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しなやかに暮らし
ていねいに建てる

「ものづくり」と言っても、ジャンルや工程はさまざまで、広義な意味を持ちます。

たとえば身につける洋服やめがね、バッグ。ガラスのコップやぬいぐるみ、毎週読んでいる漫画だって、誰かの手によってつくられている。

家や施設を建てることも、長い時間をかけたものづくりのひとつだと思います。

愛媛建築研究所は、松山や宇和島など、愛媛県を拠点とした設計事務所。

事務所ビルや幼稚園の新築から古民家のリノベーションまで、規模や用途にとらわれないプロジェクトに取り組んでいます。

ものづくりの起点は、相手の想いを丁寧に引き出すこと。

対話を重ねながら、プロジェクトに一貫して関わっていく。建築で最適な答えを導いています。

今回募集するのは、建築設計スタッフ。

残業は0。仕事のあとは一級建築士の勉強に集中するもよし、海を見に出かけてぼーっとするもよし。オンとオフを切り替えて、しなやかな日常を送れる環境です。

 

松山市の中心部から車で約15分。最寄りの北久米駅から歩くと8分ほどで、市街地からも通いやすい場所に事務所を構えている。

ノコギリ屋根の白い建物に、緑のシンボルマーク。あたたかみのある板張りの外壁が目印だ。広い駐車場には、スタッフの車やバイクが並ぶ。

「週末は子どもの卒園式があって、思わず泣いちゃいましたね。記念に砥部町(とべちょう)で砥部焼の絵付けもしてきました」

朗らかな表情で話をしてくれたのは、代表の白石さん。松山で生まれ育ち、東京でしばらく過ごしてから戻ってきた。

愛媛建築研究所は、1979年に白石さんのお父さんが創業した。2013年から共に働いて、代表を継いだのは4年前。

「父の姿を見ていたので設計に関心はあって、大学では建築を専攻しました。そのうちに、設計より前の『何をつくるべきか』を考えるところからやりたいなと思い、すぐ設計事務所に行かず都内のディベロッパーに就職しました」

ディベロッパーは再開発やオフィスの建設が多いけれど、白石さんは、ホテルの事業をメインに担当した。

「収益を上げるために客室がどれくらい必要か、どんなデザインで、どの設計事務所と組むのか。インテリアや家具の配置、コップまで考える仕事でした。企画から設計、運営までトータルで考える経験は、今も活きていると思います」

愛媛建築研究所も、単なる設計事務所にとどまらない。事業構想から建築の完成まで、一貫して関わるのが特徴。

「地方では『何を建てるか』といった設計の前段階から関わることも多く、分業ではなく一貫して関わるからこそ、クライアントの課題に直接応えている実感があります」

「ただ綺麗にデザインするだけでは、クライアントの想いを汲み取ることはできません。本当に必要なものは何だろうという根本から引き出して形にしていくのが僕らの仕事です」

そんな仕事ぶりが発揮されたのが、松山市のアーケード商店街に建設されたBLUE WAX WINERY。都市型ワイナリーとして、2年をかけ2025年12月にオープンした。

知り合いの会社から相談を受け、始まったプロジェクト。

どんな場所にしたいのか、クライアントの理解を深めながら、初めてワイナリーの設計に携わる。

「クライアントが日本のワインがすごく好きで、自分でワインをつくりたいと。その情熱をどう形にするか。クライアントと一緒に山梨のワイナリーへ視察に行くなど、対話を積み重ねていきました」

どんなワインをつくり、それをまちの人にどう楽しんでもらいたいだろう。想いを共有し、一貫して伴走するなかで導き出したのが、現在のワイナリーの姿。

建物は2階建ての吹き抜け。重力を利用してワインに負荷をかけない醸造法も取り入れた。

さらに正面の窓を開放できるようにし、まちの人が醸造の様子を眺めながらワインを楽しむことができる。

建物の設計を超えて、事業のあり方とまちへの溶け込み方を、建築によって形にした。

きちんと伴走してつくるために、プロジェクトは年間10件ほど。

最初の相談や方向づけは白石さんが中心に手がけている。その先は担当スタッフが軸となり図面作成や現場管理を行う。白石さんが全体を見ながら、7名全員で状況を共有し、チームで進めていく。

リピーターからの依頼も多く、地元企業からも声がかかる。全体の9割が県内のプロジェクト。経営のなかで生まれた悩みを、建築で解決するのが強み。

「うちは地域に根ざしているので、仕事が一度きりの関係性で終わることはなくて。確かな技術でデザインし、事業にも貢献する。それが信頼につながっているのかもしれませんね」

たとえばある建設会社とは、社員の厚生施設を建てた縁から、瀬戸内海の島に保養施設をつくることに。そのあとも関係はつづき、福祉事業所の立ち上げにも携わった。

「建築に興味があって、好奇心を持っている人に来てほしい。うちは新築だけじゃなくて、公共施設も、改修やリノベーションも手がけているので、いろんなことに挑戦したい人が向いていると思います」

「建築はお客さんがいてできるもの。対面でも、図面のなかでもコミュニケーションが取れるといいですよね。自分たちがつくるものが、世の中や社会、まちをよくしていくんだってマインドが持てるとやりがいにつながると思います」

 

設計スタッフの石崎さんは、まさにそんなやりがいを感じて働いている。5年前、公共事業の設計に興味があって設計事務所から転職した。

「僕はゆっくり物事を考えるほうが好きで、建築は性格上合っていたんです。長い時間をかけてつくりたくて、この道に進んだように思います」

紹介してくれたのは、宇和島の図書館をユースセンターへ改修するプロジェクト。

「宇和島市の職員さんが、強い意志を持って進めてきた改修事業でした。その気持ちに応えたかったですし、関わり方がほかの公共事業とはちがう側面で面白かったです」

ちがう関わり方?

