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この海を守りたい

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瀬戸内海と宇和海(うわかい)。

南北に2つの海を有するのが、愛媛県最西端のまち、伊方町(いかたちょう)です。

細長い伊方町を取り囲む海は、透明度も高く海産物も豊富。一方で、地球温暖化などの影響により、少しずつ伊方町の海にも変化が出てきているといいます。

美しく豊かな2つの海を、どう維持していくか。

今回は伊方町の海のこれからを考えながら、地域の人たちと連携して海洋環境保全に取り組んでいく地域おこし協力隊を募集します。

海洋環境の知識がある人はもちろん、海を守っていく仕事に興味がある人は、ぜひ続きを読んでみてください。



羽田空港から松山空港へは、およそ1時間半。空港からバスでJR松山駅に向かい、特急宇和海に乗車する。

車窓から山や畑を眺めながら、1時間ほど内陸を走ると、八幡浜(やわたはま)駅に到着。

迎えてくれたのは、伊方町役場総合政策課まちづくり政策係の宮本さん。地域おこし協力隊の事業を担当している方。

町の観光施設「佐田岬はなはな」へ車で案内してもらい、話を聞くことに。

伊方町で生まれ育った宮本さんは松山の大学に進学後、地元の伊方町に帰ってきた。

「役場で町民の方に対応していると、お互いにどこの誰なのかわかるくらい、小さいまちなんですよ」

伊方町の人口はおよそ8400人。40年後には1800人ほどに減少するという推計が出ていて、町の人口とともに漁業に関わる人も減ってきているという。

「2つの海流が混ざり合う伊方町は、海産物も豊富なんです。ただ、漁師さんたちの高齢化や後継者不足が課題になっていて」

人的課題と同時に、環境変化による課題もある。

「温暖化などの影響で、これまで全国トップクラスの漁獲量だった太刀魚の数が激減したり、磯焼けが起こったりしているんです」

磯焼けとは海藻などが生息する藻場(もば)が、減少・消失する現象のこと。磯焼けが起こると、海藻を餌やすみかとしている海の生き物が生きていけなくなってしまう。

「今は目に見える影響があまり出ていなくても、未来を見据えた対策が大切で。伊方町の海を守るためにいろいろな人の力が必要なんです」

今回募集するのは、海洋環境保全をテーマに活動する協力隊。

現在、伊方町には海洋環境保全の専門家はいない。新しく協力隊となる人には、伊方町の海や自然を理解しつつ、地域の人を巻き込みながら海のこれからを考え、必要なアクションを起こしていってほしい。

海に近い伊方町は集落ごとに行う海岸清掃も多く、そんなイベントにも積極的に参加してくれるとうれしいとのこと。

「協力隊になる人には、地元の人と仲良くしてもらうことが一番大事だと思っていて。伊方町は飲食店が少ないので地域の人が自宅に招いてくれて、一緒にご飯を食べたり、お酒を飲んだりすることもよくあるんですよ」

はじめは宮本さんが地域の人とのつながりをつくってくれるから、新しく協力隊となる人はきっと心強いと思う。



「伊方町に初めて来たとき、宮本さんが町内を車で案内してくれたんですよ」

そう話すのは協力隊の田中さん。事業提案型の協力隊として伊方町に着任して、3年目を迎えている。

「前職は大阪にある旅行関連のベンチャー企業で働いていました。上司と立ち上げた事業がうまくいって、仕事は楽しかったです。ただ、いつか自分で起業してみたいという思いもあって」

コロナ禍となり仕事が休業。以前から興味のあった四国をまわってみようと、地図で見つけたのが伊方町だった。

「この端っこ、なんか面白そうやなと思ったんです」

とりあえず伊方町へ向かってガイドマップをもらおうと町役場へ行き、そこで出会ったのが宮本さんだった。

「『よかったら町を案内しましょうか』ってポップな感じで声をかけてくれて。じゃあお願いします!と」

「案内してもらうなかで、起業を考えていることを宮本さんに話したんです。そうしたら、ちょうど伊方町に事業提案型の協力隊の募集があると言われて」

伊方町でチャレンジしてみようと即決。2ヶ月後に協力隊に応募し、着任となった。

「昔、駐在所だった家に住むことになったんですけど、僕、坊主じゃないですか。住み始めたとき、地域の人から『駐在さん?』って聞かれて(笑)。協力隊です、と答えたら、『よう来たなぁ!』って温かく迎えてくれましたね」

これまで活動してきた協力隊が、地域の人と築いてきたつながりを感じたという。

協力隊としてはじめに提案したのは、学生のスポーツ合宿を誘致する事業。ところが大量に発生する霧によって、スポーツに不向きなことから計画を断念。

その後に思いついたのが、町内の亀ヶ池公園にオートキャンプ場をつくることだった。

「洋式のトイレがあって、裏手には温泉がある公園で。まさにキャンプ場として好条件だったんです」

付近の地域住民にキャンプ場について相談したところ、「使ってくれるなんてありがたい」と快く受け入れてくれたという。

早速、地域の人たちや協力隊に声をかけて公園の草刈りをして、予約サイトをつくり、今年の4月にキャンプ場をオープン。

「半年で600組以上が利用してくれて。ほとんどが町外の方で、SNSや町内の施設に貼った広告で知って、来てくださいましたね」

ほかにもたこやきを提供するキッチンカーや、お笑い芸人としての活動など、伊方町であらゆることに取り組んでいる。

「これからは、『キッチンカー居酒屋』をやりたいと思っていて。キッチンカーなら地域の方が来やすいところまで僕が出向けるし、町外でも商売できますから」

「地域の人たちは温かいですね。手作りの料理もたくさんくださるので、ありがたく食べていたら2年間で10キロ近く体重が増加して(笑)。この話をすると、町の人がまた喜んじゃうんですよ」



