求人 NEW

家具を“編集”する
マイノリティなものづくりと
特注家具の世界

※日本仕事百貨での募集は終了いたしました。再度募集されたときにお知らせをご希望の方は、ページ下部よりご登録ください。

インテリアやファッション、食など。どんな文化にもトレンドがあります。

社会のトレンドを知るということは、いまの人々が求めているものを知る、ということ。

今回は、とくにインテリアや建築のトレンドに敏感な方におすすめしたい仕事です。

MAKE AND SEEは、特注家具のデザインから製作、納品までを一貫しておこなっている会社。

主に高価格帯のホテルや商業施設など、空間に合う家具にこだわりたいというオーナーから依頼を受け、インテリアデザイナーとともに家具をデザイン・製作しています。

今回募集するのは、その過程全般を管理して、納期に間に合うように各セクションを調整するプロジェクトマネジメント(PM)と、家具の設計担当。そしてBtoC向け家具ブランド「KIBIROI」の責任者。

PMは経験を問いませんが、設計担当はなにかしらの設計経験がないとむずかしいとのこと。

特注家具と聞いてイメージが湧かない人もいると思います。まずは、このニッチな領域で活躍している人たちのことを知ってほしいです。

 

MAKE AND SEEのオフィスは、東京メトロ東西線の茅場町駅から歩いて2分ほどの場所にある。

中には椅子を中心とした家具が並んでいて、ショールームのようになっている。

部屋の中央にある机で待っていると、代表の松尾さんが迎えてくれた。

「ようこそ。駅からも近かったでしょう。茅場町は東京駅にも近いし、とても便利の良い場所なんですよ」

もともと家具の会社で働いていた松尾さん。2013年に独立して、MAKE AND SEEを立ち上げた。

「僕らはデザイン業界のなかでもかなりニッチな仕事をしていて。たとえばホテルでも、シンプルな内装だったり、レトロな雰囲気だったり、一つひとつコンセプトが違うじゃないですか」

「すると、既製品の家具では空間の雰囲気に合わないことがある。そういったときに呼ばれて、空間に合う特注家具のデザインから製作、納品まで行う。それが僕らの軸になっている事業です」

特注家具というのは、いわゆる既製品ではない家具のこと。

それだけ聞くと、プロダクトデザイナーと同じ仕事に聞こえるけれど、異なるのは家具をつくるスピード感だ。

「特注家具をやるって修行みたいなもんなんですよ。プロダクトデザイナーはひとつのものをつくるのに1年くらいかけますけど、僕らは依頼が来てから2ヶ月くらいでつくっちゃう。スパンがとにかく早いんです」

「たとえばレストランに置く家具を丸ごとつくってくださいっていう依頼が来たら、何十種類をオープンまでの数ヶ月でつくらないといけない。だからデザイナーとのやりとりのテンポも早いし、トライアンドエラーの数がすごいんです。大変だけど、そのぶん成長速度も早い仕事だと思います」

オーナーから直接指名を受けることが多いため、インテリアデザイナーの下につくのではなく、同じ土俵で現場に立ち、相談しながら家具のデザインを決めていく。家具屋の立ち位置として、これはかなり特殊なのだそう。

「たとえば、ベルコモンズの跡地にできた青山グランドホテルでは、レストランの95%の家具を僕らがつくりました。客室の一部も僕らが手がけています」

「あとは、ヒューリックふふという会社が『ふふ』っていうスモールラグジュアリーホテルを展開しているんですが、そのシリーズはほぼ全部僕らが家具を担当していますね」

家具にこだわりたい人の期待に応え続け、信頼を得てきたMAKE AND SEE。営業はしておらず、人のつながりだけで仕事が来るという。

立ち上げて2年ほどで売上は2億円、3年ほどで4億円にまでに上がった。

「おかげさまで、いろいろな案件を担当させてもらってきました。ただ、この特注家具の事業の難点は、一つひとつの売り上げが大きいぶん、ちょっとした時期のずれで、年度ごとの売り上げの差が激しいことなんです」

「なので、それを安定させたい思いもあって。そのためにBtoC向けの家具を販売する『KIBIROI』という会社を立ち上げて、オリジナルの家具の販売を2016年からはじめました」

広告サービスは一切使わず、SNSのみで周知。

認知されるまで3年ほどかかったけれど、地道な広報の甲斐もあってだんだんと売上も上がってきているそう。

家具はネット上で購入できるほか、JOURNAL STANDARD FURNITUREやACME Furnitureなど、各地方のセンスのいい家具店に卸している。

「BtoBの事業では、基本的にお客さまの運営するホテルなどが評価され、売れるためのデザインをつくってきた。そこから一歩進んで、自分たちの考えたデザインがBtoCのお客さまにどこまで通じるのか。それを試してみたいと思ったのも、KIBIROIをつくった理由の一つです」

今後は、KIBIROIをもっといろんな人に知ってもらい、軌道に乗せていくフェーズに入る。

そこで次のステージに進むことができれば、インドネシアのラタンだけではなく、もっといろんな国の特色を活かしたモノづくりをすることができるかもしれない。

今回募集するKIBIROIの責任者には、その事業を引っ張っていってほしい、と松尾さん。

たとえば、商品企画や卸先とのやりとり、ネット販売でのお客さん対応に、Instagram運用といった広報など。

やることの幅は広いけれど、まずは社内メンバーのアドバイスをもらいながら、できることから始めて、業務を拡大させていくイメージだ。最初はひとり部署だけど、業務が広がれば仲間も増えていくはず。

