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頭で考えてばかりいるなと思ったら、この記事を読んでほしいです。まずはお客さんとしてお店に訪れてほしい。
rub luck cafeで水平線を眺めたり、WAKAYA 津屋の竈の火を感じたり、九度山駅でおむすびを食べながらホームに腰掛けてみたり。
こういった場所をつくり、営んでいる和歌山の源じろうさんの求人です。いろいろな職種があるので、どれかピンとくる仕事があるかもしれません。
大阪から高速道路を南に進んでいく。山々を越えて、大きな川を渡り、しばらく進んで高速道路を降りる。山の上までみかん畑が広がる風景を横目に見ながら進んでいくと、目の前に水平線が広がった。
rub luck cafeに到着すると、すぐに源じろうさんが現れた。
2階に上がり、広々とした空間に点在しているソファの一つに座ると、ちょうど自分の目線の先にまた水平線が広がった。
ここは源じろうさんの原点となる場所だ。
「今は48歳なんですけど、もともとバイクのレースをやっていたんですよ。そのときから目標とか夢を追いかけてずっとやっていて。30歳でバイクを辞めて、それから何するよってなった」
「たまたま焼き物がすごい好きで、普通のサラリーマンになるのではなくチャレンジしてみたいなあと。自分で焼き物の店をやろうと決意するわけですよ」
ちょうどネットショップの黎明期。まずはインターネットの通販をはじめることになった。
「でも性に合っていなくて、リアルに変わっていくんです」
和歌山の飲み屋街の端のほうにあった空き物件でお店をはじめる。さらに1年くらいすると、銀行だった古くて趣のあるビルに出会って、そこへ引っ越す。
ただ、最初からうまくいくこともなく、お金も借りられるだけ借りて苦しむことに。
「商売は今も下手なんですけど、3年くらい苦しんで。ただそのときによく学んだ。お金を払って僕はなぜこんなに苦しんでいるのか。仕事とは何なんやとか、それこそ生きるとは何なんやくらいの」
10月の晴れた日に、ふとドライブへ行くことにした。
「和歌山の人間って、悩み出すと南のほうに向かうみたいなところがあって。そのときも目的なしに南に走っていたら、ちょうどここの前に差し掛かったときに夕陽が沈もうとしているのが見えて。すべてが解けたみたいな瞬間があったんですよ」
今、感じていることを誰かと共有したい。そんな思いが湧き上がる。
左を向くとrub luck cafeとなる空き倉庫があった。すぐに電話して借りることに。
「自分がここで出会った感動を味わってもらえたら良いなと思って。コーヒー一杯でも良いからここで時間を過ごしてもらいたいと思って。当時は反対されたんですけどね」
反対?
「中途半端な場所なんですよ。もっと南に行けば白浜などもあるし。あそこで誰が来るんやって」
床板は当時のまま。親戚の製材所に相談して、壁に使える板を1枚10円ほどで譲ってもらう。
助けてくれる仲間たちもいたので、みんなでペンキを塗る。椅子もほとんど貰い物で集まった。みんなが楽しくやっていけるように、3ヶ月かけてゆっくりリノベーションしていく。
「良いも悪いも開き直ったじゃないですけど、今まで考えすぎていた部分があるんじゃないかな。ネットショップから始まって、こうしたら売れるんじゃないかとか、こういう書き方にしよう、こういう伝え方をしようとか、そういうことばっかりだった」
「自分のドキドキ感、ワクワク感みたいな、そっちに向いて行ったほうがいいんじゃないか。これであかんのだったら、それこそ僕の何かがあかんから、高野山に出家や、みたいな(笑)そんな勢いでしたけどね」
オープンしたのが2008年8月1日。最初は少なかったお客さんも口コミで広がり、県外からも多くの人が訪れるようになる。
「考えるというよりは自分のドキドキ感っていうか、ワクワクが自然に向くことをやろうと考えて。そこから店づくりが始まっていったような気がしますね」
「ここの後につくったバール・ヌメロオンセという店もそうだったんですけども、街中に都会を感じるようなバーをつくってみたい!っていうのにワクワクして。やろう!みたいな感じですぐにスタートして」
振り返ってみると、rub luck cafeの前後で何かが変わったんでしょうか。
「そうですね、変わりました。そのあともなるべく性に合わないことを切っていったところはあります」
性に合うかどうかって、だんだんわかってくるものなんですか?
「みんな仕事やっていたら薄々わかってくるとちゃうんかなあと。解放するか、してないかみたいなところはあるような気がするんですけどね」
自分の理想をつくるなら5店舗くらいで終わりにしようと考えたこともあった。ただ、自分が生まれた和歌山という土地でチャレンジし続けたいという気持ちも湧き上がってくる。
3年ほど前に法人化して、お店も7店舗まで増えた。
これからもチャレンジを続けていくために、組織や仕事のやり方も変えていかなくてはいけないと覚悟する。
「スタッフの成長であったり、お給料の面とかも考えたりするときに、今までやってなかった仕事のあり方を模索しないとダメなんじゃないかと思ったんです」
今、取り組んでいるものの1つが「金山寺味噌の販売」。
この味噌はごはんのお供として食べられる味噌で、和歌山のお坊さんが中国から持ち帰ったものなんだそう。醤油が生まれる前のようなもので、具材にはいろいろな地域野菜が入っている。
金山寺味噌の経営を受け継いだのはなぜなんでしょう。
「なんかすごいワクワクして、これはやりたいなと。足りないピースの1つだと感じていて」
足りないピース?
