求人 NEW

小鳥の住むまちに
不動産ができること

小学生のとき通っていた駄菓子屋が廃業して、大手の不動産会社が入居。いまは建物もなくなり、駐車場として使われています。

時代は流れるから、まちが変わっていくのも当然だと思う。

でも、自分の好きだったまちが、ほかのまちと同じような風景になっていくのは、さびしい。

HITOTOWAが新たに始めようとしているのは、まちの発展とオリジナリティを両立させ、次世代につなげていく不動産業です。

HITOTOWAは、同じまちに暮らす人同士のつながりを豊かにすることで、社会課題の解決やよりよい暮らしを目指す、“ネイバーフッドデザイン”に取り組んでいる会社です。

マンションのコミュニティづくりに関わったり、団地に常駐してコミュニティスペースを運営したり。

深くまちに関わるなかで、ソフト面の事業だけでなく、ハード面である不動産事業も始めることを決意しました。

今回は、不動産ビジネスの経験者を募集します。

オーナーさんと関係をつくり、土地や物件の売買・賃貸を仲介。加えて、東京R不動産などと協力しながら買い手を探し、事業を進めていきます。

経済性だけでなく、歴史や文化、自然など、まちのあらゆる要素を大切にする視点を持って働く仕事です。

 

池袋駅から西武池袋線に乗る。

住宅街を走ること20分ほどで、ひばりヶ丘駅に着いた。

南口を出ると商業施設や飲み屋が並び、にぎやかな感じ。

駅から少しはなれると、まちの雰囲気が変わる。大きな土地に個性のある家が立っていて、庭からは背の高い木がひょっこり道路に顔を出している。植生豊かな庭が多い印象。

なんでこんなに緑があるんだろう。

そんなひばりが丘のまちに、HITOTOWAのオフィスはある。

「ピンポーン」と呼び鈴を鳴らすと、代表の荒(あら)さんが迎えてくれた。

溢れるほどの光が差し込んでいて、気持ちがいい部屋。

「日本仕事百貨さんに載せてもらうのは、久しぶりですね。数えたら6回目ということで、今回も楽しみです」

やわらかい雰囲気の荒さん。HITOTOWAは基本リモートワークのため、メンバーの方とはオンラインでつなぎながら、話を聞いていく。

2010年の創業以来、中心として取り組んできたのが、ネイバーフッドデザイン。

荒さんは、「地域のコミュニティをつくって、助け合える関係性をつくること」と話す。

ひばりが丘のまちにも、11年前から関わってきた。

1959年、人口増加にあわせて大規模な団地がつくられたひばりが丘。流行に敏感なセレブ層が住んでいたけれど、時間の経過とともに建物の老朽化が進んでいる。

建て替えの計画が進むなかで出てきたのは、旧住民と新住民の関係性をつくる必要があること。

そこで、これまでマンションの企画にソフト面から関わり、コミュニティづくりの実績があったHITOTOWAが関わることに。

ミッションは、団地のコミュニティの再生、活性化。

デベロッパーや行政の人など、異なる立場の人も議論ができるような土壌を耕し、コミュニティのゴールを設定していく。

そのあとは、課題解決のためにイベントやワークショップを開催。ほかにも、地域の人たちが気軽に使うことができるコミュニティセンター「ひばりテラス118」の運営も担ってきた。

ご近所のお父さん同士でミニ四駆のイベントを企画し、運営する動きも起こったという。

「深くまちに入ると、このまちに引っ越したいとか、逆に仲良くなった人が引っ越さなければならないとか。自分たちも不動産事業ができたら、よりまちの活性化やコミュニティの促進につながることはわかっていたんです」

「どのタイミングでどこで誰がやるか。2020年ごろから、社内でもアイデアとして検討してきました。で、僕がこのまちに引っ越してきて、自分でやりたくなっちゃった(笑)」

そうだったんですね。

「このあたりは自由学園が約100年前につくった、学園町というまちで。学校がつくったまちは、全国にも4つしかないほど珍しいんですよ」

もともとは、松を中心とした林が広がっていて、小鳥が集まるような場所だった。

一時は開発が進んでしまったものの、緑豊かなまちの環境が財産であることに町民が気づき、その景観を保護する運動が2006年から始まる。

そして、自治会員の90パーセント以上が支持して制定したのが「学園町憲章」。規則で縛るのではなく、共感や愛着を持つことで、まちを守り残していくことに。

「ただ、最近は合理性だけを追い求めた開発も増えていて。不動産ビジネスは、経済的に土地を最適化する側面があるっていうことは理解できるんですけど、やっぱり失われていくものもすごくあると思うんです」

町民に学園町を選んだ理由をアンケート調査してみると、上位2つに、「緑が多いこと」、「静かであること」があがったという。

まちの緑を残すことで、結果として不動産の価値も上がる。

3年前に荒さんが学園町に引っ越してきてからは、事業者向けの説明会や、住民に向けての相続勉強会など、まちを尊重した開発や仲介がおこなわれるよう活動してきた。

「新しく入る人の業務は、不動産仲介がメインになります。不動産ビジネスを通じて、まちに残る文化や歴史、あるいは営み。それらを継承、発展させることで、住民一人ひとりの幸せをつくっていきたいと思っています」

