求人 NEW

決まったダイヤで暮らし働く
サラリーマン的
船乗りの毎日

※日本仕事百貨での募集は終了いたしました。再度募集されたときにお知らせをご希望の方は、ページ下部よりご登録ください。

隠岐汽船は、島根県隠岐の島町に本社を構える船会社。

明治28年の創業以来、本土と隠岐諸島をつなぎ、人とものの交流を通じて、島民の生活を支えてきました。

今回は、船乗りを2職種で募集します。

航海と荷役を担当する甲板員、そしてエンジンや発電機、ボイラーなどの管理を行う機関員です。

大型船舶の乗船には国家資格の取得が必要ですが、入社時点ではなくても大丈夫。水産高校などで船の仕組みを学んできた人だと、仕事も覚えていきやすいと思います。

毎日同じダイヤで航海しているので、安定したリズムで働きたい人にオススメです。あわせて、客室サービスをになう事務員も募集中。こちらも未経験から挑戦可能です。

 

向かったのは、鳥取・境港。

境港は漫画家の水木しげるが幼少期を過ごしたまちで、港の近くには、「ゲゲゲの鬼太郎」に登場する妖怪たちのブロンズ像がそこかしこにある。

まちを散策して、フェリー乗り場へ。

赤い三本線が描かれた、大きな白い船が泊まっている。

隠岐汽船が所有する船のひとつ「しらしま」。客室に荷物を置いたら、急いで外のデッキにあがる。

「ボォーーーッ」

巨大な汽笛を鳴らして、船が動き出す。

この日は6月下旬。気温は高いけれど、海風を浴びると涼しくて気持ちがいい。

ゆっくりと景色が変わり、港が小さくなっていく。

船に乗る機会はめったにないので、しばらく船の中を行ったり来たり。

食堂はここで、特等室はここか。あ、スロットも何台か置いてある。鬼太郎の絵も見つけた。観光客もちらほらいるけれど、建設関係者っぽい人も多く乗船しているようだ。

少し休憩したのち、海務課課長の石橋さんと合流。隠岐の島町出身で、現在は採用も担当している。

「隠岐汽船には、平成6年に入社しました。30年前ですかね。その前は本土で違う仕事をしていたんですけど、長男だったので親を見ないといけないという気持ちもあって。公共交通機関として動いている船なら、将来の安定性もあるだろうと。それで入社を決めました」

最初に配属されたのは観光課。フェリーの客室予約の対応をしたり、隠岐汽船が企画するツアーに添乗することもあったり。

1年半ほどで貨物専門の事業所に移り、その後6年ほど働いて海務課へ。

「海務課は、総務的な役割をになう部署です。乗組員の給与の振込や保険の取りまとめ、故障してしまった部品の発注もしています。あとは、テレビやソファといった備品の管理まで、なんでもですね」

「ここ数年は、採用者を上回るほどの退職者がありまして」

そうだったんですか。

「定年退職の方も含まれるんですけど、いまは90名弱の乗組員で4隻の運航を担っています。全盛期に比べると20人ぐらい減ってしまっている。そのぶん、いまいる乗組員に負担がかかってしまっている状況なんですね」

隠岐汽船の始まりは明治時代。

当時は、小さな帆掛け船が島内外の移動手段だった。天候によって多くの人が亡くなっていた状況をどうにかしようと、ひとりの人物が立ち上がる。

名前は松浦斌(さかる)、隠岐の島議会の議員として働いていた。彼は所有していた私財から購入費用の半分を出すことで議会を納得させ、蒸気船を購入し、航路を開拓。

平成時代には経営困難もあったけれど、現代表の木下さんを中心に乗り切ってきた。

島や島民のために船を運航してきた隠岐汽船。

このまま乗組員が減ってしまうと、安定的に船を運航することができなくなり、島民の生活に大きな影響が出てしまう。

「離職を防ぐ方法として、待遇面の改善も必要だと思っていて。そこを検討して取り組むことで、長く働いてもらえる環境をつくりつつ、新しい乗組員を採用して、安定して船を運航しないといけない」

2023年の3月には、港のにぎわいづくりのため、一般社団法人離島百貨店と協力して、隠岐の島町に喫茶店をオープン。島外から若者が移住して経営を担っている。

隠岐汽船本社にも2名の移住者が入社して、新船造船プロジェクトの企画に関わったり、島内の賑わいづくりを仕掛けたりするなど、ポジティブな変化は続いている状況。

追い風に乗って、乗組員も募集していきたい。

乗組員の大半が県内出身者なので、採用も県内の水産高校などを中心に行なっていた。

船にも車と同じように交通法があり、速度や行き交う際の航法が決まっている。多少なりとも船に関する知識があると馴染みやすいけれど、今回は間口を広げて、まったくの未経験でも挑戦したい人は受け入れてみたいと、石橋さん。

 

次に話を聞いたのは、甲板部で操舵手として働く松岡さん。

境港市の出身で、もともとはドッグフードを製造する会社で働いていた。

親御さんが商店を営んでいて、そこにお客さんとして通っていたのが、隠岐汽船に勤めている方だったそう。ちょうど人手が必要だと聞いて、紹介してもらうことに。

「水産高校出身なので、船に関することは学んでいました。船に乗る仕事はしたいと思っていたんですけど、昔から船=漁師っていうイメージがあって。天候による収入のばらつきがあるとか、一度海に出たらなかなか地元に戻ってこれないとか」

「当時は二十歳ぐらいで、地元に友だちが多かったし、やっぱりまだ遊びたいなって気持ちもあったんですよね。隠岐汽船なら船にも乗れるし、友だちとも気軽に会えると思って、入社することを決めました」

入ってみていかがでした?

