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汗かいて
自然に浸って、会話して
いつもの暮らしが面白い

どこまでも続く地平線と、目の前に広がる海。

ここは、北海道・十勝にある広尾町(ひろおちょう)。その豊かな自然環境から、畑作や酪農、漁業、林業と、一次産業がとても盛んな町です。

この町の大自然や、人の営みをもっと多くの人に知ってほしい。そんな想いから、昨年「ピロロツーリズム推進協議会」という団体が組織されました。

メンバーは、酪農家や漁師、公務員、デザイナーなど、まちの若手たち。

観光名所を紹介するのではなく、たとえば漁師さんと早朝の漁船にのって一緒に朝ごはんを食べたり、牛の世話をしながら酪農家さんと会話したり。広尾の日常を楽しんでもらいたいと考えています。

今回は、ピロロツーリズムの研修生を募集します。

ある日は一次産業の現場で働き、ある日は体験プログラムを企画して、ある日はまちの情報を発信する。そんな過ごし方になりそうです。

動画や写真、デザインといったスキルを持つ人はもちろん、新しいものを生み出したいという人に、まずはこの町を知ってほしいと思います。


とかち帯広空港を出て、まっすぐ伸びる道をドライブする。

どこまでも広がる畑と、遠くに見える山々。北海道と聞いてイメージする通りの風景が広がっていて、気持ちがいい。

1時間ほど走ったところで、道路脇に「菊地ファーム」の看板を発見。道を曲がった先には、あたり一面放牧地が広がっていた。

放牧地の一角にあるカフェに車をとめる。

中に入ると、菊地ファームとカフェのオーナーであり、ピロロツーリズムの会長でもある菊地さんが迎えてくれた。

「ホットミルク飲めますか?」というお言葉に甘えて、一息ついてからお話を伺うことに。

千葉県出身の菊地さんは、11年前にご夫婦で新規就農した方。

「自分たちが本当に飲みたい牛乳をつくりたいと思って、牧場を始めることにしたんです。今は85頭の牛がいて、雪が積もる季節まで外で放牧しています」

「牧草地と牛舎は行き来自由で、何を食べてどう過ごすか、その日の体調や気分によって牛が好きに選んでいて。ストレスをなるべく与えないことで、健康的でよりおいしい牛乳を出してくれるんです」

そんな菊地さんが、昨年町の人たちに呼びかけて立ち上げたのが、ピロロツーリズム。

一体どんなきっかけで、酪農家の菊地さんがツーリズムの団体を立ち上げることにしたんだろう?

尋ねると「ちょっと遡るんですけど…」と前置きしてから話してくれた。

「牧場をはじめて4年目に、都会の高校生の受け入れをしたんです。2日間、一緒に搾乳して、子牛の世話をして、星空を見て、十勝でとれた野菜でピザをつくって。ミルクが出なくなった乳牛の肉をつかったごはんも食べてもらいました」

「おもてなししすぎないように、なるべく普段通り過ごすように気をつけていたんですけど、みんなそれぞれ感じるものがあったようで。メッセージカードに、びっしり感想を書いて伝えてくれたんです」

自分にとって当たり前の日々にも、じつは楽しさや気づきがたくさん隠れているのかもしれない。

それまで「たまたま就農した場所」と思っていた町の印象も、だんだんと変わってきた。

「牛がのんびり寝ていて、シシャモや毛ガニがあがる海も、鹿やヒグマが暮らす豊かな山もある。漁港では漁師さんがワイワイ働いていて、林業に携わる人たちがいて。自然に根付いたいろんな営みがあるんです」

目立った観光名所はないけれど、大自然と、人の営みがある。

素直にまちの日常を伝えたら、きっと好きになってくれる人もいるんじゃないか。

そんな想いから、菊地さんは町内の漁師さんや農家さんに声をかけて、『ピロロフェス』というイベントを8年前に開催する。

牧草地のなかで、広尾町でとれた食べものを直販したり、牧草ロールや干し草で遊べるようなスペースをつくったり。2年目からは、漁港や林のなかなど、ほかの一次産業の現場も会場になった。

回数を重ねるうちに、菊地さんは「もっといろんなことを伝えたい」と思うようになったそう。

「広尾町のよさって、暮らすように過ごすことでわかるものだと思うんです。でも一日で伝えられることには限界がある」

「だったら、もっと一人ひとりと深い関係をつくる機会があればいいんじゃないかって。たとえば『次はシシャモの時期にまた来るね』とか、『広尾といえば菊地ファームだよね』とか、そんなふうに広尾とつながれるきっかけをつくりたいなって。それで町の漁師さんや酪農家さんたちと一緒に、ピロロツーリズムを立ち上げました」

発足したのは一年前。以来、いろんな体験プログラムを開催している。

漁師さんに漁船を出してもらって朝日を見るクルージングや、牧場でのピクニック。林業の現場に入ってみたり、漁師さんのお母さんと一緒にご飯をつくったり。

一般的なツアーでは体験できなさそうなことばかり。当事者として、一次産業に関わる菊地さんたちだからこそ形にできていることもたくさんあると思う。

「今後、もっといろんな体験プログラムや商品の開発をしていきたいなと思っていて。今回は、ピロロで働く研修生を募集したいなと思っているんです」

正社員ではなく、研修生。どんな仕事をすることになるんでしょう?

