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日々食べるものをどのように選んでいくか。
いろんな考え方がありますが、一番信頼できるのは、自分や大切な人の体に入るものを、自分でつくることなのかもしれません。
農業に携わってみたい。つくったお米や野菜を多くの人に楽しんでほしい。地域の人と一緒にいろんなことをやってみたい。そう思う人に今回の仕事をぜひ紹介したいです。
兵庫・丹波。
栗や黒豆などで有名なこの地域に、来年の4月「里山ホテル かねのね丹波」という宿がオープンします。
リノベーションした築110年の古民家を中心に、趣の異なる5部屋をつくる予定。
今回募集するのは、宿を運営する支配人とサービススタッフ。宿の運営をしながら、約2000坪ほどある農地を使って野菜や米づくりにも取り組みます。
育てたものを宿のお客さんに提供したり、自分たちでも食べたり、加工して販売したり。古民家宿と農地を活かすことができればいろんな可能性が広げられるはず。
経験はほとんどなくても大丈夫。オペレーションは宿の運営会社であるトゥルースが一緒に組み立ててくれるし、農業についても地域の人の手を借りながらチャレンジできる環境です。
東京から新幹線に乗って新大阪駅へ。特急こうのとりで1時間20分ほどの柏原駅で降りる。
そこから車で10分ほど東へ。両側に山が迫り、川沿いの道を登っていくと、工事中の建物が見えてきた。
「真ん中の建物は築110年の古民家、奥にあるのは蔵と離れです。残せる建材は活かして、とくに人目につく部分は昔の風合いが感じられるつくりにしたいと思っていて」
「あと二棟はコテージを新築でつくっていて、そちらも古民家風の建物にする予定です」
迎えてくれたのは、トゥルース宿泊事業部の統括マネージャーを務める笹西哲矢さん。
工事が進むなか、まずは敷地内を案内してもらう。
「母屋は空き家になってから数十年放置されていたので、工事前はかなりボロボロだったんです。フロントとレストランとして、オープンのときにどうなるか、すごく楽しみですね」
「新築のほうは、ペットと泊まれる部屋にする予定です。まだまだこの辺りでは数が少ないので、愛犬家の皆さんに喜ばれると思うんですよ」
新築コテージの屋根には、近隣の公民館で使われていた赤瓦を再利用。今では生産も終了しており、手に入らないとても貴重な瓦なのだとか。
ペットとの宿泊は、需要がありそうですね。
「うちも犬を二匹飼っているんですが、人と犬が双方にリラックスして楽しめる施設はまだまだ少ないと感じているんです」
「敷地内にはドッグランもつくる予定なので、たとえばワンちゃんと泊まりに来て、一緒に遊んだり。畑や田んぼも整備するので、その場で採ったものを食べるような収穫体験もできますよ」
ペットと宿泊できること、そして豊かな農地を活かした体験が、この宿の特徴。
今年は工事が始まって栽培していないけれど、去年までは地域の人と協力してお米や黒豆、玉ねぎやニンニクなどをつくっていたそう。
「古い建物をリノベーションして宿泊施設にしている例は、いろんな地域にあると思うんですが、同じ敷地内に農地があるのはめずらしいんじゃないかなと思っていて」
「農業用地って、新しく手に入れたいと思っても、法律の関係でなかなか難しいんですよね。広い農地での体験と、古民家を活かした宿泊施設、愛犬と過ごす施設の3つの要素を兼ね備えた場所は、周辺の地域ではほとんどないと思います」
ターゲットは、犬連れ家族や都会で忙しい日々を過ごしている方。一泊の価格は大人ひとり3〜5万円ほどを想定している。
農家民宿と、ラグジュアリーな古民家宿をミックスしたような場所だろうか。
「非日常の空間を楽しんでいただいて、リフレッシュしてもらえる施設にしたいです。加えて大事だと思っているのが、この地域の人に『この施設ができてよかった』と思ってもらえることだと考えていて」
「たとえば、地域の人と一緒に商品開発をして、普段は当たり前に口にしている野菜とか、丹波三宝と呼ばれている栗、大納言小豆、黒豆なんかの良さを、あらためて感じてもらう。僕たちもその反応を見て、一緒になって地域をつくっているんだなって手応えを感じる。もちろん外から来て下さるお客さんが喜んでくれる。そんな良い連鎖反応をつくっていきたいと思っています」
構想段階から大事にしてきたのは、三方よしの考え方。お客さんにも、地域の人にも、自分たちにとっても、いい影響を生むような宿をつくっていきたい。
敷地をぐるっと案内してもらったところで、腰を落ち着けるために近くのカフェへ。
そもそも、トゥルースはどんな会社で、どういった経緯で古民家宿をはじめることになったのだろう。哲矢さんの奥さんで、トゥルースの代表である笹西真理さんに聞いてみる。
トゥルースは今年で創業18年目を迎える会社。大阪と東京に拠点があり、全国でサービス業やホテル業に向けた教育研修事業をおこなっている。
「私はもともと航空会社に勤めていまして。退職後に飲食店や小売施設の広報・販促のコンサルタントをしていました。そのあと、2005年に独立して立ち上げたのがトゥルースなんです。最初は一人で細々とやっていたんですけど」
