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まちを自分ごとにする
高校のないまちで
0からつくる学び

※この仕事は募集終了いたしました。ご応募どうもありがとうございました。

北海道南西部に位置する厚沢部(あっさぶ)町。

豊かな自然に囲まれた、穏やかな気候の地域です。

そんな厚沢部町には、高校がありません。

中学卒業と同時に町外へ出てしまう子どもが少なくないこの町で、学びや将来のことを考える機会を得られるように。ここで育ったことを誇らしく思えるように。

そんな願いを込めて、2018年に始まったのが厚沢部町の教育魅力化プロジェクトです。

2018年10月に立ち上がった中学生向けの公営塾が実を結び、学習指導のプログラムが確立されたいま、プロジェクトは新たなフェーズに入ろうとしています。

それが、中高生向けに地域を学ぶ機会をつくる「地域魅力化プログラム」。

今回は、それを企画・運営するコーディネーターと、公営塾で子どもたちの学習指導をするスタッフを募集します。

コーディネーターは教育現場での経験がなくても大丈夫。まちを知り、「子どもたちのために何ができるか」を考えられる人なら、ともに学びながらつくっていける環境です。公営塾スタッフは、高校や大学受験も指導範囲となるので、多少なりとも塾講師や家庭教師などを経験した人だと馴染みやすいと思います。

まずは、厚沢部でどんなプロジェクトが進められてきたか、どんな人と関わるのか、知ってもらいたいです。

 

東京から飛行機に乗り、函館空港へ。空港からは車で厚沢部町へ向かう。

少し雪の残る山を横目に1時間ほど車を走らせると、鮮やかな緑が目に飛び込んできた。

山と川の雰囲気が、なんだか北海道っぽくない感じ。小説や映画に出てくる田舎の夏休みの風景のよう。なんだかのんびりした気持ちで、待ち合わせの厚沢部町役場へ向かう。

「こんにちは。今日は久しぶりのいい天気で気持ちがいいですね」

そう話しながら迎えてくれたのは、厚沢部町公営塾の今野さん。

公営塾が立ち上がって2年のタイミングで仲間に加わった今野さん。年齢もキャリアもさまざまなスタッフと協力して、0から学習指導のあり方を模索してきた。 

「厚沢部町には高校がありません。進学を希望する子どもは、隣町の高校に通うか、札幌や函館に下宿しながら高校生活を送るか、中学3年生で大きな決断をすることになります」

一人ひとりが自分に合った学びの機会を得られるように、そして希望の進路を実現できるように。そんな願いから誕生したのが、厚沢部町公営塾。

中学3年生の学習支援からはじまり、今では中学生全学年と隣町に通う高校生にも対象を拡大。中学生は集団授業で学校学習のフォローアップ、高校生は自学自習とそのフォローがメインになっている。

現在は主に高校生を担当している今野さん。昨年度は公営塾の1期生たちがはじめて大学受験に臨む年だったそう。

「できる限りサポートできるよう、受験生たちからの質問を集中的に受けられるような枠をつくったこともありました。みんな無事、第一志望校に合格することができて。着実に、一人ひとりが進路実現できるような環境をつくってきた実感があります」

 

「喫緊の課題だった学習環境の改善ができつつある一方で、もっと地域と関わる取り組みを充実させたいという気持ちもあって。これまで不定期で運営していた、地域魅力化プログラムを通年で実施できたらと考えているんです」

そう話に加わってくれたのは、厚沢部町と共同でプロジェクトを運営している、Prima Pinguinoの岡本さん。

北海道を中心に、全国各地の魅力化プロジェクトの立ち上げ、運営に関わってきた方。

まちに暮らす高校生を中心に、地域との関わりを考える地域魅力化プログラム。これまで岡本さんが年一回ほどのペースで実施していた。

「たとえば、厚沢部の魅力をアピールしようというテーマでグループワークを実施したとき、4つ中3つのチームから食に関するアイデアが出てきたんです。『おいしいものがいっぱいあるから、函館にある飲み屋街みたいなのをつくりたい』とか、『昆虫味のポップコーンをつくってみたい』とか」

昆虫味…!

「厚沢部町はクワガタが採れるって有名だそうで。ほかの地域で同じことをしても、アイデアがまったく出てこないこともあるんですよ。厚沢部の子どもたちはすごく積極的ですね」

ほかにも、道の駅で販売する特産品のセットを考える回では、特産品を使ったレシピをQRコードで表示するアイデアが生まれ、発表後すぐに採用されたそう。

「地域と接点をもつことで、子どもたちが厚沢部のまちをより自分ごととして捉えられるようになるのかな、と感じていて」

まちのなかに自分たちが関わる余白があると感じられたら、どこでどんなことを学びたいか、将来どう暮らしたいかについて深く考えるきっかけになるはず。何より、今暮らしている厚沢部に愛着も生まれていく。

「このまちで育った子って、『函館出身です』って自己紹介することも多いみたいなんです。厚沢部って言っても誰も知らないからって。そうじゃなくて、『厚沢部出身です』と言いたくなるような体験がつくれたらなって思います」

 

