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部活でも、仕事でも、まちづくりでも。目標をきめて物事をすすめるとき、さまざまな役割の人が必要になる。たくさんアイディアをだして行動を起こす人もいれば、そのサポートに徹する人もいる。
いろんな考えの人がいるから、一筋縄ではいかないことも多いと思います。
それが自分の暮らしに関わることなら、なおさら。
今回の舞台は都市部におけるまちづくり。
そこに暮らす人たちとともにコミュニティをつくっていく人を探しています。
募集するHITOTOWAは、都市部のさまざまな課題解決に取り組む会社です。
今回は3度目の取材。武蔵小山にあるオフィスに伺いました。
駅から5分ほど歩くと見えてきたのは、3階建ての小さなアパート。1階にはカフェがあり、ケーキを選ぶ親子連れの姿が見える。
ここまで来るあいだにも、買い物帰りの年配のご夫婦や、ベビーカーを押すお母さんとすれ違った。よくあるオフィス街ではなく、そんな暮らしの見えるまちの中に、HITOTOWAのオフィスはあります。
まずは、代表の荒さんにお話を聞きました。
「都市部で人と人のつながりをつくりながら、子育て、お年寄りの見守り、自然共生、防災に関わる課題解決していきたいっていう思いがあって」
HITOTOWAでは、ネイバーフッドデザイン事業をはじめ、CSR/CSVコンサルティング事業、ソーシャルフットボール事業などを展開している。
事業名はどれも難しい感じがするけれど、実は私たちの暮らしにつながっている。
「ご近所づきあいというと、都市部ではなぜ必要なのかわからない部分もあったと思う。でも、震災を通じて必要性を実体験したんです」
「ただ、有事のときの想定って普段はあまり考えたくないもの。だから、もうちょっと身近な課題で考えるとか、一緒にご飯を食べるとか。そうやって結果的にちゃんと、いざというときに役立つようなコミュニティをつくっていきたいんです」
そんな考えではじまったネイバーフットデザイン事業の目的は、同じ地域に住む人たちの信頼関係をつくって、都市部で生まれる社会課題を解決していくこと。
今回募集するのは、兵庫県西宮市の浜甲子園団地でネイバーフッドデザイン事業を進める人。あわせて、東京で荒さんのアシスタントとして事業拡大に取り組む人も募集しています。
浜甲子園団地では、団地の建替・再開発事業が進んでいるところ。新たに建つ住宅のデベロッパーから依頼を受けて、HITOTOWAがプロジェクトに参画している。
団地やマンションの住民たちはもちろん、近くにある武庫川女子大学の学生たちと一緒に、住みやすいまちをつくっていくプロジェクト。
本格的に始動するのは2017年の4月から。
どんなふうにプロジェクトは進んでいくのか。前回も紹介した東京・ひばりが丘のプロジェクトと仕組みが似ているから、まずはその話を聞くとイメージがしやすいと思う。
「団地の建て替えが進むなかで、以前から住んでいる住民と、新たに移り住んでくる住民がいる。もしもそこで分断が起きてしまったら、有事の際に孤立してしまうかもしれない。新しいマンションや戸建てのデベロッパーとともに、住民たちを巻き込んだコミュニティづくりをしています」
そう説明してくれたのは、ひばりが丘で働く田中さん。「ひばりテラス118」に常駐し、事務局長や住民のサポート役を担う。
田中さんがひばりが丘のプロジェクトに関わって、もうすぐ2年。今でこそ、一緒に飲んだりお土産を交換しあったりする仲だというけれど、はじめは住んでいる人たちに自分の役割を理解してもらうことが大変だったという。
「ずっといるわけじゃないんでしょって言われることもありました。『2020年までにいなくなるっていうけど、それまでに何ができるの?』って」
積極的に相談してくれる人もいれば、なかには厳しい声を投げかける人もいた。
「そんなときは、この方はどういった思いからその話をしているのか、その真意をなるべく探れるように聞く。まずは話を聞くところからはじめました」
はじめのころは座談会を開いて、住民の人たちの話を聞く機会を設けた。
すると、話をしているうちに仲良くなり、自治会主催のお祭りに参加しないかと声がかかる。
企画も出店も全て自治会で行う、純粋にそこに暮らしている人たちだけのお祭り。田中さんは新たに越してきた住民の方も誘って、そのお祭りに参加することに。
「参加しはじめたタイミングが遅かったので、1回目は駐輪場の警備しかできませんでした。でも参加したパパ同士が意気投合して、『来年は出店したいね』って。次の年はミニ屋台をつくったり、みんなが楽しめるゲームを取り入れたり、盛り上がりましたね」
田中さんのつくったきっかけでパパ同士のつながりができると、自然にあたらしい話も持ちあがる。
「次にパパさんたちで盛り上がったのは、ミニ四駆会。自分も小さい頃にやっていたので懐かしくなって、『やりましょう!』って」
お父さんたちが車体を改造して、子供たちがみんなで競争させたり、噂を聞きつけた近所に住む子供たちが飛び入り参加したり。
「『それすごい速いな!』『どうやって改造するの?』と、大人も子ども入り交じるあたたかい場に。見ていたらだんだん自分もやりたくなってしまって、ついにはミニ四駆を買ってしまいました(笑)」
パパさんたちとは今でも一緒になって、次のイベントの作戦会議をしたりしているのだそう。
「みなさん素敵で、頼りになる人たちなんですよ」
そう話す田中さんを見ていると、相談を受けたりやりたいことをサポートしたりするのはもちろん、そこに暮らす人たちと一緒になって楽しんでいく気持ちが大切なんだと感じる。