「思っていたよりもやることが多くて。いまでこそ薄まっているけど、やっぱり船の業界っていうのは縦社会なんですよね。入ったときは一番下っ端で、雑務をひと通りこなすのに体力も要りました」

部品の交換や船体のペンキ塗り、船室の掃除などなど。資格を持っていてもいなくも、まずは船を運航するうえで必要なことを覚えて、一人前になっていく。

「あとは、お客さんの車の積み下ろしや船の整備、指揮官の指示をもとにハンドルを握って、操船の練習をさせてもらうこともありました」

操船ってどんな感覚なんですか。

「うーん、言ってしまえば車と似たようなことではあるんですけど。車ほど機敏には反応しなくて」

「タイタニックとかパイレーツオブカリビアンで、ハンドルをガラガラ回すイメージを持っている人もいますよね(笑)。でも実際は、左右に半周ずつまでしか回さないことがほとんどなんですよ」

甲板員の仕事は、荷役の仕事から。

お客さんの車や、荷物を積んだトラックを船内に誘導する。朝一番でどれくらいの車を積むのか話し合い、車両の積み込みをしていく。波の影響で船が揺れるので、ほかの車とぶつからないように、ブロックで止めるそう。

荷役でもあり、交通機関としての役割もあるので、港の出航時間は厳守。パズルのようにスムーズに積み降ろしできるよう、段取りもポイントになる。

働き始めて13年の松岡さん。どんなところに面白さを感じますか。

「壊れた部品の交換とか、整備の仕事ですね。仕事を教えてくれた先輩が、すごく仕事ができる方で尊敬していて。本来なら機関部の方にお願いするような仕事もできてしまう、みたいな。万能な人間っていうんですかね」

「自分はもともと職人気質だし、こんな人になりたいと思って。整備の道を極めていこうとしています」

 

続いて向かったのは、船長室。

船長の藤田さんに話を聞く。

「ここに来る前は神戸の海運会社にいて、不規則なリズムで働いていたんですよね。隠岐汽船は定期便だから、毎日同じサイクルで働ける。それはいいなって思った。サラリーマン的な働き方っていうんですかね」

隠岐汽船が所有しているフェリーは、「おき」「くにが」「しらしま」の3隻。そして高速船が1隻。

港は、合計で6つ。本土にある七類港と境港。海士町の菱浦港、西ノ島町の別府港、知夫村の来居港、そして隠岐の島町の西郷港。

これらの港を一日かけてぐるっとまわる。船ごとにダイヤは決まっていて、拠点の港を朝の9時ごろに出航して18時ごろに帰港するという。

「船の仕事は、正直どこと比べてもあまり変わらないけど、この会社のいいところは、きちんと3食つくってもらえるところとか。自分たちで炊事するところもあるから、そこはありがたいよね」

船長は船の最高責任者。気象や海の状況をもとに進路を決めて、乗組員に指示を出す。

時間を守って安全に運航し続けるという使命は責任も大きいと思うけれど、複数人で協力して操船するので、ずっと気を張り詰めなくてもいい。担当ではない時間もあるので、船内で穏やかな時間を過ごせることも。

 

最後に、機関部で働く操機手の齋賀さんに話を聞く。

機関部とは、エンジンやボイラーなどの運転や整備をおこなう部署。1日の仕事の流れについて聞いてみる。

「船ごとにコースが決まっていて。しらしまだったら、西郷港を朝の8時半に出港するので、7時ごろにエンジン場に下りて行きます。エンジンと発電機の油の量を測って、規定量より少なかったら補給するとか」

「7時45分ごろには発電機をかけます。出港の30分前には“ターニング”って言って、外部のモーターでエンジンを軽く回して、油を行き渡らせます」

出航後は1時間ほど、船に異常がないか全員で見回り。そのあとはふたりずつに分かれて、見回りと休憩を取っていく。

「船も古いんで、海水の漏れは多いんですよね。自転車のチューブみたいなゴムを巻きつけるとか。エンジンにゴミが入らないようにフィルターをつけていて、それの掃除とかも定期作業としてはありますね」

違う船会社から隠岐汽船に転職してきた、齋賀さん。

「大変は大変です。機械トラブルがあったときは、いつも内容が違うので、毎日勉強して対策する必要があるんです」

たとえば、どんなトラブルがあるんでしょう。

「エンジントラブルとかですね。構造自体は車と同じなんですけど、この船だったらフォーサイクルのエンジン。吸気して圧縮して、そこに燃料を入れて爆発させて排気する」

「爆発でエンジンが300度ぐらいの熱さになるので、パイプに水を通して冷却しているんですけど、経年劣化でパイプが割れることもあって。先輩たちは慣れた手つきで直していくんですけど、それも日々勉強です」

わからないときはみんなで図面を広げて対応することも。電気系に強い人が来てくれたらうれしいとのこと。

「やっぱり機械をバラして組むのは面白いと思っていて。たとえ資格がなくても、機械が好きで、わからないことを自分から聞きにいけるような人だと、覚えが早いんじゃないかと思います」

 

取材を終えて外に出ると、すっかり夕暮れ。

目的地の隠岐の島町・西郷港に停泊するところで、甲板員が投げたロープを陸上のメンバーがキャッチして引き寄せていた。

漁業が盛んで、松葉ガニや岩牡蠣の産地としても有名な隠岐諸島。

目星をつけていた居酒屋で、海の幸をいただこうかな。

海の上で、毎日規則的なリズムで働き暮らす。船で働くことに興味のある人、陸上生活の時間もしっかり確保したい人にとっては、働きやすい環境だと思いました。

(2024/06/18 取材 杉本丞)

 

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