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手を動かして、何かつくってみたい。道具や素材の専門店に行くと、そんな気持ちが湧いてくる。
国産ビーズメーカーMIYUKIの直営店も、創作意欲を掻き立てられるお店のひとつ。
手芸やクラフトのパーツの問屋が並ぶ、東京・浅草橋の一角で「BEADS FACTORY」という名前で親しまれてきましたが、このほど、お店をブランドごとリニューアル。
名前も「MIYUKI FACTORY」として再出発します。
瓶に入ったビーズを量り売りで購入できる、メーカー直営店ならではの楽しみは残しながら、商品の種類を増やし、ものづくりの可能性をさらに広げていけるようになりました。

だけど、このお店で気持ちが高揚する一番の理由は、スタッフがみんな、ものづくりを楽しむ気持ちを持っていること。会話を通してはもちろん、身につけているアクセサリーなどからも“好き”な気持ちが伝わってきます。
今回はここで、一緒にものづくりの楽しさを伝えていくスタッフを募集します。合わせて、将来の店長候補となる人も求めています。
MIYUKIの直営店がリニューアルオープンしたと聞き、さっそく浅草橋へ。神田川に架かる橋の手前、小さな公園の脇に新しいお店を見つけた。

入り口に近い1階のスペースは、シードビーズと呼ばれる自社製品のショールームも兼ねた売り場。
たくさんの瓶が並んだ光景は、実験室かアトリエのようでもあり、自分も色の組み合わせを試してみたくなる。

これから何か展示するためのスペースなのかな。
「ここは、自然光でビーズの色味を見てもらうために空けているんです。リニューアルして、シードビーズだけでも6000種類くらい置けるようになったので、微妙な違いも、明るいところでよく見比べてもらえたらいいかなと思って」
そう教えてくれたのは、副社長の勝岡隆史さん。戦前からグラスビーズづくりをはじめたMIYUKIの創業者は、勝岡さんの曽祖父にあたる。

「コロナ禍の前は本当に、毎日何組か、海外からのお客さまがお店を訪ねて『ずっと愛用してきたMIYUKIビーズの直営店に来られてうれしい!』って、感激してくださることも多かったです」
ビーズ愛好家にとっては、聖地みたいな場所なんですね。
「せっかくお越しいただくなら、たくさんの種類をゆっくり見ていただきたい。リニューアルで、什器のサイズや並べ方も変えたので、一つひとつが見やすくなったんですよ。常連のお客さまでも『こんな商品、はじめて見た!』って発見があるみたいです」

4階はギャラリー、5階はワークショップなどに使うレンタルスペースと、まさにビル一棟まるごと、ものづくりを楽しむための空間。

天気のいい日は、神田川の水面の揺らぎが、窓越しに天井に映り込む。
リニューアル後に立ち上げたというインスタグラムには、そんなシーンも紹介されていた。

「一方でビーズって、思わぬところから急にブームが来たりするんです。最近も、韓国のインスタで紹介されたのがきっかけで、ビーズリングづくりが若い女性のあいだでちょっとしたトレンドになっているんですよ」
そういえば私が子どものころにも、同じようにビーズのブームがあった記憶があります。
一時期に比べて手芸の市場が縮小しているとはいえ、定期的にブームが繰り返すのは、やっぱりビーズという存在に、普遍的な魅力があるんでしょうね。
「ビーズって何千年前から基本的なところは変わっていない。古代の人も、同じようにガラスの球をつなげて何かを表現しようとしていたわけで。ただ、素材の魅力やトレンドに頼るだけじゃなくて、自分たちでも常に発信し続けていく姿勢は大切だと思います」
「だからこそ、ものづくりが好きっていう気持ちを持ったスタッフに来てほしい。これはずっと変わらないことです」

ビーズを数えている最中に電話がかかってきたり、在庫の整理をしながら作品サンプルのアイデアを練ったり、マルチタスクで働くことも多い。
勝岡さんは今あらためて、全体を見ながら業務のマネジメントをしていく店長的な役割の必要性を感じているという。

お店では手元を見つめる細かい作業も多いけれど、時々は顔を上げて、一緒に働く仲間の様子を見ながら。その意識は、店長だけでなくスタッフにとっても大切なこと。
MIYUKIで働く人たちは、もともと「ものづくりが好き」というフィルターを通して出会うため、新しく入った人でもなじみやすい。
半年前に入社した加藤さんに話を聞いてみて、あらためてそう感じる。

コロナ禍で新卒1年目を迎えた加藤さん。社会人として踏み出した矢先に、思うように仕事ができない日々が続いた。
そんななかで自分がやりたいことを問い直し、思い浮かんだのが手芸だったという。
「私の母はバレエの先生で、幼いころから一緒に、衣装づくりなどの手芸を楽しんでいました。その後、自分でもアクセサリーをつくるようになって、浅草橋には以前からよく買い物に来ていたんです」
「働きはじめるまで知らなかったビーズもたくさんあります。種類が多くて大変なんですけど、好きなものだから、覚えるのも苦にならないです。ウッドや貝殻、ラクダの骨でできたビーズもあって、こんな作品をつくってみたいっていう視野も広くなりました」

なかには、つくりかけの作品を持参して見せてくれる人もいるという。
「どうやってつくったんですか?って質問すると、快く教えてくださる。私は、そこでビーズワークのテクニックを覚えているところもあります。色選びでは、私が提案したものを気に入ってもらえると、うれしくなりますね」
お店には、趣味でビーズを楽しむ人だけでなく、アパレルなどB to Bのお客さんも訪れる。洋服などに加工したときの洗濯方法や耐久性など、専門的な質問を受けることも。
「そこを曖昧に答えてしまうと、製品化したあとで問題が起きてしまう。色落ちしやすいとか、洗濯できないとか、素材の特性を一つひとつ覚えて、信頼されるスタッフになりたいなと思っています」
B to Bでは、個人のお客さんに比べて、扱う量も多く、複雑な注文を受けることもある。
大きな責任を一人で抱え込まないためにも、一緒に働く仲間に相談し、フォローしあえる関係性はとても大切。
バックヤードは普段どんな雰囲気なんだろう。隣に座る清水さんにも話を聞いてみた。

以前もインタビューに参加してくれた清水さん。当時は今の加藤さんと同じく入社して間もないときだった。
先輩になってみて、どうですか。
「前回のインタビューでは『工場直営のお店ならでは、だと感じることはありますか?』っていう質問に、うまく答えられなかったんですけど、この前、工場へ見学に行ってみてわかったことがあって」
「職人さんたちは、一つひとつビーズをすごく丁寧につくっているんです。それを見たら、お店でビーズを量るときも、床に落としちゃいけないなって思うようになりました。小さいパーツなので、つい探すのを諦めてしまいがちなんですけど、無駄にはできないです」

お店が新しくなってからは、従来のファンだけでなく、新しいお客さんとの関わりも生まれている。
「ここは窓から店内が見えるので、『何屋さんですか?』って入ってきてくださる方も増えました。以前より若い方にも興味を持っていただけているのかなと思います」
「ただ、店内を楽しそうに見てくださる方でも、そこから自分で何かをつくるとなると、ちょっと難しく感じられることも多くて。簡単にできるキットや、伝え方を工夫しながら、ビーズを楽しんでもらうきっかけをつくっていけたらいいなと思います」

上手下手よりもまず、その気持ちをたしかめられたら、一歩踏み出してみてください。
同じように、ものづくりが好きだという仲間との出会いが、さらにその気持ちを大きくしてくれるはずです。
(2022/2/2 取材 高橋佑香子)
※撮影時はマスクを外していただきました。