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花を手に取る
はじめての気持ちに
寄り添って

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花を買うときって、ちょっと気持ちが高まる感じがする。

わあ、きれいだなあという気持ちや、贈る相手への思い、そこに漂う香りなど。花屋さんにはわくわくする要素がたくさんある。

同時に、このバラは一体いくらなんだろうとか、どういうふうに注文すればいいだろうとか、別の意味でドキドキしてしまうことも。

もっと気軽に、花を楽しむ体験を届けたい。そんな思いで働く人たちがいます。

今回紹介するのは、静岡・掛川の街角にある「はなまど」。生花だけでなく、ドライフラワーやアートフラワーも含めた幅広い提案をしています。

ときにはウェディングやフラワーディスプレイ、企業のOEMの提案をしたり。手を動かす仕事も多いので、ものづくりの経験を生かしたいという人にはいいチャンスかもしれない。

花屋さんの仕事に憧れはあるけど、経験もきっかけもこれまでなかった。そんなハードルを感じているなら、ぜひ読んでみてください。


東京から1時間半ほど、新幹線のこだまが停まる掛川駅を出て振り返ると、ずいぶん趣のある駅舎が見えた。

静岡県の西部に位置するこの街は、もともと東海道の宿場町で、浮世絵や文学の題材としても登場する。資生堂アートハウスなど、気になる美術館もあるけど、それはまたの機会に。

駅からタクシーで10分ほど。穏やかな街並みを走っていく。

この日はお店の週休日。そっとドアを開けると、ふわっと花のいい匂いがした。

お店の中には切り花のショーケースのほか、ドライフラワーやアートフラワー、花器などの雑貨もある。

奥にはゆったりと過ごせるアトリエのようなスペースが広がっている。

今回連絡をくれたのは、このお店の本多さん。スタッフからは万里子さんと名前で呼ばれている。

「このお店はもともと昭和初期から生花の販売をしていて、私はその5代目になる社長と結婚して。今はお店のマネジメントなどをしています」

結婚前は、ショーウィンドウのディスプレイやウェディングなど、空間コーディネートの仕事をしていたという万里子さん。

仕事をはじめた当初は、花の知識もあまりなかったという。

「昔ながらのお花屋さんだから『自由に見て、ほしいものがあったら言ってね』っていう感じで。お客さんは何から尋ねていいかわからずに困った顔をする人も多くて、私も接客しながら『あ〜、わかる。その気持ち…』って、思っていました」

はじめての人でも、もっと入りやすいお店にしたいと、6年前にリニューアル。広々したスペースが確保できるように駅前から移転し、駐車場も用意した。

花器など雑貨類の取り扱いも増やし、ワークショップやフェアも開催。

リースづくりなどの作業も、お客さんから見えるところで行うようにすると、自然と会話が生まれることも増えた。

「お客さんと話をしていると、どの季節にどんな花があるかわからないっていう声をよく聞きます。たとえばミモザって春先のイメージがあると思いますが、花屋さんに入るのはもっと早い時期なんです」

「そういう“枝もの”は特に入手時期を見極めるのが難しいので、こちらから季節ごとにお届けする定期便をはじめました」

桜やドウダンツツジなどの枝ものを月替わりで届けるサービス。

実は静岡県は花きの栽培が盛んな土地で、ほかでは入手しづらい品種が手に入ることも。

「たとえば国産の綿の木って、輸入物に比べると色が透き通るように白いんですよね。お届けするときは、お手紙でそういう情報も添えています。商品を売るだけでなくて、ストーリーも一緒に伝えたら、もっと花屋さんを身近に感じてもらえるんじゃないかと思って」

最近はSNSを通して、東京や関西圏のお客さんからも定期便のリクエストがあるという。

ちゃんと発信することの大切さも痛感しつつ、なかなか忙しくて手が回らないのが今の悩み。

営業時間内はお客さんの対応で手いっぱいだし、空いた時間にOEMの商品企画、花を使った空間コーディネートなど、ここでの仕事は多岐にわたる。

いろいろできる楽しさもある反面、体力やライフステージの変化によって辞めてしまう人もいた。

せっかくなら、長く働ける環境をつくりたいと、少しずつ働き方を見直しはじめている。

「今までは本当に、みんなで全部をやるっていう感じだったんですが、これからはお店で接客を担当する『伝える人』と、商品を『つくる人』というふうに役割を分けてみようかなと思っているんです」

未経験でもひとつずつ仕事を覚えていけば、商品企画やデザインにも携われる。

「花屋って敷居が高いと思われがちですが、私も未経験からはじめているし、大丈夫。お店でこんなに『ありがとう』って言ってもらえるって、この仕事をはじめるまで知らなかったよろこびですね」


室内をちょっと明るく飾りたいとき、誰かに思いを伝えたいとき。

花屋を訪れる一人ひとりの気持ちに寄り添うように接客をしているのが、店長を務める近藤さん。

「お客さんと話すときは、“思い”の話を聞くことが多いです。自分が癒されたいとか、相手を喜ばせたいとか。ちゃんと相手の気持ちを理解した上で、そんなあなたにはこれがオススメですよっていう提案をしていきたいですよね」

