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オーガニックのこだわりと
手足のように動くミシンで
本物を縫うものづくり

※日本仕事百貨での募集は終了いたしました。再度募集されたときにお知らせをご希望の方は、ページ下部よりご登録ください。

オーガニックな栽培や生産、フェアトレードなど。環境や健康、貧困といったさまざまな課題を、ものづくりの仕組みを見直すことから解決していくような流れが、ここ10年ほどで生まれています。

多少価格が高くなっても、世の中を少しでもよくするようなものを買いたい、売りたい。

そういったことに関心がある人に、紹介したい仕事があります。

奈良県の東部、山あいに位置する御杖村(みつえむら)。

ここでオーガニックコットンの肌着やマスクを製造・販売しているのが、スガノ工房のみなさんです。

20年前、まだオーガニックという言葉自体も広く知られていなかった時代から、化学肥料や農薬を使用せずに育てられた綿だけを使い、高い技術でものづくりを続けてきました。

今年の11月には、東京に常設店をオープン。来年には、同じ奈良県内の桜井市にも店舗をオープンする予定です。

ブランドが急成長している今、御杖村の工房で、社長の右腕として生産管理や経営に携わる人を募集します。あわせて、桜井市にできる店舗のスタッフも募集しているので、気になる人は読んでみてください。


名古屋駅から近鉄特急に乗り1時間半で、名張駅に到着。目指す御杖村は、ここから車で30分ほどの場所にある。

山に囲まれた川沿いの道を、くねくねと進んでいく。「時間通り着くかな…?」と心配になりかけたところで視界がひらけ、民家が立ち並ぶエリアに入った。

その一角にスガノ工房はある。

車を停めて、倉庫のなかへ。

「こんにちは!遠くからおつかれさまでした」と迎えてくれたのは、社長の青海徳生(せいがいとくお)さん。

スガノ工房がオーガニックコットンのものづくりを始めたのは、20年前のこと。

御杖村は昔からミシンを使った縫製業が盛んな地域で、スガノ工房も主に大手の下請けで玄関に敷くマットなどの製作をしていたそう。そのなかで、自社製品にオーガニックコットンを取り入れたのがきっかけだった。

「母と父がオーガニックコットンの肌着をつくり始めて、子ども心にそういうものをつくってるんだなぁ、くらいの認識はありました。でもすぐに自分も加わろうとは思わなくて、一般企業に就職して30年ほど働いていたんです」

転機となったのは、2年前。

徳生さんのお父さんが亡くなったことだった。

「こだわったものづくりを続けていることは知っていたので。当時は下請けの仕事がメインでしたが、これは世の中に出し続けないといけないものだと。なくなってしまうなら自分が続けていきたいと、お通夜の夜に決めました」

1年目は、とにかく目の前の仕事に食らいつく日々。

そして2年目に入った昨年、花粉症対策にマスクをつくってみようという徳生さんのアイデアから、スガノ工房は大きな変化を迎える。

「2月ごろからつくり始めたんですが、あっという間にコロナ禍になって。肌に触れるものですから、オーガニックコットンはマスクとすごく相性がいいんです」

「売り先を増やすなかでじわじわと評判が広がって。ふるさと納税のサイトでも、奈良県の返礼品のなかで1位になったんですよ」

メディアにも取り上げられるようになり、マスクの売れ行きは急増。自社製品の生産が増えたことで、下請けの仕事をせずとも経営が成り立つまでになった。

その後も、スガノ工房の勢いは止まらない。

「今がチャンスだと思って、今年の始めにファッションワールド東京という大きな展示会に出展したんです。そうしたら予想以上の反響をいただいて。3つくらい営業先ができたらいいかな、くらいに思っていたのが、とんとん拍子で東京にお店を出すことまで決まって」

「びっくりしましたね…(笑)。パチンコで1玉入れたら大当たりしたみたいな感覚です。東京のお店は11月にオープン予定で、来年には奈良県内の桜井市でも店舗を開く予定です。東京での出店に合わせて僕も上京するので、新しく入る人には、僕の代わりに生産管理や経営を見てもらいたいと思っています」

工房では、型に合わせて社外で裁断してもらったオーガニックコットンの生地を、一つひとつミシンで縫製。その後の梱包から発送まで自分たちで行なっている。

今回募集する人には、これらの工程管理や発送、経理など、製作以外のマネジメントを担ってもらいたい。

業務の幅は広いけれど、徳生さんが2年かけて効率化を進め、ひとりでも回せるようにしているので、それを引き継ぐところから始められる。

ゆくゆくは経営にも深く関わっていく役割になるため、たとえば自分でものづくりの事業を始めたいと考えている人にとっては、いい経験になると思う。

それにしても、すごいスピードで成長していますね。

「本当にそうなんですよ。今でも、夢なんちゃうかなって思うくらい(笑)。ここががんばりどきだと思っているので、スガノ工房のものづくりをたくさんの人に知ってもらうためにも、いい形で引き継ぎたいと思っています」

「僕が東京に行ったあとも、連絡は密にとろうと思っているので、そこは安心してもらえたら。製造に関しては母がいるので、いろいろ相談できると思います」


そう紹介してくれたのが、徳生さんのお母さんである叔子(よしこ)さん。ちゃきちゃきとした雰囲気で、よく笑う方。

「私からしたら、こんなん20年前から同じデザインなのに、えらい評価してもらって。もっといいものつくらなあかんなって、現場で話してるんですよ」

現在スガノ工房で製作に携わっているのは、叔子さんを入れて6人。30年近く働いている人もいるという。

叔子さんは、どうしてオーガニックコットンのものづくりを始めたんですか?

