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田舎に還ろう
田舎でつくろう
空き家から考えるまちのこと

コロナ禍を通じて、移住を検討する人が身近に増えています。ぼくもそのひとりです。

そのなかで何度も実感したのが、住まいの大切さ。

環境も、人も好きになったまちに住みたいと思っても、家がなければ住めません。もちろん、まったく「家がない」なんてことはそうそうなくて、何年も手入れされず修繕が必要だったり、持ち主さんとの信頼関係がないと借りにくかったり。さまざまな要因が重なることで、“住みたくても住めない”ことがありえるんだなとわかりました。

全国の自治体がこうした空き家問題に直面するなか、宮城県の北西部に位置する加美町(かみまち)では、空き家を利活用するための新しい取り組みがはじまっています。

その取り組みの中心にいるのが、リロカリコクリ株式会社代表の米津さん。

しばらく空いていた牛舎を改装してサテライトオフィスにしたり、石巻市で空き家の利活用に取り組んでいるクリエイティブチーム「巻組」と一緒にシェアアトリエを企画したり。空き家の活用以外にも、地場産品を使った商品企画や農業を通じて、地域に新たな人の流れや関係性を生もうと日々動いています。

今回募集したいのは、米津さんとともに空き家を活かした地域づくりを考える空き家コーディネーター。地域おこし協力隊の制度を利用しますが、リロカリコクリの一員として、米津さんが築いてきたつながりや知見を活かして働くような形になると思います。

地域での暮らしを考えるうえで、大事な要素でありながら、課題の多い住まいのこと。裏をかえせば、地方を取り巻くさまざまな課題解決の根幹に関われる仕事かもしれません。

 

東京方面から向かうと、加美町の最寄りは東北新幹線の古川駅。そこから車で30分ほどでまちの中心部まで行ける。

宮城というと、これまで海側の地域に行く機会が多かったので、ひたすら平野が広がるこのあたりの地形は新鮮だ。

事前に教わった住所を目指すと、一軒のおうちと小屋、そして何やら工事中の建物が見えてきた。軒先にはヤギが一頭。

小屋のなかは事務所になっていて、米津さんが冷たいほうじ茶を淹れて待っていてくれた。

「ヤギはユキちゃんっていいます。そう、ハイジの。嫁さんがヤギ飼いたいって言うので、いろんなところで言いふらしてたら、役場の方が譲ってくださって。ちょっと前まで小さかったのに、今じゃ畑でつくったものは食うわ、体当たりしてくるわで、かわいくない(笑)」

目の前の建物は、何の工事をしているんですか?

「サテライトオフィスをつくっているんです。出張所みたいな形で、外から来た人が滞在して働ける場所にしたくて。オープンは来年度の予定ですが、冬の前には完成させたいと思っています。このあたり、ものすごい雪が降るので」

工事中の建物は、もともと牛舎だったそう。そのつくりを活かして、牛のいた区画ごとに低めのついたてでゆるやかに区切り、作業スペースに。そのほかユニットバスとベッド付きの個室を2つ設ける予定で、宿泊もできる。

牛舎の隣にあるのが、米津さんのおうち。その向かい側に、今まさに話を聞いている事務所が建っている。

「この家、最初大家さんからは『草刈りだけちゃんとしてくれれば』ってことで譲ってもらったんですが、大変な広さなんですね。手前の道路までの敷地と、同じ広さの畑が2面あって、隣の森もうちなので」

「全部ひっくるめてどうしようかなと思ったときに、家のなかから20年ぐらい前の航空写真が見つかって。畑もすごくきれいに整備されていて、なんとかこの風景を取り戻したいなと思ったんです」

サテライトオフィスのような場をつくるのも、そこで暮らしを営むのも、空き家の活用と言える。今回募集するコーディネーターは、その橋渡しをするような役目なのかな。

「憧れるような仕事や生活をする人がまちに増えたら、人は自然と集まってくると思うんです。わたしなんかは、『あんなやつにできるなら、自分にもできるんじゃないか』って思ってもらえたら一番いいなと思っていて」

なるほど、空き家単体を貸したり売ったりするだけでなく、そこでいろんな人が生き生きと暮らし、働く風景をつくっていく仕事と言えるのかもしれない。

滋賀県出身だという米津さん。そもそもご自身は、どんな経緯でここに住むことになったんですか。

「20代のころは、上京してセミプロのミュージシャンとして活動していました。30歳になって、きっぱり音楽はやめて福祉の仕事に就いて。8年弱、出世もしていい形で働いてたんですが、仕事が忙しくて精神的にも病みはじめたころに、『一回全部捨てて、田舎暮らししてみようよ』って妻の提案で、移住を決めたんです」

奥さんの実家が岩手にあり、宮城にも何度か来ていて馴染みがあった。食べものはおいしいし、人もやさしい。

車で実家にも通える範囲内で検討するなか、東京で宮城県北7市町の合同イベントを見つけて参加。とくに縁を感じたのが加美町だった。

「担当の課長が地元愛にあふれた熱い方で。『うちにはこんな風景も、こういう産品もある。課題もあるけど、来てくれれば力になれる』って、いいところもわるいところも全部説明してくれました」

その週末、夫婦の休みが合ったので「行ってみようか」と話していたら、すぐに役場で体験ツアーを組んでくれたことも大きかった。

 

