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洋風の建物に、ポツンと現れる畳の間。洗濯物を干せるのは屋上のみ、異国情緒ただようタイル張りの部屋。
ちょっと野暮ったく、人によっては手間だと感じてしまうかもしれない。でも見方を変えると、積み重ねられてきた歴史や情緒を感じるというか、懐かしいというか。
ガレージ賃貸には、そんな誰かの琴線に触れる昭和レトロな物件がたくさん載っています。
都内の賃貸マンションやアパートを紹介しているサイト「ガレージ賃貸」。運営しているのは、青山物産株式会社です。
不動産売買の仲介からはじまり、今では賃貸・管理・リノベーションなど、複数の事業を手がけています。
今回は、ガレージ賃貸を運営するスタッフを募集します。
紹介したい賃貸物件を探して取材し、サイトに掲載。お客さんから問い合わせがあれば、お部屋の案内もします。
ただ物件を紹介するのではなく、その先の暮らしが想像できるように、まちの雰囲気も含めて感じたこと、思ったことを表現する。
自分なりの視点で暮らしを提案していきたい人にとっては、面白い仕事だと思います。
渋谷から田園都市線に乗って4駅目、桜新町駅で降りる。
駅を出てすぐ、目に入ってきたのはサザエさん一家の像。
桜新町は、サザエさんの舞台となっている場所で、まちのあちこちにサザエさん一家をモチーフにしたシールやポスターが貼ってある。
隠れたサザエさん一家を探しつつ、まちの様子をうかがう。
チェーン店もいくつかあるけれど、文具屋やパン屋など、昔ながらの個人商店も多い。一方で、人の賑わいも程よいくらいで、ごちゃごちゃした感じはしない。なんだか住みやすそうなまちだ。
青山物産の事務所は、通りを真っすぐ歩いて3分ほど。1階にお寿司屋さんがあるビルの3階にある。
事務所の扉を開けると、代表の四方田(よもた)さんが迎えてくれる。
事務所から歩いて行けるほどの場所にご家族と一緒に住んでいるそうで、一階のお寿司屋さんには10年近く通っている常連さん。
「青山物産って青山で創業したのが由来なんです。ずっと青山でやってきたんですけど、事務所が入っていたビルの建て替えが決まってしまって」
新しい事務所を探していたところ、懇意にしていたお寿司屋の女将さんから相談をもらう。
「ビルの3階にある空き部屋を有効活用できないか?って。それならぜひ、僕らに入らせてくださいということで、昨年の9月に移転してきました」
どんな方だろうと少し緊張もあったけれど、柔らかい雰囲気に気持ちもほぐれる。
「新卒で入った不動産会社では、賃貸管理営業の仕事をしていました。ただ、そこではオーナーさんの利益のために、建物を壊して新築を建てることが多くて」
「古くても味のあるいい物件だと感じることも多かったので、だんだん勿体ないと思うようになってきたんです」
独立したい気持ちもあった四方田さん。その後、WEB会社に転職して広告について学び、14年前に青山物産を立ち上げた。
最初の事業は、都内の中古マンションを専門に取り扱う不動産売買の仲介サイト「ゼロアパ」。
「これまで培ってきた知識や経験も活かせるし、お客さんに喜んでもらえるのは嬉しかったんですけど、あるとき急激にまちが変わる感覚があったんです」
まちが変わる。
「事務所の近くにあった、昔からある住宅や個人店が軒並み壊されて、高層マンションとかビルになっていって」
「自分が住んでいるまちって、思い出もたくさんあると思うんです。家もそうだし、近所の駄菓子屋さんとか惣菜屋さんとか。小さな思い出がたくさんある。大人になって、ふと昔の感覚を味わいたいって思ったときに、そのまちがないっていうのは悲しいなって」
新しいものもいいけれど、昔からあるものを大切にしていきたいと思う人もいるのではないか。
そんな思いから立ち上げたのが、ガレージ賃貸だった。
サイトに載っている物件は、昭和レトロな雰囲気が感じられるものが多い。そして面白いのは、その紹介の仕方。
たとえば、桜新町にある築年数59年の戸建物件。サイトには「建てられたのは、昭和38年。初めての東京オリンピックの前年。当時は桜新町にもまだ路面電車が走っていた。」と書いてある。
築年数だけを見ると、古いと感じてしまうかもしれない。けれど、そこに歴史という視点が加わることで、違った見方もできるし、暮らしも想像しやすくなる。
「もともと、まちや路地を歩くことが好きで。作家さんが書いたまち歩きの本とか読むと、いろんな見方があるんですよね。歴史もそうだし、本当に人それぞれ視点が違う。そういった感性を大事にしつつ、サイトを運営してきました」
少し変わった視点で物件を捉える。
そんな姿勢に惹かれて入社したのが、ガレージ賃貸の運営を担当している植田さん。
「大学は建築系の学科で学んでいました。企業と連携して、リノベーション物件の住人に住まいに関する満足度を調査して、今後のリノベーションを改善するにはどうしたらいいのか考える、みたいなことをしていたんです」
もともと建築やインテリアに興味があった植田さん。前職はインテリアメーカーで事務職を経験。
働くなかで、もう少しお客さんと関わってみたい、自分の考えていることや思っていることを表現してみたいと思うように。そんなとき、日本仕事百貨で掲載していた青山物産の記事を見つけた。
「未入居の物件って、なかなか入れるものではないじゃないですか。レトロで味のある物件に入って写真に収めたり、文章にしたり。ここで働けたらすごく楽しそうって思ったのが1番の決め手でした」
植田さんは今年の6月に入社したばかり。入ってみてどうですか?
