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苗からはじまる
町の夢
ラズベリーで日本一を

※この仕事は募集終了いたしました。ご応募どうもありがとうございました。

ラズベリーといえば、甘酸っぱい、可愛らしい赤い実。

クリスマスケーキの上に乗っていたり、お菓子やジャムになったのをよく見かけるけれど、ふだん食べるには少し縁遠かったりしませんか?

日本での消費量は年間1000トン以上と言われていますが、そのほとんどが輸入したもの。国内で採れるのは、わずか10トンほどだそうです。

この国内生産量を、今年にも超えることを目指して準備を進めてきた町があります。

福島県矢祭町。

もとはヨーロッパで自生していたラズベリーを15年かけて改良し、町の風土にならした新品種をつくりました。

一般的なラズベリーの3倍ほどの収穫量があり、実の香りがよく、甘みも強いため、お菓子などに加工しても砂糖の量をぐっと減らすことができるそう。

今回募集するのは、このラズベリーの生産者。地域おこし協力隊というかたちで生産に携わり、任期の明ける3年後にはラズベリー農家としての独立を目指してゆきます。

日本一のラズベリー生産地、その黎明期に興味がわいたら、ぜひ読み進めてください。

 

矢祭町があるのは、福島県の最南端。周りを山々に囲まれ、谷になったところに一級河川の久慈川がゆうゆうと流れる。川にそって田んぼや畑が広がり、米作りが盛んな町だ。

よく晴れた冬の日。この日は郡山駅から、電車で向かった。

4両しかない電車に揺られて、山々を抜けていく。

この町へのアクセスは色々あって、郡山や宇都宮といった大きな街から、車で1時間半ほど。ほかにも福島空港や茨城空港、東北新幹線の新白河駅、それから東北自動車道の最寄りICへも車で1時間くらい。

ひっそり自然と暮らす町でありながら、利便性も悪くはないと思う。

駅を出て、昔ながらの個人商店が立ち並ぶメイン通りを歩く。

閉まっているお店も目立つけれど、飲食店は元気に明かりがついている。コンビニ、ドラッグストア、ガソリンスタンドもあって、必要なものはこのあたりで揃いそうだ。

この通りにある「まちの駅やまつり」で、役場に勤める事業課の古市さんと待ち合わせ。まずは町の視点から、ラズベリーに光があたった経緯について聞くことに。

「矢祭町には高校がないこともあって、若い人が外に出てしまいます。もとが農業の町ですから、人が減れば遊休農地も増えていく。これをなんとかしたいと考えていたんです」

そんななか、地元で花農家を営む矢祭園芸からこんな話があった。

「矢祭園芸さんは17年前からラズベリーの品種改良に取り組んでいらっしゃって。今回、町での栽培に適した新品種が2つできたということで、矢祭町をラズベリーの一大産地にできないだろうかと相談をいただいたんです」

日本でもラズベリーは、クリスマスケーキなどの生食用のほか、ジャムやお菓子などの加工用として幅広く使われている。その消費量は年間およそ1000トン。

ところが、そのほとんどが輸入品。国内では、北海道や秋田で生産されているものの、合わせても10トンに満たないそう。

「今、矢祭町で育てている面積だけでも4トンの収穫量が見込めるし、本格的につくり始めればそれ以上が期待できます。順調にいけば日本一の生産量ということになる」

「町としても、移住者が増え、遊休農地が活用でき、あたらしい町の特産品にもなれば、一石三鳥にもなります。ぜひこの産地化に協力していきたいという気持ちでいるんです」

 

ところで、どうしてラズベリーだったんだろう?

ここからは、新品種をつくった矢祭園芸代表の金澤さんにも話を聞かせてもらう。

金澤さんは、福島県で一番大きな花農家を営む方。農業高校を卒業して、花農家で一年の研修を経たのちに独立。それから47年間、施設園芸に携わってきた。

花の栽培だけでなく、交配を重ね、新しい品種をつくる“育種”にも取り組んできたという金澤さん。その経験からか、ある果物輸入の会社がこんな話を持ち掛けてきたそう。

「その会社では、国産ラズベリーをつくろうとしていました。けれど、海外から買い付けて育てた苗は2、3年で弱って枯れてしまう。日本でも育つような新品種をつくってくれませんか?という話をいただいたんです。開発した苗は買い上げます、という甘いささやきと(笑)、おもしろそうだからやってみよう、というところではじめたのがきっかけです」

さっそく、当時売られていたラズベリーの苗を30種類ほど集めて開発をスタート。

「育種の基本は、たくさん種を蒔き、生き残ったものの種をとってまた育てることです。大学の先生に話を聞きに行ったりして、見様見真似でやってきました」

理想的な種ができた!と思っても、翌年には枯れてしまったり、病気に負けてしまったりと、がっかりすることも多かったそう。開発は15年に及んだ。

「そのなかで『四季成り』という、長期間実が成り続ける品種を見つけました。ラズベリーはふつう一季成り二季成りといって、年に一度か二度実をつけるのが一般的ですから、この品種は通常の3倍の実が採れるんです」

奇跡のような結果に、ただただ感動してしまう。

けど、もとの品種が育ちやすいように環境を整えれば、もっと早く生産できた気もする。どうして金澤さんは、時間がかかっても、この土地に馴染ませるやり方を選んだのでしょう?

