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心理的安全性のある土地に
デザインで起きること

※この仕事は募集終了いたしました。ご応募どうもありがとうございました。

根本から変えたほうが良いのに、表面的なデザインを求められる。要求ばかりで、こちらの意見を伝えることができない。はじめから最後まで、相手の顔が見えなかった。

クライアントと満足にコミュニケーションできないデザインの仕事ってあります。

合同会社ツギは、地域に深く入り込み、ともに考えながらデザインする会社。良い関係が良いデザインを生み、ものづくりの街、福井・鯖江を変えたことで、全国から注目されています。

今回はアートディレクター兼デザイナーを募集します。ローカルデザインの最前線で一緒に地域の最適解を探す伴走者を募集します。

 

トンネルを抜けると雪。

その日はちょうど寒気の影響で北陸一帯の天気予報は雪マーク。特急も遅れるほどの雪が降っていた。

1時間ほど遅れて鯖江駅に降りると、新山さんが温かく迎えてくれた。TSUGIの代表で、鯖江に移住して13年目になる。

日本産めがねフレームの約9割をつくっている「めがねのまちさばえ」。ほかにも漆器や繊維の会社が多くある、ものづくりの街だ。

駅から車で15分ほど。漆器の工房やメーカーが集まる河和田地区にTSUGIの事務所がある。同じ建物には、TSUGIが手がけるショップ、漆器工房、観光案内所も。宿をはじめる予定もあるのだとか。

新山さんは大阪の吹田出身。ニュータウンであり、ベッドタウンのような場所で育った。

大学では建築を専攻する。恩師に誘われて、河和田アートキャンプというイベントに参加して、初めて鯖江を訪れた。

「地域コミュニティから一番かけ離れたところで生まれ育って。大学では建築を学んでいたんですけど、リーマンショックやリノベーションの動きから、なんか世の中が変わるみたいな感覚があって」

「そんなときに大学の先生がやっていた河和田アートキャンプってイベントで初めて鯖江に来て。夏休みの1ヶ月、河和田地区に滞在しながら、地域のこれからを考え、自分でプロジェクトも担当しました。たとえば、建築の学生なら蔵を改装してバーにしたり、林業の学生なら木を伐って作品にしたり」

鯖江の第一印象はどうでしたか?

「みなさんとの距離がとても近くて。60人くらいの学生たちが雑魚寝しているような古民家に、近所の子どもたちが毎日遊びに来るんです。夕方になると、子どもたちを迎えに来た親とかおじいちゃんとずっと喋って」

育った環境とは180度違うなかで、地域やコミュニティデザインへと興味は移っていく。

大学卒業後、街づくりがしたいと鯖江に移住。

河和田アートキャンプの運営をしていた大学の先生の会社に入社した。

アートキャンプの仕事をしながら、もう一つの仕事として市から受けたのが漆器の調査だった。

「漆器職人さん、100軒伺いました。そしたらみんな悲観的で。移住してきて、この街はものづくりが元気じゃないとダメだって思いました」

調査2年目には、大都市の百貨店やセレクトショップで、漆器がどう売られているか調査する。すると鯖江の漆器はほとんど売られていないことがわかった。

そのなかで出会ったのが、「椀一式」というプロジェクト。

深澤直人さんや原研哉さんなど錚々たるデザイナーが関わったもので、デザインの視点から伝統工芸を捉え直したものだった。

「鯖江は見せ方が全然いけてなかったんやなって。それでデザイナーになろうと思いました」

「その年の忘年会で、『僕はデザイナーになる!』って宣言したんです。そしたら可愛がってくれていたおっちゃんたちから、『ふざけんなって!!』って言われてしまって」

どうしてでしょう?

「おっちゃんたちに話聞いてみると『デザイナーは好きなもんだけつくって、在庫の責任を持たへん。在庫、めちゃくちゃ残ってるぞ』って」

この土地に移住して会話を重ねてきたからこそ、聞けた本音だった。

「この街でデザインするなら売るところまで考えないといけない。流通まで考えられるデザイナーになろうと決めました」

デザイン事務所で働いて経験を積もうと考えるも、就職できず。デザインは独学で学びながら、まずは市役所で働くことになった。

「初めは若い人がいなかったので、青年団がなくて、壮年会に参加してたんです。ただ、だんだん河和田アートキャンプに参加した後輩たちが移住してきて、若い人も増えてきました」

移住して3年目で同年代の友だちができる。集まって会話する仲間が増えていく。とてもうれしかった。

「彼らの話を聞いていると、仕事は楽しいけど、将来が不安らしい。職人って10年くらい修行しないと一人前になれないけれど、10年後も地域に仕事は残っているのかなって」

そこではじめたのが「TSUGI」。はじめは「部活動」のようなものだった。

役所の仕事をしながら、仕事終わりに集まった。

「一緒に話していると、僕らみたいに悶々としている若い子が福井県中にいるはずだと思って。若手デザイナーを呼んで、トークイベントを開催しました」

ここから活動も人間関係も、一気に広がっていく。

そんなとき、福井新聞で気になる連載がはじまった。あまりに好きすぎてメッセージを送ったら、担当の記者と意気投合。「ふくいフードキャラバン」という福井新聞が主催するプロジェクトをご一緒することになった。