広がるきっかけは真理さんが以前勤めていた航空会社が2010年、経営危機に陥ったこと。
そのタイミングで退職せざるを得なかったCAたちのスキルを活かしたいと一気にクライアントと講師の数を増やしたそう。
「うちは一般的な教育研修会社というよりは、クライアントの社内にどっぷり入りこんで、スタッフ教育やオペレーション構築など時間をかけておこないます。働く人を大切にしたいというお客さまだからこそ、中長期的なサポートをさせていただいているのが特徴ですね」
接客の作法から、宿やお店を運営するオペレーションづくりまで。クライアントの業種も依頼内容もさまざまで、たとえば日本仕事百貨でも度々求人をしている、さとゆめや温泉道場といった会社もクライアントなのだとか。
そんなトゥルースが古民家宿の事業を始めるきっかけは、真理さんの祖父が住んでいた古民家を4年前に引き継いだことだった。
「建物自体は、母の代からほぼ放置された状態が続いていて。田んぼは地域の人と一緒にやっていたので、そのために定期的に訪れるくらいの場所だったんです」
転機は2年ほど前。正式に古民家を受け継いでから、手放すか活用するか迷っていたなかで、コロナ禍に見舞われた。
「教育事業をしてきたので、当時の大きな目標がオリンピック関係の仕事だったんです。けれど、オリンピックは延期になり、進めてきたインバウンド関連の仕事もパタっとなくなってしまって。自分たちよりもお客さまの元気がなくなっていくのが寂しかったんですよね」
「いつもの一歩引いた外部講師の目線ではなく、現場の一緒の目線でやりたいとずっと思っていて。考えていくうちに、土地と建物はあるし、自分たちもやってみようかって」
事業を始めるにあたって、事業再構築補助金や金融機関の融資も活用。古民家再生に強い、建築家にも兵庫県の補助事業で出会った。それらのサポートを順調に得ることができたのも、後押しになった。
「プレイヤーとしてチャレンジしてこそわかることがあるんじゃないか、っていう思いはずっとありました。ただ何よりタイミングとご縁ですよね、やっぱり。正直いうと、コロナ禍がなかったらやってないし、犬を飼っていなくてもやってない。さらに助けてくれる建築家の先生や、行政のサポート。地域の人がいてくれたからこそスタートできたと思います」
すると、ここで再び夫の哲矢さん。
「実は私も昔、別の航空会社で働いていて、直近では国の観光機関で仕事をしていたんです。なので、宿の存在が地域の活性化につながる事例を、いろんな地域で見てきたんですね」
「新しい人の流れができて、これまで見向きもされなかったところに外国の方が来てくれたりするのを見ると、地域の人も自分たちの住むまちを誇りに思える。そういう事例をたくさん作ってきた。ここまでお世話になってきた丹波でもそれをやりたいなと」
宿ができると、観光客が来るのはもちろん、地域の活性化や雇用にもつながる。地域の基点となる場所になれば、新たなコミュニティができる。
今回募集するメンバーには、そういった地域とのつながりも楽しんでほしいそう。
おふたりに、どんな人に来てほしいか聞いてみた。まずは真理さん。
「経験はあればいいかもしれないけれど、そこまで求めていません。それよりも自分の役割を限定せずに、なんでも面白がってチャレンジしたい人と一緒にがんばりたいです」
「ホテルだけをやりたいっていうより、農業もやってみたいし、ものづくりもしたい。地域の人とも触れ合いたい、みたいな。田舎でマルチに働きたい人には合っていると思います」
部屋数も多くないので、宿のマネジメントというよりは、地域とつながって、丹波ならではの体験をお客さんにどう提供するか、農地をいかして何のものづくりをするか。宿をどう地域の中で活用するか。そんなところから考えられる人だといいかもしれない。
続いて、哲矢さん。
「地方での生活とか農業に興味があるけど、食べていくのには不安があるとか。田舎に住みたいけどやりたい仕事がないとか。そういう人にとってはぴったりかもしれません。お客さまに評価いただいた分、しっかりメンバーに還元するし、充実した田舎生活ができるはずです」
丹波市の中心部から車ですぐの距離なので、暮らす上での不便さはなさそう。車や電車で大阪や京都にも行きやすい。
「ゼロイチを楽しめる人が良いと思う。こんなサービスどうでしょうか、きっと喜んでもらえますよ!と積極的に提案してもらいたい。こんな宿にしたいっていう構想は私たちのなかにもあるんですが、具体的なところは新しく来てくれる人と一緒に考えていきたいんです」
「まずは自分たちが楽しまないと楽しめない。地域に根差した仕事ってまさにそうだと思うので。丹波での生活を楽しみながら一緒に新しい道を開拓していきたいですね。あとは自然豊かな場所なんで、動物好きにはぴったりですよ。パートナーと一緒に働いてもらうのも歓迎です」
0から新しい場所をつくり出すのは、大変なこと。のどかな田舎暮らしだけを想像すると、ギャップがあるかもしれません。
でも、自然のなかで、温かい地域の人と、やりがいある日々を過ごすことで心身ともに健やかでいられる。
一緒に宿をつくり、農業を楽しみ、地域づくりに力を尽くしてくれる人をお待ちしています。
(2022/8/24 取材 稲本琢仙)
※撮影時はマスクを外していただきました。