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道の駅と有機農業
食からはじめるまちづくり

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車で旅行をするとき、ふとした休憩に道の駅を利用する人は多いと思います。 お店のなかに入ると、その土地でつくられた野菜や商品がずらりと並んでいて、見ているだけでもまちの雰囲気が感じられる。 道の駅には、まちの魅力を伝える役割もあるのだと思います。 高知県佐川町。 県の中西部に位置し、高知市内から車で1時間ほどの距離にあるまちです。町の約70%を森林が占め、緑も豊か。世界的な植物学者、牧野富太郎の出身地でもあります。 現在は、植物のまちとして植物を中心に置いたまちづくりを進めている真っ最中。 そんな佐川町に、2年後、新しい道の駅が開業します。 今後、まちをプロモーションしていく上で、中心的な役割を担っていく場所です。 今回募集するのは、地域おこし協力隊としてこの道の駅を拠点に活動するスタッフ。 地域の野菜や特産品を使った商品開発をしたり、道の駅で販売する商品を仕入れたり。自分の得意なことを活かして、地域の良さを発掘、発信していきます。 同時に、佐川町の豊かな自然のなかで有機農業にチャレンジしたいという人も募集します。
高知駅からJRの特急列車に乗り、約30分で佐川駅に到着。 佐川町役場までは駅から歩いて10分ほど。白壁の街並みを見ながら住宅街のなかを歩いていくと、目的地に到着した。 最初に話を伺ったのは、道の駅事業を進めている一般財団法人しあわせづくり佐川の宮中さん。 「佐川町に来る前は、地域密着型のスーパーマーケットで働いていました。店舗運営や商品を仕入れるバイヤーを経験して、東京で高知県のアンテナショップを立ち上げたこともあります」 「仕事は楽しかったんですが、将来は地元の高知で地域活性にかかわる仕事がしたくて。そのために一般企業じゃない仕事も経験したいなと思っていたタイミングで、今回の道の駅をつくるプロジェクトに声をかけてもらったんです」 3年前から佐川町に入り、観光協会の仕事もしながら道の駅プロジェクトを進めてきた。 「佐川町のことは、アンテナショップの立ち上げをしていたときから気になっていたんです。というのも、ほかの市町村はショップに置く商品や野菜がいろいろあるのに、佐川町はお酒と一部の野菜以外の加工品はひとつもなかったから」 どうしてでしょう? 「地域でつくったものを外で販売する、ということをしてこなかったんですよね。だから佐川町でつくった商品には、白黒のバーコードもほとんどついていないんです。地域内で売るだけなら、それをつける必要がないから。でも、このままだと外で売りたくても売りづらいままですよね」 せっかくいい商品をつくっても、地域内の人だけに販売していたら、先細りになってしまう。 外の人にまちの産品を買ってもらえるように。そして同時に、生産者の販路の確保や地域の雇用の場になるように。今回新しくつくられる道の駅には、そんな役割や期待が込められているそう。 「たとえば県外から大型バスのツアーが来たときに、今までは滞在できるような場所がほとんどなくて、素通りだったんですよ。だから町内でも元気のある事業者さんや農家さんたちは、自分たちで外に売りに行っている現状があって」 「新しく道の駅が建設される場所は国道の入り口なので、町外の人にも立ち寄ってもらいやすいと思うんです。まちの命運を左右する大きなプロジェクトだと思っています」 現在、財団のなかで道の駅事業にかかわっているのは、宮中さんほぼ一人。新しく入る人は、宮中さんと一緒に事業を進めていくことになる。 まず取り組みたいのが、商品の仕入れ。 地域の事業者さんや農家さんのもとを訪れて、道の駅で売り出すための交渉をしていく。商品が決まれば、商品の棚割りやポップの作成など、宮中さんと相談しながら細部を詰めていく。 そして道の駅の準備と並行して進めていきたいのが、新商品の開発。 たとえば、佐川町はお茶の産地であるものの、世間にはあまり知られていないそう。まちでもお茶を活用した商品は少ないため、佐川茶を使ったスイーツをつくることができれば、より広く知ってもらうきっかけになるかもしれない。 「あとは、佐川町の野菜を集めてシチューをつくる企画なんかもできると思いますよ。佐川町の姉妹都市が北海道の北見市なので、佐川町の野菜と北見市のホタテを使ったシチューをつくって、特設の売り場をつくったりね」 「野菜を売るにしても『今日のほうれん草はちょっと成長しすぎだから、ちゃんと灰汁をぬいたほうがおいしいよ』とか。生産者さんとよくコミュニケーションをとっているからこそわかる情報をキャッチして、お客さんに伝えていけたらと思います」 地域の魅力が詰まった商品を集めて、つくって、販売する。また、道の駅を足掛かりにして町外へ売り出していく役割も担ってほしい。 「たとえば東京で地域の物産イベントがあれば、そこで佐川町のものをPRしてほしい。あとは外に行かなくても、ECサイトで販売する方法もあるかもしれない。そういうアイディアをどんどん出してもらって、自由に動いていってほしいですね」 「僕が以前立ち上げたアンテナショップに佐川町のものが並ぶのも、一つの目標です。ついにきたか!って」 宮中さん自身、店舗運営やアンテナショップ立ち上げなどの経験があるので、アドバイスはもらえる環境。3年の任期が終わったあとも、社員として関わってもらえたら嬉しいとのこと。 あらためて、どんな人に来てほしいですか? 「いろいろ話しましたけど、何より人が好きっていうことが大事だと思いますね。生産者さんと話して、地域の人と話して。道の駅でお客さんに伝えたいことのすべては、そこから始まると思うので。人と会うなかで、商品開発やまちのPRのアイディアも膨らませてもらえたらいいなと思います」
