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エコハウスづくりは
これからの建築家の
新しい生き方・働き方

※日本仕事百貨での募集は終了いたしました。再度募集されたときにお知らせをご希望の方は、ページ下部よりご登録ください。

断熱性の高い建物。それは環境に良いだけでなく、夏涼しく、冬暖かいので、健康的で心地よい暮らしも実現できます。

環境や建築という領域を超えて、環境とともに生きる。エネルギーまちづくり社は、新しい「これからのライフスタイル」をつくっている会社だと思います。

今回募集するのは、エコハウスをつくる設計士・デザイナー。設計だけではなく、建物が使うエネルギーや性能のシミュレーションを専用のソフトで行います。

そして併せて募集するのが、ディレクター。ディレクターの仕事は幅広く、ワークショップのオーガナイズやエコタウンづくり、広報など。すべて一人で担当するのではなく、メンバーと一緒に進めていきます。

最近は、建築家がほかの領域に進んでいくことも多いです。いろいろな経験が求められているので、これまで建築やデザインに関わりがない方も、ぜひ続きを読んでください。

東京タワーのすぐそばにある芝公園駅。

地下鉄の出口を上がり、大きなビルに囲まれた通りから小道に入って、歩くこと3〜4分。5階建てのビルの2階に「エネルギーまちづくり社」はある。

階段を上がってドアをノックすると、代表の竹内さんが明るく出迎えてくれた。

竹内さんはエネルギーまちづくり社をつくる前から、「みかんぐみ」という建築ユニットを立ち上げたり、大学で建築のデザインを教えたり、建築界で長年活躍されてきた。

みかんぐみは、約25年前に竹内さんが同世代の若手の建築家仲間と一緒に立ち上げた事務所。

若手の建築家が有名になるには著名な建築家の事務所に入って、そこで学びながらコンペで勝ち上がるというのが一般的な流れだった。しかしコンペに参加するにもお金がかかることから、若手の建築家は一人の力ではなかなか挑戦できない。

みんなで話をしながら新しいものをつくってみたい。

そんな考えを持つ若手の建築家が5人集まって、一緒に立ち上げたのがみかんぐみだった。

「はじめは5人で意見がまとまるのかなって思ったんですけど、それぞれがやりたいことを同時に成立する形を考えてみたら、意外とあったんですよね」

普通の設計事務所が考えることをやってもコンペでは勝てない。それなら極端なアイデアを形にしてみようと考えたのが、1995年に行われたNHK長野放送会館のコンペの作品。

重要な放送機能の部屋を地下に配置し、1階を市民の憩いの場に。地下は建築法規の制約も受けにくいためプランに自由度が生まれ、1階は隣接する公園から連続的に続く空間となり、外に開かれた場所となった。

「5人でやると自分の主張と少しずれていても、最終的にやりたいことはきちっとできていくみたいな感覚が面白かったです」

その後、2006年ごろから山形にある東北芸術工科大学で建築を教えることになった竹内さん。東京の大学と全く違う環境の中で、ここでしかできないことは何だろうと考えた。

大学時代、建築に加えてエネルギーについても学んでいたことから、山形にある豊富な木々を使えば昔ヨーロッパで見たエコハウスをつくれるんじゃないかと考えた。

2010年に東北芸術工科大学が山形県と一緒に取り組んでできたのが、「山形エコハウス」。全国で建設された20のエコモデル住宅のうちの一つで、低炭素社会における住宅の未来がどんなものか、具体的な姿を追求したものだった。

地元の木材を建材として使い、太陽光などの自然エネルギーで電気をまかない、寒い山形でも室内の熱が逃げないよう断熱材を厚く入れた。

「壁に30cm、屋根に40cmの断熱材を入れているんです。家を布団で巻きつけている感じですね。図面を描くときはとんでもないものになると思ったんですけれど、つくってみたら意外ときれいにおさまりました」

エコハウスをつくってみたものの、これからどう活かしていけばよいかはよくわからなかった。

そのころ、竹内さんは「HEAD研究会」という建築や不動産業界の人たちが集まる勉強会に参加していた。そこで日本のエネルギー使用の約3分の1を占める建物と住宅をつくる建築家たちに、もっとエコハウスについて知ってほしいと感じる。

断熱に関する勉強会や建材や材料の展示会を行い、エコハウスは原子力発電所にも代替するものだと竹内さんは講演した。

東日本大震災の6日前だった。

「コンセントの向こう側は電力会社の話だって僕も思っていたんです。でも震災が起きて生活に必要なエネルギーがこんなに簡単になくなってしまうなんて大変だと思いました」

震災後は建築をしないで国会前で脱原子力を訴えるデモにも参加。しかし政治で世の中の仕組みを変えて、エネルギー問題を解消していくのは難しいと感じる。それならエコハウスをもっと世に広めていこうと舵を切った。

エコハウスなら少ないエネルギーで住む人が健康で快適に過ごせる。エコハウスが集まるエコタウンが形になれば、資源やお金が循環し持続可能な社会につながっていく。

環境やエネルギーに配慮した建築とまちづくりをしていこう。そんな思いを持つHEAD研究会の仲間と竹内さんがつくったのが「エネルギーまちづくり社」だった。

エネまち社ではエコハウスづくりを地域の工務店に提案したり、一緒に設計したりした。あとは行政とエコハウスが集まったエコタウンづくりや、一般の人がエコハウスについて学べるオンラインスクールなども行っている。

