求人 NEW

好きなものだけに
囲まれていたい
つくり手とまちと営むお店

※この仕事は募集終了いたしました。ご応募どうもありがとうございました。

長崎県波佐見町(はさみちょう)。

焼き物の産地として知られるこのまちの一角に、「西の原」という場所があります。

ここはもともと、波佐見町で2番目に大きな窯元でした。分業を基本とする波佐見焼にはめずらしく、敷地内ですべての工程が完結するような設備をそなえ、最盛期は200人が働いていたといいます。

やがて器産業が下火になるにつれて、規模も縮小し、廃業。そこを現在の運営元である西海陶器株式会社が15年前に買い取り、カフェやショップや切り絵付け体験、ボルダリング場やおにぎり屋さんなど、地域で何かはじめたいという人に向けて開いていくなかで、少しずつ今の「西の原」の形ができあがってきました。

今回は、全部で9つあるなかで最初に生まれた店舗「HANAわくすい」の店長候補を募集します。12月いっぱいで現在の店長が離れることになり、その後任となる人を探しています。

何屋さんかと聞かれても、一言では形容しがたいお店です。波佐見焼の器もあれば、服もあるし、おやつも、本も、洗剤も、調味料もある。統一感がないようで、どこか通じるものを感じる、生活を彩るアイテムの数々。この世界観をつくっていく舵取り役が店長だといいます。

また、同じく西の原内にある食料品店「GROCERY MORISUKE」のスタッフも募集中。

経験は問いません。つくり手へのリスペクトをもって、好きなものだけに囲まれて過ごしたい。そんな気持ちが原動力になる仕事です。

 

長崎空港から、高速も使って車でおよそ45分。

登り窯の煙突や器の並ぶお店を何度も横目に見ながら、西の原に辿り着いた。

敷地の中央に位置する、かつて絵付け場だったという建物がHANAわくすい。草花の茂る中庭を通ってなかへ。

西海陶器代表の児玉さんが迎えてくれた。

西海陶器は、児玉さんの祖父が戦後、リヤカーを引いて焼き物を売り歩くところからはじまった会社。

シンガポールやアメリカ、中国、ヨーロッパでもグループ会社を設立し、Appleの社用マグなどのOEMや国内外のアーティスト・企業とのものづくりも展開。従業員数は100人を超えている。

そんな成長を遂げるなかでも、常に原点として波佐見のまちのことを思いながら、事業を続けてきた。

「これからオンラインで買い物される方は増えていくと思うんです。それでもやっぱり、実際に来ていただいて、ものを手に取ったり、空気を肌で感じたりしてもらえるような工夫は、波佐見で事業をしていくうえでは欠かせない。そこを一緒に考えて、チャレンジしてくれるような人を今回探したいんですよね」

広々とした店内には、波佐見焼の器のみならず、塩や油といった調味料、シンプルなカトラリーや着心地のよさそうな衣類、丈夫そうなカバンや傘、ちょっと変わったおつまみや、洗剤や箒といった生活の道具など、さまざまなものがゆったりと配置されている。

一つひとつのセレクトは、スタッフと児玉さんとで相談しながら決めていくんですか。

「いや、お店づくりに関しては、経営陣はノータッチですね。ほとんど店長に経営を任せるような状態で」

それはなぜ?

「海外に展開していくなかで、本社がやりたいことを頭でっかちに考えても、現地の商習慣に馴染まなかったんですよ。それは国内の店舗であっても同じ。だからあまり干渉しないようにしていて」

「店長は、最初の一歩を踏み出せるかどうかがすごく重要です。その先の二、三歩はすぐに出て、『え、ここまで行っていいのわたし?』となっていくはず。自主性に委ねているぶん、受け身すぎてその一歩が踏み出せない人はなかなか大変だと思います」

やりたいことやつくりたいお店のイメージがある人にとっては、恵まれた環境だと思う。今のお店の雰囲気や世界観を引き継ぎつつ、自分の色も重ねていけるといい。

 

2年前までHANAわくすいの店長を務め、今はオウンドメディア「Hasami Life」の写真撮影やInstagramの運営といった広報を担当している末永さんにも話を聞いた。

「最初はものを調べることからスタートしました。取引先は100社以上ありますし、工芸や衣食住について詳しいお客さまもいらっしゃる。もともと器や暮らしの道具が好きだったので、苦ではなかったですけど、覚えるのは大変でしたね」

以前は長崎空港や役場で働いていた末永さん。2013年の5月、ちょうど今回と同じような形で、店長候補として入社した。

つくり手と関わるような仕事や販売は未経験だったものの、伊万里の伝統工芸士のもとで絵付けを学んだり、海外に短期留学したり。興味のあることに飛び込んできた経験が、店長の仕事にも活きているという。

「東京への出張中に、とあるお店で見つけた版画がものすごく気に入って、購入させてもらったんです。それから数年後、展示会でその版画作家さんにたまたま出会って、お互いびっくりして。そのご縁から、2020年の3月に版画を展示・販売するイベントをやりました」

「あとは、やまくにさん。いりこのメーカーさんなんですけど。市場調査も兼ねて訪ねたデパートの店舗で、手に取ったいりこがすごくおいしくて。すぐにご連絡して、お取り引きがはじまりました。香川から販売に来てくださったり、ワークショップをしたり。食べ物に対する価値観を広げてくれた取引先さんです」