地域の魅力を探し集めて発信していくのが道の駅の役割なら、有機農業は魅力を生む仕事になる。 今回募集するもうひとつの地域おこし協力隊は、その魅力づくりにチャレンジしていく。 有機農業について、佐川町で有機農業を営むTAMファーム合同会社の代表、田村さんに教えてもらう。 「佐川町がどういうところかって言ったら、日本地質学発祥の地になっているぐらい古い地層が残っている地域なんですね。向こうに見えるのが、中世代白亜紀。で、こっちがそれよりもっと古い古生代の地層」 「時代が異なる地質が、200mくらいの距離に入り混じっている。それが何を意味するかと言うと、産地になりづらいんです」 産地になりづらい。 「いわゆる産地って呼ばれているところは、地質が均質なんです。だからおなじ作物を広い面積でつくっても、おなじように育てることができる。一方で、ここは地質が細切れだから、同品種の大量生産が難しい」 「でも適地適作って言葉があるでしょう? 細切れな地質だからこそ、裏を返せばその地質に合わせていろんな種類の作物をつくることができる。僕らはそれを、有機農法という付加価値をつけてチャレンジしているところなんです」 有機農業とは、化学的に合成された肥料や農薬を使用せずに栽培する農業のこと。 そのなかでも田村さんたちが取り組んでいるのは、きびしい規格が定められた有機JAS認証の取得。 病害虫の管理、栽培記録など検査項目も多く、時間も手間もかかるそう。現在は生姜とさつまいも、ニラの認証を得て栽培・販売をしているところ。 それだけ手間がかかる有機野菜ってどんな味なんだろう。田村さんにお願いして、その場でニラやカブなどをいくつか食べさせてもらった。 あれ、なんだか柿のように甘い感じがする。 「有機農業で育てた野菜の味って、マイルドで優しい。だから、そう感じるのかもしれないね」 「いちごとか、トマトのビニールハウスに入ると、作物の香りがふわってすることあるでしょう。本当に有機農業で栽培したら、その匂いもしないんですよ」 そうなんですか? 「味も香りも、全部細胞の中に閉じ込めちゃうからね。ほうれん草嫌いとか、ピーマン嫌いとかおるけど、それはいきなり本来の野菜の味が入ってくるから。有機農業で育てると、最初に甘味がパーンと入ってから、本来の野菜の味が来る。だから全体としてはマイルドな味になるんよ」 今回募集する地域おこし協力隊も、単純に佐川町で農業をするだけではなく、有機農業にチャレンジしてほしい。 土地については、役場も協力して探してくれるそう。有機農業のノウハウについては、田村さんをはじめまわりの農家さんから学んでいくことになる。 「手間がかかるぶん、効率よく育てていかないと経営が成り立たない。慣れるまでは、そのあたりの工夫や知識も伝えていきたいと思っています」 たとえば、と田村さんが指差したのは、同じ畑のなかにある濡れた土壌と乾いた土壌。 「雑草も育つには水が必要じゃないですか。だから育てたい野菜があるところだけにピンポイントで水を与えるようにして、それ以外は乾燥させて雑草が育たないようにしているんです」 「あとは、太陽熱で微生物を繁殖させることで、雑草が生えないようにするとか。農薬を使わないぶん、いろいろな工夫を積み重ねて、時間と労力がかかる草引きの作業をなるべくしなくていいようにしています」 露地によって地質がバラバラなので、ひとつの場所でうまくいった方法がそのまま別の場所でも使えるとは限らない。 田村さんをはじめ、いろんな人の知識と経験も借りながら、自分自身も試行錯誤を重ねていくことが求められる環境だと思う。 「有機農業が盛んな埼玉県の小川町や宮崎県の綾町に視察をしに行ったことがあります。山に囲まれていて、佐川町と似たような雰囲気でした。それでも、彼らは自然を活かして、経済的にも自立した農業を確立していて」 「おなじようにじゃないですが、そんなふうに佐川町でも有機農業が盛んになったら嬉しいですね」
これまでも、地域おこし協力隊の募集をしてきた佐川町。 ふるさと納税や自伐型林業の推進など分野はさまざまですが、現在任期中の人、任期を終えてまちに定住している人も多くいるので、暮らしの困りごとも相談しやすい環境だと思います。 道の駅という新しい場ができることで、きっとこれからより大きな動きが生まれていくはず。 新しく入る人にも自然を身近に感じながら、この町の人とともに、魅力を育んでいってほしいです。 (2021/10/14取材 杉本丞) ※撮影時はマスクを外していただきました。
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