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最近、いろんなところで「ととのう」という言葉を耳にするようになりました。きっかけはサウナブームでしょうか。体の循環を正しく整えることで、身も心も健やかに保つ。それを日常で実践している人も、増えているんじゃないかと思います。
美容の業界でも、その考えに基づいたサービスが広がりつつあります。
一時的に強い効果を発揮する化粧品を取り入れるのではなく、健康的な肌や髪が育つ土壌を整えていく。そんなコンセプトのサロンが、この秋、京都にオープンします。
名前は「AMATORA SPA(アマトラスパ)」。ヘッドスパをメインに、髪のコンディションを高める施術メニューを提供します。

サロンで用いるシャンプーやトリートメントは主に株式会社Amatoraの、素材にこだわったヘアケア製品。
お客さんの髪や肌はもちろん、施術者の手荒れにも配慮した処方の製品です。ここから一緒に、無理のない美容のあり方を考えていきます。
お店はまだオープン前なので、今回は東京・外苑前にあるシェアサロンQnoirの一室を借りて話を聞かせてもらうことに。
AMATORA SPAの経営者で、プロジェクトの発起人でもある美曹(みそう)友紀さんは、元ヘアスタイリスト。ビュートリアムという、業界でも有名なサロンで働いていたとのことで、少し緊張しながら足を運ぶ。
到着すると、美曹さんは入り口近くで待っていて、「今日はよろしくお願いします。私もすごく緊張しているんですよ」と、柔らかい物腰で話しかけてくれた。

当時はメディアの影響もあり、美容師という仕事が注目を集めていた。華やかな時代の空気のなか、20歳から9年間サロンで仕事を続けた。
その後、30歳を機にキャリアチェンジ。父の経営する会社の事業を引き継ぐ形で、10年間、人材派遣、清掃、ビルメンテナンスなどの事業に携わってきた。
美容の仕事を離れることに迷いはなかったんですか。
「もちろん美容の仕事は好きだったし、いつかまた違う形で美容の仕事に携わりたいという気持ちもあって。だからこそ、しっかり経営を学びたかったんです。美容とは異なるさまざまな業界の人と関わり、視野を広く持てるようになった今、あらためて、長年の目標だったサロンの立ち上げに踏み出すことにしました」
コンセプトを練るなかで、美曹さんの心に浮かんできたのは、スタイリスト時代からよく知る株式会社Amatoraのヘアケアだった。

ヘアケアの基本であるシャンプーとトリートメントをはじめ、さまざまなヘアケアアイテムをとことん追求する株式会社Amatoraの姿勢は、業界でも“オタク”と評されるほどだという。
「Amatora製品をサロンでお客さまにおすすめすると、ほぼ100%感謝の言葉が返ってくる。それくらいリピート率の高い製品でしたし、私たち施術者も、手荒れがやわらぐのを実感していました」
「あるときシュラメク社長に、『Amatoraは直営サロンを開かないんですか』って質問したら、『自分たちはあくまでもメーカーだから』っていうお答えでした。それなら、自分がそれを実現していこうと思って、株式会社Amatoraのサポートを得て、今回のAMATORA SPAを立ち上げることにしたんです」

頭皮マッサージで土壌を整えるのはもちろん、髪のコンディションを守りながらカラーリングを続けられるような、サブスクメニューも考えていく。
ロケーションは、美曹さんの地元・京都の中心部、阪急烏丸駅の近く。オフィス街のそばには、最近新しいホテルやギャラリーもできて、このエリアを訪れる人の層も少しずつ変わりつつある。

最近は女性だけでなく、男性の利用者も増えているヘッドスパ。
脳疲労の予防と解消、顔のリフトアップ効果や老廃物のデトックス、不眠の改善、頭痛緩和など、いろんな効果があるらしい。
株式会社Amatoraの製品は、髪質や使用感の好みに合わせて数種類から選べる。ヘッドスパのメニューもそれに合わせていくつか用意する予定。
「なかでも“Amatora mezzoforte”というブランドは、アーユルヴェーダのメソッドに基づいて開発されたもの。事前にライフスタイルなどについてのカウンセリングをして、ピッタ、カパ、ヴァータという3つの体質タイプ別に合うメニューを考えていきます」
「あとはシロダーラといって、額にゆっくりとオイルを垂らすアーユルヴェーダのスパ施術があって。そういうちょっと非日常な体験も含めて、ゆっくりコンディションを整えられるサロンにしていけたらいいなと思います」
専門用語がたくさん出てきたので、ちょっと整理していいですか。まずアーユルヴェーダって、なんでしたっけ。
「アーユルヴェーダは、直訳すると生命哲学っていう意味で、いわば世界最古の伝統医学ですね。発祥はインドですが、それがいろんな国に伝わって、漢方や薬膳などのルーツになったとも言われています」
補足してくれたのは、AMATORA SPAのブランディングや広報を手がけているフリーランスの山田梨加さん。