「不動産ってノルマがあって、それをすごく意識させられるみたいなイメージがあったんですけど、ここはノルマもなく、のびのびとやらせてもらっているので働きやすいです」
「あとは、よく今も残ってるなって思う古い物件や、かなり高価格帯の物件に入ることもできて。この仕事でなければ出会えなかった物件もたくさんあると思うので、とても楽しいです」
これまで取材しに行った物件のなかでも、特に印象に残っていると教えてくれたのは、世田谷区にある物件。
「ほんとに住みたいなって思うほど気に入っている場所で。建物自体は1964年の東京オリンピックのときに建てられたものなんです。部屋に内階段があって、2階建てのメゾネットタイプっていうのも珍しいし、窓もいまの時代ではつくらないような形をしていて」
実際に物件の写真を見せてもらうと、上下2列に並ぶ窓が5枚。
上段に3枚、下段に小ぶりな窓が2枚。どちらも引き違い窓になっていて、上段の窓は3枚すべてを端に寄せると、一般的な2枚窓よりたくさんの風が入ってくるとのこと。
「ほかの窓も、たとえばちょっとしたくぼみがあったり、2階の窓枠は縦に分割された4枚ガラスになっていたり、心くすぐられるレトロなデザインが素敵なんです」
楽しそうに紹介してくれる植田さん。細かいディテールの部分もお好きなんですね。
「そうかもしれないです。素材とか形とか、設計者やオーナーさんのこだわりを感じると、その部分だけすごくアップで写真を撮ることもありますね(笑)」
今回募集するのは、ガレージ賃貸の運営。
仕事のはじまりは、物件を探すところから。不動産業者専用のサイトで、気になる物件をいくつかピックアップ。取材が可能か確認し、物件が決まれば現地に行って取材する。
事務所に帰ってきたあとは、ソフトを使って写真の加工。加えて、部屋の面積や賃料などのデータを入力し、紹介文を執筆して記事の完成。
感覚的なことも多いと思うけど、具体的にどんなところに気をつけて物件を紹介しているんだろう。
「前回の記事で、スタッフの方が『正直に書く』ことを心がけているって話していて、ほんとその通りだなって。たとえば、さっきの世田谷区の物件って、窓はたくさんあるけれど、網戸がついてないんです」
「物件のまわりは緑も多いので、夏は窓を開けていると虫が入りやすい。人によっては気にされる方もいると思うので、きちんと書くようにしています」
そのほかにも、線路が近い物件や繁華街近くの物件などの場合は、音の記載も欠かせない。人によって感じ方もさまざまなため、書き手の先入観が入らないように、かつ誇張表現にならないよう気をつける。
サイトに記事をアップしつつ、お客さんから問い合わせがあれば、メールでやりとりし、実際に物件を案内する。
取材・編集とお客さん対応、業務の幅は広いので、はじめのうちは時間の使い方に慣れるまで時間がかかるかもしれないと植田さん。
どんな人に入ってきてほしいですか?
「やっぱり、物件を見るのが好きな人だと思います。接客が得意な人でも、取材や編集作業が苦になってしまうともったいないと思うので、そこはちゃんと伝えられるといいのかなと」
青山物産では、現在3名のメンバーが働いている。四方田さん、植田さん、そして専務取締役の小倉さん。
現場の仕事もしつつ、四方田さんとともに会社をつくってきた。入社して10年以上になる方。
「週5日働く仕事をできるだけ楽しいものにしたいと思っています。それは楽をするってことじゃなく、限られた時間のなかで集中して仕事に取り組む、ということ。多くの人が、一度は『ああ、今日は仕事頑張ったな』っていう日を経験していると思うんです。そう感じることができたら、プライベートも充実すると思うんですよね」
「それと、当然会社なので利益を考えないといけない。でもお客さんに対しては、自分が正しいって思うことを伝えていいって四方田から教わってきて」
正しいと思うこと。
「知識や経験がたまってきたときに、お客さんにとって本当に良い提案が何かがわかってくるんです。家を借りるのか買うのか、住む場所や資産形成の仕方も」
「もちろんお客さんのお話を聞いて一緒に考えていくんですけど、頑張って勉強したことでお客さんに喜んでもらえるってうれしいですよね」
感性からはじまったガレージ賃貸。
住まいのこと、暮らしのこと。まちの人が不動産まわりのことを気軽に相談できるような「まちのお医者さんのような存在になりたい」と、小倉さんは話していました。
取材終わり、四方田さんの言葉が印象に残っている。
「ポジティブな考えを持てる人だといいなって思っていて。いい方向に捉えられるってことは、物事のいい面を見れるということじゃないですか」
「ほかの人が見えていないところも、一つのいいところとして捉えることができる。それは、物件やまちを見るときも、お客さんにとっての幸せを考えるときも一緒だと思うんです」
正直に、丁寧に。物件だけでなく、働く人も気持ちいい仕事だと思いました。
(2022/2/17取材 2022/10/17更新 杉本丞)
※撮影時は、マスクを外していただきました。