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違いを楽しむ
日本語でつながる
異文化交流の海に帆を張って

※日本仕事百貨での募集は終了いたしました。再度募集されたときにお知らせをご希望の方は、ページ下部よりご登録ください。

2020年度から、小学校で英語の授業が必修になりました。

外国語を学ぶことで、世界が広がる。これは素敵なことです。一方で、日本語しか話せないことに劣等感を感じる人も増えているかもしれません。

そもそものはじまりにあるのは、「知りたい」とか「伝えたい」という気持ち。わたしたちが外国語を学ぶのと同様に、世の中には日本語を学びたいという人がいて、お互いに日本語で通じ合うことができる。“グローバル化”を過剰に意識すると、そんな可能性をどこか置き去りにしてしまうような気もします。

株式会社Helteが手がける「Sail(セイル)」は、日本語での会話を通じた異文化交流のプラットフォーム。主に、日本語に関心がありつつ学ぶ機会のない外国の人と、豊富な経験を持ちながら孤立している国内のシニアを結びつけてきました。

コロナ禍を経て、既存のコミュニティ活動が減り、オンライン化が進んだことなどから、ユーザー数は飛躍的に増加。今は上場に向けた資金調達やサービスの補強に力を注いでいるそうです。

今回は、そんなSailの成長をともに支えていくバックエンドのリードエンジニアと、オペレーションマネジャー、セールスマネジャーを募集します。経験やスキルのみならず、根底の価値観を共有しながら走れる仲間を求めているとのこと。

前向きな気持ちを原動力に、一人ひとりが世界を広げていく。そんな社会を目指すチームだと思います。


千葉・柏。

このまちのシェアオフィスにHelteは事務所を構えている。柏駅東口から徒歩7分。

交差点の角にあるビルの3階を訪ねると、代表の後藤さんが迎えてくれた。

偶然だけど、ぼくも後藤さんも柏出身で年代も近い。ひとしきり地元の話をして、不思議と打ち解けた状態から取材ははじまった。

後藤さんがSailを立ち上げたのは、カメラマンのお母さんの影響が大きいという。

「母はぼくが幼いころから、米国と日本を行ったり来たりして生活していて。マックスで半年海外に行っちゃうんです。その間は祖父母の家に預けられて。お土産と歴史の教科書を見比べつつ想像を膨らませていたことが、今につながる第一歩だったかなと思っています」

高校まで野球に打ち込み、やがてDNAなのか、海外へ興味を持つように。大学ではアメリカとインドに1年ずつ留学。

単位を取り終えた4年生時には、30カ国を回る貧乏旅行に出かけた。

「旅先で一番衝撃だったのは、インドのゴアで出会ったヒッピーの人たち。映画でしか見たことがないようなドレッドヘアーで、愛と平和とセックスを信条にしていて、いろんなものをぷかぷか吸っていて。こういう生き方もあるんだって」

出会う人のほとんどは、とくべつ裕福でも、社会的地位が高いわけでもない市井の人たち。貧困や暴力など、問題を抱えた人も少なくなかった。

そんな人たちが、困ったときには見返りを求めず助けてくれた。何気ない言葉に背中を押されることも。

後ろめたい過去やうずうずした気持ちは誰にもあって、なくなるものではないけれど、いろんな人の生き方を知ることで楽になる部分もあるんじゃないか。そんなふうに感じたそう。

「マイナスとマイナスがかけ合わさってプラスになる、みたいなことがぼくはあると思っていて。日本語を学びたいけれど学べていない人と、豊富な人生経験を持ちながら孤独を抱えている日本のシニア。双方にとってプラスの世界観を生み出せるなと思って立ち上げたのが、Sailです」

以前から親交のあったフランス人投資家の支援を受け、まずはタイ・バンコクの日本語学科のある大学や、日本国内の高齢者施設を一軒ずつ回った。

今では毎週1000弱の会話が生まれているものの、当初は週に3回程度で、自前のシステムもボロボロ。5回、10回…と機会を増やしていく地道な日々がはじまった。

「微かな希望に目をこらしながら、ひたすら真っ暗なトンネルを突っ走るような。そんな創業期でした」

転機となったのは2018年。面白法人カヤックと業務・資本提携を結び、リニューアル。マスメディアにも取り上げられるようになり、利用者はぐっと増えた。

コロナ禍の影響はどうでしたか?

「シニアのみならず多くの人が孤立を経験したなかで、行政への導入も進みました。ICTを使った新たなコミュニティ創出ということで、地域のボランティア団体や国際交流協会に対して、行政がフロントに立って働きかけてくれて。神戸市にはじまり、藤沢市、今後も豊田市や奈良市と新しい活動をはじめようとか。そういう感じで広がってきていますね」

ひとりではじめた会社も、主軸のスタッフ8名と10名弱のアルバイトスタッフを抱える組織に。近々アメリカと中国からも2名のスタッフを迎えるという。

資金調達にも積極的に動いていて、株主には外国籍の経営者やIT、不動産分野の上場企業など、多様な人たちが名を連ねている。

成長著しいサービスをよりよいものにしていくため、さらに3〜4名の仲間を今回募集したい。

具体的に、今後取り組んでいきたいことってありますか。

「ひとつは、マッチングの精度を上げていきたくて。自動車製造の実習生と大手メーカーに勤めていた人をつなぐとか。住んでいるエリアだけじゃなく、職歴や関心のある分野も、希望に応じて開示できるようにしていきたいんです」

「一方で、2割ぐらいはネジの外れたマッチングも生みたいんです」

ネジの外れたマッチング?

