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一粒ひとつぶ、それぞれに
大豆ラボの熱気と
自分でつくる手応え

※日本仕事百貨での募集は終了いたしました。再度募集されたときにお知らせをご希望の方は、ページ下部よりご登録ください。

はじき豆、きなこ豆、シンプルに炒った大豆、味噌や醤油で味をつけたもの。

ときどき無性に食べたくなり、食べだすとなぜか止まらない。

一見地味ではあるけれど、どんなに目新しいお菓子が増えても、豆菓子は独特のポジションを占め続けている。

なんで、豆を食べたくなるんだろう。豆の魅力って一体なんだろう?

そんな「そもそも」に立ち返りながら、新しい挑戦に踏み出そうとしている人たちがいます。

株式会社イシカワは、昭和2年から広島で豆菓子を中心に製造販売してきた老舗。

4代目となる今、製品だけでなく、広報ツールやパッケージ、ときにはイベントなど、いろんなものを自分たちの手でつくろうと取り組んでいます。

今回はここで、商品企画と製造管理、それぞれの担当者を募集します。食品に関する知識や経験よりも、ものづくりに関わりたいという熱意を求めています。


広島市の西隣りに位置する廿日市(はつかいち)市。安芸の宮島で有名な大鳥居も廿日市の沖合にある。

広島駅から在来線で20分。宮内串戸駅から路線バスに乗り換えてさらに30分ほど。住宅街を離れるにつれ、緑豊かな風景に変わってきた。

バス停からしばらく歩いていくとイシカワの本社が見えてきた。

玄関でスリッパに履き替え、2階の会議室へ。少し待っていると、代表の石川さんが急ぎ足でやってきた。

「いやぁ、遅くなってすみません。今日はちょっと、ベトナムから来ている研修生の引越しを手伝っていまして」

海外研修生や、新卒で入社する若手の社員も多いイシカワ。石川さんは普段から、自家用車を持たないスタッフの通勤のために、毎朝最寄りのJRの駅まで車で送迎もしている。

広島市の中心部からであれば車で40分ほど。企画から製造まですべてのスタッフがこの本社で毎日顔を合わせる。

「イシカワは昭和2年に曽祖父が焙烙(ほうろく)でソラマメを炒るところからスタートした会社で、以前は広島市の南部に本社がありました。僕も子どものころはよく祖父に連れられて遊びに来ていましたよ」

もともとアパレル業界で仕事をしていた石川さん。

大好きだった祖父に請われて会社に入ったものの、当初は製造の現場に退屈さを感じていたという。

「毎日同じ作業の繰り返しに見えたんですよね。そのうち、職人たちが日々の気温や湿度に合わせて製法を微妙に調整していることがわかってきて。ものづくりに向き合う人のこだわりを現場で知れたからこそ、その後営業として製品の魅力を伝えていくことができたんだと思います」

スーパーなどの量販店を通して商品を届けるために、取引先のニーズや市場価格などを意識しながら商品開発に向き合うことも多かった。

7年前代表に就任した石川さんは、もっと自分たちからアイデアを形にしていく機会を増やそうと、「商品企画」の専門チームを発足。

今その商品企画部を中心に、新たな自社ブランドを立ち上げようとしている。

「これまで豆菓子って、いろんな味付けによってバリエーションを増やしてきたんですが、今後はもっと素材そのものの魅力を伝えていけないかと思いまして」

たしかに最近、アーモンドなどのナッツも無塩のものが増えていますよね。健康を意識したおやつとして、ナッツや豆を選ぶこともある気がする。

「我々も今はナッツやドライフルーツなど幅広く扱っていますが、やっぱり原点は豆。新しいブランドでは、大豆にテーマを絞ってその魅力を伝えていくことにしました」


新しいブランドのマネージャーを務めることになったのが、商品企画部の遠藤さん。もともと理工学部の出身で、食品やマーケティング分野は未経験だったという。

「私はちょうど商品企画部が発足するタイミングで入社したので、自分たちの役割をつくっていくところからのスタートでした」

普段は主に、営業部と相談しながら新商品の開発を進めている。

試作用の調理器具を使って豆菓子のサンプルをつくったり、パッケージを考えたり。原価計算などのデスクワークもあれば、農家の方に話を聞くため、まる一日畑仕事を手伝ったこともあるという。

冊子づくりやSNS運用のほか、最大の繁忙期である節分のシーズンには、広報のためにメディアの取材対応をすることもある。

自分たちでつくり、伝えていく。普段の仕事もかなり多岐にわたるようですが、新しいプロジェクトの進み具合はどうですか。

「今いろいろ試行錯誤しているところです。私自身、最初は『なんで大豆?地味じゃん』って思っていたんですが、いろいろ調べていくと、食べ物から食べ物じゃないものまで、幅広い可能性があるんだなあって、大豆に興味が湧いてきて」

食べ物じゃないもの?