そのツアーを担当していたのが、ひと・しごと推進課の佐藤さん。

「あの日、すーごい雪だったんですよね。なんで今日なんだろう、これ見たら住むの嫌になっちゃうよなと思うぐらい」

加美町が地元で、ずっと役場に勤めてきた佐藤さん。5年前から移住・定住や地域おこし協力隊の担当をしている。

「飛び抜けて強みのあるまちではないですし、移住・定住専属の係ができたのも比較的最近で。ほかのまちを見様見真似でツアーを実施してきました。そのなかでも、協力隊だったり、地域の農家さんだったり、出会いのきっかけをつくることは意識していて」

移住希望者が現れたら、各地域の区長さんに「こういう方が住みたいと言っているんですけど、いい家はないですかね?」と電話。実際に家が見つかり、移住に至った人も何人もいるという。

「みなさん、何かを変えたいと思って移住してくるんだと思うんです。家庭菜園をしたいとか、子どもをのびのび遊ばせたいとか。それなのにアパート暮らしじゃもったいない。田舎だからこそできる暮らしまで提案したいと思っていて」

役場では11年前から定期的に空き家の調査を続けている。200、400と増え、今年度は600軒を超えそうな勢いだという。

そのうち空き家バンクに登録されているのは16軒。土地だけのものや、状態が悪くすぐに住めない物件も含まれている。

「物件は個人の資産なので、行政の立場から介入できないところもありますし、属人的につながりをつくっていくには限界があります。もっとシステム化して、空き家の利活用の土台をつくっていきたいんです」

今回募集する人は、佐藤さんや米津さんと一緒にこの土台づくりを進めていくことになる。

具体的には何ができるでしょう?

「今まさに各行政区長さんへの聞きとりと調査を進めていて。いい物件が出てきたら、維持・管理していくのもひとつですね。そこをどう活用していくのか、アイデアを出したり、実際にマッチングしたりすることも業務に入ってくると思います」

今のところ、不動産仲介の資格はチームの誰も持っていないそう。未経験からでももちろん挑戦できるし、経験や資格のある人が入れば、できることの幅は広がりそうだ。

掃除や片付けなど、汗をかく仕事もある。一方で、不動産以外にも建築やデザイン、場の企画などに携わってきた人なら、活用法を考えるなかで経験を活かせると思う。

「空き家を探す人だけじゃなくて、まちの人も気軽に相談に来れるような窓口もつくりたくて。『近所のお店が空いちゃったんだけど、お店はじめたい人いない?』というふうに」

あ、いいですね。この事務所で働いていたら、地元の人がそんなふうにやってきて話をして、町外からサテライトオフィスに働きに来ていた人とつながって新しいことが立ち上がる、とか。そんな展開もあり得そうです。

「全部の可能性を否定しないことが大事かな」と、米津さんも続ける。

「これから入る人が、自分でお店をやりたいと思ったらそれもひとつの利活用だと思いますし。わからないですけど、地域の山で出る間伐材を見て『わたし、加美町の木でこけしつくりたいです!』って人が来たら、やってごらんって言いたい。平たく言うと、何やってもいいかなと思っています」

自ら商売をはじめて、生業のモデルケースをつくっていくのも活用だし、サテライトオフィスやシェアアトリエのように、いろんな人が出入りする場をつくることで活気が生まれれば、まちに住みたいという人が増えて空き家も埋まっていくかもしれない。

そもそも米津さんは、リロカリコクリを「地域をよくすることならなんでもやる会社」として立ち上げたそう。

「社名は“Re-localization”と”Regional co-creation”を組み合わせた造語なんです。地域回帰と地域共創。それがわたしのやりたいことのすべてで」

「地方創生って言葉は嫌いなんですよね。わたしの主観ですけど、上から目線な感じがして。そうじゃなくて、地元の人たちが自立して、永続的に地域の担い手であり続けられる仕組みやきっかけを一緒につくっていきたい。それが共創だと思うんです」

会社を立ち上げる前は、3年間地域おこし協力隊として活動していた米津さん。

アウトドアアクティビティを企画するほか、家庭のベランダでお米を育てる水田キットや、間伐材の丸太をくりぬいたミニ臼とすりこぎを組み合わせたミニ餅つきセットなどを企画・販売。

また、このあたりでは農薬を使わない合鴨農法がさかんなことに着目して、ふるさと納税の返礼品として、ねぎや豆腐などの特産品と一緒にして合鴨鍋セットもつくった。

それも農家さんや林業会社からただ素材を仕入れるだけでなく、作業を手伝ったり、合鴨を絞めたりするところから、米津さんは関わるようにしている。

「全部知らないと話せないので。どんなところにも飛び込んで、そこで必要とされるものをつくろうっていう意識はありますね」

ここで何ができるか。

これまでの経験や知識にもとづいて、「こうしたらいいんじゃない?」というアイデアを持っている人もいるかもしれない。でも、その答えは実際に来てみないとわからないと思う。

今後、説明会やツアーも実施するそうです。まちも見てほしいし、何より、長い時間をともに過ごすことになる米津さんと話してみてほしい。会社のビジョンも取り組みの幅も広くて、すぐにはイメージを掴みにくいかもしれないけど、深いところでグッと共鳴する人がいるだろうな、と感じる方でした。

(2021/8/10 取材 中川晃輔)
撮影時はマスクを外していただきました。

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