「私は以前から、ヨガを通してアーユルヴェーダに興味を持ち、英国アーユルヴェーダカレッジ日本付属校認定 Ayurveda Life Stylist 取得していて。今回美曹さんが、お店でアーユルヴェーダの施術をやるって聞いたとき、思わず『大丈夫?めちゃくちゃ奥が深いよ』って答えてしまったくらい、本当に奥深い世界だと思います」
どこか神秘的なイメージもありますよね。ちょっと、さわりだけ教えてもらえますか。

「たとえば食生活でも、アーユルヴェーダでは米とお酢は体が嫌がる食べ合わせとの説もありますが、小さい頃から問題なく消化されているものや、その国の主食などで慣れ親しんだものは大丈夫っていう臨機応変さもある。絶対的な戒律みたいなものではなくて、基本を知れば、そこから自分で応用していけるところが、私はいいなと思っています」
アーユルヴェーダについては、株式会社Amatoraからトレーナーの方が指導に来てくれる予定なので、スタッフは基礎から学んで身につけていくことができる。
ただ、お客さんに伝える言葉が上辺のものにならないように、自分のライフスタイルにも活かしたいという意欲があるといい。
「サロンには物販のスペースも設けて、Amatoraの製品はもちろん、美髪を育てるための情報やアイテムを集めて届けていけたらいいなと思っています」

今回の募集で入る人は、オープニングスタッフだからこそ、オペレーションや空間づくりなど、個々の気づきや視点を生かせるチャンスも多い。
ゆくゆくは、スタッフの人柄がお店のカラーになっていくこともある。
あらためて美曹さんに、このAMATORA SPAでの働き方について聞いてみる。

AMATORA SPAはまず、美曹さんが経営する人材派遣業の会社「ポスト24」の一事業としてスタートする。新しく入るスタッフもここの社員という形。
ゆくゆくは店舗事業を独立させて分社化したり、新たな土地に支店をつくったりする道もある。そのノウハウは、美曹さんが一度キャリアチェンジを経験したことで得たもの。
「美容の業界って、足のむくみや手荒れなど、体調を崩してリタイアする人も少なくないんです。AMATORA SPAは、通常のサロンより立ち仕事の割合も少ないですし、一度美容の現場を諦めた方にもチャンスがあるんじゃないかと思います」

「特に若手のスタイリストにとって、収入は大きな悩みだと思います。今は3年修行したら、独立してフリーランスになるのが主流になっていて。“面貸し”っていうんですけど、いろんなサロンで場所だけ借りて施術する、ホッピングのような働き方が増えています」
それは、収入を上げる近道であり、新しい働き方のひとつ。
一方で、スタイリストがサロンの顔としてお客さまを迎え、関係を育んでいく、昔ながらのスタイルも大切にしたい。と、美曹さんは言う。

美容の仕事で一人前になるまでには、長い時間をかけて技術を習得する必要がある。
だからこそ、その技術を長く活かせる場をつくりたい。本来あるべき美容の仕事の形、生き方を伝えていきたい。その言葉には、美曹さん自身が現場で体験した実感がこもっている気がする。
「スタッフのあり方、接客って、なかなかマニュアル化できないものだとは思いますが、やっぱり、お客さん目線に立った思いやりを大切にできる人が入ってきてくれるといいですね」
手で人に触れ、コミュニケーションを通して、髪や体質の悩みと向き合う仕事。
人の内側にある、優しさや美しさを引き出すためには、まずスタッフ自身の健やかなライフスタイルが欠かせない。
髪も身体も、仕事のキャリアも、無理なく自然に育んでいけるように。そんな目標に向かって、AMATORA SPAは動き出そうとしています。
(2022/2/9 取材 高橋佑香子)
※撮影時はマスクを外していただきました。