「大豆の油を使えば、キャンドルや粘土もつくれるらしくて。それに、大豆はこの廿日市でも栽培されているので、地域の農家さんたちとも連携しながら素材の魅力を伝えていけたらいいなと思っています」

これから少しずつ形にしていくブランド。名前は創業者の石川信太郎にあやかって、「NOBUTARO」という。

今は、テストマーケティングも兼ねて広島市内の商業施設のマルシェイベントなどに新商品を届けている。

1年ほど前につくりはじめたのが、大豆を使ったパン。

豆パンといっても甘く煮た豆がごろごろ入っているものではなく、大豆を練り込んだ生地で、大豆のペーストと大豆由来のクリームを包んだ、ちょっと洋風な雰囲気のもの。

「見た目はあんぱんみたいだけど、どっちかというと芋や栗に似た優しい甘さです。これを、前日に私たちが仕込んでいて…」

あ、試作だけじゃなくて、実際に販売するぶんも遠藤さんがつくっているんですか?

「このブランドに関しては、そうなんです。パンのつくり方を調べるところから、商品企画部のスタッフふたりで。自分たちでつくって、売りにいっています。本当になんでもやる部署なので、そういう部分も楽しめる人のほうがいいかな」

何度かイベントに出展するうちに、地元のお客さんからは「豆のパン屋さん」と認識してもらえるようになってきた。

一方、大豆の可能性の幅広さを伝えるためには、さらに商品のバリエーションを増やす必要性も感じているという。


「ゆくゆくは、『このお店のもの全部大豆でできています』っていう、大豆ラボみたいなブランドにできたらいいですよね」

そう話すのは、遠藤さんと同じ商品企画部で、一緒にプロジェクトに取り組んでいる猪原さん。

「私は学生のころ、やりたいことが多すぎて進路をひとつに絞れなかったんです。それで、小さくて風通しがいい会社ならいろんな仕事を任せてもらえるんじゃないかと思って、ここに入りました」

入社して3年目になる現在は遠藤さんとふたりで、商品企画から広報、新卒採用まで幅広く担っている。

「商品企画の仕事は、製造の工程とか包装の仕方、売り方まで、いろんなことを知らないとできなくて。いろんな人に質問したり、調べたり、入社してからずっと何かを求めて走っている気がします」

頭で考えるだけでなく、手を動かす仕事も多い。

猪原さんは入社してすぐのころ、「きなこ大豆」を自分でつくってみたことがあるという。

きなこ大豆というのは、カリッと炒った大豆の周りに、小麦粉や寒梅粉の生地を重ね、きな粉をまぶしたやわらかな食感が特徴的な豆菓子。

「見よう見まねでやってみたんですが、全然まん丸にならなくて。そこから半年くらい、職人さんのそばに立って見学して、『油の温度、今何度ですか?』って質問したり、『あ〜、そこに粉をかけるのね』ってメモしたりしていました」

「職人さんは、仕事の邪魔だったかもしれないけど(笑)、そうやってすぐに現場に聞きにいけるから勉強になる。ベテランの先輩だからって尻込みせずに、質問したり、意見を言ったりすることも、アイデアを形にするためには必要なことだと思います」

新商品を開発するときは、それぞれ担当を決めるものの、社内であれこれ話したり、一緒に試食をしたりしながら進めていくという。

商品企画部はいわば社長直属の部署ということもあって、石川さんとの距離も近い。

難しいお題を預けられて悩んだり、ときには意見がぶつかったりすることもある。

「今の商品企画部は、それでも『やってやろうじゃん!』ってなる人が多い気がするので、そこも私は好きです。ちょっと部活みたいな雰囲気もあるのかな。一緒に働くなら、何かに夢中になれる人がいいですね」

ふたりの話に、代表の石川さんもこんな言葉を添えてくれた。

「上司が言うからってなんでも素直に受け入れるよりは、ときには反発してでも、自分で何かつくりたいっていう気持ちがあるほうがいい。僕もよぅ怒られます。そんときはこっちもちょっとムカついて言い返したりしますけど(笑)、ちゃんと腹割ってくれるのはありがたいなって、後から思いますよ」


そんな話を、隣でにこやかに聞いていたのが、製造管理部の猿屋さん。猿屋さんは普段、豆の加工から包装、出荷まで、製造の現場をマネジメントしている。

「単純作業だからといって、日々の仕事がただのルーティーンにならないよう気をつけたいなとは思います。時間内に仕事を終わらせようとか、次の仕事を前倒しでやってゆとりを持てるようにしようとか。一人ひとりがそういう小さな目標を達成していく喜びを意識できるように」

猿屋さんご自身の目標は何ですか?

「私ですか? 私は、若い子たちに『猿屋さん、邪魔です』って言われたいです。『自分たちでできるから、ここはもういいですよ』って。そのためにはやっぱり、若い子たち自身が、自発的に動けるような、やりがいや目標を見つけるきっかけづくりを手伝っていく必要があるのかなとは思います」

実際に何かをつくる作業だけでなく、今ここにない新しい価値を生み出そうと、一人ひとりが頭と体を動かしていく。

この会社の「ものづくり」を定義するなら、そんな言葉がぴったりくる気がする。

「大豆って、水につけているとすぐ芽が出ちゃう。冷たい水のなかでも、そのときすごく熱を持つんですよ。小さい豆が、ウー…ポン!って、エネルギーを出しているなっていう感じがします」

一粒ひとつぶが熱を持って、芽を出して。

その姿は、ここで働く人たちにも重なるような気がします。

(2021/3/24 取材 高橋佑香子)
※撮影時はマスクを外していただきました。
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