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打ち上げ花火じゃダメ
地域の未来へとつながる
中小企業支援のかたち

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地方創生やまちおこし。

観光に力を入れたり、ユニークなイベントを開催したり。全国の自治体でさまざまな取り組みが行われています。

今回紹介するのは、地域でがんばる中小企業のサポートを通して、地域全体を元気にしていこうとしている人たちです。

奈良県広陵町(こうりょうちょう)と大和高田市が連携し、来年1月に開設されるのが、中小企業向けの経営相談所「KoCo-Biz(ココビズ)」。

相談は無料で、1回1時間。町工場やベンチャー企業、和菓子屋さんに美容室など、地域のさまざまな事業者の悩みを専任の相談員が丁寧にヒアリングし、売り上げアップにつながる具体的な提案をする。

この方式は「Bizモデル」と呼ばれ、愛知県岡崎市の「OKa-Biz」や広島県福山市の「Fuku-Biz」など、全国20カ所以上に広がっています。

今回募集するのは、相談員たちを支える事務局長。バックオフィス全般を取りまとめる役割です。

中小企業を支えることを通じて、地域を元気にしたい。その思いと覚悟を持って働く人たちに話を聞いてきました。


広陵町は奈良県の北西部に位置するまち。京都からは近鉄に乗って1時間弱、大阪からも1時間ほどで到着するため、ベッドタウンとして人気だそう。

近鉄大和高田駅で降り、車で10分ほど走る。駅の周辺には商業施設があり、少し走ると田園風景が広がった。

到着したのは、KoCo-Bizが設置される予定の「ふるさと会館グリーンパレス」。

中に入ると、広陵くつした博物館という一角が。

「広陵町は靴下のまちと呼ばれてるんですよ。生産量で日本一になったことがあるくらい、全国的にも有名なんです」

迎えてくれたのは、広陵町役場の地域振興課で働く栗山さん。KoCo-Bizの事業を担当している。

併設されているコワーキングスペースで話を聞かせてもらうことに。

「広陵町は昔から繊維産業が盛んな地域なんです。ほかにも、いちごやナスといった農業や、プラスチック生産などの製造業も強くて。ほどよく田舎、ほどよく都会って、昔から言ってるんですよ」

栗山さんは企画部や地域振興課などに所属して、地域産業を活性化する仕事に携わってきた。

靴下産業をアピールするためのプロモーションや、町内外でのイベント企画など。一定の効果が見られた一方で、現場の事業者との温度差を感じたという。

「イベントとかPRとか、なにか花火を打ちあげれば事業者は喜んでくれて、売り上げも上がると思ってたんです。でも、そうではなくって」

事業者の話を聞くなかで出てきたのは、補助金を出すなど一時的な関わりではなく、継続的にサポートしてほしいという声。そして、売り方や商品のアイデアの側面からアドバイスしてくれるような存在がほしい、ということだった。

プロモーション活動はできても、販売戦略まで役場がフォローすることはむずかしい。

どうしたらいいか考えているときに栗山さんが知ったのが、Bizモデルだった。

お金をかけずに売り上げアップにつながるような、具体的な商品やサービスの提案をする。本当にそんなことができるのだろうか?と思うけれど、実際に売り上げアップの事例は増えていて、全国各地にあたらしい拠点が次々できているという。

たとえば、愛知県岡崎市のOKa-Bizでは、コロナ禍でイベントや行事がなくなり、進物の売り上げが激減して困っているという和菓子屋さんが相談にきたそう。

相談員が話を聞くなかで目をつけたのは、どら焼き。当時はステイホーム期間で、パンケーキをはじめ、家で楽しめる手づくりお菓子が人気だった。

そこで相談員が考えたのが、皮とあんこがセットになった手づくりどら焼きキット。

付加価値をつけて、通常の倍近い価格で売り出したところ、近隣のファミリー層を中心に人気商品に。お店の売り上げもあがり、全国ニュースにも取り上げられるほど話題になった。

「外の視点を生かして、お金をかけずに売り上げをアップする方法を考える。Bizモデルを広陵町にも持ち込むことができれば、事業者の悩みに対する突破口になると思ったんです」

「Bizモデルの研修にも行って、こんなんがありますよ!って町長に報告してね。去年の7月には、Bizモデルの発起人であるf-Bizセンター長の小出さんにも会って、開設の準備を進めてきました」

その過程で隣町の大和高田市もBizモデルに加わることとなり、現在は2つの自治体共同で事業を進めているのだそう。事業にかかる費用も折半しており、これは全国でも初の試みとのこと。

ところが今年6月、f-Bizで発生した社外専門家の不正受給問題を受け、小出さんは管理責任をとって運営を撤退することに。f-Bizも休止になる出来事があった。

町としては、どう判断したのでしょうか。

「もちろん、f-Bizのなかでルール違反があったのは事実だったので、小出さんにKoCo-Bizセンター長の研修をお願いするかどうか、一旦立ち止まって考えました」

事実関係を調査し、小出さんにも聞き取りをしたうえで、町長と大和高田市長に報告。両首長の協議の結果、KoCo-Bizを成功させるためには小出さんの力が必要だという結論に至った。

「私も議会や事業者さんにちゃんと事実関係を説明して、納得していただいた上で今に至ってます。ここまでいろいろ困難もありましたが、センター長も決まって研修も進んで、ようやくかたちになってきたと思っていて」

