求人 NEW

おしゃべり好きなまちで
これから花咲く種を見つけ
育てていくライター

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見方を変えると、ちがった姿を見せるトリックアート。

今回取材した塩谷町(しおやまち)は、視点を変えるといろいろな魅力が見つかる、トリックアートのようなまちかもしれないと思いました。

栃木県の北部に位置する塩谷町は、宇都宮駅から車で1時間ほどの距離。

日光や那須塩原といった観光地にほど近い場所にあり、名水百選に選ばれている尚仁沢(しょうじんざわ)湧水が有名です。

今回は塩谷町のことを伝える、ライター兼移住コーディネーターの地域おこし協力隊を募集します。

今はまだインターネット上にも情報が少ない塩谷町。だからこそ、隠れたまちの魅力がたくさんあるように感じます。

まずは塩谷町で活躍する人の取材記事を書きつつ、まちのことを知り、ゆくゆくは移住コーディネーターとして活動してもらいたいとのこと。

ライター未経験でも大丈夫です。話を聞くことが好き、まちの発信に興味がある、という人にぜひ挑戦してほしい仕事です。



東京から宇都宮は新幹線で45分。レンタカーに乗り、宇都宮から北へおよそ1時間で塩谷町役場へ到着した。

役場に入ると、「こんにちは」と役場にいる人たちが気持ちよく声をかけてくれた。待っている間も、すれ違う人々が会釈を交わしてくれる。

「塩谷町の特徴かもしれないですね。昔からまちの人たちは誰にでも挨拶するんですよ。小学生や中学生も、元気に挨拶してくれます」

そう話すのは、企画調整課の古久保さん。

塩谷町出身の古久保さんは、大学で一旦地元を離れ、卒業後に帰ってきた。

古久保さんが役場に入職した13年前、13,000人ほどいた塩谷町の人口は、現在約10,400人。毎年、およそ200人の人口減少が起こっているという。

人口減少を食い止めるべく、移住者を増やそうと、役場の職員が移住相談を行なったけれど、なかなか思うような成果につながらなかった。

「地元の人だと、塩谷町をどうアピールしていくのがよいのか、わからないことが多くて。正直なところ、他の地域に比べて何もないところだと思うんですよね」

そこで、外部の人の力を借りてまちを盛り上げ、塩谷町のことを外の人にも知ってもらおうと、5年前から地域おこし協力隊の制度を導入した。

協力隊によって、廃校を活用した町内初の屋内遊具施設「こども未来館しおらんど」がつくられたり、健康増進のためのウォーキングイベントが定期的に開催されたり。まちを盛り上げる活動は、着々と身を結びつつある。

一方で、当初の目的であった、塩谷町の認知度を高め移住者を増やそうという試みは、なかなか進んでいない状態。

「塩谷町ってインターネットで検索しても出てくる情報が少なくて。外部の人からしたら、どんなまちかがわかりづらいんです」

周辺にある日光や宇都宮、那須塩原と違って、塩谷町は有名な観光地というわけでもない。

「一見なにもないように見えるかもしれないんですが、実はいろいろなことに挑戦している人は結構いて」

たとえば、YouTubeで「アグリンch」を開設している、農協公認のニラ農家兼YouTuberの八木澤さんや、完全オーガニックでお米をつくって販売している人など。

個人で面白い活動をしている人はいるものの、そういった情報は町外の人には伝わっておらず、まちに足を運ぶきっかけにはなっていない。

けれども、古久保さん曰く、面白い活動をしている人はまだまだいる、とのこと。

今回新しく協力隊となる人には、まずは塩谷町で面白い活動をしている人などを紹介する記事をつくり、まちのSNSや、来年の春に開設される予定のホームページを通して発信していってほしい。

「塩谷町の人っておしゃべり好きで、まちで会うと挨拶がてら、つい長話になるんです。はじめは住民の方と仲良くなってもらって、そしたら自ずと数珠繋ぎのように取材対象となる人やお店の情報が集まってくると思います」

まちの人の紹介のほかにも、地域で長年愛されているお店や、住民たちの何気ない日常の話など、発信するネタの自由度は高い。いろいろな視点から塩谷町のことを伝えていってほしい、とのこと。



とはいえ、初めて協力隊として赴任したまちで、どんな人を取材していけばいいのだろう。

そう話していると、古久保さんが「実際に面白いことをしている人に会いに行ってみましょうか」と、役場から歩いてすぐのコミュニティスペース「Step-One」へ連れて行ってくれた。

ここで話を聞いたのは、Step-Oneの運営に加えて、町内でのイベント企画などを行なっている任意団体「Shioya S.I.P」の代表、高塚(こうつか)さん。

「これから近くの古民家をリノベーションして、一棟貸しの宿泊施設をつくろうとしていて。希望していた物件のオーナーから、お貸しできますよという連絡をちょうどさっきもらったところなんです」

2020年に都内の大学を卒業後、地元の塩谷町に帰ってきた高塚さん。

「本当は国際的な文化交流を担う独立行政法人に就職が決まっていて、卒業後はタイで働く予定だったんです。でもコロナ禍と重なって白紙になってしまって」

大学で地方創生を学んでいたこともあり、塩谷町で何かできないだろうかと考えた。

「さまざまな取り組みを頑張っているまちって、日本中にたくさんありますよね。ただ自分が地方と関わるとしたら、ゼロからスタートできる場所がいいなと思っていて」

「正直、塩谷町に戻った当初は、まちを発展させようという雰囲気はあまり感じられなくて。でも裏を返せば、自分次第でこれからなんでもできる伸び代があるし、どんな挑戦をしても僕が最初に手をつけられる良さもあるなと思ったんです」

