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林業×fabラボ
ものづくりの実験場で
何を生み出す?

"ある日、おじいさんは山へ柴刈りに行きました。すると-”。

昔話に出てくるように、古くから身近な存在だった林業。一方で、近年は衰退しているという話もよく耳にします。

町のおよそ7割を森林が占める高知県佐川町(さかわちょう)では、7年前から「自伐型林業」に取り組んできました。大型機械を使った大規模な林業に比べ、個人で伐採から搬出まで行うことでコストを抑え、採算性と環境保全を両立できる林業として近年注目されています。

佐川の山で切り出した木を、佐川で生かしたい。そんな想いで2016年にオープンしたのが、「さかわ発明ラボ」です。

レーザーカッターやUVプリンタ、デジタルミシンなど。発明ラボにはさまざまな工作機器が用意されていて、誰でも自由にものづくりをすることができます。

今回募集するのは、発明ラボを運営する地域おこし協力隊。あわせて、自伐型林業スタッフも募集します。

一人ひとりユニークな経歴のスタッフが集うラボに加わる、新しい個性を探しています。

(取材はオンラインで行いました。現地の写真は、ご提供いただいたものを使用しています)



佐川町を地図で探すと、県央から少し西へ行ったところに位置していることがわかる。

高知市内からは車で50分ほど。まちなかには、創業400年を超える酒造「司牡丹」の蔵や、江戸幕府の使者をもてなした建物など、歴史的な景観が広がっている。

緑豊かな環境も特徴のひとつで、キャンプや釣り、星空観察など、アウトドアを楽しみに町を訪れる人も多いそう。

「おとといの仕事終わりに、仲間と焚き火をしに行ったんです。そしたらゲリラ豪雨に遭っちゃって、全員ビショビショになって帰ってきました」

そう自己紹介してくれたのは、地域おこし協力隊でさかわ発明ラボの運営メンバーのひとり、大道(おおみち)さん。

発明ラボからつないでくれているようで、後ろからは機械を動かすウィーンという音が聞こえてくる。

「今日は一般のお客さんが自由に機械を使える開放日なんです。みなさん好きな材料を持ってきて、レーザーカッター、UVプリンタ、デジタルミシンとか、いろんな機械でものづくりをしています」

佐川町は、山主から管理を任せてもらっている山を適切に整備し、持続的な森林を育てていく「自伐型林業」に7年前から取り組んできた。

森林資源を未来につなぐためにも、林業に取り組む価値はある。一方で、切り出した木の活用方法まで考えないと意味がないし、生業としては厳しい。

ものづくり拠点をつくることで、地域の人にも木を身近に感じてもらい、付加価値を高めていけたら。そんな想いで立ち上がったのが、「さかわ発明ラボ」だ。

「この発明ラボは、ものづくりを通して『やってみよう』という気持ちを育んでいく実験場です。町の人のニーズに応えるなかで、3つの柱を軸にもつようになりました」

ひとつめの柱は「DIY」。町内外のものづくり初心者から家具職人、アーティストまで、ものづくりをしたい人に対して機材の貸し出しや簡単な作業サポートを行う。

そのうちDIYの利用者から“つくりたいものはあるけれど、つくり方がわからない”という声があがり、ふたつめの柱として、企画から製作まで伴走する「コンシェルジュ」のサービスが始まった。

今では、都内の企業から家具製作の依頼を受けたり、イベントやフォーラムの装飾展示を手がけたりと、さまざまなものづくりに取り組んでいる。

そしてみっつめが「教育」。小中学生向けのものづくりプログラムや、小学校でのプログラミング授業などを行っている。

「ぼくたちスタッフは、いずれかの柱にメインで関わっています。プログラミングができる人、デザイン畑の人、建築分野の人、とにかくものづくりが好きな人。メンバーそれぞれ、自分の得意なことを活かせるチームに加わっています」

大道さんはどのチームに入っているんですか?

「ぼくは教育ですね。ものづくりより場づくりが得意で、子どもたちが楽しく学んでアウトプットできるように、学習をデザインしていくことに関心があって。毎週水曜と木曜に、小中学生に向けて『放課後発明クラブ』という場をひらいています」

放課後発明クラブでは、大道さんを中心に、毎週さまざまなワークショップを開いている。

たとえば町内のライトアップアーティストと組んで光の装飾をつくったり、佐川町産の木材にマイクロビットという小さなコンピュータを埋め込んで、ロボットをつくってみたり。

「この間、発明クラブに来ている子の親御さんが、『子どもが楽しそうだから、私も来てみました』と言ってくれて。じゃあ一緒に何かつくってみましょうかってことで、レーザーカッターやUVプリンタを使ったうちわづくりのプログラムに挑戦しました」

へえ、そんなことが。子どもにつられて大人も挑戦してみるって、なんだかいい光景だなあ。

「発明ラボは今年で5年目です。運営も安定してきましたし、認知度もあがってきて、第二フェーズに入ったなと感じています。これからは、町の人に『佐川に発明ラボがあってよかった』って思ってもらえる仕組みづくりをしていきたくて」

そんな考えから、大道さんは現在、町の図書館に「読書小屋」をつくる企画を進めているのだそう。

「ぼくは本が好きで、友だちの部屋に行ったらまず本棚を見たいタイプなんです(笑)。中に入ったら360度本棚という半畳ほどの小屋が図書館にあったら面白いと思って、図書館に提案しに行って。いいね!って乗ってもらえました」

設計はものづくりが得意なスタッフに協力してもらい、今度試作品をつくってみるという。

「図書館の集客につながるかもしれないし、うまくいけば製作キットをふるさと納税の返礼品にしても面白いかもねって役場の人とも話していて。自分がやりたいことと、町が発明ラボに求めていることを重ねようと試行錯誤しています」