「コンピュータで計算して『エネルギーの消費量は何キロワット以下にしましょう』というようにエコタウンのルールを決めたりもします」

大切にしているのは、エコハウスだからといって性能のことばかりにならないこと。

「断熱材を厚くして小さい窓をつけて、暖かい空気が逃げない家なら誰だってつくれます。でも住む人にとって窓が小さな家が快適だとは限らないですよね」

大きな窓から外の景色を見られたらやっぱり気持ちがいい。

そんな思いでつくったのが「山形エコタウン」。写真を見てみると、開口も大きいから、出入りするごとに空気が入れ替わってしまうように感じられる。

「雪国によくある風除室が入り口にないんです。でも、そんなに室内が冷えないんですよ。それに玄関が広いとキャンプ道具や自転車を置ける良さもありますね」

エコハウスは家全体が十分にあったまっているから、部屋ごとの間仕切りに必要な壁や柱をつくる費用も軽減できる。結果的に工事費用も少なくできた。

またここのエコハウスは「PPA」にも取り組んでいる。

PPAとは敷地や屋根などのスペースを提供し、事業者が太陽光パネルを設置することで、費用負担なく、再生エネルギーの恩恵が受けられるというもの。

すでにエコタウン内ではエネルギーの自給自足ができているのだとか。

太陽光パネルで発電できれば電気代もかからない。電気自動車ならガソリンの代わりにもなるし、災害時用の蓄電もできる。

断熱は環境に良いだけでなく、暮らしの質をあげる。

まさに「断熱は生き方だ」という話をされているのが、竹内さんとエネまち社を一緒に立ち上げた内山さん。

駅ビルや商業施設の建築などを多数手がけ、竹内さんと同じく建築業界の一線に立ってきた内山さんは、2010年ごろから住宅のリノベーションなども手がけるようになっていく。

リノベーションで空間をカッコよくするだけでなく、より良い空間を模索している中で、断熱に注目していった。

「同じ部屋に住むなら暖かいほうが住む人にとって絶対にいいと思ったんです。たとえば古いワンルームをおしゃれな感じにするリノベーションでも、予算ギリギリの中でこっそり断熱材を入れてもらったりしましたね」

「HEAD研究会でも『断熱って結局は体感することが大事だよね』って話をしていたんです。だから断熱を体感できるような場所が必要だと思っていて」

2011年から「南房総リパブリック」というNPO法人に参画し始めると、地域にある空き家の解消について南房総市から相談を受ける。そこで市に提案をして行ったのが「断熱ワークショップ」。竹内さんも内山さんと一緒に取り組んだ。

参加者たちは断熱について座学で学んだあと、断熱していない空き家に自分たちで断熱材を入れていく。

寒い時期だったので、工事を進めていけばいくほど室内が暖かくなっていく。断熱の良さをその場で体感できるワークショップだった。

「畳の下にビニールシートを敷いて4ミリくらいの断熱材を入れるだけで、床下からの隙間風が抑えられる。体感が全然違いましたね」

参加者は実際に作業することで、「自分でもできる」と断熱工事のハードルを下げられる。そして断熱の効果を体感することで、断熱の必要性の理解にもつながる。

いずれは参加者が自宅などを断熱改修するようになれば、社会全体で使われるエネルギーの量も確実に減っていく。

エネまち社を立ち上げたあとは、学校で生徒と一緒に学校の断熱を行い、断熱の大切さや暖かい暮らしを送るメリットを伝えることも行っている。

「今はそういうワークショップを僕と竹内さんがやってますけど、そろそろ若い人にやってもらったほうがいいんじゃないかって話をしているんです」

エネまち社は一般の人向けに「エネルギーまちづくり塾」などのセミナーも開催している。今回募集するディレクターはそれらのワークショップの企画や運営も担ってほしい。

一般の人には断熱の重要性や断熱改修などの知識を伝えたり、建設業界の人にはエコハウスづくりに必要なノウハウを提供したり。

新しく一緒に働く人は設計や建築の仕事に携わっていた人ならその経験を活かせるし、そうでない人でも、環境問題やエコハウスなどの断熱を広めていきたいという思いがある人は活躍できそう。

設計をやっているけど、なにか物足りないと感じている人や、断熱のシミュレーションを地道にパソコンで計算することが好きな人にもおすすめ。

エネまち社の取り組みを多くの人に知ってもらい、もっと広めていく必要があると内山さんは感じている。

「日本に今ある5000万戸くらいの家を全部断熱していかないと、本当の意味で脱炭素社会は来ない。でもそれってすごく大きな課題で難しいんです」

「さらに日本人の半分は賃貸に住んでいるんです。家って人権を支えるセーフティーネットみたいなものだと思うから、賃貸でも暑くも寒くもなくて心地よく過ごせる断熱が大切だと思うんです」

そこには「居住福祉」という内山さんの思いがある。

断熱という生き方が日本全体に広がれば、社会全体の幸福につながっていく。

建築から広がって、家づくりから新たなライフスタイルづくりまで。

みんなが心地よい生活環境をつくっているのがエネまち社なんだと感じました。

同じ思いを持つ仲間が増えれば、難しいことでも一歩一歩実現につながっていくと思います。気になる方はぜひご連絡ください。

(2022/5/17取材 小河彩菜)

※撮影時はマスクを外していただきました。

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