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命を無駄なく活かしきる
持ち歩くアート

朝焼けや夕暮れのグラデーションは、暇さえあれば、いつまでも眺めていられる。

色や時間がゆったりと移ろっていくさまに、人は心奪われます。

ユハクの製品にも、それと似た魅力を感じます。モノなのだけど、そこには時間や温度も一緒に綴じ込められているような感じがする。

ユハクは13年前に誕生したレザーブランドです。

特徴的なグラデーションは、職人の手作業で、円を描くように色を重ねることで生まれます。手間はかかりますが、染料の廃棄が少ないぶん、環境負荷を最小限にとどめることができるそう。

革という素材は、もともと命のあったもの。「その命をいただくことへの恩返しのような感覚でものづくりをしています」と、代表の仲垣さんは言います。

そんな想いから、アーティストと共同で、デッドストック品や傷物の革を活かした作品の制作・販売や、通常は捨てられてしまう端材のリサイクルなどにも挑戦しています。

今回募集するのは、東京・銀座の路面店と、大阪・心斎橋の百貨店内のショップの店長候補。

命を無駄なく活かしきるために。想いの込められたものを、丁寧に届けていく仕事です。

あわせて、横浜本社の製作室で働く製造スタッフも募集しています。

 

向かったのは、ユハクの銀座店。

夜の銀座はきらびやか。肌寒い空気のなか、デパートや高級ブランドを横目にサクサク歩いていくと、いつもより少し凛とした気持ちになる。

東銀座駅側の少し落ち着いた大通り沿いに、「yuhaku」の文字を見つけた。

暗闇に浮かび上がるように照らされた、革製のバッグや財布。

靴のなかから木が生えたようなオブジェも展示されている。ここは「yuhaku Ginza Gallery」という店名で、ギャラリーの機能も備えているという。

「アーティストとコラボレーションする機会も多いんです」

そう教えてくれたのは、代表の仲垣さん。

「銀座ですと、通常はギャラリー側に売上の半分を持っていかれるんですよね。そのギャラリーの紹介で、百貨店で個展をしても、作家さんには3割しか入ってこない。そういった状況を覆したいなという想いもあって、うちでは無料で展示をしてもらっています」

無料で。それは、アーティストとしてはうれしい限りですね。

「うちのお店としても、そのアーティストのファンの方が訪れれば、ユハクを知ってもらうきっかけになります。お互いにメリットがあるんです」

出展の条件のひとつは、ユハクとコラボレーションした作品をつくること。

デッドストック品にペイントを施したり、傷物の革を作品に取り入れたりして、再び命を吹き込む。

無駄な在庫や廃棄が減るし、普段は絵画を描いているアーティストも、財布やバッグなど日常的に身につけるものを作品にすることで、より多くの人の目に触れる機会が生まれる。

建築を学んだり、絵を描いたり、シューズブランドに勤めたり。さまざまな経験を経て、13年前にユハクを立ち上げた仲垣さん。

ブランド経営のかたわらで、自身も作家活動を続けてきた。

過去には、つま先の鋭角な靴を考案してブームを生み出したものの、有名ブランドに模倣され、逆に「他ブランドの真似だ」と言われてしまう苦い経験もした。

絶対に真似されないブランドをつくろう。そのために着目したのが色だった。

主にヨーロッパから最高品質の革を仕入れ、横浜本社からほど近い染色アトリエで、一点ずつ手染めしていく。円を描くように色を重ねていくことで、独特のグラデーションが生まれる。

染料に浸す一般的な革の染め方と比較すると、手間も時間もかかる。

「いかに効率よく、採算をとれるか。そういった価値観からすると、かなり逆行していると思います。全員に好まれようとは思いません。同じ価値観を共有できる方々に届けたいんです」

ロゴがなくても、伝わるブランドを。

その想いは、13年の時をかけて少しずつ形になってきた。

横浜の本社や染色アトリエに加え、3年前には大阪・心斎橋の百貨店内に直営店をオープン。2年前にこの銀座店ができ、今年の夏には名古屋に路面店をオープンするなど、お客さんとの接点も増えつつある。

次のステップとして、仲垣さんはどんなことを考えているんだろう。

「ものをつくるにあたって、捨ててしまうものを極力少なくしたいと思っています。いい商品をつくろうと思えば思うほど、厳選した革の一部しか使わない、みたいな方向性になっていく。でも革は、もともと命のあったもの。大切な資源なんです。いかにすべて使い切る形にもっていくことができるか、いろいろと試行錯誤しているところです」

たとえば、革をカットする際にどうしても出てしまう端材を集めて活用できないか?と考え、細かく裁断して、再生する方法を検討しているそうだ。

また、最近は仲垣さん個人のプロジェクトとして、酒粕を活用する事業にも取り組んでいる。

酒を搾ったあとに出る酒粕。現状はそのほとんどが廃棄されているものの、栄養価は高い。

コロナ禍でも需要の落ち込んでいないスイーツと掛け合わせたり、プロテインにして海外へ販売したりする構想もあるという。

でも、なぜ酒粕なんですか? 革のものづくりからは、ちょっと離れるように思います。

「酒粕を牛の飼料に混ぜ込むと、牛のげっぷに含まれるメタンガスが減るという研究結果があって。メタンガスは、二酸化炭素に次ぐ排出量の温室効果ガスで、地球温暖化の原因のひとつとも言われています」

