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就農しても、しなくてもいい
地域と農に触れて
なんでもやってみる3年間

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田舎で暮らしたいけれど、具体的に何からはじめたらいいだろう。

想いはあっても、なかなか一歩目を踏み出せない人は多いと思う。

いろいろな人の話を聞いて、実際に手を動かしながら、自分がやりたいことをじっくり検討してほしい。

愛媛県大洲市では、そんな想いで地域おこし協力隊を募集しています。

農業を活動の軸としているものの、協力隊期間の3年を終えたあと、就農以外にも多様な選択肢のある大洲市。

たとえば農作物を使った商品づくりやグリーンツーリズム、お店や宿の開業など。協力隊を受け入れる市役所の農林水産課ではさまざまな事業を進めていて、その人の目指す先に応じて、柔軟にサポートしていく体制をつくっているそうです。

農的な自分らしい生き方を見つけていく3年間。どんな時間がここで過ごせそうか、想像しながら読んでみてください。



愛媛県の西部に位置する大洲市までは、松山空港から車で1時間ほど。

大洲市に到着し、協力隊の担当者である市役所農林水産課の久世(くせ)さんと合流した。

まずは、大洲のまちを歩きながら案内してもらうことに。

「大洲市は、かつて城下町として栄えました。今も古民家が残っていて“伊予の小京都”と呼ばれているんですよ」

「まちの中心を流れる一級河川の肱川(ひじかわ)は、水害も引き起こしてきたけれど、豊富な水と良質な土をもたらしてくれる存在でもありました。そのため、大洲では昔からいろいろな農産物をつくることができたんです」

現在も、お米や野菜、果物など40品目以上の農産物が市内で生産されていて、市民の10人に1人が農業に関わっているんだとか。

一方で、専業農家の70%は65歳以上の高齢者。跡継ぎも少なく、農業従事者はどんどん減っていくことが予想されている。

「耕作放棄地が増えると、まちの景観が失われてしまう。まちの歴史や“らしさ”って、住む人の誇りにもつながると感じていて。これを残さないと、どこに住んでも変わらないってことになっちゃうと思うんですよね」

これまで行政でも新規就農者を支援してきたものの、すべて「待ち」の姿勢だった、と久世さんは振り返る。

より就農しやすい環境をつくり、まちとして主体的に農業を盛り上げるため、今年度から新たに農業部門で地域おこし協力隊を募集することになった。

大洲市の特産物って、どんなものがあるんでしょうか?

「これだ!っていえるものがないんですよね…。逆に言えば、なんでもできるんです。だからこそ、最初から視野を狭めずに、この地域の農業に実際に触れてもらうなかで、じっくり自分の道を見つけていけるような期間にしたいなと考えました」

最初の1年間は、大洲を知るための時間。久世さんと一緒に、農家や事業者はもちろん、地域のさまざまな人と会い、話を聞いていく。

「大洲の農家さんのもとを訪ねて、困っていることなどをヒアリングするのが、僕の業務のひとつなんですね。年に60軒くらいは訪問しているかな。まずはそれについてきてもらうだけで、いろいろな発見があると思いますよ」

農家を取材して紹介するフリーペーパー「アグルビト(大洲市青年農業者協議会)」の発行や、SNSを通じた情報発信もしている久世さん。

こうした活動に一緒に取り組むなかで、地域についての知識や人の縁も広がっていきそうだ。

やりたいことが具体的に見えてきたら、先輩農家や事業者のもとで学ぶこともできる。地域内には研修施設もあるという。

「農に関わる道だったら、就農以外でもいいと思っています。農林水産課ではグリーンツーリズムを進めていて。教育旅行の誘致や農業体験メニューの開発、農家レストラン・民宿開業などにもすでに取り組みはじめているんですよ」

久世さんとともにグリーンツーリズムに関わりながら、旅や企画の分野で起業を目指す道。6次産業化の事業者のもとで学び、地元の農家とつながって、農作物を使ったパンやお菓子のお店を開く道。いろいろと考えられる。