「僕ら和歌山で働いている、仕事をつくろうとしている人間、会社というか組織の未来像のピースの一部なんじゃないかと」
味噌はネット販売も考えているそう。組織を安定させていくためにカフェや飲食以外の柱となる事業をつくっていく意味もあるだろうし、食品だからすでにあるお店との親和性も高い。まさにピタッとはまるピースと言える。
最近、はじめたのが道の駅「四季の郷公園 FOOD HUNTER PARK」の運営。いろいろな企業と組んで、場所づくりを進めている。
道の駅を実際に見たいので、rub luck cafeを後にして向かうことに。
「もともと四季の郷公園という場所で。よくここまで来て、コーヒーを飲んだり、弁当を食べたりしていたんです。落ち着く場所だし、すごい好きだった。でもせっかくいいところなのに活かせていなくて」
公園の一部を道の駅にするというプロポーザルの募集があることを知る。知り合いなどにも声をかけて応募したら見事に通った。
和歌山市の郊外にあって、豊かな自然に囲まれている。かまどで焚いたごはんが食べられたり、新鮮な野菜や果物を購入できたり、薪火をつかってBBQもできる。
ここで働いている辻元さんに話を伺った。
「和歌山の出身なんですけど、大阪に就職しまして、結婚して地元に戻ってきました。源じろうさんのお店をすごく好きになって、一緒に働きたいと思いました」
応募したときにすぐ働くことになったわけではなく、今回の道の駅ができるタイミングで声がかかり働くことになる。
「もともと源じろうさんにはどんな場所ができるのか聞いていたので、そこで働くことができてとても嬉しくて楽しいです」
入ってみてギャップなどはなかったですか?
「いろんな飲食系で働いている友達がいるので、源さんのところで働くことになったよっていう話をしたら大丈夫?みたいに聞かれて」
大丈夫?心配されるようなことがあるんですか。
「源じろうさんって、任せてくれる人なんですけど、言い換えれば放任主義だから」
ぐいぐい引っ張っていく人だと思ったらそうでもないんですね。
「そうなんです。あとはやっといて、みたいな感じもあって」
手取り足取り教えてもらいながらやりたい人もいる。あらかじめ細かく決まっていないと困ってしまう人とか。決められたことを着実にやりたい人には合わないかもしれない。
源じろうさんのお店が好きで、柔軟な変更も面白がれて、自分で考えて働きたいという人にはいいかもしれません。
「そうですね。5月に入社して7月にオープンでしたから、準備期間も短い中で結構バタバタで始まりましたよ」
もし指示がないと動けない人だったら難しかったかも。
「あと、いろいろなことに興味をもっている人は良いと思いますよ。源さんもすごい知識がある人なので」
繰り返しになりますが、ああしろこうしろってうるさいタイプ、ではない?
「ではないです。まあ、源さんには一つひとつのお店に強い思いを持っているので、そこに合わせていく必要はあると思いますよ。基本的に自由にできますが、源さんのイメージから離れてしまったら違うよって言われると思います」
翌日にふらりと他のお店にも行ってみることにした。
まずは「WAKAYA 津屋」へ。実は2度目の訪問。ごはんがおいしいので朝ごはんを抜いてやってきた。
竈の中で薪が燃えているのが見える。
お店の中にはごはんとお出汁の良い香りが漂っている。オープン直後なのに席はほとんど埋まってしまった。
もともと海苔の品評を行い、全国へ送っていた場所。今では和歌山産の海苔はほとんどなくなってしまったらしい。源じろうさんによって、飲食店となって残ることになった。
使い古された床板が美しく、やさしい気持ちになる。
近くの漁港では新鮮な魚を漁船から直接買うことができるそうで、刺し身もフライもどれもおいしい。夜にここで飲むのも最高だろうな。
食事を終えてから九度山へ向かった。
南海電鉄九度山駅の構内にある「おにぎりスタンド くど」へ。駅舎の一部がお店になっていて、こちらも竈で焚いたごはんのおにぎりが食べられる。
しばらくホームの反対側に座ってお店を眺める。
車やバイクで駅を訪れる人。電車から途中下車して食べる人。1時間に数本の電車が駅を通り過ぎていく。気になって足を止める人も多い。
自分もおにぎりを買って、電車が行き来するのを眺めながら頂く。気持ちの良い日だったので、ずっとここにいれたらどんなに気持ちがよいだろうと思った。
源じろうさんのお店が好き。ここで働く人には欠かせないことだと思います。
もし興味を持ったら、まずはお店を訪ねてみてください。源じろうさんは、週末にrub luck cafeにいらっしゃることも多いみたいです。
(2020/9/18 取材 ナカムラケンタ)
※撮影時にはマスクを外していただいております。