「廃棄されるはずだった酒粕を活かして、ブランド牛を育てる。そのお肉や革を活かして、サステナブルな事業を生み出していく。そういうふうに考えていくと、どれもつながっていく取り組みだと思うんですよね」

垣根をつくらず、さまざまなジャンルのものに触れるようにしているという仲垣さん。

革のことだけ見ていても広がりがない。アートや食、生きものや環境のことなど、あらゆることに興味を持つなかで生まれる発想を大事にしている。

今回募集する販売スタッフも、自ら枠を超えていくような人に来てもらいたいという。

「ものをただ売るだけの販売員じゃつまらない。一歩踏み込んで、お客さまやまちとの接点を持ちながら働いてほしいですね。近くで企業やお店を経営されている方とつながる機会もありますし、ギャラリーもあるので、なんでもできる環境は揃っていると思います」

銀座店では最近、お客さんとの縁から、スイスの高級時計メーカーとのコラボレーションが決定。

地域との関係性が深まっていけば、そうしたつながりをもっと増やしていけるかもしれない。店長となる人には、今後お店の顔としての役割も一層求められる。

「コロナ禍を通じて、コミュニケーションの濃淡が両極化している気がして。自分たちは、濃くなっているほうにいきたいなって思いますね」

ユハクの製品やお店は、シュッとした雰囲気もありながら、どこか温かい。

それは、革の持つ個性を活かしたデザインや手仕事の温かみだけでなく、仲垣さんやスタッフの方々が醸し出す雰囲気も大きいと思う。

 

続けて話を聞いたのは、銀座店のオープンから関わってきたスタッフの田中さん。

以前勤めていたのは、写真スタジオ。販売の仕事は未経験だった。

2年ほどここで働いてみて、どうですか。

「扱っているものが、生鮮食品のようなナマモノでもなく、工業製品でもないので、販売職を経験されてきた方でもギャップを感じる部分はあるかなと思います」

「スタッフの間でもたまにあるんですけど、検品していて『これ気になります?』『わたしは気にならないけど、お客さんはどうですかね』とか。すべて手づくりの一点ものなので、明確に線引きできないことも多くて。そのあたりのバランスはむずかしいですね」

製品のビジュアルの印象が強いので、SNSで画像をパッと見て来店するお客さんも多い。

その際に、色あいには個体差があること、動物の革の表情を残していることなど、伝え方によってはマイナスイメージを持たれてしまうこともある。

どんな切り口から、どのように伝えるか。試行錯誤できる幅の広さは、ここで働く醍醐味とも言える。

「あとは、直営店の4店舗それぞれ形態が違うところも特徴かもしれません」

本社直結で職人とのつながりも深い横浜本店、老舗百貨店内の心斎橋店、400年の歴史あるまちなみのなかに位置する名古屋店、ギャラリー機能を備えた銀座店。

周辺環境もお店の色もそれぞれ異なるので、ユハクのブランドとしての軸は共有しつつ、自分たちで考えてお店づくりをしていく必要がある。

SNSアカウントも店舗ごとに分かれていて、投稿時のトーンやマナーも、少しずつ違いがあるという。

「銀座店で特徴的なのは、アーティストさんとやりとりする機会が多いことですね。直接お話を聞く前と後では、作品の見え方も変わりますし、販売にも活きている部分はあると思います」

直近で印象に残っているというのが、絵画アーティストの矢野竜輝さんと話したときのこと。

「作品は、全体的にポップでかわいい雰囲気で。丸とか三角のモチーフが多いのはなぜなのか、素朴な疑問を投げかけてみたんです。そうしたら、仙崖義梵さんという禅僧にインスパイアされていることを教えていただいて、展示のテーマの『調和』につながるお話も聞けて」

「あとは個人的に、伝記を読むのも好きで。その方がなぜアーティスト活動をはじめたのか聞くのも好きなんです。それが接客に役立つかというと、ちょっと違う話かもしれないですけど、自分なりの角度から好奇心を持つことは大事だなと思います」

素材である革のことや、産地のこと、つくり手の想いや、込められた技法など。

まずは自分の興味の湧くところからでいいから、知ることを楽しんでほしい。

また、今回銀座店とあわせて募集する心斎橋店は、百貨店内にある店舗。ユハクの既存のお客さんは20〜30代の若年層がメインであるなかで、百貨店を普段から利用している人たちにもブランドを知ってもらえるように、接点を増やしていきたい。

コロナ禍を通じて百貨店の売り上げが落ち込んでいる側面もあるものの、店頭での染色の実演など、リアルな場所を活かした企画で魅力を伝えていくこともできると思う。

田中さんは、ユハクのお店で働く人はどんな人が合うと思いますか。

「周りを見て、自分から動ける人がいいかなと思います。あんまり、お世話される気満々な人だと合わないような気はしますね」

「あとはやっぱり、好奇心のある人。結構突っ込んだ質問をされるお客さまもいらっしゃるので。すべてを一人でカバーする必要はないんですが、引き出しは多いほうがいい。新しく知ったり考えたりすることを、ウキウキ楽しめる人がいいですね」

一目見た印象だけでも、ほしくなる。魅力ある製品をつくっているブランドです。でも、それを届ける販売スタッフは、さらに一歩踏み込んで考えられる人だといい。

なぜこんなにも心惹かれるんだろう? どうすればもっと無駄をなくせるだろう?

その問いが、ブランドをより力強く、しなやかにしていくのだと思います。

(2022/11/4 取材 中川晃輔)

※撮影時はマスクを外していただきました。

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