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伝統工芸が息づく宿
静岡の里山で宿場町が蘇る

駿河湾や富士山などの豊かな自然に、温暖な気候。

そんな静岡の魅力に惹かれた徳川家康は、かつて隠居の地として静岡を選びました。

家康は住まいとする駿府城や静岡浅間神社を造営するために、大工、彫刻、漆などの職人を全国から集めたそうです。

静岡で連綿と受け継がれてきた匠の技。それら伝統工芸を体験できる施設が、静岡市にある「駿府の工房 匠宿(たくみしゅく)」です。

匠宿は静岡市が23年前にオープンした施設で、伝統工芸の体験施設としては国内最大級の広さ。昨年に地元の建築事務所「創造舎」が指定管理者として匠宿をリニューアルし、運営を担っています。

創造舎は静岡の市街地にある人宿町(ひとやどちょう)に事務所を構えて、住宅などの建築に加え、周辺の古いビルをリノベーションしたり、現代の横丁をつくったりと、地域に根ざしながら魅力的なまちづくりをしている会社です。

来年、匠宿がある泉ヶ谷という地域で、古民家を改修した宿を2023年の3月にオープンします。

静岡駅から車で15分ほどの場所、三方が山々に囲まれて、とても静かな雰囲気。

昔は東海道の宿場町として栄えた場所でもあり、立地といい、環境といい、人に来てもらうためのいろいろな可能性があるように感じます。

今回はオープン予定の宿と、周辺地域の泉ヶ谷の魅力をたくさんの人に伝える、広報PR・企画スタッフを募集します。

伝統工芸やエリアマネジメントに興味がある、パワフルな人たちと一緒に働いてみたい。そんな意欲のある人に、ぜひ知ってほしい仕事です。



新幹線に乗って静岡駅へ。駅前のバスターミナルから路線バスに乗り換える。

バスは市街地を抜けると、河原と空が広々とした安倍川を渡る。だんだんと山々が近くなってきた。

バス停から降りてすぐのところには、匠宿の大きな看板が。少し歩くと、山に囲まれた瓦屋根の平家が見えてくる。

駅からあまり離れていないけど、山里に迷い込んでしまったよう。新鮮な空気を思い切り吸い込む。気持ちがいい。

静岡のお土産がずらりと並ぶエントランスを進むと、アートやデザインされた家具が並ぶ中庭が広がっている。

すぐに創造舎代表の山梨さんが出迎えてくれた。

匠宿や周辺の泉ヶ谷を案内してもらいながら、話を聞くことに。

山梨さんは16年前に創造舎を立ち上げ、住宅や病院など県内のあらゆる建築を設計してきた。

「10年くらい前に人宿町にオフィスを引っ越したときに『人宿町のまちづくりを一緒に考えてほしい』と、地元の人から声をかけられたんです」

静岡駅から歩いて15分ほどの人宿町は、映画館や劇場がある娯楽のまちだった。けれど、近くにシネコンができて人宿町から映画館がなくなると、まちを訪れる人も一気に減少。

「それまでまちづくりに関わる機会はなくて。でも、お客さんを呼び戻そうと、地道に努力するまちの人たちの姿を見ているうちに、『人宿町をなんとかしたい』と思ったんです」

そこでプロデュースしたのが「OMACHI創造計画」。静岡弁で中心市街地を「おまち」と呼ぶことから、この名がつけられた。

人宿町の老朽化した建物を次々とリノベーションして、お店を誘致。居酒屋やカフェといった飲食店から劇場やホテルまで。これまでに創造舎が関わった店舗は80を超える。

「ただの歓楽街にしたくなくて、未来につながっていくまちとなるように文化的な要素も入れたいと思ったんです」

山梨さんは、江戸時代から伝わる静岡の藍染に注目。創造舎は通常業務の建築に加えて、藍染工房を運営したり、藍染職人を社員にしたりと会社全体で藍染を活性化させていった。

藍染のほかにも陶芸教室を人宿町に誘致するなど、創造舎は伝統工芸の普及に取り組んでいく。

しばらくして、静岡市が匠宿の指定管理者を募っていることを知り、創造舎が手を上げた。コンペで勝ち抜き、指定管理者として匠宿をリニューアル。そして運営を担って現在に至る。

リニューアルでは伝統工芸はもちろん、ペットを連れていけるカフェや、お土産用のきんつばのお店なども誘致。

そして匠宿に関わっていくなかで、山梨さんはあることに気づく。

それは匠宿から山に向かうまでの700mくらいの筋にある集落の家屋が、立派な柱や梁で建てられていること。

この地域全体を残すべきだと、建築魂が直感的に震えた。

「泉ヶ谷にある古民家を改修して、匠宿の工芸品と泊まれる宿をつくる。そして、宿が中心となって、かつての宿場町のように、地域一帯を活性化していきたいと考えたんです」

匠宿の周りには分福茶釜で有名な吐月峰柴屋寺(とげっぽうさいおくじ)に、版画家の方が運営する小さな美術館、それに北欧家具のお店などもあって、小さいエリアながらも文化的な雰囲気もある。

「里山でも商店街でも、その場所を一緒に良くしていこうという人たちが集まり、思いがひとつになれば、なんとかしていけると思うんですよ」

宿は来年の3月にまず2棟3部屋をオープン。その翌年の春にはさらに2部屋を増やす予定。

宿の部屋では、伝統工芸に触れる工夫がたくさん盛り込まれる。たとえば、藍染でつくられた部屋着や、駿河竹千筋細工(するがたけせんすじざいく)でできたトレーなど。お客さんが手に触れてみて気に入った工芸品は、直接購入することもできる。

「全部屋にサウナと檜風呂をつけて、アメニティも上質のものを揃えます。あと、地元の有名シェフがつくる、駿河湾の旬の食材も楽しんでもらって、非日常の環境で贅沢な気持ちになってほしいですね」

今回募集する人は、宿と匠宿での仕事にも関わりながら、周辺の自然や建物、伝統工芸の魅力を多くの人に伝えつつ、イベントやお祭りの企画もしていってほしい。

山梨さんはどんな人と一緒に働きたいですか?

