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山を見立て
風景をつくる
100年後まで残る仕事

日本の各地へ足を運ぶと、決まってあるのが山の風景。

当たり前すぎて意識することは少ないかもしれませんが、山を背景にした景色は、日本人にとってとても馴染み深いものだと思います。

調べてみると、日本は国土の3分の2が山地だそう。山の手入れをして、木を伐り、また植えて育てる。山が健康的に循環していく仕組みは、古くから山師が担ってきました。

今回は、山師として林業に携わる人を募集します。

舞台となるのは、滋賀県北西部に位置する高島市。森林組合の一員として働くことになります。

通常、山師の多くは個々の事業者として活動していますが、高島市では森林組合が職員として林業に携わる山師を雇用するそう。

経験は問いません。手に職をつけて、日本の山を守り継いでいく人を探しています。



滋賀県高島市へは、京都駅から湖西線に乗って1時間ほど。新快速に乗れば40分ほどで到着するため、関西圏からのアクセスがいい。

車窓からは琵琶湖が見える。

安曇川(あどがわ)駅で降り、湖を背に、車で走ること20分ほど。高島市森林組合の事務所に到着した。

ここで最初に話を聞かせてくれたのは、専務理事を務める清水さん。

「森林組合は、森林の所有者が組合員として組織されている協同組合です。山に関する相談にのったり、間伐や木材の販売をしたりと、森林に関わる事業全般を担っています」

高島は、市の面積のうち72%が森林という地形を生かし、古くから杉を中心とした林業が盛ん。

良質な木材を生産するとともに、林業を通じて山の手入れを行うことで、琵琶湖の重要な水源となる森林を守り継いできた。

一方で、近年は林業従事者の高齢化や担い手不足により、林業全体の衰退が問題になっている。そこで森林組合では、若い人が林業に携わりやすい環境をつくろうと、3年前から林業従事者を職員として雇用するようになった。

「市内の事業者さんは、新しく若い人を雇用する余力がなく、雇えたとしても福利厚生などの面で課題を抱えていたんです」

「組合で雇用すれば、給与や福利厚生も十分に提供できる。若い“なり手”を増やすことで、林業によるいい循環を生み続けていきたいと思ってるんです」

林業は単純に木を伐るだけの仕事ではない。

密集した木々を間伐すると日当たりが良くなり、動植物の生態系を整えることにもつながるし、山で育った木は、だれかが一生を過ごす家の材料にもなる。

もともとは県庁で働いていた清水さんが林業に興味を持ったのも、木を使って家を建てた経験がきっかけだった。

「たまたま高島に先祖が残した山があったんです。そこの木を使って家を建てたとき、これってすごく意味があることやなって思ったんですよね。木材になるようにって残してくれた、先祖の思いをちゃんと受けとることができたような気がして」

「今回は山に入って木を伐る山師の募集ですけど、林業って基本は建築につながっているんです。伐った木がどこで使われるのか、木を伐る仕事って社会的にどんな意義があるのか。林業からつながるものを、働く人が感じていける環境にしたいと思っています」

清水さんは、高島産の木を使った家づくりをサポートする団体を立ち上げるなど、林業と建築をつなぐ活動を続けている。

「数ある職業のなかでも、危険な仕事やとは思うんです。けれども、組合で雇用するからには安全面も含めて、最大限気をつけてやっているし、林業をする環境としてできるだけいいものを提供したいと思っています。山仕事や林業に興味があって、少しでもやりたいっていう気持ちがあるなら、ぜひ来てもらえたらうれしいですね」



森林組合のなかで、山師の人たちは直営班と呼ばれている。この日は車で5分ほどの場所で作業しているとのことで、現場を見せてもらうことに。

作業していたのは、お寺のすぐ近くにある山林。数ヶ月前から続いている現場で、今は間伐がほとんど終わった段階だそう。

キリのいいところで、お寺の軒下をお借りして話を聞かせてもらう。

直営班で働く来見(くるみ)さんは、高島市出身。大阪で6年ほど営業の仕事をしたのち、林業の世界に飛び込んだ。

「大阪で働いていたときから、将来は地元に帰りたいなと思っていて。でも、都会でサラリーマンだけやってても、田舎でその経験を生かせる仕事って少ないなと思ったんですよ」

「じゃあなにしようかなって考えて。思ったのが、日本って山がない県ってどこにもないじゃないですか。山の仕事をちゃんとできるようになったら、どこでも食いっぱぐれることはない。親戚が徳島で林業してるのもあって、素人やけどやってみようかなって」

まずは徳島に行き、3年半ほど働きながら道具の使い方などを学んでいった。その後高島へ帰ってきて、森林組合に入職したのが3年前のこと。

「僕らって、人様の山に入らせてもらって仕事する商売なんです。山に植えられてる木って、この木は家を建てるのに使えるようにとか、高く売るために日当たりの良い場所に植えようとか、1本1本に山主さんの思いが込められてるんですよ」

「その思いを山主さんからしっかり聞いて感じる。そして何十年と経ったあとに山を見た山師にもその思いが伝わるよう、山を生かす仕事をする。そこが、山師のセンスが問われるところなんです」