新しくメンバーに加わる人も、自分の経験や得意を生かして活動してほしい。ものづくりが好きな人はもちろん、まったく異なる分野に興味がある人でもいいかもしれない。

「発明ラボは、そのときいるメンバーによってガラッと色が変わっていきます。現場で決めていくことが多いし、そのほうが面白いと思うんです」

「大切なのは、この環境を楽しめるかどうか。ちょっとワークショップやってよ、なんてこともよくあります。指示待ちじゃなく、自分から動き出せたり、町のための企画を作ったりできる人がいいかもしれませんね」



発明ラボの面白さのひとつは、材料の生産地がすぐ近くにあることだと思う。

「自分の切った木でプロダクトをつくりたい」と移住してきた人もいる。自伐型林業の協力隊として働く村澤さんも、林業とものづくり、二足のわらじを履くひとりだ。

村澤さんは仕事のかたわら、同じく林業の協力隊2人と、木工ユニット「ringin’(リンジン)」を組んでいる。

「林業はシビアな面もあって、収入源が補助金頼みなんです。林業を続けていくために何かはじめたいとずっと思っていて。それなら林業をしているんだし、木を使ったものをつくってみようって」

昨年の秋、佐川町産木材を使ったオリジナルのスツールをつくるワークショップを企画したことをきっかけに、ringin’としてものづくりに取り組むように。

今は発明ラボの機材や知り合いの大工さんの工具を借りながら、アロマディフューザーや幼稚園のネームプレートなど、さまざまなものを製作しているそう。

こだわっているのは、町産木材や廃材を使うこと。市場では価値がないとされてあぶれてしまうものに、光を当てたい。

「木工ユニットと言いつつ3人ともほぼ素人で。ああでもない、こうでもないって試行錯誤しながらやってます(笑)」

それは楽しそう。発明ラボとも、何かコラボレーションできそうですね。

「そうですね。実は、ぼくら林業メンバーと発明ラボメンバーは、一緒に遊びにいくことはあっても協業する機会は少なくて。すごくもったいないと思うんです」

ひとつの町に、木を切り出す林業家と、木を扱う発明ラボメンバーがいる。その強みを生かして、一緒に新しいことにも取り組んでいきたい。

「たとえば、ぼくたちが切り出した木は、市場に出すと“佐川町産木材”ではなく“高知県産木材”と一括りにされてしまうんです。そういう仕組みだから仕方ないとはいえ、ぼくはお客さんに『これが佐川の木なんだね』と意識して手にとってもらいたくて」

「発明ラボは、ワークショップや発明クラブでよく町産木材を使ってくれています。一方でDIYは持ち込み制で、材料販売はまだしていません。だから、佐川の木を販売する仕組みを一緒につくってみたくて。町の人が手ぶらで発明ラボに来て、ぼくらが切り出した木材のなかから気に入ったものを買って、その場でDIYするとか楽しそうですよね」

たしかにそれはいいアイデア。村澤さんたちと一緒にワークショップをしても楽しそうです。

「タイアップしたら自分たちも楽しいだろうし、町のためにもなるはずです。一緒に面白いことを考えたいので、ぼくたち林業の人間もゴリゴリ巻き込んでくれる人が佐川町に来てくれたらすごくうれしいですね」



今年で5年目を迎えた発明ラボ。協力隊の任期を終え、ひとり立ちをするスタッフも出てきた。

そのひとりが、今年3月に任期を終えた山千代さん。ラボの立ち上げから関わっていて、現在もメンバーのよき相談相手になっている。

「もともとものづくりが好きで、任期中は主に製作を担当していました。ほかにも発明クラブを運営したり、子どもとロボットコンテストに出場したり。まさか教育分野に携わるなんて想像もしていなかったので、面白いきっかけをもらったなと思います」

現在は、友人と一緒に立ち上げた会社を運営しているそう。発明ラボを通じて知り合った人や企業と仕事をすることもあるのだとか。

「都内の私立学校にファブラボをつくるプロジェクトにも参加しているので、月の4分の1を東京、4分の3を佐川で過ごしています。仕事もプライベートも、面白いことをたくさん経験させてもらったから、拠点は佐川に置きたいなと思って」

「任期中は施設の枠組みづくりに追われて、林業の出口開発に全然手をつけられなかったことが気にかかっていました。佐川の面白さは、やっぱり林業と発明ラボが両方あること。卒業後は町から委託してもらって、町産材の6次産業化をメインの仕事にしています」

たとえば今は、高知県内のホームセンターとコラボして、町産木材を活用したアウトドア商品「モクモデル」を企画販売している。

組み立てることで、ウッドスピーカーや鍋敷きなど、アウトドアで活躍するアイテムが簡単につくれる木製プラモデルなのだとか。

「県内にはキャンプサイトが多いこともあって、テスト販売の売上もなかなか好調で。余ったパーツは火つけの燃焼材に使えるなーとか、いろいろ考案中です」

3年間発明ラボで過ごした後、どうやって生業をつくっていくか。不安に感じることもあるだろうけど、山千代さんのような先輩がいるのは心強いだろうな。

「いいギャップもあれば、思いもしないアクシデントもあると思います。でも大丈夫、来たら案外なんとかなるよって伝えたいかな」

発明ラボに自分の個性をかけ合わせて、何を生み出せるだろう。

何かを生み出そうとする人にとって、佐川町は面白いフィールドだと思います。

(2020/08/28 取材 遠藤真利奈)

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