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山梨県・富士河口湖町。
富士山の北麓にあるリゾートタウンで、河口湖を囲むように広がるまちです。
国内外から観光客が集まるこの地に、来年の夏、新たな商業施設がオープンします。
道の駅のようなスタイルの複合型の施設で、物販店舗・レストラン・カフェ・宿泊施設・ワイナリーなどが併設される予定です。
4000坪という広大なその施設を手がけるのは、まちの民営企業「株式会社大伴(おおとも)リゾート」。これまでは、15人の正社員と30人のパート社員とともに宿泊事業を手がけてきました。
今回の新事業は、会社にとって大きなチャレンジではあるものの、不安よりも期待が大きく、文化祭のようにみんなで楽しみながら準備を進めています。
今回は、この施設で働くスタッフを募集します。施設全体を統括する店長と、物販と飲食エリアを担当する人を求めています。
マネジメントの経験がある人はもちろん、これから学んでみたい人も大歓迎。オープン前に研修もありサポート体制も手厚いので、未経験でも安心して働ける環境だと思います。
富士河口湖町へは、新宿から電車かバスを使って、2時間ほどで到着する。
終点の河口湖駅で降り、車を10分ほど走らせて向かったのは、大伴リゾートが運営している「河口湖カントリーコテージBan」。
敷地内のカフェにあるデッキでは、まちの様子が一望できる。雄大な富士山を目の前に、思わず息を呑む。
「山梨県内でも、まちによって富士山の見え方は少しずつ違うんですよ。河口湖から見える富士山は、左右対称で美しい、女性っぽい富士山といわれていますね」
そう教えてくれたのは、大伴リゾート代表の伴(ばん)さん。
伴さんの家系は、先祖代々にわたって富士河口湖町に住み続けてきた。
「書物によると、私の祖先は、平安時代に富士山の噴火を鎮めるため、京都から派遣された神官のようで。浅間(あさま)神社にある記念石碑にも、伴という名が残っているんですよ。本当かどうかは、怪しいところはあるんですけど(笑)」
「そういう家系でずっと地元にいるものですから、地元愛はあるかもしれませんね。祖父や父もまちを大事に思っていたし、リーダーシップの意識もあったように感じています」
河口湖に多く見られるコテージ事業も、30年ほど前に伴さんのお父さんがパイオニアとして始めたもの。
現在大伴リゾートでは、33棟のコテージのほか、プライベートヴィラやホテルなども運営している。
「私はもともと、エンジニアとして世界中の自動車メーカーにロボットを納めていました。10年ほど前からは、ダブルワークをしながら裏から色々と経営をサポートしたり、妻も父と一緒にここで働いていたりして。うまく並走期間を経て、3ヶ月前に父から代表を引き継いだんです」
代替わりを機に、事業の多角化のためにも、夫婦で新たな事業を考えることに。
「これまで宿泊事業をやってきて、まちからたくさんの恩恵を受けてきました。だからこそ、自分たちだけじゃなくて、地域全体がよくなる事業をつくりたい。うちの会社があってよかったねって、まちの人に思ってもらえることをやりたいんです」
そんな想いで始まったのが、新しい商業施設をつくるプロジェクト。
施設の正式名称は、まだこれから話していく段階だけど、今は“旅の駅”と呼んでいるそう。
幹線道路沿いの場所で、面積は4000坪、広い駐車場を備えた大きな複合施設として、2022年夏頃のオープンに向けて工事を進めている。
2000品目を超える商品や産直野菜を販売する物販エリア、レストランやカフェなどの飲食エリアに、グランピング施設。
さらに自社ワイナリーを建設し、ぶどうの栽培からおこなうオリジナルワインの自家醸造を手がける予定なんだとか。
「実力のある醸造家さんが担当してくださるので、きっといいワインができると思いますよ。河口湖は日帰りで訪れる方も多い。ワイナリーができることで、宿泊や食事をするきっかけにもなるんじゃないかな」
旅の駅は雇用の場になるし、まちにぶどう畑ができたら景観も美しくなる。観光客はもちろん、地域にとって意味のある場所にしていきたい。
それにしても、かなり大きなプロジェクトですね。
「正社員15人ほどの家族経営みたいな会社がって思うと、ちょっとびっくりしますよね。コンサルを担当してくれている会社のそろばん勘定でも、事業として成り立つ算段はあるんです。それでも、なんとか成功させなきゃっていう、張り詰めた感じはあります」
「でも、同じくらいワクワクもしていて。嶋田さんにサポートいただいたことで、最初に考えていた構想からすごく深みが出てきたし、今すごくいい方向に進んでいるなって感じているんです」
“大伴リゾートの旅の駅”ではなく、“地域の旅の駅”にしていくために。
地域を巻き込む仕組みづくりをサポートしているのが、株式会社さとゆめ代表の嶋田さん。
今日は、取材のために東京から来てくれた。
さとゆめは、それぞれの地域と伴走するように、日本全国で課題解決に取り組んでいるコンサルティング会社。
たとえば、同じ山梨県の小菅村では、村全体をひとつのホテルに見立てた、地域分散型の古民家ホテルを運営している。
「小菅村では、地域住民を巻き込んだワークショップを企画して、みんなの話し合いのもと事業をつくってきました。今回の旅の駅でも、そういうことをやってくれないかと伴さんに声をかけてもらったんです」