「ぼくがユーザーとして情報を登録したら、たとえば、生け花の先生とはつながらないと思うんですよ。でも、本当はそんな出会いこそおもしろいかもしれない。あえてすっとぼけたマッチングをして、セレンディピティが起こるような仕組みをつくり込みたいなと思っています」

また、Sailでの会話を通じた孤独の解消やICTの理解度向上、程よい緊張感による認知症予防効果もあるかもしれない。楽しみながら健康増進につなげられないかということで、東京大学柏の葉キャンパスと共同で研究を進めているという。

一方、この1〜2年でユーザー層が広がったぶん、本来の目的とは違った使われ方をする懸念も増している。

たとえば自然言語処理を行い、事前に設定した禁止ワードを使ったユーザーはブロックするなどして、安心・安全な環境を保っていきたい。

「海外向けで言うと、現状は120カ国で使われているところを、国連加盟国すべてに広げていきたいですね。Sailのスキームを活かした多言語展開も考えています。それから、海外ユーザーの3割くらいは日本で働きたい人たちなので、日本語を学んで働くまで、就職支援をワンストップでできるようにしていきたいなと思っています」

やりたいことは、盛りだくさん。

行政のやりとりにはオペレーションマネジャーの力が必要だし、海外展開ならセールスマネジャーの出番。なかでも今回とくに、バックエンドのリードエンジニアを求めているそう。「ゆくゆくはCTOも任せられたら」と後藤さん。

なかなかハードルは高そうですね。

「スキルや経験も大事ですし、数字やKPIもしっかり見てくれる人がいいのは確かなんですけど、根底の価値観を共有していることが第一だと思っていて」

根底の価値観。

「どうしてもふわっとしちゃうんですが、愛のある人がいいですね。いろんな人との会話を通じて、ちょっと誰かにやさしくなれたり、思いやる気持ちが生まれたり。この事業が社会をよくするんだと信じて、一緒に楽しみながら前進できる人がいいなと思っています」

新潟や山梨在住のスタッフもいて、基本はリモートワーク。月に1回は全員出社する日を設けているそう。

今回募集する人は、最初の3ヶ月ほどは出社してほしい。その後は最低でも週1回の出社を基本に、柔軟に働き方を相談していきたいとのこと。

フルリモートも不可能ではない業態のなかで、月1回の頻度で顔を合わせる機会をつくっているのも、コミュニケーションを大事にしたいからこそ。黙々と自分の仕事を進めるだけでなく、対話しながらチームで働きたい人がいいと思う。


隣でにこやかに話を聞いていたのが、スタッフの三浦さん。

メールマガジンやブログでの発信、Facebookコミュニティや交流イベントの企画運営などを通じて、ユーザーとの接点を日々つくり続けている。

「毎週、“喫茶るんるん”というオンラインの交流会を開いていて。30〜40名の方が参加してくださって、いろんな疑問や感想を共有できる場になっています」

国ごとのタブーや文化の違い、話していて驚いたことやうれしかったこと。毎回さまざまな話が飛び出すという。

「海外旅行が好きな70代のユーザーさんがいて。その方にとって、世界中の人と話すのは慣れていることなんですね。だけど、画面の向こうにお子さんが映ったり、ニワトリの鳴き声が聞こえてきたり。日常の様子って旅行では感じられないので、友だちとか親戚のお家でお茶飲みながら話すような感覚が新鮮で楽しいです、って教えてくれて」

「それまで外国語にコンプレックスのあった方も、こんなふうに世界中の人と交流できるのはうれしいって声をいただいたり。ミャンマーのクーデター、あの子は大丈夫かな?とか、ニュースに敏感になったという方もいますね」

本当の家族とは身近すぎて話せないことも、遠い国の人となら話せたりする。逆に海外のユーザーは、80代になっても元気な日本のシニアから希望をもらう人も多いみたい。

柏で福祉関係の仕事をしていた三浦さん。

もとをたどれば、大学時代の異文化交流学の先生との出会いが今につながっているという。

「その先生のもとで学ぶなかで、異文化交流って“全員と”なんだ、って思ったんですよね。日本人と外国人とかではなく、育ってきた背景は一人ひとり違う。いろんな文化や生き方があるんだって知るだけで楽になる人も、きっとたくさんいますよね」

「Sailについて話すと、はじめは『先生と生徒なんだよね?』『ボランティア?』って言われることも多い。その度に『いや違うんです、フラットな異文化交流を楽しむサービスです』って説明していて。日々パワーがいるけれど、楽しいところでもあります」

UIやUXを改善したり、伝え方を工夫したり。ユーザーとの接点を考えると同時に、自分たち自身の認識やスタンスも日々更新していくことが大切。

チームで働くということもまた、一人ひとり違った性格や得意不得意を持つ人たち同士の異文化交流の連続なのかもしれない。


取材後、近所をぶらっと散歩することに。リフレッシュしたいときに歩くお決まりのコースがあるらしい。

夕暮れどきの公園を歩きながら、後藤さんのこんな言葉を思い出していた。

「どう生かされてるかってことを、最近よく考えるんです。やばい、もうだめだってときに必ず誰かが助けてくれたり、数ミリのずれから新しい縁が生まれたり。その連続で今もバッターボックスに立たせてもらっていることに、感謝しないとなって」

「こういう定性的なふわっとしたことも、一緒に話せる人だといいなと思います」

相手の言葉に耳を傾け、咀嚼して話す。そんなおふたりの姿勢が印象に残りました。

世界を広げるとともに、日本語を今一度大事にできる環境だと思います。

(2021/4/12 取材 中川晃輔)
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