「自分のやり方で農業に価値をつけてもらえたら、なんでもOKです。半農半Xもいいですよね。人と出会って大洲を好きになってもらいながら、自分らしい生き方を探していってほしいなと思います」



大洲では、どんな人たちがどんなふうに、農業を営んでいるんだろう。

「育てているものから売り方まで、皆さん本当にさまざまなんですが…。今日は、2軒の農家さんを紹介します」と、久世さんが案内してくれた。

まず訪れたのが、加藤さんご夫婦。二人で作業していたところ、休憩がてら話を聞かせてもらった。

加藤さん夫婦が大洲にやってきたのは、今から20年前のこと。

「朝7時には家を出て、終電かタクシーで帰ってくる。そんなサラリーマンでした。次第に、都会のど真ん中の会社で働き続ける自分の将来が想像できなくなって」

「建設コンサルタントをしていたので、仕事の結果は10年後に出るんですよ。農業は、半年か一年後には結果が出る。そこが魅力的だなと思って」

実家が松山市だったこともあり、愛媛県内を中心にいくつかの候補地を見ていたという。そのなかから、どうして大洲市を選んだんだろう。

「大洲はいろいろな野菜ができそうでいいなって。あと、僕らは田舎暮らしじゃなくてただ農業がしたいだけだったので、まちがほどよく便利なのもいいなと思いました」

現在は大洲の中心部に住みながら、近場の農地を借り、年間50種類以上の野菜を無農薬・減農薬でつくっている。

「ズッキーニなどの西洋野菜は、書いてある通りに育ててもうまくいかないことがあるんです。大洲の気候に合うように、種をまく時期や肥料を変えたりして。数年越しでやっとできたものもありますね」

「いろいろなものを育てているから、毎年飽きないです。ほかの農家さんもよく言うけど、農業って毎年1年生なんですよ。同じ野菜でも、年によって気候や育て方で、実り方も全然違う。それが面白いです」

つくった野菜は、松山市や大洲市の個人客と飲食店に直接販売しているほか、7種類の旬の野菜を詰め合わせた「おまかせセット」を全国に発送しているそう。

「作業自体は大変っちゃ大変で、だれか代わりにやってくれってよく思います(笑)。それでも、自分のつくったものをお客さんが買って喜んでくれるっていう、一連の流れが楽しいんですよね」

「20年来の付き合いの方、お客さんの域を超えて親戚みたいな方もたくさんいます。贈り物をいただくこともあって。『病気を患っていた旦那が、美味しいって食べてくれたんです』って、写真とお手紙をいただいたときは、本当にうれしかったですね」

農業を始めた当初はわからないことだらけだったという加藤さん。ビニールハウスのビニールの張り方から、栽培方法、売り先のことまで、地域の人に助けてもらいながら試行錯誤で学んできた。

「困っている様子が伝わったんでしょうね。それまで話したこともなかった近所の方が、わーっと駆けつけてきてくれて。こうするんよって教えてくれました」

「大洲の農家さんは、こうしろああしろ、とかは言わない。自分のやりたいように農業ができると思います。でも、こっちから聞いたりよっぽど困っていたりしたら、助けてくれる。そういう距離感ですね」

奥さんも、地元の女性農業グループに入って、マルシェへの出店やグループでの通販をしているそう。旦那さんの話を側で聞きながら、最後にこんなことを伝えてくれた。

「農業に転職するって、正直リスクがあって怖いなと思っていました。でも、あのまま東京で暮らしていたら、私がまいってしまっていたかも。お金の面では安定したかもしれないけど、夫婦でずっと一緒に過ごせている今とは、まったく違う生活だっただろうなって。こっちに来てよかったなって思っているんです」