今回はじめて募集するのが、主に中高生を対象とした地域魅力化プログラムをつくっていくコーディネーター。

ほかの地域では公営塾スタッフが兼任してプログラムの企画・運営に臨むことも多いけれど、厚沢部では独立して業務に臨むことになる。

その理由は、まちで進めている新たな事業「保育園留学」と組み合わせた、全学年向けのプログラムをつくっていきたいと考えているから。

「この方と話すなかで、本腰を入れてプログラムを充実させていくことになったんです」と岡本さんに紹介されたのが、厚沢部町役場の木口さん。

さっそく、キーになりそうな保育園留学とは何なのか聞いてみる。

「昨年からスタートした、就学前の子どもをもつご家族向けの短期間の暮らし体験プログラムです。自然豊かなまちのこども園でお子さんを預かってもらいながら、親御さんはリモートワーク。その合間には野菜の収獲体験をしたり、厚沢部の食や人を楽しんでもらえる機会も用意しています」

きっかけは、別事業でまちと交流があった首都圏のIT企業に勤める方からの相談だった。

わが子に豊かな自然と触れ合う機会をつくってやりたい。ただ、子連れでワーケーションはむずかしい。

そこで声をかけられたのが木口さん。「託児しながら働くことはできないか」との相談を受け、以前から町にあった一時預かり制度や移住体験住宅などを組み合わせて受け入れることに。

「経験のないことなので不安もあったけれど、もとからあるものを活かせばできそうな気がしたので始めてみました。その方にもとても喜んでいただいて」

この試験的に始めた取り組みをもとに、「保育園留学」として事業化。都市圏に暮らす子育て世帯を中心に注目を集め、2021年11月のリリース以降、400件近い問い合わせと、100件以上の申し込みがあるのだとか。

保育園留学で目指しているのは、厚沢部町との「超長期的な関係人口」づくり。

厚沢部の子どもとして暮らした経験が、心のふるさととして拠りどころになるように。農産物を買ったり、旅に訪れたり。すぐに効果が現れなくとも、コアなファンを地道に増やすことが、町の未来にもつながっていくはず。

移住を前提にしない事業って、なんだかめずらしい気もします。

「僕は厚沢部の出身ですけど、正直、地元でなにかしたいと思って働きはじめたわけではないんですよ。ただ、どんどん人が減っているのは感じていて。自分の子どもが20歳になったとき、このまちはどうなっているんだろう、と考えるようになりました」

「同時に、あまりに移住に答えを求めてすぎていないかと思う自分もいて」

どういうことでしょう?

「日本全体が人口減少しているなかで、移住者を呼び込んで人口を増やしていくことには限界がある。そもそも、人口減っていま目の前にいる子どもたちにはあんまり関係ないよなとも思っていて」

「まちのことを知って、このまちがいいから住みたい、働きたいと思うような子どもを育てることのほうが、より本質的だと思うんです」

保育園留学がはじまって以来、まちに暮らす子どもたちにも変化があったという。

数週間ごとに入れ替わり立ち替わり子どもがやってくる状況で、「次の子が来たら◯◯して遊びたい」など、自発的に行動する子が増えている。

「子どもたち自身がやりたいと思って動いているから、留学生にはすごくウェルカムな雰囲気で。まちの子どもたちのコミュニケーション能力、かなり上がっているんじゃないかな、と先生たちも話しています」

外からやってきた人にも、地域の人にも良い影響を与えてきた保育園留学の取り組み。

地域のことを学ぶ地域魅力化プログラムと絡めることで、地元で生まれ育った人も、外から来た人も「厚沢部に暮らしたい」と思えるまちづくりをすすめていきたい。

「保育園留学の問い合わせのなかには、小・中学生の兄姉を連れて留学したいという声もあります。たとえば夏休みに、幅広い年齢の子どもたちが参加できる魅力化プログラムを実施できれば、彼らを受け入れる場にもなる。地元の子どもたちにとっても、ほかの地域のことを知る貴重な場になるんじゃないかな」

子どもたちが楽しく地域のことを学び、将来についても思いを馳せるには、どんなものがあればいいか。詳細はまだまだ決まっておらず、新しく加わる人とともに考えていきたい。

地域のことは木口さんに頼りつつ、まちの人たちを巻き込んだプログラムの企画・運営については岡本さんからノウハウを教えてもらうこともできると思う。

たとえば、特産のグリーンアスパラや、厚沢部が発祥と言われているメークインなど。農業が盛んな環境を活かして、野菜のブランド化を目指すプログラムをつくってみても面白いかもしれない。

「こうしてほしい、みたいな要望は押し付けたくないと思っています。大切なのは地元の子どもたちのためにできることってなんだろう、という意識で。そこをぶらさず、対話しながら一緒に企画していけたらいいですね」

すると、隣で聞いていた岡本さん。

「厚沢部町は、やりたいことに挑戦させてくれる場所だと感じていて。ほかのまちで提案したら『前例がないからダメ』って跳ね返されることも、一度はやってみようかと寄り添ってくれる印象があります」

「それに甘えず、やりたいことに対する背景や目的をちゃんと共有できるような、プロセスを大事にできる人に来てほしいです。教育の経験はなくてもいい。やる気や興味はあるけれどなにから始めていいかわからない、そんな人にこそ合うんじゃないかな」

 

「まずは町が出資している第三セクターに入って、地域のことを知る期間があってもいいね」「地域の人と仲良くなるために、交流の時間を設けてみてもいいかも」

どんなふうにすれば、新しく加わる人と気持ちよく、良いプログラムをつくっていけるか。取材中、木口さんと岡本さんで何度も意見を交わし合っているのが印象的でした。

ともに学び、つくっていく。そんな覚悟と、懐の深さを併せ持った人たちだからこそ、ここで働くことに喜びを感じられるんじゃないかと思いました。

(2022/5/30取材 阿部夏海)
※撮影時はマスクを外していただきました。

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