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20年目を迎えてなお
瑞々しい
わかばのようなお店

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不思議な縁はあるもので。

移住先の長崎・東彼杵(ひがしそのぎ)の山の上、小さなカフェを営むおばちゃんとしゃべっていたら、息子さんが東京や千葉でいくつかのお店を経営しているという。

帰省のタイミングで「近くにいい感じのお店ができたよ」と、そうとは知らない母に連れられ、訪ねたのがそのうちのひとつ、わかば堂でした。

今回はこのわかば堂の店長候補と、調理、パティシエ、ホールのスタッフを募集します。

東京・北千住の店舗は20年目を迎え、お昼時は店の外に列ができる人気店に。千葉・柏の葉で2月にオープンしたお店も、だんだんと賑わってきました。

今年の10月には、ケーキのテイクアウトと器などの生活雑貨を扱うお店「わかば堂製作所」を北千住にオープン。これからさらに新しい人の流れが生まれそうです。

一人ひとりがさまざまな役割を担いながら、自分たちの手でつくっていく。そんな手触りのあるお店だと思います。

 

向かったのは、北千住のわかば堂。駅の西口から歩いて3分ほどで到着する。

路地のなかでもとりわけ細い裏道を進んでいくと、わかば堂が見えた。

開店前のお店の2階で、まずは代表の島川一樹さんに話を聞く。

商売をはじめて、今年で25年になるという島川さん。

この通り沿いの空き物件を活用して、古民家酒場「萌蔵」やレストラン「あさり食堂」、スタンディングバー「南蛮渡来」やバーガースタンド「BOSSA BURGER」、駅の反対側にはカフェ「寛味堂」など、たくさんの店舗を経営している。

コロナの状況下でも、わかば堂の新店舗を柏の葉にオープン。コラーゲン会社とコラボしたお店も銀座ではじめ、さらに10月にはケーキのテイクアウトと器などの生活雑貨を扱う「わかば堂製作所」も立ち上げる。

「飲食店って商圏が狭いんだよね。北千住の店まで世田谷から来るかっていうと、よっぽどじゃない限り来ない。半径十数キロで成り立ってる現状から、ネットを活用して、全国発送もして、ちょっと広げてみようかって。店出すときはいつもワクワクするよね」

もともとは、どんな経緯でお店をはじめたんですか。

「お袋が昔、3姉妹でスナックやってたのよ。いろいろあって、その店は潰れちゃって。代わりに弟とふたりでバーをはじめてさ」

「開店資金は40万ぐらいあったのかな。まあ、看板つけたら終わりだよね。で、こう見えて全然飲まないから、お酒のこと知らないわけよ。最初6本からはじめたの。ジンとウォッカとカシス、あとわけわかんないのを何本か」

ソウルバーと打ち出しつつ、聴ける音楽はCD3枚だけ。それでも看板は立派だったので、お客さんはやってきた。

「でさ、雪国ちょうだい、みたいな。カクテルのね。こっちは…なんですかそれ?ええー!おい、バーだろここ?って。怒るお客さんもいたよ。こんなんで看板掲げんなよって」

たしかに、ごもっとも…。

「でもね、なかには散々言われた次の日に、お酒持って来てくれるお客さんもいて。これ置いとけよ。これでおれのお酒つくって、お金とっていいから。いや、至れり尽くせりじゃないですか! いいからいいから、みたいな」

「やってくうちに、お酒の種類も増えて、レコードも集めて。11〜15時ランチで、ちょっと休憩して、18時から朝5時までバー営業。ずっと働いてた。今考えたら恥ずかしいもの出してたと思うよ。でも徐々にお客さんが来て、1年半ぐらいでお店の形になったんだよね」

勢いそのままに、竹ノ塚で居酒屋を出し、千駄木でハンバーガー屋もオープン。そんな流れのなかで、このわかば堂の物件の相談が舞い込んできた。

「普通の一軒家で、斜向かいは当時ラブホテル。前は今ほど千住も人気なかったし、真っ暗な通りだったからさ。誰も借りる人がいなかったんだよね。でもおれは、だからこそおもしろいと思って」

だからこそ、というと?

「人のいないところに人を集めるって、楽しいのよ。柏の葉もね、すごく静かな場所で、周りの店も5時には閉まる。みんなは人がいないから夜やめときましょうって言うけど、いや、逆だよって。周りやってなかったら、うちが目立つじゃん。そこから流れをつくればいい」

「山奥でも並ぶ店ってあるでしょ? 蕎麦屋とか。だから場所とか関係ない、むしろ立地はいいほう。うちが繁盛してたら、隣の店だって開け出すよ。1〜2年かかってもいい、先導しようって。無から有をつくるってことが、一番むずかしいし、おもしろいんだよね」

気づけば、この通り沿いだけでもお店は5店舗、会社全体では8店舗まで増えた。

あるときから掲げていた“年間10万人が訪れる通りにしよう”という目標も、コロナ禍の直前に達成したという。

客層は、9割が20〜40代の女性。

お店をつくるときにも、島川さんは常に女性目線でどうか?ということを意識しているそうだ。

「おっさんだけど、アンティークショップとか行ったら、かわいいって思っちゃう。言わないよ? 心のなかで、このお皿超かわいいなとか、整理整頓されてる店とか見ると、すごくいいなとか」

「若い子ともコミュニケーションとるから、吸収するし、しょっちゅう都心にも行く。それが億劫になったときに、おれ店辞めるんじゃないかな」

とはいえ、そんな予感はまだまだ感じさせない島川さん。古民家酒場の萌蔵は最近内装をリニューアルしたばかりだし、わかば堂製作所で扱う器も自身でセレクトしているという。