次に紹介してもらったのは、米農家の沖野さん。加工品づくりやスマート農業など、積極的に新しいことにチャレンジしている方だ。

作業場であるキッチンにお邪魔すると、甘くていい匂いがする。

「今朝、妻がクッキーを焼いていたんですよ。自分たちでつくったお米を使った、米粉のクッキーで。他にも、ポン菓子やチョコ餅とか、米農家の強みを活かした商品をいろいろつくって販売していますね」

会社で6年間働いた後、26歳のときに実家の米農家を継いだ沖野さん。

つくったお米を何か加工品にして新しいことができないかと考え、6年前に餅づくりの機械を購入し、餅の加工と生産も始めている。

「菓子製造業許可付きのキッチンは、実家にあったものなんです。僕はたまたま条件に恵まれていたけれど、加工用の設備を揃えるのは大変だと思いますね」

はじめから環境をすべて揃えるのは、審査やお金の面でなかなか難しい様子。

任期後に加工品を手がけたい場合、どんなことができそうか、一緒に話を聞いていた久世さんにも聞いてみる。

「設備投資に関しては、制度で補助できる部分もあります。ほかにも、まずは設備を持っている人と一緒に始めてみたり、キッチンカーやレンタルキッチンを探したりすることもできるかもしれません」

「今回募集する人がどんな分野を選ぶにしても、知識のある人や協力してもらえそうな人を探して繋ぐなど、僕もできる限りのサポートをしていくつもりです。一人ひとりにきちんと向き合っていけるように、少人数に絞って採用する予定ですし、暮らしの面も含めて気軽に相談してほしいなと思っています」

自分だけで事業を進めていくとなると、ハードルが高く感じて不安になってしまうこともあるかもしれないけれど、そんな時は久世さんが力になってくれるはず。

設備さえ頑張ってクリアしたら、「加工は好きなものをつくって売れて、すごく面白いですよ」と沖野さん。

「4年前に、市主催のイベントがきっかけで、地元の洋食店『ビストロサンマルシェ』さんとコラボ商品をつくったんです。2年かけて開発したんですが、あれはすごく楽しかったですね」

洋食店でつくったカレーと杵つき餅をレトルトパックした、その名も「杵つき餅カレー」。

ご飯ではなくお餅をお供にしたカレーは、全国の地方新聞社が選ぶ「こんなのあるんだ!大賞」で日本一にも選ばれた。

全国メディアでも取り上げられ、放送からわずか2時間の間に約700セットもの注文が入ったそう。

「お米も普通に売ったらほかの農家さんと同じやけん、米食味鑑定士っていう資格を取って、鑑定士がつくったお米として売り出しとるんです。包装も、あえて米袋風のデザインにして売ってるんですよ」

つくり方はもちろん、商品の見せ方や売り方まで。全部自分で考えて形にしていける仕事って、意外と少ない気がします。

「ほかの仕事を経験してきた人のほうが、就農したら面白いと思うんですよ。加工や売り方、ラベルやデザインって、何かしらその人の培ってきたものが活かされて、ほかと違うアプローチになる」

「いろんな人がこの地域にいることで、僕たちにできることも増えていくと思うんです。どんな職歴の人が来てくれるかわからないけど、今までのことをいろいろ教えてもらいたいし、友達になりたいですね」

沖野さんは、スマート農業と呼ばれる、ICTを使った農業にも積極的にチャレンジしている。

農薬を散布するドローンや、農地を管理するアプリ、収穫量や品質まで分析できるコンバインなど、いろいろな機械を導入しているそう。

「僕らの世代やけんできる農業ってあると思うんです。ECサイトやSNSを使ってお客さんに直接売るとか、スマート農業を進めて高齢の方が手放した農地を引き受けるとか。新しいことにも、もっとチャレンジしていきたいですね」



縛られないからおもしろい。

大洲でなら、農に関わるいろいろな道を切り拓いていけると思います。

(2021/4/5 取材 鈴木花菜)
※撮影時はマスクを外していただきました。
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