※日本仕事百貨での募集は終了いたしました。再度募集されたときにお知らせをご希望の方は、ページ下部よりご登録ください。
建築や不動産の世界は、分業体制をとっていることが多い。
営業がお客さんにヒアリングし土地や建物を決め、設計が図面に起こす。そして工事が始まるとたくさんの職人が手を動かし、工事全体が滞りなく進むように施工管理が調整する。
それぞれのプロフェッショナルが各工程を担当する強みはもちろんあるけれど、もしすべての領域の垣根を取り払ったら、どんなことが起こるだろう。
お客さんと直接話して図面を描き、工事の現場も見る。住む人の声を直接聞けることで設計の微調整もできるだろうし、工事中も柔軟に設えを変更できるかもしれない。
今回募集するのは、そんなふうに業務の領域を行き来するような設計担当です。
兵庫・姫路にある、株式会社リノワイズ。
不動産と建築両方の知見を活かし、物件探しからリノベーションの設計施工、そしてインテリアコーディネートまで、一貫して手がけています。
分野を超えて、幅広く仕事をしてみたい。もしくは、将来独立したいと思っている人にとっても、良い経験を積める仕事だと思います。
リノワイズのオフィスは、姫路駅から南に15分ほど歩いた場所にある。
ビルの6階のドアを開けると、落ち着いた雰囲気の空間があらわれた。ここはショールームになっていて、カラフルな家具や照明も散りばめられているものの、不思議と馴染んでいてまとまりがある。
迎えてくれたのは、リノワイズ代表の田中さん。
リノワイズは、今年で設立から10年。主に戸建てやマンションなどの不動産仲介とリノベーションを手がけてきた。
「僕がもともと、新築住宅を扱う会社で営業をしていたんです。でも先のことを考えると、新築よりも空き家をどうするか、という問題のほうが大きくなってくる。そう考えたときに、新築以外の提案をしていきたいと思って、この会社を立ち上げました」
立ち上げ当初、姫路でリノベーションを専門とする会社はほとんどなかった。
リノベーションという選択肢を提示することで、予算的に新築がむずかしい人でも中古物件を自分好みにつくり変えて暮らすことができる。
創業から10年たった今、リノベーションは世の中にかなり浸透したと思う。その流れに乗るようにして、リノワイズも事業を拡大してきた。
一方で、新たに生まれてきた課題もあるという。
「正社員が4人、パートさんが数人の小さな会社なので、営業も担当が1人で、少し僕も入って進めているんですが、設計に関しては昨年ひとり退職して以来、社内で設計のできる人がいない状態が続いていて」
「去年1年間は、業務委託契約で外の人に設計をお願いする、という形を試していました。ただ、やっぱり自社スタッフがいるほうが、細かい調整やオーダーもしやすい。それで今回は、あらためて設計ができる人を募集したいと思っているんです」
設計担当が社内にいないということは、新しく入る人への引き継ぎもないということ。
これというやり方が決まっていないぶん、その人自身の経験をもとにリノワイズの設計をつくり上げてほしいと、田中さんは考えている。
「仕事の進め方は、できるだけ自由にしてもらいたいと思っていて。そのなかでも大切にしてほしいのは、言われたことをそのまましない、ということなんです」
「たとえば、言われた通りに図面を引くっていうのは、ある意味当たり前じゃないですか。そこにどれだけプラスアルファの価値をつくることができるか。それができてこそ、お客さまの満足感につながると思っているんです」
たとえば、営業の仕事。ペットと暮らせるマンションを探したいというお客さんが来たとき、希望するエリアで物件を探しても、良い物件が見つからないことがあるそう。
その場合、なにかしらの条件を妥協したり、エリアを変えたりといった提案にとどまらず、もう一歩踏み込んだ提案が、お客さんにとってより良い選択になることもある。
「あるときは、マンションじゃなく中古住宅はどうでしょう?ってご提案して。戸建てだとペットも問題ないし、内装もリノベーションすれば自分好みにできる。ぼくらはリノベーションの経験もあるので、空間づくりまでセットで考えることができます」
「戸建てという選択肢をまったく考えていなかったお客さんは、最初は驚かれるんです。だからこそ、提案する価値があると思っていて。お客さまにとってなにが一番重要なのかを考えて、予想を超えるような提案をする。それが大切だと思うんです」
リノベーションと不動産、両方の知識と経験があるからこそできる提案。これは営業の話だけれど、設計担当となる人にも、同じような積極性を持ってほしいそう。
「新しい提案をするためには、それなりの知識も必要になります。設計だったら、大手メーカーの製品以外にもさまざまな方面にアンテナを張って、その時々で合う家具や設備、床材や壁紙を提案する、とか。もちろん入ってからでいいので、いろんな知識を吸収したいって思ってくれる人だといいですね」
スキルとしては、設計職の経験は必須。