花や植物だけでなく、かわいいものに触れるのが好きで、この仕事をはじめたという近藤さん。

切り花以外にも、雑貨や空間コーディネートの相談など幅広い可能性があるお店だからこそ、いつもフレッシュな気持ちでいられるという。

「たとえばウェディングの打ち合わせとかだと、『へえ〜、この人はこういうのをかわいいと思うんだ』っていうふうに、いろんな人の視点を知ることができる。自分から興味のきっかけを見つけるようにしています」

勉強することが多いお店だから、好奇心があることはきっと強みになる。

初心者の場合はまず、入荷した花の「水揚げ」という作業から植物の扱いを学んでいく。

同じ品種の花でも、気候や輸送の環境によって、必要な対処はさまざま。自分の頭で考えるだけでなく、まずはまわりのアドバイスを素直に受け入れる姿勢が大切だと思う。

「お花ってやっぱり生物だから、時間勝負なところもあるし、臨機応変さが大切なんです。営業時間内はお客さんの対応で手いっぱいなので、最初のうちは営業時間外で扱いを学んだり、つくり方を練習したりすることも必要だと思います」

花を扱う以外にも重い什器を運んだり、花瓶の手入れをしたり、ゴミの片付けをしたり。地味な裏方仕事も多いという。

近藤さんはそんな作業も「毎日、文化祭の準備をしているみたい!」とポジティブに捉えて、楽しむようにしているのだという。

「やっぱりお客さんに接するときはつねに明るく元気にいたいから、ちゃんと自分で気持ちの整理をしていくことは大切ですよね。重いものを運ぶのも『マジで?こんなでっかいの?』って笑っちゃうとか。それは心がけとして工夫している部分ですね」

初対面でもすぐに打ち解けて、話しやすい雰囲気をつくってくれる近藤さん。彼に花を選んでもらいたいと、お店に足を運ぶ人も少なくないという。

そういえば、万里子さんもほかのスタッフの方も、近藤さんのことを「王子」って呼んでいますよね。

「それは僕が自分で名乗っているんです。お客さんに敷居が高く感じさせないように、気軽に呼べるようなあだ名がほしくて。品があるけど親しみやすい何か…って鏡を見たときに、あ、王子かなって」

自己申告…!(笑)

そうやって気取らずに自分のことを話してくれるから、お客さんもきっと話しやすいんだろうな。

王子と冗談を言い合いながら、花を選んだ時間もいい思い出になりそう。

「入りたてのころは先輩もたくさんいたし、僕はただ楽しく王子をやってればよかったんですけど(笑)、ちょうどお店が移転する前後で万里子さんに、『あんた、この先どうするの? それによって今後のお店のあり方を考えるから』って言われて」

「自分を信頼してくれているんだなっていうことが伝わってきて、すごくうれしかったんです。僕が後輩を育てていくことも含めて、これからまた考えていきたいなと思います」

たしかに万里子さんと話していても、マネジメントをしている万里子さんや社長さんが前に出るより、スタッフの個性をうまく生かして、お店のカラーをつくりたいという気持ちが伝わってくる。

だからこそ、みんなが自分ごとしてお店のことを考えていけるのかもしれない。


そんな雰囲気の良いチームに、新たに入っていくのはどんな気持ちだろう。3年前から一緒に働いている、えりさんにも話を聞かせてもらった。

えりさんはもともと服飾の専門学校に通っていたこともあり、最近はアートフラワーを使ったヘアアクセサリーなども提案して商品化している。

商品のアイデアは、お客さんと接する機会の多い近藤さんからヒントやお題をもらいながら考える。実やグリーンなど、はなまどらしいサブパーツを取り入れて、自然な雰囲気に仕上げるよう工夫している。

「万里子さんも王子も、すごく相談に乗ってくれて。あんまりよくないときは率直に、的確な意見を言ってくれます。リースのように大きなものも、時間をかけて取り組んで、最後にバランスのいいものができて『いいじゃん』って言ってもらえたときは、やっぱりうれしいですね」

お店の奥のテーブルで作業していると、ときおり、自分のつくったアイテムを手に取るお客さんの様子が見える。そのリアクションがわかることもまた、働くモチベーションにつながっているという。

今はアクセサリーなどの制作を中心に担うえりさん。

ほかのスタッフが忙しそうに動いているところを見ると、自分も何か手伝えないかなという気持ちになるという。

「私は子育てをしているので、限られた時間でしか働けなくて。そういうことを理解してくれる会社だからこそ、万里子さんたちが夜遅くまで働く繁忙期には、私もちょっとばあばに協力してもらって、何か力になれないかなって思います」

「自分の仕事だけじゃなく、一緒に働く人のことも考えられる人が来てくれたら、お店でも良い人間関係が広がっていくんじゃないかと思うんです」


一緒に働く人や、お客さん。

相手の気持ちを想像して、自分から一歩寄り添う思いやりが、花との出会いを広げていく。

経験や知識は後からでも身につけられると思うので、まずは、一緒に楽しみたいという気持ちで踏み出してみてください。

(2020/12/9 取材 高橋佑香子)
※撮影中はマスクを外していただきました。
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