「事務局長として来てくれる人も、広陵町と大和高田市を元気にしたいっていう思いを持って来てくれたらうれしいですね」


ちょうどこの日行われていたセンター長の研修が一区切りしたところで、KoCo-Bizセンター長に着任したばかりの小杉さんに話を聞かせてもらう。

「今日は小出さんの研修を受けて、町の事業者さんとも話して。ドキドキする体験ばかりです」

小杉さんは、もともと外資系ラグジュアリーファッションブランドで働いていた。営業担当として現場で経験を積み、会社の役員を務めるなど、第一線で活躍してきたそう。

どうしてKoCo-Bizのセンター長に応募したんでしょう。

「きっかけは自分の娘だったんです。娘は中学生くらいのときから、政治や世の中の動きにとても関心を持っていて、学校や塾などの学生生活では知り得ることのできない社会構造全体に興味を持っていました」

「娘のことを見ていると、彼女が想像する20年後の世界と、僕が想像できる20年後の世界って、全然ちがうんだろうなって感じたんです。国や地域、未来のため。僕にない視点を持っている娘に憧れた、というか」

憧れ、ですか。

「彼女が想像する未来を一緒に見るためには、ファッションという世界だけでなく、国や地域の未来に関わっていくことが必要なんだろうなって。それで服飾業界から離れることを決めたんです」

そのタイミングで見つけたのが、KoCo-Bizのセンター長募集。それまでBizモデルのことは知らなかったけれど、ビジネスの現場で培ってきた経験を活かせると思い、応募した。

研修を受けてみてどうでしょう?

「一番印象に残っているのは… やっぱり、“相談者の人生を預かっている”という言葉ですね」

人生を預かる。

「相談に来る事業者さんは、人生をかけた悩みを抱えている。それに対してちゃんとした提案ができるかどうかは、目の前にいる人だけじゃなく、その家族や取引先、たくさんの人に影響するんです」

「とてつもない責任ですよね。この仕事は誰かの人生を預かっている。その一言に凝縮されています」

相談に来る人の状況は、千差万別。まずは相談者の悩みをしっかりと受け止めて、より良い状況になるように全力を尽くす。

それは相談を受ける小杉さんだけでなく、日々相談者と接する事務局長にとっても必要な姿勢だと思う。

「研修を受けて、このノートが1日で半分なくなったんですよ。娘がくれた新品のペンも、半日で黒のインクが切れてしまって(笑)。メモを取りすぎて今、右手がちょっとつっています」

「これまでいろいろな経験をしてきましたけど、これだけ学びがあることってないなと。しっかりと事業者さんに返していきたいです」

「インクがなくなったよ」って娘に今日ラインします、と少しうれしそうな小杉さん。責任やプレッシャーを感じるなかでも、一歩ずつ歩みを進める姿は、充実しているように見える。

小杉さんは、どんな人と一緒に働きたいですか。

「一番は、中小企業支援を通して地域おこしをするという思いに共感してくれる人がいいと思ってます。まだ立ち上げ前で大変なこともあると思いますが、一緒にチャレンジ精神を持って楽しく仕事をしていけたらいいですね」


今回募集する事務局長は、KoCo-Bizで相談業務以外のバックオフィス全般を担うことになる。

具体的な仕事内容について、役場の地域振興課の細見さんに話を聞く。

「相談の受付からスケジュール管理、資料の作成など、仕事は多岐に渡ります。事務局長には小杉さんをしっかりとサポートしてほしいと思っていて」

センター長の小杉さんは、1週間ごとに広陵町と大和高田市を行き来して相談業務を行う予定だそう。

事務局もセンター長と共に広陵町と大和高田市を行き来し、受付業務や電話対応はもちろん、相談内容の管理や日々の情報発信などを一手に担うことになる。

インターネットや電話で相談予約を受け付けたり、事前に相談の概要をヒアリングし、小杉さんたち相談員に伝えたり。ある意味、相談所の顔のような役割でもある。

また、月の相談件数や、売り上げアップの見込み額など、成果を公開するため、細やかな事務作業も必要になってくる。

事業者がKoCo-Bizを訪れやすくなるような環境も整えていきたい。

たとえば全国のBizモデルでは、「初めてのネットショップセミナー」や「オンラインの使い方講座」などを企画したり、チラシをつくって宣伝したりしている。

こんなふうに、まずは全国のBizモデルを参考にしながら、仕事内容を固めていくことになると思う。

「もちろん僕たちもサポートします。事務作業を淡々とこなすだけじゃなく、やったほうがいいかなということに気づいたらすぐ行動に移せる人がいいと思っています」


皆さんの話を隣で聞いていたのが、Bizモデルをつくった小出さん。

6月にf-Bizが休止してからは、中小企業支援家として、全国にあるBizの人材育成に取り組んできた。

「f-Bizの件は、公的な機関で中途半端な責任の取り方はできないと思い、運営の撤退という決断をしました。今はこうして各地の相談所に足を運んで、どんなふうに相談に乗るか、どんな気持ちで事業者に向き合うか、相談員の皆さんに伝えています」

「ファッション業界のトップランナーだった小杉さんが、これだけ一生懸命やってくれるって、すごいことだと思うんです。役場の方含め、みんなが真剣勝負で取り組んでいる。事務局長も、まずは地域を元気にしたいという思いに共感して、目の前にいる相談者一人ひとりに寄り添ってくれる人だといいですね」


相談者と真摯に向き合うことが、地域の未来につながっていく。

ともに伴走していく人を、探しています。

(2020/10/8 取材 稲本琢仙)
※撮影時にはマスクを外していただいております。
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