「今回の構想を聞いたときは、率直に言ってびっくりしたというか。僕らも道の駅やアンテナショップを支援してきたけど、大体は補助金を使って行政主導でおこなわれるんです。それを民間企業が手がけるという、その覚悟に驚きました」
富士河口湖町でも、すでに3回ほどワークショップを開催したそう。
「地元住民から見て、旅の駅にどんな機能があったらうれしいか。おしゃれなカフェがほしいとか、自分がつくった料理やお菓子が売れるような場所がほしいとか、いろんな意見をもらいました」
実際の施設には、イベントやワークショップがひらける貸しスペースをつくり、地域の方がつくったものを販売するマルシェを定期的に企画する予定なんだとか。
「富士河口湖町で情熱を持って何かに取り組んでいる人たちの、活躍の場として提供していきたいですよね。場所があることで、新しいことに挑戦する人も増えていくと思うんです。息の長いプロジェクトになると思っているので、オープン後も伴走していきたいですね」
今回の施設は、さとゆめをはじめ、物販や飲食・デザインなど、それぞれの専門家がコンサルとして関わりながら、30人ほどのチームで進めている。
「伴さんがどっしり構えて受け止めてくれるから、みんな『もっとこうしましょう!』って、新しい案をどんどん投げかけていますね(笑)。一筋縄ではいかないことも多いけど、議論に加わって一緒につくっていくのは、きっと面白いと思いますよ」
「先日、デザイナーさんから新しいアイデアもらったときは、なんかね、うれしすぎて寝れなくて」と話すのは、伴さんの奥さんである公子(きみこ)さん。
はつらつとした方で、ゆったりとしたペースの伴さんと、いいバランス。
「もともとは、駐車場部分に少しだけ植栽をするつもりだったけど、敷地全体を森のようにして、まるごと公園みたいな施設にしたいって提案をもらったんです」
1週間前に送ってもらった資料の時点では、アスファルト舗装の予定だった。
採用されたら、雰囲気がすごく変わりそうですね。
「本当に採用となるかはこれから議論しますけど、みなさん前向きにアイデアを出してくださるのがうれしいですよね。小さい会社になんでこんなに集まってくれるんだろう?って思うくらい、トップランナーの方たちが関わってくれているんですよ」
「その分、調整が大変なんですけどね。この形になるまでに、主人と何度議論したことか…(笑)。今は、ここができたらすごい楽しくなるなって思えるから、とってもワクワクしてるんです」
「オープンして、地域に愛される場所になっていったら『やってよかった』って、もっと思うんだろうな」と、笑顔で話す公子さん。その楽しそうな様子を見ていると、なんだかこっちまでワクワクしてくる。
今回仲間に加わる人は、オープン前から話し合いに加わって、幅広い準備に関わることになる。
売り場のレイアウトを考えたり、仕入れる商品のリストをつくって取引先と交渉したり。野菜を卸してくれる農家さんとの関係性づくりのため、ときには収穫のお手伝いにも行く。
「自社商品もつくりたくて。今は山梨県内のとある養鶏場とコラボの話も進んでいるんですよ。商品開発やパッケージデザインにも一緒に取り組んでほしいですね」
「繁忙期には、既存のコテージ事業を手伝ってもらうこともあると思います。今後、旅の駅に関わっていく予定のスタッフも数名はいるんですが、さらに社内の垣根をこえて活動することで、仲間が増えて楽しくなると思うんです」
オープン後は、販売や飲食などのリーダーとして、商品の仕入れや調整、レイアウト決めやシフト管理をおこなっていく。
店長となる人には、エリア全体の統括はもちろん、イベントやマルシェの企画・広報など、まちを巻き込んでいく仕掛けも考えてほしい。
とはいえ、立ち上げの経験がないと自分にできるか不安になってしまいそうです。
「いきなり、パートのおばちゃんたちが自分の下につくことになりますしね…。でもきっと、真面目で素直な人だったら、結構、年配の方は助けてくれますよ」
「私たちも今回の事業はゼロからのスタートですし、これから学びたいという方も大歓迎ですよ。1ヶ月ほど実店舗での研修もありますから。それに、オープン後もコンサルの皆さんが手取り足取り教えてくれると思うので。最初からできなくても全く心配ないです」
失敗しても、助けてくれる人はたくさんいる。まずは、前向きに粘り強く学んでいく姿勢が大切なんだと思う。
「スタッフの皆さんには、人としてどうかってところで考え方が違ったりすると、お母さんみたいに怒っちゃう。不器用でも、一生懸命な方がいいですね。あとは、地域の方を含めていろんな人と関わることになるので、人が好きな方だと楽しいんじゃないかな」
既存のコテージ事業では、庭の植栽や部屋の飾りつけなども、スタッフが自主的に考えて取り組んでいるそうです。
取材中も、お客さんに提供する料理セットの内容を、和気あいあいと話し合っている声が聞こえてきました。
「あっ、鷹が飛んでいる!」という公子さんの呼びかけをきっかけに、みんなでぼんやりと空を眺める時間もあったりして、この人たちのもとでなら、気持ちよく働けそうだなと感じた取材でした。
軌道に乗るまでは忙しいだろうし、ハプニングもたくさん起きると思うけど、ワクワクを大切に挑戦していってほしいです。
(2021/9/13 取材 鈴木花菜)
※撮影時はマスクを外していただきました。