そのひとつが、今年の春にオープンしたStep-One。

「もともと塩谷町の隣の矢板市にあるシェアオフィスをよく利用していたんですが、そんなふうに仕事ができたり、人が集まれたりする場所を塩谷町にもつくりたいと思って」

そこで見つけたのが、役場からほど近いところにある、かつてスキー板の修理店だった空き店舗。

「リノベーションのためにリアルとネットで声をかけたら、町内外からたくさんの人がお手伝いに来てくれて。気づいたら地元の建設業者さんも参加してくれて、無償で資材を提供してくれたり、建築のノウハウを教えてくれたりして。ありがたかったですね」

いろいろな人の協力により、2ヶ月でリノベーションが完了。オープニングイベントには、100人もの人がお祝いに駆けつけた。

オープンしてから半年が経つStep-One。これまでに移住者交流会や、地元の酒造と連携した日本酒のイベントなど、大小さまざまなイベントが行なわれてきた。

「Step-Oneに所属するコミュニティメンバーと企画して、今年の夏は隣の駐車場でビアガーデンを開催しました。若い人が誘い合って来てくれて、250人くらい集まりましたね」

空き店舗や空き地だった場所に、人が集まり光がともる。

少しずつ、そんなエネルギーの集まる場所が増えていったら、塩谷町はもっと面白いまちになっていく予感がする。

「田舎はインターネットで出てこない情報もたくさんあるので、住民とのネットワークをつくっていくことが大切です。塩谷町はおしゃべり好きの人が多いから、かしこまりすぎずに、自分をさらけ出せるといいんじゃないかな」



次に向かったのは、塩谷町役場から車で5分ほどのところにある「星ふる学校 くまの木」。

ここは、廃校だった小学校の校舎を、自然体験が楽しめる宿泊施設としてリノベーションしたところなんだとか。

広い校庭を一周歩いてみると、端っこのほうにヤギが2頭。

「今日は近くの小学生が授業で落ち葉や木の実を探しに来たんですよ。でも、みんなヤギに夢中になっちゃって」

そう話すのは、塩谷町から「星ふる学校 くまの木」の管理・運営を委託されているNPO法人「くまの木里の暮らし」の事務局長を務める加納さん。

「昔はこの辺りでヤギを飼っていた方も多かったみたいで。近所の人が『小さいときはヤギの乳を飲んだよ』って話す方もいるんです。ヤギが地域の人との会話のきっかけにもなっていますね」

前職では農水省の外郭団体に勤め、全国の農村で水田や水路などを環境教育に活かしていく「田んぼの学校」というプロジェクトを担当していた。

その活動をしているなかで出会った栃木県庁の人から、あるとき、声をかけられる。

「『星ふる学校 くまの木』の管理・運営を担うNPO法人で、事務局長の公募が出ているから応募してみたら、と言われたんです」

それまで塩谷町とは縁がなく、まちのことも知らなかった加納さん。

「しかも宿泊施設の仕事は未経験だったので、迷いましたね。ただ、いろいろな農村で出会う方々はみんなかっこよかったし、実際に農村で生活している人の知恵や技って本当にすごいなぁと思っていて」

水害を受けにくい場所に神社が建てられていたり、作物を獣害から守るために猪や鹿を狩ったり。

農村の人たちは身近な自然と密接に過ごし、自然と人の関わり方の最適解を見出しながら生活を送っている。

そんな人たちのそばで生活してみたいと、加納さんは塩谷町へ移住し、「星ふる学校 くまの木」の運営に携わるように。

「はじめて塩谷町に来たときは、正直に言うと活気がなくてさみしいなという印象でした。だけどそう感じるのは、ずっと都会で暮らしていて、お店の種類や数とか商業的な基準でまちを見ていたからで。視点を変えたら、自然の変化や豊かさをすごく感じるようになったんです」

「駅がないとか商店が少ないとか、当然都会との違いはある。それをいい・わるいで判断せずに、視点を変えて違いを楽しめたら、面白さや学びがたくさんあるまちだと思いますよ」

たとえば、夜は街灯も少なく真っ暗だけど、ここは「星ふる学校」という名前の通り、夜には満点の星空が見える。

ほかにも、加納さんは塩谷町に来て吉凶を示す六曜を初めて意識したのだとか。

「地域の人に挨拶に行くときは大安の午前中がいいとか。塩谷町に来るまでは気にしたことがなかったんですが、今は何かの折にはまず六曜をチェックしますね」

「農村あるあるで、朝早い時間に玄関に野菜が置かれていたり、ジャガイモとかを農業用の一輪車に乗せて大量に持ってきてくれたり。モノをお裾分けをしてくれるのもありがたいですが、それ以上に気にかけてくださる気持ちがうれしいですね」

「星ふる学校 くまの木」では地域内外の人とのつながりを活かして、自然や農業、食にかかわる体験プログラムを実施している。

「大学の実習で農家さんに受け入れをお願いするときは、働きぶりに応じて野菜をいただいてバーベキューをしよう、なんて課題を出すんです。農家の皆さんは優しいから、結局たくさんくれるんですけどね(笑)」

「生活するからこそ、塩谷町の魅力やおもしろさが見えてくると思うので、気になったらぜひ一度来てほしいです」



今はまだ世に知られていない塩谷町。魅力となる種は、まちの人たちとの交流を通じて、たくさん育てていけるように思いました。

ぜひ自分の五感をフル活用して、塩谷町のことを自分の言葉で発信してみてください。

(2022/11/8 取材 小河彩菜)

※撮影時はマスクを外していただきました。

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