HITOTOWAの理念に共感して、具体的に進んでいる案件がある。

相談をもらったのは、代々学園町に住んでいるAさん。

数年前に旦那さんが亡くなったタイミングで、娘さんに相続した土地だった。

娘さんは地方在住。東京に戻ってくるまで、相続していた土地およそ50坪を駐車場にしておく予定だったけれど、帰京がむずかしくなったため、売却を考えていた。

「自治会の方がAさんと僕らをつないでくれて。『代々ずっと守ってきた土地だから、学園町にふさわしい利用方法を相談したい』と、お声がけいただきました」

「学園町憲章では、小鳥や小動物が帰って来られるようなまちであり続けようということが記されています。その理念や条件に共感した人が買える形にするにはどうしたらいいだろうと話し合い、建築条件付き土地売買という形で合意しました」

どのような条件にされたんですか。

「緑被率を設定しました。土地の最適化を求めると、売建にして庭もつくらず、ビチビチコンクリやモルタルにしたほうが不動産業者の利益は上がるのが一般的ですが、そうではなく、緑や自然も守れるようにしようと」

宅建業の認可は6月ごろに下りる予定で、今はあくまでHITOTOWAは紹介という役割。取得後は自分たちで仲介もしつつ、東京R不動産にも協力してもらうことになっている。

個性ある物件を独自の視点でセレクトして紹介している、R不動産。個人的にもよく見ているサイトだけど、周辺環境のこともふくめて、建物や土地が持つ個性に愛着を持って紹介していると感じる。

新しく入る人は、まずはHITOTOWAの活動に共感してくれるオーナーを探したり、関係性を築いたり。基本的には、荒さんと相談しながら進めていくことになると思う。

学園町の土地は一つひとつが大きく、戸建ての土地や建物をそのまま仲介しても、なかなか買い手が見つからない。どんな活用ができるか。オーナーの想いに加え、学園町憲章もふまえながら考える必要がある。

提案の仕方を狭めずに、柔軟にアイデアを考えていけるといいと思う。

 

「このまちに足をつけて活動しつつ、ゆくゆくはほかのエリアでも活動していきたい」と、荒さん。

すでに関わりのあるエリアでも、不動産ビジネスを提案できるかもしれない。

4月から、HITOTOWAでは数十年前に開発された分譲住宅団地の魅力向上化に関わり始めた。

プロジェクトの担当者、金子さんに詳しく聞いてみる。

テキパキとした口調で、筋道を立てながら話してくれる。初めての内容でも、スッと入ってきやすい。

「開発されて数十年が経ち、エリアの高齢化率が上がっているなかで、多世代が住みやすいまちにするためにどうすればいいのか、今後まちの方々と一緒に考えていきます」

計画は3年程度の予定で、1年目は話し合いをもとにビジョンを策定。空き家などの調査も実施する。加えて、まちの人たちがやりたいことを実現するためには何が必要かを整理していく。

2年目以降は具体的なアクションを設定し、できるところから手をつけていく。まちの人たちからマルシェやイベントをやりたいという要望があれば、サポートをするし、公園などの公共空間を活用したいとなれば、自治体とも連携する。

「このエリアに住む人、関わる人のやりたいことに応じて、行政とも協議しながら進めていく必要があります」

ビジョンを決めて、課題を可視化し、できることから進めていく。とことん伴走していくスタイルだ。

新しく入る人も、空き家の仲介だけでなく、企画の仕事に関わる可能性もある。また、行政や地域住民、関係業者との関わりなど、ネイバーフッドデザインを体感するためにも、既存のエリアに関わることも出てくるはず。

今回の新規事業についてはどう思いますか。

「まちには、すぐに共感してくれるオーナーさんだけがいるわけじゃないと思っていて」

「その場合は、なぜ私たちがまちの景観やコミュニティを守っていこうとしているのか。関係性をつくりながら理念をお伝えして、ビジネスとして成立させる必要がある。そのバランスはむずかしいと思います」

 

うんうんと頷いて聞いていたのが、同じくディレクターの佐藤さん。

以前、都内で古い町並みを保存する活動に関わっていた。

「商家とか民家がどんどん壊されていて。相続の話が出たときに、地価の上昇で相続税を払えないから、段取りの早いハウスメーカーに頼んで壊してしまう場合が多いんです」

「取り壊しの情報が出るのって、本当に直前のタイミング。その段階で説得に入っても、資金のこともあるし、無理に否定もできない。高度な課題解決力が必要だけど、それができたらほかのまちも守れる。可能性にあふれた仕事だと思います」

いつ人が亡くなるかはわからない。でも、普段からまちの人と関係性ができていれば、素早く情報をキャッチできる可能性は高まる。

ソフトの面からまちに関わってきたHITOTOWAだからこその強みだ。

 

取材を終えたあと、荒さんにまちを案内してもらった。

「景観が人間に与えるインパクトってかなり大きいと思っていて。カジュアルな場所で会議をしたら、開放的な時間になるとか。気づかないうちに、不動産に影響を受けていることって多いと思います」

「ネイバーフッドデザインではあまり関われていなかったことですが、ひととわ不動産では意識してやっていきたい。結果として、ネイバーフッドデザインを加速させるものになるんじゃないかな」

田舎に目が向きがちだったけど、都会でも大切な何かが今まさに失われている。

人と人の関係をつくりながら、具体的にまちの個性を残していく仕事。

不動産業にもまだまだできることがある。人も文化も自然も。共生できる未来をつくっていく仕事だと思いました。

(2024/04/12 取材 杉本丞)

問い合わせ・応募する

おすすめの記事