その上で、お客さんに直接ヒアリングしたり、インテリアと設計を合わせて提案したり。オーダー通りに図面を引くような、狭義の設計の枠に収まらない働き方をしたいと思う人にとっては、面白い仕事だと思う。
「姫路という地域で仕事をしていて感じるのは、東京や大阪といった都市部と違って、マンションじゃなく戸建ての案件が多いっていうことですね。このあたりは昔から残っている家も多いので、古民家をさわってみたいという人にとっても面白いんじゃないかなと」
さまざまな空間づくりに携われるので、将来的に設計事務所をひらきたいという人にとっても、良い経験の場になりそうだ。
実際にどんなふうに仕事をすることになるのか。今回は、1年前にリノワイズを退職し、独立したという前田さんにオンラインで話を聞かせてもらった。
現在は神戸に自身の設計事務所を構えている前田さん。リノワイズの仕事を担当することもあるのだとか。
設計の仕事は、どんなふうに進んでいくんでしょう。
「まずは営業がお客さんと話して、どういった希望があるのかをヒアリングしていきます。たとえば中古物件を購入してリノベーションしたい、ということであれば、僕は購入のところから打ち合わせに入っていく感じですね。そのあとはプランニングして設計、という流れです」
「僕の場合は、3つくらいのプランを考えてお客さんに見てもらいながら、図面を固めていきます。間取りが決まったら床、壁、天井をどうするか。それと並行してキッチンや洗面所、トイレといった水回りやインテリアのデザインも決めていきます。お客さんにこだわりがなければ、こちらからこういうデザインはどうでしょう、と提案をしますね」
田中さんも話していましたけど、担当範囲がかなり幅広いですね。
「そうですね、たぶん設計がこれだけやるのはめずらしいと思います。個人的には、お客さんと直接話すことができる環境は面白かったですね」
印象に残っている仕事について聞いてみると、あるリノベーション案件でオリジナルのテレビボードをつくった話をしてくれた。
「僕は家具とかを大工さんに頼んでつくってもらうことが多いんです。そのお客さまは、観葉植物をたくさんお持ちで。それを眺めながらテレビも観れるようにしてほしいっていう要望があったんですね」
「それで、じゃあテレビボードの後ろをガラスにして、観葉植物を置く場所にしましょうって提案して。大工さんに頼んでテレビボードをつくってもらいました。お客さんにも喜んでもらえて、個人的にもうれしかったです」
そんなふうに提案することは多いんでしょうか?
「多いと思います。住まいをつくるって、ほとんどの人にとって一生に一度の機会じゃないですか。お客さん自身も初めてでわからないことが多いので、なるべく幅広く提案してあげて、徐々に狭めていくのがいいのかなと」
「僕は図面を引いてるときもすごく楽しいんですけど、やっぱり無事に引き渡して、お客さんの喜ぶ顔が見れたときは一番うれしいですよね」
設計だけにとどまらないからこそ、最初から最後までお客さんの顔を見ながら仕事ができる。
大変なこともあるだろうけれど、そのぶんやりがいも大きいんだろうな。
「服装も自由だったり、フレックスだったり。けっこう自由な社風なので、そういう環境で働きたいっていう人だったら合ってると思います。僕は朝早く出勤して早めに帰るっていうリズムで働いていました」
「あと、僕は現場によく足を運んでいました。リノベーションの現場って、解体してわかることが多いんです。構造上抜けない柱とか、壁剥がしたらとんでもないことになっていたとか、そういうことが多くて」
「僕みたいに独立したいなって思ってる人は、全部できるので、手っ取り早く学べるんじゃないかなと思います。今回は先輩もいないので大変だと思いますが、そのぶん自分のやり方をつくっていける自由さはあるんじゃないかな。本当に何か困ったときには、僕に聞いてくれてもいいので」
最後に話を聞いたのは、1月に施工管理担当として入社した正井さん。
もともとは、主に店舗の施工をする会社に勤めていたそう。夜勤も多いハードな職場だった。
働いてみてどうですか?
「古民家再生にすごく興味を持っていたので、古い家を改修するっていうのは面白いなと。あと一番驚いたのは、働き方が自由なところですね。出社する時間やタイミングもバラバラだし、コアタイム以外は各自で予定を立てて動いているのが、すごく印象的で」
「逆にそれぞれに責任があるということなので、そのぶん自律して働かないといけないんだなと。それは大変でもあるし、面白みでもあるのかなと思っています」
現在は、先輩の施工管理スタッフから仕事を学びはじめたところ。設計として入る人も、正井さんとかかわることは多いと思う。
「お客さんに提案することを楽しめる人がいいのかなと思います。図面を描くっていうだけじゃなくて、インテリアや内装といったところまでできるのが、リノワイズの設計の面白さだと思うので」
領域の垣根を越えることで、本当にお客さんのためになる提案ができる。
その面白さを、ぜひ感じてほしいです。
(2022/1/13 取材 稲本琢仙)
※撮影時はマスクを外していただきました。