「巻き込むというより、むしろ巻き込まれにいくっていうのが大切だと思っていて。一方向的なかたちではなく、お互いが楽しみ合う関係性を目指しています」
浜甲子園で募集するのは、田中さんと同じ立場になる人。気軽に話しかけやすくて、知らないうちに住民たちの輪のなかに入ってしまえるような人だと、きっといいと思う。
「あとね、浜甲子園ではこういうメディアをつくれる人を募集したくて」
そう言って荒さんが見せてくれたのは、ひばりが丘でつくっているという広報誌。
「コミュニティづくりって、目指しているものをちゃんと見せることが重要なんだけど、取り組みを可視化するのはすごく難しい。だからこうして定期的に見えるようにして、進化してるのがわかるって大事なことで。事務局としてこういうスキルを持ってるといいな」
デザインは洗練されていて、写真もきれい。よくあるまちの広報誌とは、イメージがちがう。
「ここで、田中くんに質問です。まちづくりにおけるデザインの可能性って?」と荒さん。
「そうですね…課題の発見と解決の力があると思う。メディアづくりのためにさらにまちを知って、今まで届きにくかったメッセージを届きやすくするみたいな。写真がきれいだったりデザインが華やかだったりすると、人を惹きつけることもできる」
まずは取り組みを知ってもらうことができるし、自分たちの取り組みが素敵な紙面に載ると、参加している人たちのモチベーションにもつながる。
「あれもこれも入れすぎるとダサくなっちゃうので、届けたい人に届くように、顔を浮かべながらつくってます。それ以外はなるべくそぎ落とすようにして」
すべて1人でできなくてもいい。住民たちのなかからカメラマンやライターのスキルを持った人を探してきて、彼らのつくったものを編集していく役に徹する。
あくまでも主役は、ここで暮らす人たち。
「裏方といえば裏方ですけど、それがすごい楽しい。この人とこの人をつなげたらおもしろいんじゃないかとか、人と人が出会う場をつくれることも、この仕事の醍醐味かなと思っています」
学生時代のインターンを経てHITOTOWAで働きはじめた田中さん。
東日本大震災を経験して有事の際に助けあえる人がいないことに課題を感じ、HITOTOWAの取り組みを多くの人に届けていきたいと思ったという。
その思いを根底には持ちつつも、まずは目の前の人たちのことを考えて動ける人だと、住む人たちと同じ目線でまちづくりをしていけると思う。
とはいえ、イベント企画やメディア運営のための事務作業も多いよう。今の時期には、次年度の事業計画をつくることも大切だと、荒さんが教えてくれた。
「コミュニティの運営って肌感覚もすごく大事なんだけど、それだけで進めてしまうと雰囲気でしかわかりあえない」
自分たちが現場で感じていることを、プロジェクトに関わるさまざまな立場の人に伝えるためには、定量的なデータをもとに話す必要がある。
先導したり、サポートにまわったり。コミュニティづくりのフェーズによって求められる役割は変わっていくから、大変に思うことも多いかもしれない。
けれど荒さんのやり方はすごく理にかなっているから、きっと納得して働くことができるはず。
浜甲子園のプロジェクトも、ぬかりなく準備が進めてられているようだ。
軸になるのは『防災、子育て、お年寄りの生きがいづくり』。浜甲子園団地の自治会、武庫川女子大学の学生たちと協力しながらプロジェクトが進んでいる。
「前回の募集でインタビューしてもらった谷優香が、すでにいい関係を築いてくれている。信頼関係のあるなかで地域に入ってもらえるよう、環境は整っています」
浜甲子園はひばりが丘以上に人と人のつながりが大事にされる地域なんだそう。関西出身の人だと、まちに入っていきやすいかもしれない。
「即戦力ではなくても、その人と一緒にまちが成長していく部分があったほうが素敵だなと思っていて。少しでもできるかもって思ったら、チャレンジしてもらえたらうれしいよね」
施設運営、イベント、メディア運営、ボランティア組織の運営、デベロッパー対応。大きく5つの仕事を事務局長と2人で進めていくことになる。
浜甲子園で事務局長になる方には今回お会いできなかったのだけれど、荒さんと同世代で、西宮出身の元ラガーマン。よく人のことを気にかけ、チームをとても大事にする方だという。
「僕らの取り組みは、人の社会的な孤立を防ぐっていうまちの調整役なんだけど、板挟みになることもある。僕らのチームが孤立しないように、事務局長や仲間と相談しあってほしい」
「すでに地域に仲間はたくさんいるし、東京からもサポートする。ひばりが丘と浜甲子園は違うまちだけど、参考になる前例があるのは大きい。とはいえ東京とは距離が離れているのも事実だから、社長と離れているくらいがちょうどいいっていうマインドの人がいいかもね」
デベロッパーから住民まで、いろんな人たちをうまくつなぐためには、裏方に徹したり、ときには表にでたり。バランス感覚が求められます。
はじめは難しいかもしれないけれど、まずは話を聞くところから。そうすると、見えてくるものがあると思います。
今回は、東京のHITOTOWAオフィスで働く人も募集しています。荒さんのもとで新しい企画や広報、ソーシャルフットボール事業などを推進していく人です。
2月19日には、荒さんがバーテンダーになるしごとバーを開催する予定。ネイバーフッドデザインや、サッカーを通じた課題解決プロジェクトであるソーシャルフットボールについても、お話を聞いてみようと思います。
まずはお酒でも飲みながら、ざっくばらんに話してみませんか。
(2017/2/8 黒澤奏恵)