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地域おこしやまちづくりのために、全国でさまざまな活動が広がっている。新しい観光拠点をつくったり、地域のリソースを生かした場づくりをしたり。
どんなプロジェクトでも大切なのは、そこで暮らす人たちがどんな場所にしたいのか、そして何十年後の未来も、まちが元気でいられるためにはどうすればいいのかを考えることなんだと思います。
今回紹介するのは、そんなふうに地域の人と一緒に夢を未来へつなげていくまちづくりを実践している人たちです。

根底には、地域のやりたいことや夢にとことん寄り添ってかたちにしていきたいという思いがあります。
今回募集するのは、九州の各地域で古民家の設計施工やまちづくり事業の運営など、様々な分野でNOTEと一緒に仕事をしてみたいという業務パートナー。
併せて、九州の各地域でまちづくりに関わるエリアプランナーも募集します。
福岡県南部にあるうきは市。福岡空港からは車で1時間ほどの場所にある。
市の中心部にある筑後吉井は、国の重要伝統的建造物群に指定されている在郷町。白壁蔵づくりの街並みが続く風景は、とても趣がある。

話を聞かせてくれたのはNOTEの小野さん。うきはをはじめ、九州各地で動いているプロジェクトをサポートしている。

NOTEが取り組んでいるのは、古民家などの地域資源を生かしたまちづくり。“なつかしくて、あたらしい、日本の暮らしをつくる”という理念のもと、全国各地に眠る古民家を宿や飲食施設として再生している。
単純に古民家を改修するのではなく、柱や梁など、積み重ねてきた歴史が感じられるものをできるだけ生かす。また、和紙や醸造など地域ごとの文化を宿のコンセプトに取り入れることで、地域全体の産業が活性化することを目指している。

「一方で、どこに行ってもおなじような商業施設が建てられて、ちがう地域なのにおなじ風景に見えてしまうことにも気づいたんです。それで、それぞれの地域独自の風景を残す仕事をしたいなって思うようになりました」
風景を残す、ですか。
「たとえば放牧地が広がる風景は、自然だけじゃなく酪農家さんがいることで成り立つじゃないですか。風景って目に見える自然や建物だけじゃなく、人の暮らしやなりわいがあってこそ残っていくんですよね」
大学在学中からずっと、地域それぞれの暮らしやなりわいを生かすまちづくりがしたいと考えていたという小野さん。ところが、新卒でまちづくりの仕事を見つけるのはむずかしかった。
まずは社会人経験を積もうと、東京でマーケティングやライター、広報など、さまざまな仕事を経験。
NOTEとの出会いは、九州のまちおこしイベントの手伝いをしていたときのこと。
「まちづくりに興味があるって話をしたら、イベントが終わってしばらくしたときに『免許と車は必須だけど九州にくる?』って声をかけてもらって。事業の立ち上げの連続で体力が要る仕事だっていうのは聞いていたので、最初はすごく迷いました」
「けれど、ここでチャレンジしなかったら人生後悔しそうだなって。大変でも面白そうな方を選んだほうがいいと思って、働くことに決めたんです」
現在、九州エリアを担当するスタッフは小野さんを入れて3人。相談段階の案件も含めると、九州だけで18地域に関わっているそう。
スタッフそれぞれがメインで担当しているエリアを持ちつつ、それ以外の地域もサポートしあっている。

まちの人の思いをもとに事業計画を立て、物件が揃ったら、ファンドの投資や銀行からの借り入れを行う。活動費や改修費を確保するために、行政の補助金を申請することもあるそう。
その後は工務店とやりとりして工事を進めたり、宿やレストランを運営するテナントをマッチングしたり。営業開始後も、オペレーションや新しい企画についての相談を受けるなど、継続的に関わっていく。
「たとえば熊本県の甲佐町では、商店街の若い人たちが集まって、古民家を生かした宿づくりをしています。商店街を元気にしたい、家族で楽しんでもらえる場所をつくりたいっていう思いで準備を進めてきて、今年の11月にオープンする予定です」