こんなエピソードが次から次へと出てくる。仕事終わりに、片道1時間半かけてライブや展示に行くことも、末永さんにとっては自然なことなのだとか。

とってもフットワークの軽い方なんだなあ。

自分の好きなもの、いいなと思うこと。その気持ちに素直に従って行動したことが、結果的にお店づくりにつながっている。

理想的な仕事のあり方だなと思いつつ、プライベートも仕事も常にスイッチが入っていて、大変そうな気もする。

「わたしは、実際につくり手さんに会って、どんなところで、どういう想いでつくられているのか知りたい。お客さまにも、背景や想いまでプラスして届けたいという気持ちでセレクトしていました。ただ、これから入る人に同じようにやってほしいとは思っていないんです」

たとえば年間10回程度の展示会も、末永さんはすべて自分で足を運んでいたけれど、分担してもいい。スタッフの好きな分野や得意なことを活かしていく方向性もあると思う。

どんな人が店長になるかによって、お店の雰囲気も少しずつ変わっていくと思うのですが、そのなかでもブレない軸って、末永さんはどんなことだと思いますか?

「ものを売るというよりは、価値観を伝えるというか」

価値観を伝える。

「より豊かな暮らしを想像させるものだったり、体験だったり。生活の+αになるようなことを提案していきたいのかな」

そのことをうまく表現できたのが、2019年に開催した「花と暮らす展」。

生花や盆栽、草木染め、植物の灰を釉薬にした焼き物、木工、飲食など。花にまつわる12組を集めてイベントやワークショップを開いた。

じつはHANAわくすいは、もともと花屋としてスタートしたそう。

ジャンルを問わず、いろんなものを受け入れる懐の深さは花屋にルーツがあるような気もするし、波佐見焼にも通じているように感じる。

伝統的な和柄を施したものから北欧調の器まで幅広く、裏返してみて「これも波佐見焼なんだ!」と驚いた経験が何度かあります。垣根のない器、のようなイメージがあるというか。

そんな感想を伝えると、隣で聞いていた児玉さんがこう話してくれた。

「このお店や西の原全体に対して、見る人が見たら『もうちょっとここ、こうすれば?』っていうところはいくつもあると思うんです。デザイン的に整えたり、洗練させたり。でも一方で、いろんな要素を包み込めるのがこの場所の“らしさ”だと思っていて」

「それは上の世代が手をつけてくれた痕跡だったりするわけです。だから、今の時代だけを切り取るよりも、前の時代のよさを残しつつ、次をつくっていけるといいのかな。その代わり10年後もうちらの感覚ちゃんと取り入れてよっていう。その感じは、HANAわくすいが、西の原が、っていうよりは、波佐見がそういうまちだからだと思いますね」

販売やお店づくりの経験以上に大事なのは、先人やつくり手、地域で積み重ねられてきたものを尊重する気持ち。むしろその姿勢さえあれば、未経験でもまったく問題ない。

今働いているスタッフも、ほとんどが異業種から入社しているそう。

あとは、仕入れや企画のほかにどんな仕事があるのだろう。

再び末永さんが応えてくれた。

「気持ちよく来店していただくために、まず掃除をしっかりとやります。オープンしたら、接客しつつ、発注したり、次にどんなイベントをしようかな、何を仕入れようかなと考えたり。お客さまとの会話や行動を観察しながら、妄想を膨らませていることも多いですね」

ひとつの商品、たとえば鏡のふちまでじっくり見ているお客さんがいたら、つくり手のことを話してみる。逆にお客さんのほうから、「この作家さんの展示やらないんですか?」と声をかけられることも。

接客やお店づくりのスタイルは、これから入ってくる人の個性を尊重したいと末永さん。ただ、お客さんの反応をしっかりと見ることだけは、ぜひこれからも続けてほしい。これは、今回同時に募集する食料品店「GROCERY MORISUKE」にも共通することだと思う。

「食いしん坊のわたしですけど、企画に携わったイベント中は、ものが食べられなくなるぐらい緊張します。社長はほんとにプレッシャーをかけないので、どちらかというと、つくり手さんに対する責任感というか。せっかくやるからには喜んでもらいたいんです」

ほかにも、例年30万人が訪れる陶器市の時期はかなり忙しくなるそう。コロナ禍で2年連続開催できていないものの、この先復活すれば、2〜4月は発注・検品もどっと増え、まち全体が賑わう。

ここでひっそりとお店を営んでいくというよりは、季節ごとのイベントやまちの行事も楽しみながら、地域とともにお店を成長させていける人に来てほしい。

 

「末永さんの積極性が、わたしはすごく好きなんです」

そう話すのは、スタッフの原さん。末永さんの店長時代から一緒に働いてきた方だ。

「よくこんなに自分から動いて、たくさん出会いをつくってこられるな、お強いなって。尊敬しています」

入社直後には、こんなこともあったそう。

「ある日、こういう展示があるんだけど一緒に行かない?って誘われて。今日かな?と思いつつ、急に言われたのでいつなのか聞けなかったんですよ。そしたら業務のあとに、行くよってことで、太宰府まで(笑)」

またなかなかの距離を(笑)。

あ、思い出した!と、末永さんも横で笑っている。

「それがすごく楽しかったんです。個人的には、それぐらいグイグイ引っ張ってくださる人についていきたいと思うし、スタッフとしても支えたいと思いますね」

原さんは、小さなころから「好きなものだけに囲まれて暮らしたい」と思っていたそうです。

その夢は今、実現しつつあるのかもしれない。

ひとりで何かを目指すのもいいけれど、この舞台と築かれてきた関係性を活かして、喜びを分かち合いながら場をつくっていくのも、きっと素敵なことだと思います。

(2021/9/17 取材 中川晃輔)
撮影時はマスクを外していただきました。

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