「その土地にしかないもの、その土地にしかない料理、その土地にしかない風景と出会えるような晩餐会をしようってなりました」

「河和田は漆器の街だから、イベントの1週間前に器をつくるワークショップを開催しました。料理は地元のおばちゃんにつくってもらって」

木地師の手仕事を見たり、塗師から直接漆塗りを教えてもらったり。地元の方からお重も借りた。みんなが持ち寄って、イベントが形になった。

「街にある原石を見つけて、価値化させる。今の会社の指針が見つかりました」

2015年に「創造的な産地をつくる」をビジョンに掲げ、デザイン事務所「TSUGI」を設立。

WEBやカタログなどのグラフィックデザインから、アクセサリーや土産物などのプロダクトデザインまで。面白い産地であるために必要なことはなんでもやってきた。

その1つが工房見学イベント「RENEW」。

持続可能な地域づくりを目指した工房見学イベント。見て、知って、体験してもらいながら、産地を体験できる。

今では鯖江市、越前市、越前町の7つの産地の工房・企業が参加する国内最大規模のイベントになった。

 

RENEWに参加したことがきっかけでTSUGIで働くようになったのが、アートディレクター兼デザイナーの室谷さん。

東京出身の室谷さんは、鯖江に移住する前はWEBデザイナーとして働いていた。

前職のときに参加したRENEWで、街がデザインの力で変わり、活気づいていることに衝撃を受ける。それから、毎年参加するようになった。

デザイナーの仕事をする上で考えていたことが、もっと顔が見える仕事をしたい、最初から最後まで関わりたい、ということだった。

新山さんに相談して、まずはインターンとして働きはじめる。

「仕事のなかでいろんな人のつながりができました。職人さんとしてプロフェッショナルな話をする人も、普段は友だちと話しているような距離感になるんです。今は当たり前になってしまっているんですが、お互いが言いたいことを言える良い関係だなと」

「仕事をしている会社さんが近いこともあって、ツギの仕事は納品して終わりじゃない。その先も一緒に考えていけます」

最近室谷さんが関わっていた仕事「keamu」を見せてくれた。

「鯖江って化学繊維の街でもあるんです。冨士経編さんという、メディカル白衣で高い国内シェアを持っていて、ホテルのリネンとかパジャマもつくっている会社があって。介護用のケアウェアもつくっていたんです」

最初の相談は、すでにあるシニアウェアのリブランディングだった。

「商品を見て、シニアウェアがいかにも高齢者っぽいデザインになるのはどうしてだろうと疑問に思って。商品写真の撮り方を変えたりして、おしゃれに見せることはできたんですけど、やっぱりそれだけじゃよくないと思って」

「正直に『本当に大人が着たいと思える服をつくりましょう』って提案しました。ウェアのデザイナーさんを変えてできたのが、新ライン『keamu』なんです」

床ずれしないよう縫製され、服の脇がスナップボタンで開く、ミニマムで着ている人の体型や年代を選ばないデザイン。

「技術のある企業さんだからこそ、もっといいものづくりができるんじゃないかって。企業さんと近い場所にいるから、自分の仕事がどうなっていったのかが見える。クライアントから言われたことだけをやる仕事とは違う感じがします」

コミュニケーションができるということは、そのぶん仕事量も増えそうに感じる。日々の仕事はどんなふうに進んでいくんでしょう。

「朝10時くらいに出社して、メールチェックをしたり、プロジェクトのスケジュールを確認して滞っているものにリマインドしたり。13時ぐらいから打ち合わせに行って、戻ってきたら議事録をまとめて」

「それからメールチェックを1時間くらいして、16時くらいからデザイン作業を始めます。大体帰るのは21時か22時くらいですね」

日々の仕事がいそがしいなかでも、それぞれが残業を減らす努力をしながら働いている。以前は裁量労働制だったのが固定時間制になり、あらゆるサービスを使って仕事の管理をしているそうだ。

もうひとつ気になるのは、縁のない土地に移り住むということ。室谷さんをはじめ、ほかのスタッフの方にも、地元出身者はほとんどいない。

「はじめは灯油の入れ方も分からないし、車の運転も不安でした」

それでもなんとかできたのは、地域の名物シェアハウス「森ハウス」に住んだからかもしれない。

「森くんがはじめたシェアハウスだから『森ハウス』。すぐに生活できるし、友達もできる。いろいろ準備して引っ越しするよりも面倒じゃないし、合わなかったら別の場所に引っ越せばいいので」

開かれたシェアハウスで、知らない人が居間にいることが日常茶飯事。もちろん、はじめから一人暮らしでも大丈夫だし、たまに遊びに行くだけでも歓迎してくれるとのこと。

 

最後に新山さんに一緒に働きたい人について聞いてみました。

「自分たちは街の会社とずっと伴走していく事務所なんじゃないかな。お互いに信頼できるチームであるように、丁寧なコミュニケーションを心がけています。良い関係性があるからこそ、お互いに本音で話し合える。だから良い仕事もできるし、自分たちも伸びていける」

「地域がこれからもっと面白くなっていくために必要なことを、僕らと一緒に面白がって向き合える人に来てほしいです」

デザインは技術やセンスといったアウトプットも大切だけれど、地球環境や地域社会など、さまざまなことを統合していく時代には、コミュニケーションなどのインプットがとても大切になってくる。

心理的安全性、つまり自分の考えや気持ちを誰に対しても安心して発言できる状態から生まれたデザインは、とても普遍的な価値を持っていると思います。

(2022/2/16 取材 荻谷有花)
※撮影時はマスクを外していただきました。

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