海洋環境保全の分野で協力隊となる人も、地域の人と関わるなかで取り組むべきことが見えてくるかもしれない。

次に話を聞いたのが、水産振興の協力隊である竹内さん。コロナ禍の影響で任期が延長して、着任4年目となる方。

今は観光分野で活動しているものの、同じく海を舞台に活動する協力隊として、連携することもあるかもしれない。

「専門学校の講師とか介護とか、ずっと人と関わる仕事をしてきたから、今後は自然と関わる仕事がしたいと思って」

前職のときは休みの日に、住んでいた徳島から近隣の地域へよくドライブに行っていたという。

九州に行くときは伊方町からフェリーに乗ることもあって、伊方町のことはもともと知っていた。

「細長い地形で、自然の変化に富んでいる場所だなと。ここで海と関われたら面白そうだと思って」

「ただ、僕もそうだったように伊方町は通り道で、目的地として観光に来る人は少ない。干物とかの土産物はあるけれど、旅の途中で干物は買えないでしょう」

そこで協力隊1年目は漁師さんと相談して、太刀魚の燻製やサザエを使った郷土料理の缶詰など、保存が効く商品の開発を行なった。商品はどれも好評だったという。

2年目になると町の観光協会から「海を舞台に観光の取り組みを考えてほしい」と相談され、思いついたのが「漁師・漁船体験クルーズ」というツアー。

「お客さまを船に乗せて安全に運航することは、漁師さんにはお手の物。そのほか、集客に関わるチラシづくりや船上ガイドなど、漁師さんの手が回らないところを僕が担って一緒に取り組んでいます。おかげさまで結構人気で、忙しいんですよ」

「伊方にはアワビやサザエを素潜りで獲る男性の海士(あまし)さんがいるので、その漁を見学したり、カゴ網漁の網引きを手伝ったりすると、お客さまは盛り上がりますね」

ツアー中には運が良ければイルカと会えたり、日本では珍しい青石が表出しているところを見れたりと、伊方町の海ならではの自然も楽しめるという。



「生き物が好きな人にとって、伊方町は面白い場所だと思いますね」

そう話すのは伊方町に移住して5年目になる楠本さん。昆虫に関わる協力隊として着任し、現在は着任当初から関わっている自然体験学習施設「瀬戸アグリトピア」の運営を担っている。

「アグリトピアは、宿泊と自然体験をセットで楽しめるというコンセプトの施設です。ただ、協力隊として関わった当初は芋掘り体験くらいしかなかったので、もっと体験を充実させようと思って活動してきました」

昆虫採集や自然を使った小物づくりなど、ワークショップを積極的に取り入れてきたところ、お客さんの数は順調に増えているという。

「これからは、伊方町のきれいな海で楽しめるアクティビティも取り入れていきたいと思っていますね」

「ただ、今の海を維持するには、未来をしっかりと予測して先手の対応をすることが大切だと思います」

たとえば、と教えてくれたのが海中の藻場を増やしていくこと。

藻場は生物の隠れ家となったり、二酸化炭素を吸収して酸素を排出したりなど、海の環境を維持するための大切な役目を担っている。

「たとえば、レジャーに来たお客さまに寄付金をいただいて、そのお金を藻場づくりに活用するとか、そういう取り組みも伊方町の海の保全につながっていくと思います」

ほかにも、海藻など海洋生物の二酸化炭素の吸収率が高いことから、伊方町の藻場で吸収した二酸化炭素分を企業に買ってもらう、カーボン・オフセットも考えられるという。

実は大学時代に海洋生物の研究をしていたほど、海に関わる知識が豊富な楠本さん。地域の小学校で、海の生物について説明する授業も担当しているのだとか。

新しく海洋環境保全の協力隊となる人にとって、とても頼りになる存在だと思う。

「伊方町で今はやっていない養殖も、海の多様性を高めて海洋環境保全につながる方法になるかもしれません。伊方町は面積が小さいからこそ、何かを取り組むときに小規模でスピーディーに試せるという利点もあると思いますね」

もしかしたら、これまで養殖をやってこなかった理由も地域の人に話を聞いたら見えてくることがあるのかもしれない。

町の人たちから丁寧に話を聞きつつ、伊方町の海に合った取り組みができるといい。

「どんなことをやるにしても、地元の方の協力は絶対に必要なので、自分が全力でやりながら、住民の方に力を貸してもらう。伊方町は新しいこともかなり寛容に受け入れてくれるので、安心してチャレンジできると思いますよ」

 

環境問題はひとりの力では解決できないし、時間がかかるもの。

伊方町の海を見て、この海を守りたいという気持ちから生まれた活動であれば、地域の人たちはきっと力を貸してくれると思います。

チャレンジしてみたいと思った人は、ぜひ一歩を踏み出してみてください。

(2022/11/4 取材 小河彩菜)

※撮影時はマスクを外していただきました。

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