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浅間山の北麓で
日々表情を変える景色
自然の移ろいを楽しむ

「この植物、見てください。すごく小さいんですけど、赤い唇みたいに見えませんか? マリリンモンローの唇にちなんで、“モンローリップ”って呼ばれている植物なんですよ」

雑草だと思っていた植物も、名前やその由来を知ると見方が変わる。

長野原(ながのはら)町営 浅間園で働くみなさんは、自然の楽しみ方をたくさん知っています。

浅間園は、長野県と群馬県にまたがる活火山、浅間山(あさまやま)のふもとにある自然公園です。

今回は、長野原町の地域おこし協力隊として浅間園で働く人を募集します。

ビジターセンターの受付やウォーキングコースの整備、トレッキングのガイドや誘致イベントの企画など。登山や草花が好きな人にぴったりの仕事だと思います。


東京駅から北陸新幹線に乗って約1時間。軽井沢駅の改札を出ると、長野原町の職員で浅間園の園長を務める塩野さんが待っていてくれた。

「浅間園はここから30分ほどで到着します。標高1400mのところにあるので、結構寒いですよ」

出発してすぐ、目の前に大きな山が見えてきた。

あれが浅間山かな、とカメラを構える私に「山の写真は、ぜひ園から見える北側の表情を撮ってください。今見えている南側よりおすすめなんです」と塩野さん。

北と南でどう違うんですか?

「北側には溶岩が広がっているんですよ。岩のゴツゴツした感じとか、雪とのコントラストが際立っていて、僕は好きなんですよね」

古墳・平安・江戸時代の大噴火によってできた3つの溶岩流は、すべて北麓にある。

特に1783年の溶岩流は「火口で鬼が暴れて、岩を押し出したようだった」という当時の記録から、“鬼押出し溶岩”と呼ばれているそう。

「溶岩が流れると、そこにあった植生はすべてなくなってしまいます。何年もの時間をかけて、また少しずつ苔や草木が育っていく。浅間山は破壊と再生が見られる場所なんです」

「浅間山を登っていると、山が緑からだんだん岩っぽくなる変化も楽しめます。子どもやお年寄りでも簡単に登れる標高で、そのような山の風景を見られるところってなかなかないんですよ」

浅間山をより多くの人に楽しんでもらうため、1963年に国立公園事業として北麓に設置されたのが浅間園。

鬼押出し溶岩のなかにあり、自由に探索できる遊歩道や、歴史を学べる火山博物館などの施設を運営している。

「私自身、浅間園には思い入れがあって。学校行事で来ていたし、昔ここにあったレストランでアルバイトをしたこともありました。だから3年前に園長になったとき、色々なんとかしたいなって思ったんです」

Facebookをはじめたり、イベントを企画したり。地道な活動によって、経営もだんだんと右肩上がりだったそう。

「ただ去年はお盆の書き入れ時に浅間山の噴火警戒レベルがあがって、施設に入れなくなってしまったんです。噴火といっても気がつかない程度のものなんですけどね」

そして今年は、コロナ禍を受けて4月からすべての営業が停止。換気のできない火山博物館も閉鎖が決定した。

協議の結果、園内にある別の施設をリニューアルし、2021年4月にビジターセンターをオープンすることに。

「博物館にあった資料も展示するので、まずはセンターで浅間山の歴史や植生などを学んでもらって。そのあと実際に外に出て、浅間山の自然に触れてもらうという流れをイメージしています」

そんな話をしているうちに、浅間園に到着。

目の前には浅間山の北麓が広がっている。

「今日は天気がいいから見晴らしも良さそうですね。せっかくだから、遊歩道を歩いて見晴台まで行ってみませんか?」

園内には“ヴォルケーノウォーク”と呼ばれる2500mほどの自然遊歩道があり、溶岩の間に咲く四季折々の高山植物を楽しむことができる。

希望があれば、遊歩道のガイドをおこなうこともあるんだとか。

見晴台へ向かいながら「この葉っぱ、ムスクの匂いがするんですよ」「あっ、あそこの木に実がついているでしょう」と、立ち止まっては植物の解説をしてくれる塩野さん。

実際に見たり触れたりしながら、その場でさまざまな自然の姿を知ることができて楽しい。

10分ほどでたどり着いた見晴台からは、浅間山麓の景色を一望できた。

「ここから見る景色も、大げさかもしれないけど毎日違って見えるんですよ。秋になると、葉っぱがだんだん色づいてきてね。少しずつ色の違う木々が広がっている様子は、本当に最高ですよ」

3年前からは、遊歩道のほか、トレッキングコースも楽しめるように。

スタッフがガイドをしながら、浅間山麓を4時間ほどかけて周遊する。登山シーズンになると、土日は毎週予約で埋まるそう。

「いろいろ解説してほしい人もいれば、静かに景色を楽しみたい人もいる。まずは雑談をして様子を掴みながら、ガイドの内容を臨機応変にかえていますね」

お子さんがいたら、興味を持ってもらえるようクイズ形式に。休憩をとるタイミングや長さも、お客さんの状態に合わせているそう。

「トレッキング中に見られる景色も、毎日少しずつ変わってくる。五感で楽しんでもらえるような知識の引き出しを、自分のなかにたくさん入れておくようにしています」

遊歩道をゆっくり歩いていると、日も落ちてきてさらに寒くなってきた。

施設内にある事務所に戻り、引き続きお話を聞くことに。

「10月くらいから5月くらいまで寒いですね。雪も結構積もりますし、寒さは大変だと思います」

冬の間、ここは閉園しているんですか?