「これは私独自の育種法だと思います。この土地で自然と育つ、つまり在来種のような品種をつくりあげることで、ひとつの産業になりうるんです」

「まず、栽培にかける設備コストを抑えられますから、誰でもつくることができます。さらに、今年の4月には、特許のように品種の登録を進めていきます。そうすると、よそに持っていかれることがなくなる。こんなふうに、品種からつくりあげることで、一大産地になるためのしっかりとした基盤がつくられるんです」

すでに販売ラインの開拓も進めていて、全国にいろんな選択肢があるそうだ。需要の高いクリスマスケーキの生食用はもちろん、クラフトビールやアイスクリーム、最近ではハーブティーとしても人気がある。

金澤さんの目には、町全体でラズベリー産業が広がり、伸びていくイメージが見えているよう。

そのためにも、まずは生産を安定させたい。募集する協力隊は、ここを担うことになる。

「矢祭町はラズベリー生産量日本一の町です、って、どや顔で言ってみたいよね!(笑)」

からっと笑う金澤さん。そんな開拓者精神に惹かれて、昨年この町にやってきたのが協力隊の大和田さんだ。

福島県で生まれ育ち、震災をきっかけに8年ほど東京に住んでいたそう。公務員になろうと法学部で学んでいたけれど、在学中に旅した海外であらためて自然に触れ、農業をしたいと思うようになった。

「農業の募集ってあちこちであるんですけど、『新品種で日本一を目指そう!』っていうのはここだけだったと思います」

「もともと大学のときに探検部というサークルに入っていて、アジアのまだ誰も調査していない湖を調べたり、800年くらい前の遺跡を見つけたりしていました。ワクワクするような、パイオニアワーク的なことを仕事にしたいなと思っていたんです」

農業はまったくの未経験だったという大和田さん。昨年は、雑草を引いて土をつくるところから始まり、ハウスや支柱の設置、苗の植え付け、7月から12月にかけての収穫まで、一通りの経験をした。

そのなかで、足踏みする時期もあったという。

「実は昨年、思ったよりも実が採れなかったんです。最初につくったときは、見た目はすごくおいしそうなのに、中にハエが入ってしまっていて、全部捨てなきゃいけなかった。専門家に来てもらって原因を探り、虫が入らないようネットをかけてみたら、今度は受粉のためのミツバチも入って来れなくなったりして…」

あたらしい品種ということは、栽培方法も技術も確立されていない。やってみてダメなら次を試してみるという、研究者のような根気が必要になってくる。

けれど、光が見えたときの喜びもひとしお。

金澤さんが、こんなエピソードを教えてくれた。

「ラズベリーって蜜がすごく出るんですけど、これが固まると、とても汚くなってしまうんですね。一つひとつ手作業でとることもできるけど、時間がかかりすぎる。それで、あるときハチに吸ってもらえないかと思って、養蜂家の友達にミツバチを貸してもらったんです」

ひと夏やってみると、蜜の塊はきれいになくなった。

「しかも、ミツバチが集めたものを舐めてみたら、ラズベリーの蜜ってすごく美味しくて。
もしかしたらラズベリーはちみつができるかもしれない、って今思っているんですよ」

うまくいかないことも多いけれど、二人からは、ワクワクした前向きな気持ちが伝わってくる。

大和田さんも、今回募集する協力隊員も、任期の3年が終わったら、ラズベリー農家として独立することがひとつの目標だ。もしもラズベリーだけで足りなければ、夏イチゴやブルーベリー、ブラックベリーなどのつくり方も、金澤さんから教わることができる。

大和田さんもゼロから始めているから、もちろん経験のない方でも大丈夫だけど、すでに経験があってより高いレベルを目指したいなら、伝えられることはたくさんあるという。

「生産が安定してくれば、次は市場での競争っていうのが出てきます。そうすると、剪定によって一つの実を大きくするというようなテクニックも必要になる。“グラムでいくら”から、“一個いくら”で売れるような商品に育てていく手立ても考えなければならないね」

「それから農家って、生産の部分が30%あって、あとの70%は物流とか商い的なこととか、農業じゃない部分があるはずです。そういうところのエネルギーの使い方も、覚えていってもらえたらいいかな」

未開の領域を進んでいくなかで、金澤さんがいることはとても心強いことのように思う。素直に学び、やってみる気持ちがあれば、どんどん成長してゆけそう。

「ラズベリーというキーワードを、どう広げていくかは本人次第です。生産に特化してもいいし、販売に特化してもいい。そういう意味でも、いろんなチャンスがあると思います」

まずは気軽に話を聞きに来るだけでもいいそうです。

興味がわいたら、ぜひ訪ねてみてください。東北にしては温暖な気候なので、雪の心配も少ないですよ。

(2021/1/26 取材 倉島友香)
※撮影時はマスクを外していただきました。

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