「職人の技術や工芸の価値、地域の歴史や文化をしっかりと伝えられる人ですね。今回の宿はとくに人とのつながりが重要なので、誰とでもコミュニケーションをとれることも大切。あと、静岡に長く住みたいって人だとよりうれしいですね」



新しい宿で一緒に働くことになるのが、入社2年目の鈴木さん。現在は、宿の事業に関わりながら、匠宿の運営や管理にも携わっている。

前職は市が管理する施設の指定管理を担う特定非営利法人で、公共施設や市営住宅などの指定管理に関わる企画などに携わっていた。

「その仕事を14年つづけたころ、突然、このままでいいのかなって思ったんですよ」

たとえば、指定管理の施設を有効に活用できる方法を提案するも、決裁が通るまでに時間がかかったり、最後の最後で採用されなかったり。もっとスピード感を持って能動的に仕事をしたいと感じ、退職を決意。

そして半年ほど経ったある日、前職で創造舎の仕事に関わったことのあった鈴木さんの元に山梨さんから連絡が入る。

「『匠宿の指定管理者になりたいから、相談に乗ってほしい』という連絡でした。でも、指定管理者の大変さを知っていたから、はじめは止めたんです」

「やりたい理由を聞いてみたら、『静岡市が好きで、今後も地元に貢献していきたい。とくに失いかけてきている静岡市の伝統工芸を、もっとたくさんの人に知ってもらって未来につながるような仕事をやりたい』って」

山梨さんの熱い思いを感じた鈴木さん。前職の経験を生かし、創造舎が匠宿の指定管理者となれるよう、必要な計画や資料をつくっていった。

鈴木さんの努力も実り、創造舎は晴れて匠宿の指定管理者となる。鈴木さんも創造舎の社員として匠宿の運営全体に関わるようになり、今は新しい宿のことも任されるまでになった。

「宿泊業は知識も経験もなくて。社長にポンと任されることは、初めてのことも多くあります。社長って無茶振りもするし、言うこともよく変わる。困ることもたくさんあるんだけど、なんか憎めないんですよ」

「社長って人の話を聞きすぎっていうくらい聞くんです。スタッフのアイデアは、なるべく実現してあげようという思いも強い。しかもそのアイデアが自分の知識や会社のお金でできることなら、どんどん形にするんです」

たとえば、鈴木さんが匠宿に関わりはじめたころのこと。匠宿は、市の運営施設だったこともあって17時には必ず閉館していた。そのため外灯の必要がなく、夜になると施設も周囲も真っ暗だった。

「遅くまで残業して帰るとき、駐車場にたどり着くまでの道が本当に暗いんですよ。懐中電灯で周りを照らしながら歩かないと進めなくて」

「それを社長に伝えたら、すぐに匠宿全体に工事がバーっと入って。なんだろうと思っていたら、1週間も経たないうちに、夜でも明るくなるよう匠宿全体に電灯がついたんですよ」

また、あるときは匠宿にあった池を見ながら、「水遊びができるといいよね」とスタッフが話していると、次の週に水遊び場ができていたことも。

「『水遊び場いいなと思って、つくっちゃった』って言うんですよ。こちらの想像に社長の思いが乗っかると、ものすごいスピードで本当にいいものができる。それを間近で実現するから、こちらも普段からスピード感を持って動かざるを得ないというか」

今回募集する人は、新規事業となる宿や泉ヶ谷全体に関わるプロジェクトの企画や広報を中心に担っていく。求められる仕事は幅広い。

たとえば、宿の宿泊と地域のおばあさんの昔話を聞ける体験をパックにした宿泊プランや、伝統工芸体験とセットになった宿泊プランなど。周辺に眠る資源を発掘して、それを発信するとともに、宿の事業にもつなげていきたい。

「私は普段、匠宿に関わる経理や人事といった運営に関わる一通りのことをしている一方で、匠宿のカフェで皿洗いや、工芸体験のインストラクター、物販販売などなんでもやります。毎日、ハムスターみたいに走り回っていますね(笑)」

「創造舎の人って、デザインとか特化したスキルを持ちつつ、なんでもやるんです。新しく入る人も、宿や地域のことに幅広くどんどん関わってほしいですね」

はじめは宿の業務に携わりながら、宿や工芸、泉ヶ谷のことを理解していくことになる。広報と直接関わりがないと感じられることも、ゆくゆくは宿や地域全体を活性化するアイデアにつながっていくかもしれない。

「今はまだ泉ヶ谷って、地元のお客さんが中心の場所。これから、宿や匠宿が地域との関わりをさらに増やしながら、外からのお客さんにもたくさん来てもらって、地域を活性化していきたいですね」



かつての東海道の宿場町として栄えた場所で、再び宿が中心となり地域全体を盛り上げる。

静岡が誇る自然の豊かさ、工芸の素晴らしさ。そこに創造舎の情熱が加わって、泉ヶ谷はもっと面白い地域に変化していくように感じました。

チャレンジしてみたいという思いが湧いた方は、ぜひ泉ケ谷の風景を五感で感じに来てみてください。

(2022/5/24 取材 小河彩菜)

※撮影時はマスクを外していただきました。

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