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自然公園を舞台に
まだ見ぬ自然の魅力を
つくりだす

※日本仕事百貨での募集は終了いたしました。再度募集されたときにお知らせをご希望の方は、ページ下部よりご登録ください。

小さいころ、家の近くには草むらやいろんな木が生えていて、バッタやトンボを捕まえて遊んでいました。

ほかにも笹の葉っぱで船をつくって川に流したり、甘酸っぱい桑の実をお菓子代わりに食べたり、楽しい記憶が残っています。

いつからか、それらの場所は住宅や舗装された道に。人の都合によって自然が失われたその場所は、便利になった反面、無機質な景色になってしまったと思います。

今回紹介するのは、人の暮らしのみを優先するのではなく、自然も共存できる社会を目指して事業を展開しているECCOMです。

NPO法人ECCOM(エコム)は、ビジネスを通して自然の魅力を創造する団体。

森林公園の指定管理、エコツアーの企画・運営、地域活性化のためのコンサルティング・情報発信など。自然にまつわる事業を幅広く手掛けています。

今回は、三重県伊賀市にある上野森林公園で働くスタッフを募集します。

ECCOMが指定管理者として運営しているこの公園。森林エリアのほか、湿地やため池など、さまざまな自然が広がる場所です。

新しく入る人は、園内の管理はもちろん、自然体験型イベントの企画・運営や広報なども担っていきます。

まずは、ECCOMの成り立ちから知ってほしいと思います。

 

名古屋駅から電車で30分ほど、三重県桑名駅で降りる。

駅のロータリーで待っていると、ECCOMで事務局長を務める内山さんが迎えてくれた。車に乗せてもらい、1時間ほどかけて上野森林公園を目指す。

「育ちは東京で。祖父母が三重に住んでいました。夏休みになると、こっちに来て川や山で遊んでいました」

「それがすごく楽しかったんですよ。中学生のころは、夏休み初日から三重に来て、8月31日の夜行バスで東京に帰る、みたいなこともしていました」

子どものころから自然が好きだった内山さん。大学では農学部に入り、その後は東京の自然系財団法人で働いた。

「機会があったら、三重でも自然に関わる仕事がしたいと思っていて。そんなときに、ECCOM立ち上げの話をもらったんです」

組織が設立されるきっかけは、「日本カモシカセンター」の閉園。

カモシカセンターは、国の特別天然記念物であるニホンカモシカをはじめとするカモシカ専門の民間動物園。三重県菰野町(こものちょう)にある御在所岳(ございしょだけ)の山頂にあった。

動物園・博物館の役割だけでなく、地域の観光拠点にもなっていたこの場所。

なんとか同じように地域に貢献できる活動を継続できないか。

そんな想いから、2007年にECCOMが設立される。

現在行っている事業は、大きく分けてふたつ。

ひとつは、カモシカセンターの跡地にできた自然学校の運営や、三重県民の森、上野森林公園の管理など。調査・研究や教育を通して、自然環境の保全に取りくむ博物館事業だ。

もうひとつは、地域内のさまざまな資源を見つけ、新たな価値を生み出すことで、人と自然をつなぐまちづくり事業。

地域の特産品を扱うECサイトの運営や、三重の自然・生きものなどにフォーカスしたオリジナル商品の企画・開発。そして、ミュージアムショップの運営なども担っている。なかには、子会社を立ち上げて進めている事業もあるそう。

自然公園の管理・運営にとどまらず、収益のことも考えて幅広い事業を展開しているECCOM。

内山さんは、どんな想いで行動し続けてきたんだろう。

上野森林公園に到着後、あらためて聞いてみる。

「自然系の仕事は、働きたい人に対して募集が少なく、やりがいに頼ってしまっていることが多いんです。『好きな自然に関わる仕事をしているから、給料はこのぐらいでもいいよね?』みたいな」

「この現状を変えていきたい。そんな想いが根底にあります。自然に関わる仕事でも、きちんと稼げるようにする。自然に関わる仕事を増やす。それが結果として、自然に対する正しいアプローチになっていくと思うんです」

正しいアプローチ、ですか?

「自然がどんどんなくなっているのは、みんなわかってる。理由は、自然に対して価値が見出せていないから。山として存在するよりも、開発したほうが便利だし、お金も生まれるよね?って」

経済的価値が優先されて、一方的な関係になってしまった人と自然。

そうではなく、人と自然が共存できる関係をつくっていきたいと、内山さんは考えている。

たとえば、自然公園を舞台に展開する体験プログラムを昇華させて収益化を図ったり、昆虫標本づくりキットを商品化したり。自然環境との関わりを産業にして、自然に対して新たな価値を生み出す。そうすることで、自ずと自然に対する見方も変わってくるはず。

そうした想いは事業を続ける根っこにありますね、と内山さん。

 

今回募集するのは、上野森林公園で働くスタッフ。

施設の管理はもちろん、公園をフィールドに新たな自然の魅力を生み出してほしい。

次に話を聞いたのは、上野森林公園で所長を務める神名(しんめい)さん。

「普段は、県とのやりとりをしたり、教育プログラムや各種イベントの企画・運営をしたり。公園内の整備、園内の掲示物を季節に合わせて制作するなど、いろいろやっています」

北海道や埼玉の自然公園でネイチャーツアーガイドとして働いた後、より大きな裁量をもって働ける環境を求めて、4年前からこの場所で働いてきた。

「本当に日々、さまざまなことを企画させてもらっていて。この公園の資源を最大限に活かして、訪れる人に満足していただけるように工夫しています」

これまでに神名さんが企画・運営してきたのは、乗馬しながらお花見できるイベントや、ゲルと呼ばれるモンゴルの移動式住居をみんなで立てる企画など。上野森林公園で初となるユニークな取り組みも、積極的に行ってきた。