「最近かたちになったのが、宿泊客が商店街で使える“甲佐パス”っていうクーポン券。提携店に持っていくと、和菓子屋さんでどら焼きをサービスしてもらえたり、唐揚げ屋さんがおまけをつけてくれたりするっていう仕組みです。提案したとき『お、なんかおもしろそう!』って、反応してくれたんですよね」
パスを作ることになり、お店との連携の仕方も地域のチームが主体的に動いて、自分たちで具体的な案を店に提案してくれているそう。そのほかの地域を遊ぶアクティビティも、地域の方が主体となり動いている。
「事業の中心になるのは、あくまで地域の人たち。誰かにやらされるまちづくりではなく、自分たちがやりたいことをかたちにするのが、続いていく事業になるために一番大切なポイントだと思います」
「やりたいことを引き出すためにも、人に興味を持ってコミュニケーションをとることが大事だなって、日々感じています。仕事の幅はとても広いので、めちゃくちゃ大変ですね。その覚悟は持ってチャンレンジする必要があるのかなと」

求められる仕事が多いぶん、いろいろな経験をしてきたことが生きる環境だと思う。
「資金調達がスムーズにいかなかったり、地域の人の思いがまとまりきらず中止になってしまったり。課題に向き合い続けるので、トラブルも多いです。だからこそ、自分の芯を持って最後までやり遂げる意思がある人がいいのかなと思っていて」
「最初から決まったゴールはないので、地域の人がやりたいことを一緒に見つけて、目標をつくって進んでいく。そういうことに興味を持てる人と一緒に働けたらいいなと思います」
地域の人と考えたコンセプトを貫きながら事業を進めていくには、建設や建築業に携わる人との連携も欠かせない。
業務パートナーとなる人たちはどんな関わり方になるのか、一緒に仕事をしている人たちにも話を聞いてみた。
まずは熊本県で(有)球磨緑地という建設会社を営む久保山さん。

NOTEの事業では、施設の外構設計や庭の造園を担当している。

「それにNOTEの現場の場合、何もない状態から外構を構成するというよりは、元々現地に残っているものを生かして外構を構成することが多い。誰も気にしていないけど、実はすごい価値があるものが見つかったりして面白いですよ」

「大変ではあるんですけど、地域の人と直接話しながら仕事ができるし、自分がやったことがないものに関われるのが楽しいんですよね」
久保山さんのように、本業をNOTEの事業に生かしながら仕事の幅を広げたい、という人にとっては面白い働き方かもしれない。
最後に話を聞いたのは、設計施工で古民家改修に関わっている野口さん。

「現場での作業をコーディネートするような仕事をしています。古民家改修って新築とちがって、CADで設計図をぴしっと描いても、なにを残してどう手を加えるか、現場で判断しないといけないことが多いんですよ」
たとえば、長押(なげし)と呼ばれる部分。この宿では、ふた部屋分、10メートルはあろうかという長さの一枚板でつくられている。

「こういったものを残しながら、客室として整えるにはどうしたらいいか。小野さんたちと相談しながら、価値あるものを生かして、建物を生かしていく方法を考えています」
床材の汚れをヤスリで削って剥がすと傷んでしまうため、目の細かいヤスリで丁寧に削り、表面を米ぬかで磨いた上で板の隙間を埋める。傷んだ左官壁もすべて塗りなおすことはせず、必要最小限の補修にとどめる。
古民家の雰囲気を生かすためにはどんな方法が最善か。常に考えながら手を加えていくことが大切なのだそう。

「自分の引き出しも増えるし、これまでの経験も生かすことができる。NOTEさんの仕事はそういう現場に出会えるので、すごく楽しいです」
工務店や建築設計士をしていて、古民家改修やまちづくりに興味がある。そんなふうに思っている人にとっては、チャレンジしがいのある環境だと思う。
みなさんの話を聞いていると、「面白そう」という気持ちがエネルギーになっているように感じました。
地域の夢をかたちにする。
目指すものは大きいけれど、自分の手で何かをつくっていく手応えはあるはずです。
(2020/8/27 取材 稲本琢仙)
※撮影時にはマスクを外していただいております。