「高校生とワークショップをしました。地元の高校生が集まる場所だったのを、わざわざ改修する意味や課題を見つめる時間でした。普通の施設は、ある程度何をする場所か決まっていると思いますが、高校生がここで何をしたいのか、本音を聞いてみようと」

運用方法や具体的なルール、仕組みづくりをいっしょに考えると、大きな用紙が付箋で埋まるほどのアイデアが。そのなかで「ここで寝転びたい」という意見があり、ビーズソファーを置くスペースが生まれた。

高校生にとっても、大人と場づくりを考えられたり、建築の仕事を覗けたり、かけがえのない時間だったと思う。

大変なことは何かありましたか。

「施主との関わり方ですかね。建築の意図についてどのように伝えたら理解してもらえるか。身につけるまでは苦労しましたけど、働き方はしんどくないですね。残業も0なので」

残業が少ない、ではなくて0。

仕事の割り振りや作業内容の明確な指示、検討のための模型づくりをCGに切り替えるなど、5年ほど前から意識的に改革。無理のない働き方が定着してきた。

石崎さんも、建築が好きな人と働きたいと考えている。

「失敗してもいいので、なんでもやってみてほしいです。建築には、姿勢と意志が必要だと思っています。外に出さなくても、内にその心があってほしい」

「一人でつくるものじゃないので、素直な心で意見を聞いて、自分なりに解釈してアウトプットするといいのかなと。相談しやすい雰囲気の会社だからこそ、人から与えてもらうものは多いはずです」

 

仕事と生活を見つめ直したい。そんな気持ちでやってきたのは、設計スタッフの内田さん。松山に移住して3ヶ月、それまでは大阪で暮らしていた。

「祖母の家が八幡浜市で、小さいころから遊びに来ていました。みかん畑の手伝いが好きで、空気も気持ちがいい。大阪はスピード感があり、ちょっと生きづらくなって…。自分の人生をゆっくり考えるために移住を決めたんです」

松山市は、家賃が3万円台からで、生活コストが低い。晴れの日も多く、台風や災害も少ない。そんな住み心地のよさを、来て早々実感している。ただ、ちょっとした悩みも。

「暮らしやすいまちだなと思います。自然が近くて、すぐ海に行ける。スーパーや薬局、ごはん屋さんがまちの中心にぎゅっと集まっているので、車があれば便利に過ごせます」

「若い人たちのコミュニティがなくて、同世代の友達がまだいないですね。どこに顔を出せばいいのかなと模索しているところです」

内田さんは社会人2年目で、白石さんから現場や図面の描き方を教えてもらう日々。いまは、内子町の古民家を旅館にするプロジェクトを手伝っている。

「図面を描いたり、過去のプロジェクトを3Dに起こしてみたり、どの業務も新鮮で楽しいです」

「ここで働いて、ほんまに定時なんやなって驚きました。この業界って終電に帰れるかどうかってところもあるので、いいギャップでした。早く帰れる分、一級建築士の試験勉強をしています」

いつかやってみたい仕事を尋ねてみると「水族館をつくってみたいんです」と、目を輝かせて教えてくれた。

「むかしから好きな空間で。魚を見ながらどんな会話が生まれているのか、こっそり聞いちゃいます」

「まだまだ働き始めて3ヶ月なので…」と謙虚な内田さん。話すことは苦手意識があるようだけれど、なんとか毎日の仕事について言葉を尽くそうとしてくれる様子に、真面目さと、本当に建築が好きなことが伝わってくる。

どんな人と、働きたいですか。

「いっしょにがんばれる人がいいですね。やっぱり建築が好きで、モチベーションがあるとうれしいです」

建築が好き。この取材でたびたび出てきた言葉。

「SNSを見ていると、建築も消費される対象なのかなって感じることがあって。安くて早くできればいいのか、本当にそれでいいのか、ずっと考えつづけたいです。真剣に建築が好きだからこそ思いますね」

 

「僕らがつくりたいのは、愛される建築です。長く愛着を持ってもらえる建物のために、僕らの想いも、クライアントの願いも、丁寧に汲み取っています。設計が終わっても、場所はずっとつづくから」

建築は何年も、何十年も残るもの。だからこそ、想いを込めた場づくりがしたい。

真面目で、建築が好き。

その想いがあれば、のびやかに働ける場所だと思います。

(2026/03/24 取材 久保泉)

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