インテリアショップで働いていたり、広報や営業の経験があったりすると、それも活かせるかもしれない。

また、インドネシアなどいろいろな国へ、検品や打ち合わせ、展示会などに行くこともあるため、そういった働き方に興味がある人だったら、より楽しんで働けると思う。

 

会社としては、特注家具にだけ注力していた状態から、さらに進化しくタイミング。

一方で、今後も軸となっていくのは特注家具の仕事。PMを務めている辻さんに話を聞いた。

入社して9年目になる方で、もともとはライフスタイルショップで販売をしていたそう。

「本当に経験ゼロから入りましたね。材料の手配とか、サポート業務をしながら、先輩がどういう動きをして、どんなコミュニケーションをとっているのかを見て、自分も覚えていったような感じです」

仕事は、松尾さん経由でPMに振り分けられることが多いそう。

担当が決まったら、まずは全体のスケジュールを把握。お客さんやインテリアデザイナーの意見をヒアリングしながら、設計担当と一緒に家具のデザインを決め、工場に発注し、納期までに家具を納める。

ゼネコンや内装工事会社など、さまざまな関係者の意見を聞き、ちょうどいい落とし所を探して物事を決めていくという、繊細なバランス感覚が求められる仕事だ。

一番印象に残っているというのが、先ほど松尾さんの話にも出てきた青山グランドホテルの案件。PMは辻さんが担当だった。

「コロナがちょうど始まった時期に被ってしまって。材料が入ってこなかったり、物流もストップしたりで、お客さまも不安に思われて。想定外のことがいろいろありました」

「それでも結果的に無事に納めることができたということは、大きな経験になりましたね。レストランと、客室42部屋ぶんの家具を全部入れきるというのは、自分の担当案件のなかでは一番ボリュームがあったので。今でも継続して入替などのご相談をいただけることもうれしいです」

辻さんは、常に5つくらいの案件を同時に動かしている。今回PMとして入る人も、ゆくゆくはいくつもの現場を抱えながら仕事をすることになる。

打ち合わせやサンプルの確認などで外出することが多く、また全国に案件があるので、出張も多い。

決められたスケジュールのなかで、いかにお客さんが満足する家具を納めることができるか。時間と戦いながら、日々の作業に向き合っている。

「PMはオーナーさんやインテリアデザイナーと密にやりとりをするので、あらゆる分野において、同じレベル感でインテリアのことを知っていないといけない。知っておかなければいけないことは、すごくたくさんあると思います」

「ほかにも配管や電源とか、現場のことも最低限知っていないと、家具の設計をするときに困るので、それも大事ですね」

PMに関しては、とくに経験は求めないそう。辻さんはどんな人と一緒に働きたいですか?

「明るい人がいいと思っていて。いろんな人と話すので、お話が好きだといいですよね。あとは、どんなことがあってもあまりマイナスに考えず、柔軟に動ける人がいいと思います」

「家具づくりも現場も生きものなので、何が起こるかわからない。想定していないことも、よく起こります(笑)。そういうことに柔軟に対応できる人がいいのかな」

 

最後に話を聞いたのは、設計担当の井上さん。会社の立ち上げ時から松尾さんと一緒に仕事をしてきた。

「たとえば『70年代の雰囲気で、料理はこれ、客単価これくらい、お客さんのイメージはこんな感じ』っていうキーワードが出てきたら、そこから家具のイメージを考えます」

「スケッチや手書き図面をもとに、『こんな感じですか?』ってお客さんと何度も共有してイメージを近づけて、設計を進めていく感じですね」

いくつもの家具を短期間でデザインしていくって、想像しただけでも大変そうです。どのようにそれを可能にしているんでしょうか?

「なんというか… 常にゼロイチでデザインを考えているわけじゃないんですよね」

というと?

「日々いろんな家具を見ることでストックを溜めていくことが重要で。キーワードを聞いたときに引っ掛かったものを頭の中で巡らせて、組み合わせたりアレンジしたりします。」

「だから0から生み出すスピードが速いというよりは、材料をたくさん持っているからある程度の準備ができている、という感じでしょうか。その上で、お客さんがどういうものだと喜んでくれるかを考えながらつくるのが、この仕事の醍醐味ですね」

引き出しの多さが、結果的に早さにもつながっていく。

ということは、特注家具の設計には設計スキルだけじゃなくて、インテリアの知識も必要ですね。

「そうだと思います。設計に関しては、家具に限らず図面を描いてきた経験のある人がいいのかなと。意外と、家具じゃなくて建物の設計施工に関わっていた人とかが合ったりするんですよね」

「あとは家具に興味があって、よく調べたり見たりしているっていうのは、すごく大事な要素だと思います。そうやって自分から引き出しを増やしていれば、設計の仕事にはすごく活きると思いますよ」

 

最後に、代表の松尾さんが話していたことが印象に残っています。

「ミーハーな人がいいですよね。僕もお客さんにミーハーだよねって言われたことがあるんですけど(笑)、確かにそうかもなって」

「ミーハーであるべきやし、とくにインテリアのミーハーでいてほしい。インテリアに関する新しいことには、何でもかんでも飛びつくくらい好き、みたいな。ミーハーな人ってインプットが多いじゃないですか。そうなると自然にアウトプットも多くなる。そういう人と一緒に働きたいですね」

いろいろな引き出しを開け閉めして、その都度新しいものを世に送り出していく。とても実践的な、ものづくりの千本ノックのような仕事だと思います。

インテリアが大好きという人は、ぜひ。

(2022/11/7 取材、2024/1/29 更新 稲本琢仙)

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