たとえば、いま作業中の現場。もともとは木々が密集していて、斜面も普通の人は危なくて歩けないような状態だった。

「だけどここの山主さんは、地域の人が気軽に通えるような山にしたいっていう思いを持ってはって。いうたら3歳くらいの子どもでも、お母ちゃんと犬連れて歩けるようにしたいって言ってはったんです」

「いやあ、だいぶ風景変わりましたよ。最初はうっそうとしていて暗かったのを、1本1本、丁寧に木を伐って、重機で道つくって運び出して。それを繰り返して、ようやくきれいになってきました」

同じように見える木も、それぞれに人の思いが込められている。

伐った後も貴重な資源になるため、丁寧に。そしてなにより事故が起こらないよう、慎重に作業を進めていく必要がある。

「いろんな職業ありますけど、やっぱり林業ってすごく危険な仕事なんです。ひとつのミスが、生死に関わる事故につながることもある」

「班の仲間とは、昼飯のときや道具の準備をしてるとき、雑談することも多いんです。家族や趣味のこととか、阪神勝った負けたとかね(笑)。そういう仕事以外のコミュニケーションから信頼関係もできていくと思うんで、そこは大事です」

事故の原因をたどっていくと、ちょっとしたコミュニケーションの行き違いや声かけの不足が多いそう。

仕事をしている時間は、お互いが命をかけている相棒。大げさじゃなく、背中を預けられる関係をつくっていくのが大事なんだろうな。

現在直営班は、来見さんを含めて3人。

基本となる勤務時間は、ほかの職員と同じ8時半から17時半まで。夏は暑い時間帯の作業を短くするため6時スタートにずらすなど、季節によって変動させているそう。

日が落ちて暗くなると作業ができなくなる。お日様に合わせて仕事をするようなイメージ。

その時間感覚は、都会での仕事とはちがう部分かもしれない。

「体が疲れたらミスもしますし、余計遅くなってしまう。根詰めてもいいことないんですよ。早く帰れるぶん、家庭にかける負荷は少ないと思います。洗濯物は増えますけどね(笑)」

「この仕事って、山を見立てて風景をつくる仕事だと思ってるんです」

山を見立てて、風景をつくる。

「田んぼは農家の人がつくるし、家は大工さんがつくる。僕らはその背景の山をつくってるんです。しかも、いま目の前で手がけた仕事は、100年200年って残っていくものになる」

「僕が生きてないかもしれないそのときに、この山がどう見えてるんやろって。最初はそこまで考えられないと思います。でもちょっとずつ気づいて、思いを馳せながら仕事できるようになったら、きっと面白いと思うんです」

100年後を想像して、目の前の今に向き合う。自然のなかに身を投じる仕事だからこそ感じられることなんだろうな。

来見さんは、どんな人に来てもらいたいですか。

「僕も最初は庭木をちょんって切ったくらいの経験しかなかったので、林業の経験はなくてもいいと思っていて。僕らも教えながらやってもらいますし、やってたら体で覚えるので」

「田舎に住みたいとか、山が好きとか。とっかかりはなんでもいいんです。山仕事に飛び込んで、そこに馴染んでいきたいっていう気持ちを持ってくれる人であれば。女性でも歓迎ですよ、チェーンソーくらい女子高生でも持てますからね(笑)」



作業に戻る来見さんを見送り、伐採した木材が置かれている場所へ。最後に話を聞いたのは、Iターンで高島へやってきた岩松さん。

山主からのヒアリングを元に、どれくらいの木を伐って、どんな山にするか、設計を考えて来見さんたち直営班に引き継ぐプランナーの仕事をしている。

生まれは札幌で、前職は京都で環境教育の仕事をしていたそう。

「学生時代に林業の勉強をしてました。子どもたちに山や自然のことを伝えるのはやりがいがあったんですが、もっと直接的に山を良くする仕事に関わりたいなと思うようになって」

そんなときに偶然見つけたのが、森林組合の仕事。それまで高島市にゆかりはなかったけれど、住んでいた大津から通えることもあり応募した。

「僕は環境教育から入ったので、山をこんなふうにしたら環境にいいっていうのはわかるんです。けれども、森林組合の一番の存在意義は、組合員である山主さん個々の資産価値を最大化すること。そこを両立しながら、地域の自然環境の循環を良くしていくっていうところが大事で」

「林業を通じて環境を守りたいっていう大きな思いも大切ですが、まずは目の前にいる山主さんと向き合うことが必要なんです。山主さんが山をどうしたいのかっていう思いを大切にして、結果的に山主さんにも地域の人にも喜んでもらう。新しく来てくれる人も、そこにやりがいを感じてくれたらいいですね」



森林組合で林業の仕事をする。話を聞くだけではイメージしきれないことも多いと思います。

ここで働く人たちの話を聞いて感じたのは、意気込み過ぎず、まずは目の前の人や木に向き合いつつ手を動かすことが、未来にもつながっていくということ。

今と100年後を同時に大切にしていきたいという人は、チャレンジしてみてください。

(2020/9/30 取材 稲本琢仙)
※撮影時にはマスクを外していただいております。

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