「当時ね、お世話になってた整体の先生がいて。その人が愛用してた綿の下着があるんやけど、つくってるところが倒産してしまったと。青海さんミシン得意やから、つくってくれへんかって。それが最初なんです」

お世話になった恩を返したいと、叔子さんは原料やつくり方を調べるところから始めた。

原料も、どうせつくるなら環境に優しく、人にも優しいものがいいと、原価が高いことを承知でオーガニックコットンを使用。新しいものづくりをきっかけに、自分たちの技術も高めていった。

「私はね、人を大切にするっていうことをすごく大事にしてるんです。そうあるべきやと思って生きてきたから。整体の先生もそうやし、うちで働いてくれている子たちがいるから、ご飯を食べることができる。ありがとうって」

「いいものをつくるために、厳しいことも言ってきました。生地やミシンがわるいんじゃなくて、つくる人があかんのやと。それもみんなで受け止めて、またがんばる。そういう環境でつくり続けてきたんです」

素材へのこだわりと、ミシン縫いの技術。それらが揃っているからこそ、スガノ工房の商品は評価されてきた。

ここで、作業中の様子を見せてもらう。

縫っているのは、マスクの口当ての部分。手を動かすのは、30年働いているというベテランさん。

ミシンの調整をして、布を当てる。ペダルを踏むと、ダダダダっと心地いい音を響かせながら、針が進んでゆく。

手を器用に動かしながら、ミシンを止めずに曲線を縫っていく様子は、まるでピアノを弾いているみたい。

「見られると緊張するわ」と笑いながらも、手元の布はどんどん縫い上げられてマスクの形になった。

スガノ工房では、生地だけでなく縫い糸も綿を使っているそう。ナイロンの糸に比べて耐久性は劣るものの、縫い方の工夫で補っているのだとか。

「糸はケチらず、しっかりと丁寧に縫うのが大事です」と、叔子さん。

たとえば、と見せてもらったのが、オーガニックコットンの腹巻。メロウという特殊な技法で縫われている。

一般的なものだと、洗濯を重ねることで糸と生地が伸びてしまい、波のような部分の形が崩れてしまうことが多い。

けれどスガノ工房のメロウは、綿の糸を惜しまずに使い、一つひとつ丁寧に縫い上げているため、長く形状をキープできるそう。

いいものをつくるために、素材と労力は惜しまない。オーガニックにこだわり、環境と人に負荷がかかるものは使わない。

考え方はとてもシンプルだ。

「今年東京のイベントに出たときね、いろんな商品を見てまわったんです。でも、どれ見てもうちのが勝ってるなって。こんなにまがいものが世の中に出てるんだって」

「本物を縫わないと、自分の人生が偽物になる。息子も同じことを感じてくれているから、私も安心してるんですよ」


最後に話を聞いたのは、デザイナーの山本さん。

「私はお隣の曽爾村(そにむら)に住んでるんですが、スガノ工房のことは全然知らなかったんです。今年の始めに偶然徳生さんと知り合ったのがきっかけで、ブランディングのお手伝いをさせてもらっています」

山本さん自身、もともとオーガニック食品などに関心があったそう。

スガノ工房のものづくりに触れるなかで、その心地よさやオーガニックを選ぶ意義について、さらに深く考えるようになった。

「私たちがオーガニックのものを選択することで、環境問題とか、貧困とか、世界が抱えている課題の解決に近づいていく。スガノ工房のものづくりには、その力があると感じているんです」

肌に触れて心地よかったり、自然に優しかったり。変化の激しい時代でも、本当にいいものは変わらない。

本質は変えずに、時代に合わせて見せ方を工夫する。その試行錯誤を繰り返すことで、より多くの人に届いていく。スガノ工房は、まさにその道中にいる。

「叔子さんたちの考え方っていうのは、難しくなくてとてもシンプルなんです。余計なものがないから、わかりやすい」

「大きい夢かもしれないけど、肌着やマスクを通して少しずつみんなの考え方が変わっていけば、今よりもこの世界がいい方向に変わっていくんじゃないかなって。そう思って関わってます。だから、仕事なんですけど、仕事じゃないみたいな感覚です。生きてる、っていうのかな」

これから入る人も、まずはオーガニックってなんだろう、というところから始めたらいいと思う。

成長過程のスガノ工房だからこそ、日々問い、行動するなかでいろいろな経験ができるはず。

最後に、再び徳生さん。

「住む場所も、うちが持っている空き家があるので、無料で使ってもらえたら。200坪くらいの畑もあるので、田舎暮らしも味わえると思いますよ」

「経験はあまり重視していないです。それよりは、やる気があって、僕らがつくっているものをいいと思ってくれる人がいいですね。いろんなことを吸収して、一緒に成長していきたいと思っています」

取材中も、叔子さんがアイスモナカを持ってきてくれたり、柴犬のうめきちと遊んだり。家族の輪に加わっているようなあたたかさが心地いい時間でした。

まずは徳生さんたちと話してみてください。スガノ工房の可能性が広がる先に、自分の活躍の場も広がっていくと思います。

(2021/8/11 取材 稲本琢仙)
※撮影時はマスクを外していただきました。
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