「お楽し森の学校」という全5回の小学生向けプログラムも、そのひとつ。

上野森林公園を舞台に、子どもが自然に関する知識や技術を学びながら、自由に想像をふくらまし、その想像を自ら形にする体験を通して、主体性や生きる力を育んでほしいとはじめたもの。

はじめに植物や虫などの知識、次に木の伐り方や、ロープの結び方などの技を伝授。その後は、子どもたち一人ひとりが考えた「楽しい!」と思うことを、試行錯誤しながら自分たちの力で森のなかに形作っていく。

最終的にはふたつのチームに分かれて、ツリーハウスと弓矢のゲームコーナーが完成したのだそう。

「子どもたちはあれしたいこれしたいという感じで、1日中飽きることなく動き回っていました。今年の4月にワンクール終えたばかりなんですけど、『自分のペースで進んでいいという感じがよかった』『こんなことが自分にできると思ってなかった』というような感想をもらうことができて」

「やってよかったなって思いましたし、この体験が子どもたちの人生で少しでも役立ってくれたらうれしいですね」

継続的につなげていきたいプログラムとのことで、自然だけでなく人にも興味を持てる人がいいと思う。

現在、上野森林公園では年間100本以上のイベントを企画・運営している。

新しく入る人もイベントに関わる機会は多いので、まずは、既存のプログラムやイベントの運営を補助しつつ、お客さんとの関わり方や運営のコツを覚えていくといいと思う。

ただ、あくまでもイベントは手段のひとつ。自然公園のもつポテンシャルを活かして、自分は何を成し遂げたいのか、新しく入る人に任せていきたい。

過去にはECCOMで働きつつ、デザインのスキルを活かして会社を立ち上げた人もいるので、きっと参考になるはず。

「内山から細かい指示はなくて、僕たち現場に多くの裁量を委ねてもらっています。それは僕たちがトップダウンではなく、メンバーそれぞれが得意な分野でリーダーシップを発揮し合う組織を目指しているから」

「主体性を持って働けないと、日々の業務をこなすだけになってしまうけれど、自分で実現したいことがある人にとっては挑戦しがいのある環境だと思います」

今後、上野森林公園では、地域のプレイヤーや行政と連携したイベント・プログラムなどの実施に力を入れていきたい。

自然の価値を地域の大人たちにも再認識してもらえるし、多くの人を巻き込むことでまちの活気につなげていく。

「公園での活動を通して、訪れた人に自分では気づきにくい、身近な自然の面白さや魅力を発見していただきたいんです」

「そうすることで、今度は自分が住んでいる近くの自然にも興味が持てるはず。身の回りにある自然の魅力や価値に気づいてもらえたら、きっと自分のまちに誇りを持てるし、自然に関わる取り組みもきっと増えていくと思うんです」

 

主体的に動き、自分で仕事をつくっていくことが求められる今回の募集。

自分なりに考え、形にして、お金をもらう。それは、働く上での自信につながると思うけれど、実際に働くスタッフはどんなことを感じているのだろう。

ガイドスタッフの渡辺さんが、率直な思いを話してくれた。

「これまで自然観察会っていうプログラムは無料だったんですけど、最近参加費を頂戴することになったんです」

「お金をいただくことで、雑な仕事はできないという気持ちになるじゃないですか。プレッシャーは感じますし、そのお金に見合った満足度を提供できるように意識しています」

たとえば、どんなことをしているんですかと聞くと、ファイルの中からいくつか制作物を見せてくれた。

「これは、トンボの羽の模型をつくったときのものですね。トンボの羽って実は平らじゃなくて、ギザギザしてるんです。平らな羽も用意して、あおいでみると送られてくる風の量が違うよねとか」

「ビンゴカードもつくりました。数字の代わりに、生きものの写真と名前が書いてあって。子どもたちは、観察会中に見つけたり捕まえたりした生きものに丸をつけて、列を揃えていきます。最初にビンゴできたお子さんには、ちっちゃな虫の標本をプレゼントしています」

サービス精神旺盛で、生きもの好きな渡辺さん。取材中も、カエルの餌やりやってみますか?と気さくに声をかけてくれた。

「私を目当てに公園を何回も訪れてくれるお子さんもいて。虫取りに来た子が虫かごケースを持って窓口に来て、こっちを覗いているんです。取った虫を見せにきてくれて。可愛らしいですし、うれしいですね」

最近では、イベントに参加していた子どもの親御さんに誘われて、海釣りに連れて行ってもらったとのこと。

公園を利用される方との交流も、この仕事の醍醐味だと思う。

現在渡辺さんが担当しているのは、生きもの好きを活かしたイベントの企画・運営のほかに、収支管理やSNSの更新、定期的な公園管理の仕事など。草刈りや倒木の処理など、体力が必要な場面もある。

本物を見てもらいたいという思いから、昆虫の標本をつくったり、蛇の剥製をつくったりすることも。

「自分の好きな自然に関わっていられる仕事って、なかなかないと思うんです。やることは多いですけど、自由にやらせてもらっていますよ」

ビジネスを通して自然の魅力を創造するECCOM。

ここで働く人たちは、好きなことも、お金を稼ぐことも、どちらにも妥協しないできちんと向き合っていると感じました。

人も自然も、笑顔になる社会を目指して。

(2022/8/1取材 杉本丞)

※撮影時は、マスクを外していただきました。

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