「基本的にはそうですね。ただ、スノーロックツアーというイベントを開催している日もあります。スタッフのガイドのもと、スノーシューという道具を履いて雪の上を歩いていくツアーです」

「あとは、遊歩道沿いの木の枝が伸びすぎると危ないので、冬の間にノコギリで切っています。動物の足跡を見つけることも結構多くて。動物それぞれに特徴があるので、覚えると面白いですよ」

「キツネはまっすぐ一本道、タヌキはキツネと似ているんだけど、ちょっとぶれているとかね。あと、ウサギは飛び跳ねるように前に進むんですが、後ろ足を前足の先に着地させるんですよ」

仕事中に動物の気配を感じられるなんて面白い。これも仕事と自然が隣り合う浅間園ならではの日常なんだろうな。

新しく来る人は、4月からどんな業務をすることになるんだろう。

「まずはビジターセンターの受付がメインですね、それと予約が入ったときは、遊歩道やトレッキングのガイドもしてもらいます。平日は時間があることも多いと思いますので、受付番を交代しながら、施設の清掃や遊歩道の整備などをおこなう感じになると思います」

「最初は特に、時間のあるときには園内をよく散歩しておいてほしいんです。そしたら2年目には『春になるとこんな花が咲くんです』って、お客さまに伝えることもできるでしょう」

図鑑を片手に園内を散策しながら、知識を蓄えておくのもいいかもしれない。日々過ごすなかで、自然の些細な変化を楽しめる人だとよさそう。

「イベントもどんどん企画していってほしいですね。これまでも、オリエンテーリングや写真家さんとのフォトウォークなどいろいろ企画してきたんですよ。夏に星空観察会をひらいたときは200人くらい集まったこともあって」

「今は、子どもたちを対象にした山岳スポーツのレースを開催したいと考えているんです。私がスカイランニングをしていることもあって、その楽しさをもっと広めていけたらいいなって。そんな話も一緒に進めていけたらうれしいですね」


現在、浅間園で働く職員は3人。そのうち、地域おこし協力隊の代田(しろた)さんはあと1年任期が残っているので、新しく入る人にとってもいろいろ教えてもらえる心強い存在になると思う。

「小学生まで山形で自然に囲まれて過ごしてきたからか、ずっと自然に関わる仕事がしたいなと思っていたんです。それで、環境保全やアウトドアの基礎を学べる短大に行って。学校で地域おこし協力隊の制度を教えてもらって、直感でここに応募しました」

「ここで働いていると、見渡せばいろいろな木々があるし、貴重な高山植物にもたくさん触れられるから楽しいんです。自分にあっているなって」

高山植物ってどんなものがあるんだろう。代田さんのお気に入りの植物をたずねると、「ええ、全部好きだなあ…」と言いながら、お気に入りを教えてくれた。

「シラタマノキっていう、夏頃からよく見かける花があって。名前のとおり白い実をつけるんですけど、その様子がかわいいんです。食べると湿布みたいな香りがするんですよ」

「野生動物と出会うことも多いですね。園内の草刈りをしてると、カモシカがジーっとこっちを見ていたこともあったし、この前は車に乗っているときに子グマと遭遇したんです」

去年は博物館内の売店の業務をメインに、ガイドにも少しずつ同行していたそう。

「まずは塩野さんや地元のボランティアガイドさんに、実際に案内してもらいながらいろいろ教わって。それを自分でメモして覚えて、まねるところからはじめました。専門用語も多いので、わからないことは自分で調べたりして」

ボランティアガイドには、植物や溶岩、野鳥や昆虫などそれぞれに得意分野があり、ガイドの仕方にも個性がある。

いろいろな人のいいところを取り入れながら、自分らしさを見つけていってほしい。

「ガイドするときは、やっぱり緊張しますね。初めて1人で担当したときのことは、ほとんど何も覚えていないです(笑)。今年は休園になってしまってガイドができなかったので、来年はたくさんやってみたいなと思っていて。4月が待ち遠しいです」

「浅間山に登って景色を見ていると、生きているなあって感じがするんですよね。自然は飽きないです。毎日違う景色が見られる。通勤で何度同じ道を通っていても、毎回いいなあって思うんですよ」


「通勤途中に見えるあそこの景色、ほんと良いよね」と笑い合うお二人からは、浅間園に息づく自然を想う気持ちがとても伝わってきました。

好きなものに囲まれて、日々の小さな変化を感じながら働き、その楽しさを伝えていく。ちょっとうらやましくなるような仕事だなと思いました。

(2020/12/4 取材 鈴木花菜)
※撮影時にはマスクを外していただいております。

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