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日本一の農業のまちで
歩いてしゃべって
地域の一員になる

※日本仕事百貨での募集は終了いたしました。再度募集されたときにお知らせをご希望の方は、ページ下部よりご登録ください。

宮崎県都城市(みやこのじょうし)。

鹿児島と宮崎の県境に位置する人口16万人のこのまちは、農業産出額が全国の市町村で第一位になるなど、農畜産業がさかんなまちです。

九州のなかでも交通アクセスがいい場所ということもあり、子育て世代の移住も多く、移住者も暮らしやすいまちづくりが進められています。

今回は、ここで働く地域おこし協力隊を募集します。中山間地域の空き家対策やフットパスと呼ばれるまちあるきのイベントの推進をきっかけに地域に入り込み、地域の困りごとを探し出し、解決を目指す役割です。

仕事内容については、まだまだ柔らかい部分も多く、新しく加わる人の興味や特技を活かして仕事をつくっていきたいとのこと。

田舎暮らしに興味があるけれど、なにから始めていいかわからない。そう思う人がいれば、この仕事がちょうどいい入口になるかもしれません。

 

都城市へは、宮崎駅から電車で1時間、もしくは宮崎駅や宮崎空港からの直行バスで1時間半ほど。今回は前泊して、朝一番のバスに乗って向かった。

終点の西都城駅で降り、取材場所の市役所へ向かう途中、アーケードの商店街を見つけた。

通り沿いには昔ながらの理容室やブティックもあれば、マルシェができそうな大きな広場に、新しくできたばかりの図書館もある。ふだんは人で賑わっているんだろうな。

歩くこと15分。市役所で出迎えてくれたのは地域振興課で働く鶴村さん。

取材を受けるのは慣れない、とはにかみつつ、一つひとつ丁寧に教えてくれる。

「都城市は農畜産業がさかんな場所で。ふるさと納税の返礼品も肉と焼酎が好評で、過去に3度、寄附金額日本一を獲得しているんですよ」

霧島連峰のふもとにある都城市では、豊かな水と盆地の広い土壌を活かして多種多様な農産物がつくられてきた。

さらに、鹿児島空港、宮崎空港の両方から車で1時間という好立地。そんなこともあって、都城市の移住者数は右肩上がりで、相談が日々絶えないそう。

一方で、移住先として選ばれているのは利便のいい市内中心部がほとんど。

都城市内全15地区のうち、中山間地域等と呼ばれる8地区については、ほかの地方と同じく少子高齢化とともに、深刻な過疎化が進んでいる。

中心部だけでなく、周辺地域の暮らしもより良くしていこうと、2022年4月に立ち上がったのが、鶴村さんの所属する地域振興部。新しく加わる人には、地域おこし協力隊として地域に入り込みながら、地域と行政をつないでいってほしい。

「移住して、地域の人と話すなかできっと課題がたくさん見つかると思うんです。私たちも何ができるか手探りなので、こういうことに困ってそうですよ、と担当部署に声をかけてもらうだけでもありがたいんです」

自分にできそうなことがあれば、どんどん提案もしてほしい。たとえば写真が得意な人であれば、地域の写真をSNSで発信していくことで、地域外へのアピールにつながるかもしれない。

「とはいえ、いきなり地域の人を訪ねてヒアリングというのはハードルが高い。まずは仕事をきっかけに地域に馴染んでいただけたらと思っています」

業務のひとつとして考えているのが、空き家対策。

都城市では空き家バンクの活用推進を進めていて、登録された物件のうち、8割が稼働している状況だそう。借り手・買い手のニーズがある一方で、肝心の物件の登録はあまり進んでいない。

「空き家バンクは利用料もかからないし、それでマッチングが成立すれば、業者さんも所有不動産の活用につながる。メリットをしっかり感じてもらえるよう、もっと働きかける必要があると思っています」

最初は不動産業者への挨拶回りや、会合などへの参加を通して顔を覚えてもらうところから。関係を深めていくなかで、空き家の活用について一緒に考えていけるといいと思う。

「ただ、空き家にかかわる業務だけだと、最初のうちはできることが少ないかもしれません。そこで、各地区でおこなわれているイベントの推進やPRにも関わるなかで地域とのつながりをつくっていただければと思っています」

各地区では、まちづくり協議会や自治公民館を中心にさまざまな地域活動やイベントが実施されている。

たとえば、日本の滝百選にも選ばれた「関之尾滝」がある庄内地区では、住民が「むかえびと」という組織をつくって、観光客をガイドする取り組みを続けてきたそう。

「庄内地区は私の生まれ故郷なんですけど、石造りの壁などがあちこちに残っているんですよね。風景を楽しむだけじゃなくて、その地域の歴史や文化を知ることで、地域への興味関心も湧いてくると思うんです」

都城市では、中山間地域の魅力をPRするツールとして、フットパス事業を各地域で実施していきたいと考えている。

フットパスとは、イギリス発祥のレクリエーションで、森や田園地帯、古いまちなみなど、地域に昔からあるありのままの風景を歩きながら楽しむもの。

「中山間地域にも、実は埋もれているだけで、魅力があるはず。情報を発信していくことで見え方も変わっていくと思います」

地域の楽しみ方を伝えることは、地区外に暮らす人へのアピールにもなるし、生まれ育った人自身が地域を見直す機会になるかもしれない。

外から移住してきた人の素直な視点が活きる仕事だと思う。

 

現在は、高崎と呼ばれる地区でフットパスのコース作成が進められているそう。個人としてフットパス事業に関わっている市役所職員さんがいるとのことで、現地を案内してもらうことに。