身近で働くなかで、きっといろいろなことを学べると思う。いつか自分のお店を持ちたい人なら、なおのこと。

 

そんな島川さんのもとで長年一緒に働くメンバーのひとりが、パティシエの瀬尾さん。

産休・育休を挟みつつ、12年間わかば堂を切り盛りしてきた。今後はわかば堂製作所がセントラルキッチンの役割も果たすため、そちらに専念していく予定。

わかば堂で働きはじめたのは、専門学校在学中のアルバイトから。

「就職先をいろいろ探すなかで、東京カフェマニアってサイトにここの求人情報が載っていて。履歴書を持って、食べに来たんです。お店の雰囲気がすごく気に入って、もし働けるならやってみたいなって、漠然と思って」

隣で聞いていた島川さんも、瀬尾さんが入ってきたときのことはよく覚えているそう。

「専門学校の先生から電話があったのよ。瀬尾をよろしくお願いしますって。いち生徒をそんなふうに言うなんて珍しいなと思って聞いてみたら、その先生が、この子は学年で一番ですと。ほかの就職先も勧めたんだけど、自分で探したい、と。大きいとこに入れば安泰だし、うちみたいな店に履歴書持ってさ、アポも取らずに。茨の道じゃん。よく来たなと思って」

瀬尾さんは、なぜこの店を選んだんですか?

「なんでしょう…若気の至りもあったと思うんですけど(笑)。一個の店を自分でつくっていく感じがすごくあったんですよね。お客さんに注文を聞いて、自分でつくったケーキを出す。レジもやって、会話もすることができる。夜はよく来てくれる常連さんと話しながら、この人にはこのお酒、とか。それって、大きいホテルとかにいたら絶対に叶わないことで」

「単純に楽しいなって思える経験が在学中のアルバイト期間にもたくさんあったし、一緒に働いている人も尊敬できる方ばかり。そのなかにいたいなと思って、今でも続けています」

お店同士の距離も近いので、何かあったときはサポートしあう関係性ができている。

瀬尾さんの12年はかなり長いほうだけど、ほかにも長く働き続けているスタッフは多い。アルバイトも含めて、気持ちよく関われるチーム体制ができているんだろうな。

わかば堂では、ケーキと飲み物のセットを注文する人が多く、お店の主軸になりつつある。

「ほんとにシンプルな、名前を聞いたら想像がつくケーキというか。土地柄、下町感があるので、キラキラしたケーキっていうよりは、素朴であたたかみのあるケーキだと思います」

新作を考えるのは、2ヶ月に一度のペース。お客さんの反応を見ながら、スタッフみんなで相談して決めていく。

昨年ものすごい反響を呼んだのが、かぼちゃのプリンタルト。

インフルエンサーの投稿もあり、SNSでみるみるうちに拡散。つくってもつくっても間に合わないほど大変だった。

「ここまでバズるのは、はじめての体験で。写真映えはとくに狙っていないので、予想外でした。ケーキ目当てで来てもらえるのはうれしいですし、今年はもうちょっと体制を整えながら出していきたいなと思っています」

今回募集するのは、わかば堂の店長候補と調理、パティシエ、ホールのスタッフ。

店長候補に関しては、スタッフの育成やシフト作成、売り上げの管理といったマネジメントだけでなく、接客や仕込みなど、店舗運営全般を担うことになる。

調理やホールに関しても、調理スタッフが接客をすることもあるし、ホールスタッフが洗い場や調理補助をする場面も出てくる。

「これだけやりたい、って人は合わないと思います。むしろ、なんでもできてやったー!みたいな人のほうがいい。わたしはまさにそういうタイプなので、料理でも接客でも、新しいことをいろいろ経験できるのが楽しいんです」

 

瀬尾さんのような店長・マネージャークラスの人たちと島川さんを間でつなぐ、統括マネージャーの山本さんにも話を聞いた。

やわらかな雰囲気で、気さくにいろんな話を聞いてくれそうな方。

「自分のスキルだけで100%のものを出すのではなくて、あくまでうちの雰囲気、客層に合わせてブラッシュアップしていける柔軟な方のほうが合うと思います。社風は、のびのびしていますね。商品開発にしても、社長はお店主体でどんどんやって、という考え方なので」

採用を担当することも多い山本さん。面接では、生い立ちまで遡って、じっくりと話をするという。

「ぼくが目指すのは、ある面では家族よりお互いのことを知っているような、そんなつながりで。だからこそ甘くはないんですけど、一生懸命やってくれる人とはずっとつながっていきたいなと思います。その雰囲気がお客さんにも波及していったらいいなと」

島川さんがさらに言葉をつなぐ。

「よく言うんだけど、ファイティングポーズとってる子がいいよね。やる気や根気。できなくてもやろうっていう、戦う姿勢、学ぶ姿勢を見せるっていうかさ」

ウェットな感じというよりは、気軽な冗談や思ったことも、さらっと交わし合えるような空気感。

取材を受けてくれたみなさんだけでなく、向こうのほうで開店準備を進める人たちの会話の雰囲気からも、それは感じられた。

「遊び心が大事ですよね」と山本さん。

「8割はしっかりマニュアルと基本を守りながら、残り2割のゆとりが非常に大事で。そこでオリジナリティを出してみる。ぶつかることも増えるけれど、それを乗り越えたときに進化できる。課題をみんなでクリアして、お店全体としてよくなっていければいいですよね」

その名の通り、若葉のような瑞々しさを感じるお店、人でした。

20年目を迎えても、わかば堂はまだまだ進化していきそうです。

(2022/9/15 取材 中川晃輔)

※撮影時はマスクを外していただきました。

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