクのようなあたたかいオレンジ色から電球色に変化するよう設計されている。

「人工的な照明は、一定の色味で明るくなったり暗くなったりしますよね。でも自然界の光、つまり日光は、朝と夕方はオレンジ色、昼間は白色というふうに変化するものなんです」

「地下鉄の構内にいるとき、なぜか憂鬱な気持ちになることがあるでしょう。薄暗いのに白っぽい光で。あれは自然界でいうと、すごく厚い雲に覆われた曇天の昼間の状態なんですよ」

なるほど、言われてみるとそうかもしれない。


人が無意識のうちに感じる心地よさを拠り所に、製品を生み出すアンビエンテック。

数値では計りにくい部分を設計に落とし込んでいくのって、エンジニアにとっては難しいことなんじゃないかな。

設計部門の責任者である江口さんにも話を聞いてみた。

エンジニアは、パートスタッフも入れて全部で6人。アンビエンテックの製品と水中ライトは同じチームで設計しているので、新しく入る人も、両方の開発に関わっていくことになる。

初期の製品は水中ライトと同じように、計測器を使いながら光の具合を調整していたものの、最近は自分たちの目で見て判断するというやり方に変わってきた。

「アンビエンテックのほうは、細かい技術的なスペックよりも感性が大事なところもあるので。はじめは戸惑いましたけど、だんだんわかってくるものですね」

江口さんは水中ライトの仕事をはじめたときも、自分で使用感を試すためにダイビングのライセンスを取り、今ではそれが趣味になっているらしい。

頭で考えるだけでなく、実際に試して、感じてみたい。そんな好奇心があると、前に進んでいきやすい仕事なのかもしれない。

「僕は前職では、大手の下請けのような仕事をしていました。当時は言われたことを形にしていくだけの仕事が多かったんですけど、今はデザイナーから直接イメージを受け取って、どう美しくまとめるか、自分で考える。それはやっぱりやりがいがありますよね」

とはいえ日本にはそもそも、光で空間を演出するためのプロダクトが少なく、商品開発の参考にできる前例が限られていた。

そのため、電球や回路などの部品もほとんどオリジナルでつくっている。

さまざまな工場を巡り、現場を見たり人と話したりしながら、部品加工の発注先を探すところからエンジニアが担ってきた。

「僕は、工場に行くのが好きなんです。『こうやってつくっているのか』って見るのが単純におもしろいし、人とのつながりもできる。大きい会社だと先輩に質問するようなことも、僕は工場の人に直接いろいろ教えてもらっていて」

大きい組織では分業で進めるような仕事も、ここでは生産に関わる工程のほとんどをエンジニアのチームが担当する。

技術的な部分だけでなく、人とのコミュニケーションやスケジュール調整など、仕事は幅広い。

部品を探すところから、試作、改良、量産に落とし込んで、最後の検品。さらに製品の完成後も、モデルの改良を続けていく。

「長く使うためもの」という前提でデザインされたものだからこそ、地道な制作過程にもやりがいを感じられるはず。

「実務経験はある程度必要だと思いますが、若い人にとっては視野が広がる現場だと思います。いまだに、どうやってつくろうかって迷うデザインもありますけど、世の中にすでにあるものをつくるより、わからないことのほうがワクワクするというか」

「特に若い人たちには、僕らにはない発想があると思うので、そういう面も期待したいですね」

ブランドがスタートして、約10年。

今まではパーツをゼロからつくっていたものの、最近は部品の供給も安定して、デザインのバリエーションをより増やせるように。

環境を選ばずに使えるという長所を生かして、これから海外にも販路を広げていこうと考えているそうです。

心地よい灯りを、日々の営みのなかに。

人が本来持っている自然な感性を、技術でかたちにする。そんなものづくりの仕事だと思います。

(2020/9/25 取材 高橋佑香子)
※撮影時にはマスクを外していただいております。
※12月11日(金)には、アンビエンテックの代表・久野義憲さんがしごとバーのゲストに来てくれます。詳細が決まり次第、こちらのページでおしらせします。
(日程は当初11/26を予定しておりましたが、事情により変更いたしました)
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