車に乗ること40分。着いたのは、都城市高崎町の大牟田(おおむた)地区。案内してくれるのは、高崎出身の村脇さんだ。

北九州市立大学を卒業後、地元へ戻ってきた村脇さん。高崎のフットパス事業には学生時代から関わっているそう。

「ゼミの先生がフットパスを専門にしているんですけど、一度高崎を訪れたときに地域の方がフットパスに興味を持ってくれたのがきっかけで、高崎でもやってみることになりました」

フットパスは2時間前後で巡れるよう、コースが設定されている。

マップには、学生が実際にまちを歩くなかで見つけた見どころやフォトスポットなどが書かれていて、マップや設置された看板を頼りにしながら、自分のペースで歩き進めることができる。

「ここ、おすすめなんです。今日は晴れているから、霧島連峰がよく見えると思います」と、連れてきてもらったのは田んぼ沿いの土手。

広大な農地の向こうに、山が見える。視界を遮るものがなにもなくて、とても心地がいい。

「癒されますよね。この前の10月に初めてコースの体験会を実施したんですけど、マップに載せている写真のアングルを真似て写真を撮ってくれる人もいて。楽しんでいる姿を見てうれしくなりました」

現在、コース作成やイベントの実施に関わっているのは、自治公民館連絡協議会のメンバーが中心。

「フットパスを実施している地域のなかには、住民の方の家を訪問できるとか、食事を振舞っていただけるとか、地域の方と交流できるところもあって。高崎でもできたらいいなと思うんですけど、正直、フットパスのことを知らない人が多いのが現状です」

それでも、学生がコース作成のために地域内を歩いていると、声をかけてくれることも多いのだそう。

「農作業されている方に挨拶したら、だいたい『なんごとね〜?』って返してくれるんです。怪訝な態度を取られたこととかは、まったくなくて」

そんなタイミングでフットパスのことについて話せると、少しずつ認知も広がっていきそうですね。

「そうですね。今は行政からお知らせ程度に広報をしてもらっている状況なので、内にも外にも情報を発信してくれる人が来てくれるとうれしいです」

高崎地区には6つの地域があり、それぞれにひとつずつフットパスコースをつくろうとしていて、まだまだ作成段階とのこと。

高崎地区内のコースは北九州市立大学の学生が中心となって進める予定。新しく加わる人も事業に参加することで、地域の人とコミュニケーションをとっていけるといいかもしれない。

ゆくゆくは高崎以外の7つの地区にも横展開してきたい、と市役所の鶴村さん。地区ごとにカラーは異なるだろうけれど、ここでの経験や人脈は今後の活動の土台になるはず。

「どこで活動するにしても、新しく加わる方自身が地域のファンになってくれたら。地域に愛がないと続かない活動だと思うし、住民の一人として関わるくらいの気持ちでいてくれるとうれしいですね」

 

空き家対策とフットパス。最初の一歩として示されたミッションはあるものの、目的は中山間地域の振興。

ミッションに縛られすぎず、地域のなかで感じた課題や、こうした方がいい、というアイデアがあれば積極的に提案してほしいと、鶴村さんは話していた。

実際に外から地域に入って働く人は、どんなことを感じているんだろう。

現役の地域おこし協力隊で、今年4月から婚活担当として働く池田さんに話を聞く。

都城市では若者同士の出会いをつくるため、市として長年婚活イベントに取り組んでいて、定期的にイベントを実施しているのだとか。

「参加者の方のイベント前後の表情が全く違うんですよ。最初は緊張でこわばった表情なんですけど、終わった後は楽しかった!って、開放的な表情で。ここで友達ができた、と言ってくれる人も多くて、すごく仕事が楽しいんです」

「ただ、基本的にはイベント会社さんが企画することが多くて。この前、上司の方に、私たちもイベントつくってみたくなりました、と話したら『今度企画してみてもいいよ』と言ってもらえたんです」

いい機会になりそうですね。

「できるかなっていう不安と楽しみ、両方ありますね。行政独特の考え方にむずかしさを感じることはあるけれど、やりたいことを話せば相談に乗ってくれる環境だと思います」

暮らしのほうはどうですか?

「私は熊本出身なので、知らない場所や景色に毎日観光している気分でずっとワクワクしていますね。地元ではしないんですけど、思い切って地域の方にも話しかけちゃう。この前は温泉でおばちゃんに話しかけたら話が盛り上がって、鳥刺しを買えるおすすめのお店を教えてもらいました」

「あと、どこに行っても野菜とお肉がおいしいのがうれしいです。熊本市内なら500円のお肉がこちらだと300円程で買えるし、見た目も綺麗で、どこに行ってもハズレがないですね」

おいしい食べ物と、自然と、人がいれば大丈夫。のびやかに今の仕事や暮らしのことを話してくれる池田さんの姿を見ていると、そんな気持ちになりました。

 

取材途中のあるシーンが印象に残っています。

お昼休憩のとき、市役所で何気なくおすすめのランチを聞いたら、「どこがいいかなあ。ちょっと◯◯さん、おすすめある?」とあちこちから人が集まって、マップを見ながら一緒に探してくれました。

話を聞いたみなさんが言っていた「人のあたたかさ」って、こういうところにあるのかも。

まだまだ柔らかい部分もある仕事だけれど、一緒に考えながら形にしていける。ここは、そんな場所のように感じました。

(2022/12/6 取材 阿部夏海)

※撮影時はマスクを外していただきました。

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