「まずは酪農や漁業の現場のお手伝いをしながら、この町の産業を知ってもらおうと思っています。そのうえで、その人が得意な方法を生かして一緒にプロジェクトを進めたり、情報発信をしたりしてほしくて」

たとえば今年の春まで滞在していた研修生は、動画を撮るのが得意な人だった。漁や牧場のお手伝いをしながら現場を撮影して、YouTubeなどにアップしていたそう。

メンバーのなかには、町で見かけた「ちょっとクスッとする風景」をSNSで発信する人、広尾の風景写真を使ったポストカードと地産の食材をセットにして、webショップで販売している人もいる。

「今ある体験プログラムも、海の現場を知ってほしいという漁師さんや、私が牧場に気軽に遊びにくるきっかけをつくりたいと思って考えたものなんです」

「ピロロの根っこにあるのは、広尾町をもっと知ってもっと好きになってもらいたいという想い。研修生もスキルや興味関心を生かして、広尾のよさを切り取って発信してくれたらうれしいなと思っています」



研修生の任期は来年3月まで。研修生はその間、自分が見つけた広尾の面白さを、自分でアウトプットしていくことになる。

肩書きは違えど、そんな働き方がぴたりとはまっているメンバーが小笠原さん。今年5月に札幌からやってきて、ピロロツーリズムではデザインを担当している。

建築家の小笠原さんは、以前からピロロツーリズムに参加していた義理の妹さんの紹介でやってきたのだとか。

「広尾には海があって、山に行けば図鑑でしか見たことのないような花が四季折々咲いていて。町をまわっていると、この素材を使ってどんなことができるだろうって妄想が広がる場所なんですよね」

「何ができるかは未知数だけど、ゼロベースでいろんなデザインができるんじゃないかなって、可能性を感じてここに来ました」

現在は建築やデザインの仕事をしながら、事業コンセプトづくりなどの面でピロロツーリズムの活動に加わっている。

「今年の夏は、昆布のお手伝いをしていました。朝4時に漁師さんから『今日現場あるけど、来る?』って連絡が来て、朝6時に現場に着いて。漁師さんがとってきた昆布を浜で干していくんです」

「だいたい夕方3時まで仕事があるんですけど、乾くのを待つ時間が結構長くて。その間に景色を眺めながら自分のアイデアを深めるのがすごく癒しの時間だったんですよね。帰ってからまたデザインの仕事に取り掛かる、というのがすごくよかったです」

とれたばかりの海産物に触れるなんて、なかなかできない体験。一方で仕事そのものは大変そうです。

「たしかに楽な仕事ではないんですけど、新鮮ですごく面白いんです。早起きして空気を吸って、水平線をぼーっと眺めて。こんなに季節を味わったのって何年ぶりだろうと思うくらい、いい夏でした」

一次産業の現場と、デザインの仕事。

両方を行き来して過ごすなかで、あるアイデアが思い浮かんだそう。

「漁港に行くと、信じられないくらいの量の魚をもらうんです。たとえば今はシシャモ漁の時期なんですけど、当然網にはシシャモ以外の魚もかかる。シシャモは1割くらいで、残りの9割はザッパと呼ばれて廃棄されていて」

「もらったザッパを食べたら、すごく美味しくて。これはもったいないと思って、いま漁師さんと組んで、ザッパを主役にしたツアーを企画しています。町外の方にも食べてもらいたいなって」

ザッパを描いたポストカードも作成中。「コマイのレモンリゾット」「キュウリウオの煮物」など、料理のつくり方を動画でアップし、カードの裏面のQRコードから見れるようにするのだとか。

漁の現場に足を運んで、ザッパを食べて、帰ってからまた料理する。参加者にとっては新鮮な体験になるだろうし、これまで価値がないとされてきたものに光を当てることもできる。

「こういうことを何回も重ねることで、機運も変わっていくんじゃないかなって。ある意味、ピロロはまちづくりをしようとしているんだと思います」



小笠原さんの話に登場した“漁師さん”が、こちらの保志さん。

広尾に生まれ、3代続く漁師の家系で育った。ピロロツーリズムでは副会長を務めている。

「ピロロって、外から入ってきた人と中にいる人が混ざって化学変化が起こる場所だと思うんです。研修生や小笠原くんが、少しずつ浜の空気を変えていると思っていて」

浜の空気を変えている。

「去年の冬、研修生の子が僕たち漁師に密着して動画をつくってくれたんです。まだ真っ暗な時間に港を出て、毛ガニをとって帰ってくる。今まで漁師以外が知ることのなかった景色を、動画を通してまちの人や家族にも見せてくれて」

「広尾は大きな漁港があるけど、それでもだんだん元気がなくなっていて、子どもに継がせない親も多いです。そんななかで、漁師の子どもや嫁さんたちが『父ちゃん、格好いいね』って言ってくれた。漁師という職業に対する誇りを、すごく思い出させてくれたんですよね」

魚をとって終わりではなく、もっと多くの人に漁業の面白さや海とともにある生活を伝えていきたい。

保志さんは、外からやってくる人との出会いを楽しみにしている。

「料理でもデザインでも、何か一つ成し遂げたいことがある人に、広尾の素材を見てほしいです。自分はその人がやりたいことに対して、海側からできるアプローチをしていきたい」

「あとは…魚は捌けるようになりますよ。煮物、揚げ物、焼き、一通り教えられます。魚が苦手って人は、覚悟しておいてほしいですね(笑)」



このフィールドで、自分だったら何ができるだろう。

前向きにチャレンジする人を待っています。

(2020/10/23 取材 遠藤真利奈)
※撮影時にはマスクを外していただいております。

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